裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~

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第25話 蹴散らす二人

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 奥へ奥へ、進みながら化け犬が増えて来る。
 別にそれ自体は読めていた事だ。周りを囲まれてもこっちだって二人だ、有象無象も敵じゃないが……こいつらの出処はどこだ?

 こんだけ出て来るんだから巣なりなんなり何処かにあるはずだ。
 一匹ずつちまちまと相手してたら切りがねぇ、元を絶たない限り我慢比べだぜ。

「ふんっ」

「ガァ!?」

 今も飛び出してきた化け犬を一匹どついたところだ。
 ここに来て突きの技術が上がったようだ。長物を満足に振り回せない環境だからか、自然とそいつの精度が鍛えられたみたいだな。

「しかし彼らは凄いな! まるでボク達の動きが見えているかのように的確に攻めてくるじゃないか」

「何で褒めてんだよ……。だが、確かにジロジロと見られてる感じがして気に入らねえ」

 この状況でこんなことが言えるんだからある意味で大物かもしれないが……。
 もしかしたら、どっかに頭の切れるボスがいるのかもしれねえ。

 連中を叩き潰しながら進むこと、一時間くらいか。
 埒が明かないと思っていたところ、妙に大人しくトボトボと歩く化け犬を偶然にも発見した。

 それは木々の奥、まるで周りを警戒する様に怪しいものを感じたのは二人同時だったようだ。

「おいあれ……」

「おや? キミも気づいたかい。あのあとを、ついていくともしかしたら……もしかするかもしれないね」

 結構な数を叩きのめした後だから、ある程度は連中も大人しくなったが、それでもどこかに潜んでいるはずだ。

 今までは堂々と進んで絡んできたやつを叩いていたが、これからは逆に息を殺して進んだ方がケリをつけられるかもしれない。

 そう思った俺達は周りを警戒して、その化け犬の後ろを気づかれないようについていく。


 そうして、少し開けた場所に出て……俺達はこれまた奇妙な穴を発見。そこに入っていく化け犬の姿を見た。

「こりゃまたどういうことだ? 何もねえ場所に穴が開いてやがる」

「空間に穴……そうか! しかし、これはどういう事だ? 何故こんな所に”ゲート”が開いているのか……」

「ゲート? ……どっかに繋がってるって事か。おい、そりゃあ自然に出来るもんなのか?」

「あんな小さいものは自然には出来ないはず。……例えば魔界の魔物がこちらに来る場合は特定の、大昔からある大きなゲートを通るしかないんだ。そしてそこは普段、国の軍が管理しているし、キミの領地には存在しない」

「まさか、誰かが開けたって言いてぇのか?」

「これは不味いものを見てしまった。もしそうなら明らかな犯罪行為だよ。誰かが罪を犯してキミの領地を脅かしている。その目的は分からないけど」

 舐めた真似してくれるヤツがいるわけだ。
 その穴をじっと見る。向こう側は見えねぇが、多分こっから先は化け犬の巣に繋がっているんだろう。

 人ン地の畑の近くにこいつを繋げたって事は、目的は畑荒らしか? ……そんな単純なものじゃねぇな。
 化け物が食い荒らす畑、なんて事実を作ってうちのブランドに傷をつける。それだけで終わる話ならこんな手の込んだ事はしないはずだ。

 目的はお袋の顔に泥を塗る。つまり、侯爵家に付け入る隙を無理矢理作ろうって腹か。
 お抱えの騎士団は化け物の巣も発見出来ず、駆除が遅れた無能の集まりってシナリオをでっち上げようとしている人間、もしくは連中がいる。

 それだけで評判が地に落ちるとまでは行かないが、蹴落とす足がかりにはなる。

 ……ざっと考えただけだが、そんな程度の悪知恵が浮かぶ。
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