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第30話 戻って来た男
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「だからよ。褒めて欲しかったんだろ? 実際お前のおかげで助かったし、な。……こんだけ言ったんだからもういいよな」
「…………んんん!! キミって男の子は、なんて義理堅いんだ!! ボクの美麗な活躍を見て感動するのは当然であるがその時の約束をきちんと果たしてくれるキミのその謙虚さといじらしい素直さには感激を覚えずにいられない! ボクはキミと体験した今日という小さくも大きな冒険を生涯決して忘れる事は無いだろう! で、あればこうしてはいられない! この感動を忘れない内に日記に書きとめていつか見るであろうボクの血を引く者達の為に後世へと残さねばならないな! ではこれで……」
「おい待て!? 止めろよそんな事すんの!」
「照れなくともいいじゃないか! ボクはキミという男の子の勇姿とジェントルとしての在り方とをを書きとめたいんだ!!」
「だからやめろってんだよ!!」
ああクソッ、もう居なくなりやがった。
……あんな事言わなきゃよかったぜ。慣れねぇ事はするもんじゃないな。
◇◇◇
「お坊ちゃま、この度は何のおもてなしも出来ませんで……」
「畑荒らしが出たんだ、そんなの気にする事じゃない。こっちこそ、ロクに挨拶も出来無くて悪かった。今度は美味いフルーツを食べに来るぜ」
「わかりました。わたくし共もその日を心よりお待ちしております。では」
「ああ、世話になったな」
それだけ言って、果樹の女管理人に別れを告げた俺は馬車へと乗り込んだ。
乗るのは俺だけらしく、コセルアもアルストレーラや他の騎士も馬へと乗り込んでる。
「今日は色々あった……」
こんな一人事を言っても気にする必要もないのは、この場合助かるのか……。
窓から差し込む夕日が眩しい。それが山の斜面の果樹に当たって、オレンジ色に染まってる。
今度こそ食べに来よう。
「綺麗なもんだ……」
この綺麗なもんをぶっ壊そうとした奴らがいる。その今日捕まえた女と化け犬共。その後ろにいるのは一体誰なのか? 考えなくちゃならない事は増えちまったな。
イラつかせるクソ共が多すぎる。
(…………)
頭が痛くなる話だが、今はこの光景を楽しもう。
何て事ない自然の雄大さ、だがそれは前世でも縁が無かったもんだ。
元恋人とも無い思い出。俺だけの綺麗な思い出だ。
今後はこういうのを増やして行きたい、そう思ってる内に寝落ちしてしまったのか、次に目覚めたのは屋敷に着いてからだった。
「坊ちゃま、さあお手をどうぞ」
「……ああ」
思えば初めてあった時は手を取らなかったな。今回は素直になるか。
コセルアの手を取って馬車から降りる、まるで金持ちになった気分だな。……今更か。
玄関からライベルが走ってくるのが見える。あいつも心配性だ。…………何コケてんだよ。
俺は頭を掻きながら、助け起こす為にライベルの元へと近づいていく。
空はとっくに陽が落ち、顔を出し始めた月が屋敷を優しく照らしていた。
「…………んんん!! キミって男の子は、なんて義理堅いんだ!! ボクの美麗な活躍を見て感動するのは当然であるがその時の約束をきちんと果たしてくれるキミのその謙虚さといじらしい素直さには感激を覚えずにいられない! ボクはキミと体験した今日という小さくも大きな冒険を生涯決して忘れる事は無いだろう! で、あればこうしてはいられない! この感動を忘れない内に日記に書きとめていつか見るであろうボクの血を引く者達の為に後世へと残さねばならないな! ではこれで……」
「おい待て!? 止めろよそんな事すんの!」
「照れなくともいいじゃないか! ボクはキミという男の子の勇姿とジェントルとしての在り方とをを書きとめたいんだ!!」
「だからやめろってんだよ!!」
ああクソッ、もう居なくなりやがった。
……あんな事言わなきゃよかったぜ。慣れねぇ事はするもんじゃないな。
◇◇◇
「お坊ちゃま、この度は何のおもてなしも出来ませんで……」
「畑荒らしが出たんだ、そんなの気にする事じゃない。こっちこそ、ロクに挨拶も出来無くて悪かった。今度は美味いフルーツを食べに来るぜ」
「わかりました。わたくし共もその日を心よりお待ちしております。では」
「ああ、世話になったな」
それだけ言って、果樹の女管理人に別れを告げた俺は馬車へと乗り込んだ。
乗るのは俺だけらしく、コセルアもアルストレーラや他の騎士も馬へと乗り込んでる。
「今日は色々あった……」
こんな一人事を言っても気にする必要もないのは、この場合助かるのか……。
窓から差し込む夕日が眩しい。それが山の斜面の果樹に当たって、オレンジ色に染まってる。
今度こそ食べに来よう。
「綺麗なもんだ……」
この綺麗なもんをぶっ壊そうとした奴らがいる。その今日捕まえた女と化け犬共。その後ろにいるのは一体誰なのか? 考えなくちゃならない事は増えちまったな。
イラつかせるクソ共が多すぎる。
(…………)
頭が痛くなる話だが、今はこの光景を楽しもう。
何て事ない自然の雄大さ、だがそれは前世でも縁が無かったもんだ。
元恋人とも無い思い出。俺だけの綺麗な思い出だ。
今後はこういうのを増やして行きたい、そう思ってる内に寝落ちしてしまったのか、次に目覚めたのは屋敷に着いてからだった。
「坊ちゃま、さあお手をどうぞ」
「……ああ」
思えば初めてあった時は手を取らなかったな。今回は素直になるか。
コセルアの手を取って馬車から降りる、まるで金持ちになった気分だな。……今更か。
玄関からライベルが走ってくるのが見える。あいつも心配性だ。…………何コケてんだよ。
俺は頭を掻きながら、助け起こす為にライベルの元へと近づいていく。
空はとっくに陽が落ち、顔を出し始めた月が屋敷を優しく照らしていた。
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