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第21話 騒がしい日常
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あのやかましい女と知り合って早一ヶ月。
俺の事を知りたいと言っていた女はそれを有言実行するかのように、それはもう毎日のように会いに来た。あいつの住んでいるアルストレーラ領が隣の領地なせいで。
鬱陶しい事この上なかったが、一応婚約者という立場である為か、お袋も拒もうとする事はしなかった。
むしろ俺に、婚約者として見ることは出来なくても対等の立場の良き友人として接するようにだなんだと言ってくる始末だ。
そしてこの女、ライベルが言っていたように本当に男受けがいいらしく、屋敷で働く使用人連中がこっそり見に行くレベルだ。
単なる噂だと思ってたのに。
『だから言ったじゃないですか。実際ものすごくカッコイイ令嬢様ですよ? あの方は人気者ですから、今の坊ちゃまの状態を考えると侯爵様も婚約をあまり押し進めていないのかも知れません。間違いなくその界隈で騒ぎになりますから』
『じゃあお前もファンになったのかよ? 俺はどうもその感性がわからねえんだよ』
『いえぼくはそれほどでも……、カッコイイなぁって思いはしますが。でもメイドの子達はみんな裏で毎日キャーキャー騒いでますよ』
『俺は毎日近くでギャーギャー騒がれてるがな』
とにかくそういう訳だ。
何かにつけて俺に絡んで来て、休まらない毎日だったぜ。
「しっかし記憶喪失だとは言うがこうまで性格が変わるなんてね。前のキミとくれば自分よりも弱い立場の人間を見ると意地悪するような、それは悪辣な性格をしていて、正直貴族としての気品を疑うような人物だった。それでいてボクには理由を付けては会いに来ようとするんだ。プレゼントを持ってね。ただどうもセンスが合わないというか……断ってはいたのだけれどね」
「あぁ、よりによってお前にセンス云々言われるとは相当だな。安心しろ、今の俺はもうお前と関わりたいと思わないからもう会いに来なくていいぞ」
「だがしかし! 今のキミとなら仲良くしたいと思うのがボクなんだな。言葉も仕草も随分と粗野になってしまったけれど、その心は正しく光輝いて見える。この輝きは品行方正を友としてきたこのボクに匹敵するレベルだと誇っていい程だよ。誇っていいよ」
「結構」
そんな会話をしている俺達は、とある場所に向かって馬を並走させている。
最近上達してきた馬術の慣らしを兼ねて、お袋から領地内を見て来いと言われた。
それを聞いた時は喜んだ。町までの移動こそ許されていたが、人間というのは欲が出るものでもっと遠くを見ておきたいと思っていたからだ。
『最近馬術の方も頑張ってるって聞くわ。とはいえ分かっているとは思っているけれど……勿論貴方一人で行っては駄目よ』
『あんまり分かりたくないって言ったら? ……駄目か』
『そう駄目。あまり言わないわがままだけど、こればかりは、ね』
『じゃあコセルアと……』
『あまり彼女を連れ回されると困るわね。本来貴方の専属騎士ではないもの』
『ならライベル……』
『残念ね。あいにくとその日は彼の休暇と重なってるわ。偶にはゆっくりさせておきなさい。それに、そもそも彼は侍従であっても護衛じゃないわ』
『じゃ俺に誰と行けってんだ?』
『彼女がいるでしょう? 最近は友人としても過ごしているそうじゃない』
『……アンタ、嵌めたな俺を』
『……何のことかしら? 彼女は騎士としての訓練を幼い頃から積んでいるから適任なだけよ』
俺の事を知りたいと言っていた女はそれを有言実行するかのように、それはもう毎日のように会いに来た。あいつの住んでいるアルストレーラ領が隣の領地なせいで。
鬱陶しい事この上なかったが、一応婚約者という立場である為か、お袋も拒もうとする事はしなかった。
むしろ俺に、婚約者として見ることは出来なくても対等の立場の良き友人として接するようにだなんだと言ってくる始末だ。
そしてこの女、ライベルが言っていたように本当に男受けがいいらしく、屋敷で働く使用人連中がこっそり見に行くレベルだ。
単なる噂だと思ってたのに。
『だから言ったじゃないですか。実際ものすごくカッコイイ令嬢様ですよ? あの方は人気者ですから、今の坊ちゃまの状態を考えると侯爵様も婚約をあまり押し進めていないのかも知れません。間違いなくその界隈で騒ぎになりますから』
『じゃあお前もファンになったのかよ? 俺はどうもその感性がわからねえんだよ』
『いえぼくはそれほどでも……、カッコイイなぁって思いはしますが。でもメイドの子達はみんな裏で毎日キャーキャー騒いでますよ』
『俺は毎日近くでギャーギャー騒がれてるがな』
とにかくそういう訳だ。
何かにつけて俺に絡んで来て、休まらない毎日だったぜ。
「しっかし記憶喪失だとは言うがこうまで性格が変わるなんてね。前のキミとくれば自分よりも弱い立場の人間を見ると意地悪するような、それは悪辣な性格をしていて、正直貴族としての気品を疑うような人物だった。それでいてボクには理由を付けては会いに来ようとするんだ。プレゼントを持ってね。ただどうもセンスが合わないというか……断ってはいたのだけれどね」
「あぁ、よりによってお前にセンス云々言われるとは相当だな。安心しろ、今の俺はもうお前と関わりたいと思わないからもう会いに来なくていいぞ」
「だがしかし! 今のキミとなら仲良くしたいと思うのがボクなんだな。言葉も仕草も随分と粗野になってしまったけれど、その心は正しく光輝いて見える。この輝きは品行方正を友としてきたこのボクに匹敵するレベルだと誇っていい程だよ。誇っていいよ」
「結構」
そんな会話をしている俺達は、とある場所に向かって馬を並走させている。
最近上達してきた馬術の慣らしを兼ねて、お袋から領地内を見て来いと言われた。
それを聞いた時は喜んだ。町までの移動こそ許されていたが、人間というのは欲が出るものでもっと遠くを見ておきたいと思っていたからだ。
『最近馬術の方も頑張ってるって聞くわ。とはいえ分かっているとは思っているけれど……勿論貴方一人で行っては駄目よ』
『あんまり分かりたくないって言ったら? ……駄目か』
『そう駄目。あまり言わないわがままだけど、こればかりは、ね』
『じゃあコセルアと……』
『あまり彼女を連れ回されると困るわね。本来貴方の専属騎士ではないもの』
『ならライベル……』
『残念ね。あいにくとその日は彼の休暇と重なってるわ。偶にはゆっくりさせておきなさい。それに、そもそも彼は侍従であっても護衛じゃないわ』
『じゃ俺に誰と行けってんだ?』
『彼女がいるでしょう? 最近は友人としても過ごしているそうじゃない』
『……アンタ、嵌めたな俺を』
『……何のことかしら? 彼女は騎士としての訓練を幼い頃から積んでいるから適任なだけよ』
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