24 / 64
第24話 身を立てようとする男
しおりを挟む
「ふっ。キミという男の子の前だから、つい要らぬ力を入れてしまったな。いやはや修行の道は険しい。……どうだい、キミの剣としては申し分ないと思うが?」
「さあな。それより、こいつは一匹だけか? 普通犬ってのは群れで移動するもんだと思うが」
「そう、そこだよ。キミの見解通りこの手の魔物は一匹だけというのは考えづらい。群れからはぐれた可能性も無くはないけれど、そうするとわざわざリスクを冒してまで人間を襲う理由が無い」
「ということは……」
「もう少しこの山、調べる必要があるね。幸いまだまだ日は高い、このレベルなら対処可能だし今出来る範囲で駆除しようと思う。だけれどここから先、キミはもう離れた方が……」
「全く関係ねぇならそうするところだけどなぁ。……生憎とここはお袋のシマだ、だったらそのガキの俺がケツ撒くって逃げる訳にもいかねえ」
「ほう、粗野な物言い故に意味はよく分からないがキミの気概を感じる。本来レディとしてここは下がらせたいところだが、その決意を無碍にするのもレディとして反する。これは困ったぞ、キミはボクを悩ませるのが得意だな」
俺からすればお前の方がよっぽど何言ってるかわかんないし、そもそもお前悩むことがあるのかって話だがな。
手前の立場ってもんを考えるなら、大人しく下がってるべきだってのもわかる。
だが、ここで下がるのタダ飯食らいな気がして、どうにも落ち着かない。
今の俺になって一宿一飯の恩ってやつも返してないしな。それじゃあ収まりもつかねぇ。
自分の住んでるシマの問題ぐらい、片を付けないとな。
どうせ大した頭も持ち合わせちゃいねぇんだ。だったら腕っぷしで働くしかない。
「足手まといになる気はねぇが、それで無理だと思うなら容赦無く捨てて行け」
「おいおい、そんな事出来る訳がないじゃないか」
「ならいざという時は守ってくれ。それがレディの在り方なんだろ? 期待しておくぜ」
「……ふぅ。キミは狡いな。そこまで言われたら張り切っていくしかないじゃないか! よし、キミを守る栄誉は頂いたよ。大船に乗ったつもりで身を任せておくれ!」
自身満々に小ぶりな胸を叩く、ふんと鼻息でも聞こえてきそうだな。
そんな訳で人の縄張りを荒らす不届き者共を片づけに行く事になった。
今日までコセルア達に散々しごかれて来たんだ。あいつらに泥を塗らないように無様を晒さねぇようにしないとな。
ジャケットの下に隠してた棒を取り出す。護身用の折り畳み式だ。
金属製のそいつを取り出して、一本の身の丈を優に超える棍になった。
今の所はこいつが手に馴染む。だが、もしかしたら将来別の武器に変えるかもしれんが。
「ほう、キミはそういったものを使うのか。男の子が戦うと言うのだから、てっきり魔法を扱うのだと思っていたのだけれど」
「そっちに関しては知識しかねぇな。それもお幼稚レベルのな。荒いがこいつの扱いには自信はあるつもりだ」
「よし、ならばその意気を無駄にしないようにボクも本領を発揮してみせようじゃないか!」
茂みに足を踏み込んで行く俺達。
こうしていると、今までなんで気付かなかったのか、妙な気配みたいのを感じる。
こういう感覚もコセルア達との成果の一つだ。何よりも危機察知能力を身に着けるようにしろと言われて、気配を読む術ってのを習わされた。
踏み込んで行く度に息遣いでも聞こえてくるかのように生々しく気配が濃くなってくる。
そうして、飛び出て来る気配の主。そいつに対して俺は――。
「ナメんじゃねぇッ……!」
「グルッ!?」
脳天に食い込むように叩きつけた棍。
さっきの化け犬の仲間は汚い声を上げて、そのまま地面に沈められる。
「お見事! その身のこなし、キミの努力の証が眩しいよ!」
「そりゃどうも」
「さあな。それより、こいつは一匹だけか? 普通犬ってのは群れで移動するもんだと思うが」
「そう、そこだよ。キミの見解通りこの手の魔物は一匹だけというのは考えづらい。群れからはぐれた可能性も無くはないけれど、そうするとわざわざリスクを冒してまで人間を襲う理由が無い」
「ということは……」
「もう少しこの山、調べる必要があるね。幸いまだまだ日は高い、このレベルなら対処可能だし今出来る範囲で駆除しようと思う。だけれどここから先、キミはもう離れた方が……」
「全く関係ねぇならそうするところだけどなぁ。……生憎とここはお袋のシマだ、だったらそのガキの俺がケツ撒くって逃げる訳にもいかねえ」
「ほう、粗野な物言い故に意味はよく分からないがキミの気概を感じる。本来レディとしてここは下がらせたいところだが、その決意を無碍にするのもレディとして反する。これは困ったぞ、キミはボクを悩ませるのが得意だな」
俺からすればお前の方がよっぽど何言ってるかわかんないし、そもそもお前悩むことがあるのかって話だがな。
手前の立場ってもんを考えるなら、大人しく下がってるべきだってのもわかる。
だが、ここで下がるのタダ飯食らいな気がして、どうにも落ち着かない。
今の俺になって一宿一飯の恩ってやつも返してないしな。それじゃあ収まりもつかねぇ。
自分の住んでるシマの問題ぐらい、片を付けないとな。
どうせ大した頭も持ち合わせちゃいねぇんだ。だったら腕っぷしで働くしかない。
「足手まといになる気はねぇが、それで無理だと思うなら容赦無く捨てて行け」
「おいおい、そんな事出来る訳がないじゃないか」
「ならいざという時は守ってくれ。それがレディの在り方なんだろ? 期待しておくぜ」
「……ふぅ。キミは狡いな。そこまで言われたら張り切っていくしかないじゃないか! よし、キミを守る栄誉は頂いたよ。大船に乗ったつもりで身を任せておくれ!」
自身満々に小ぶりな胸を叩く、ふんと鼻息でも聞こえてきそうだな。
そんな訳で人の縄張りを荒らす不届き者共を片づけに行く事になった。
今日までコセルア達に散々しごかれて来たんだ。あいつらに泥を塗らないように無様を晒さねぇようにしないとな。
ジャケットの下に隠してた棒を取り出す。護身用の折り畳み式だ。
金属製のそいつを取り出して、一本の身の丈を優に超える棍になった。
今の所はこいつが手に馴染む。だが、もしかしたら将来別の武器に変えるかもしれんが。
「ほう、キミはそういったものを使うのか。男の子が戦うと言うのだから、てっきり魔法を扱うのだと思っていたのだけれど」
「そっちに関しては知識しかねぇな。それもお幼稚レベルのな。荒いがこいつの扱いには自信はあるつもりだ」
「よし、ならばその意気を無駄にしないようにボクも本領を発揮してみせようじゃないか!」
茂みに足を踏み込んで行く俺達。
こうしていると、今までなんで気付かなかったのか、妙な気配みたいのを感じる。
こういう感覚もコセルア達との成果の一つだ。何よりも危機察知能力を身に着けるようにしろと言われて、気配を読む術ってのを習わされた。
踏み込んで行く度に息遣いでも聞こえてくるかのように生々しく気配が濃くなってくる。
そうして、飛び出て来る気配の主。そいつに対して俺は――。
「ナメんじゃねぇッ……!」
「グルッ!?」
脳天に食い込むように叩きつけた棍。
さっきの化け犬の仲間は汚い声を上げて、そのまま地面に沈められる。
「お見事! その身のこなし、キミの努力の証が眩しいよ!」
「そりゃどうも」
34
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。


母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる