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第20話 苦手な女性?
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「ライベル君、こうして話をするのは初めてだが……キミは中々に粋なお店を知っているじゃないか。よし我が領地の者にも大々的に宣伝を……」
「そ、それはどうでしょうか! 裏通りにあるような佇まいのお店は、敢えてあまり人に知られないように営業なさってる場合が多いですし」
「そうかなるほど! つまり隠れ家的な演出があり、そして慎ましく清楚なお店と言うわけだ。ふふ、それに気づかずに勝手な事をしてしまうところだったよ。ボクに無知を悟らせたなんて、ますますキミは素晴らしいな!」
「え、えーっと。ありがとうございます……?」
こっちを見るなライベル。
さすがにいつまでもあいつに相手させる訳にもいかないか。
仕方なく、仕方なくアルストレーラとかいう女に近づいて……行かなきゃならないなんてなぁ。
「で、結局なんでついて来た訳だ? 飯も食ったならとっとと自分の家にでも帰って……」
「……ふうむやはりな」
何がやはりだ?
ジロジロと俺を観察する女、こいつ俺の話聞いてねぇのかよ。
「何でお袋はこいつと婚約しろなんて……」
「あの、坊ちゃま。イレスカトラ様は少々……風変りな方ではありますが。同世代の男性方に大変人気のあるお方なんですよ?」
「あ? 何で?」
「まずそのお顔。端正な甘い顔立ちに厳しいマナー講義を乗り越えた優雅な振る舞いが合わさって、そっと微笑む様で気絶なされる方が後を絶たないとか」
「お前、本当に冗談がうまくなったな。今ならさっきよりは笑えそうだ」
「いえ本当にそういう噂があるんですよ!?」
冗談って事にしてくれって言ってんだよ。
笑っただけで気絶する? こっちの男連中ってはセンスがどうかしてんじゃねぇのか。
何でこんなのに……。
「うん、やっぱりキミは変わったね。前とは全然違う」
「……ああ、そうか――」
「まるで全く別の誰かが乗り移ったかのようだ」
「――いッ!?!?」
「なぁんて、流石にそれは無いか! はっはっはっはっは!」
はぁっ……ぅ……っ。
「ど、どうしたんですか急に胸を抑えて?」
「い、いや何でもねえ……。ビビらせやがって……」
まさかの指摘に口から心臓が出るかと思ったぜ。まだ心臓がバクバクいってやがる。
この女、見た目以上にやばいかも知れない……!
俺の様子を見てか、コセルアが代わりに口を開いた。
「ん……、それでイレスカトラ様。お坊ちゃまには一体どのような御用でお近づきになられたのでしょうか? 失礼ながら、この度はお忍びでこの町を訪れたものですので表立って貴族同士の交流を行う事が出来ません。ご了承くださいませ」
「おおコセルア卿、貴女は今日も冷静な佇まいが眩しいな。勿論、貴族としての身分で話し合おうとした訳じゃない。見ての通りボクも世を忍んだ格好をしているからね」
(見ての通り……?)
「先ほどの騒動、最初はボクが身を乗り出して事を収めるつもりだったんだ。レディたるもの、ジェントルの剣となる心構えは常なのだから。まさか彼が決闘を申し込むと思わなかったが……。全てが終わってその後をつけて見れば――なんとそれが、終始そこにいるライベル君の為の行いだと知った! 牙無き者から不当な悪意を払いのけるそのあまりに貴い振る舞いには、真に高貴なる者の在り方を教えられたようで……! それで嬉しくなって止まらなくなってしまったんだ!!」
「そう、ですか……それはようございました」
コセルアが押されてやがる。引いてるじゃねぇか。
そんな事に気づきもせずに俺の手を取ってきて……?
「だから――今のキミの事をもっと知りたくなったのさ」
手を取りつつ顔を近づけて来て、そして俺の耳に向けてそっとそんな風に囁いてきた。
「そ、それはどうでしょうか! 裏通りにあるような佇まいのお店は、敢えてあまり人に知られないように営業なさってる場合が多いですし」
「そうかなるほど! つまり隠れ家的な演出があり、そして慎ましく清楚なお店と言うわけだ。ふふ、それに気づかずに勝手な事をしてしまうところだったよ。ボクに無知を悟らせたなんて、ますますキミは素晴らしいな!」
「え、えーっと。ありがとうございます……?」
こっちを見るなライベル。
さすがにいつまでもあいつに相手させる訳にもいかないか。
仕方なく、仕方なくアルストレーラとかいう女に近づいて……行かなきゃならないなんてなぁ。
「で、結局なんでついて来た訳だ? 飯も食ったならとっとと自分の家にでも帰って……」
「……ふうむやはりな」
何がやはりだ?
ジロジロと俺を観察する女、こいつ俺の話聞いてねぇのかよ。
「何でお袋はこいつと婚約しろなんて……」
「あの、坊ちゃま。イレスカトラ様は少々……風変りな方ではありますが。同世代の男性方に大変人気のあるお方なんですよ?」
「あ? 何で?」
「まずそのお顔。端正な甘い顔立ちに厳しいマナー講義を乗り越えた優雅な振る舞いが合わさって、そっと微笑む様で気絶なされる方が後を絶たないとか」
「お前、本当に冗談がうまくなったな。今ならさっきよりは笑えそうだ」
「いえ本当にそういう噂があるんですよ!?」
冗談って事にしてくれって言ってんだよ。
笑っただけで気絶する? こっちの男連中ってはセンスがどうかしてんじゃねぇのか。
何でこんなのに……。
「うん、やっぱりキミは変わったね。前とは全然違う」
「……ああ、そうか――」
「まるで全く別の誰かが乗り移ったかのようだ」
「――いッ!?!?」
「なぁんて、流石にそれは無いか! はっはっはっはっは!」
はぁっ……ぅ……っ。
「ど、どうしたんですか急に胸を抑えて?」
「い、いや何でもねえ……。ビビらせやがって……」
まさかの指摘に口から心臓が出るかと思ったぜ。まだ心臓がバクバクいってやがる。
この女、見た目以上にやばいかも知れない……!
俺の様子を見てか、コセルアが代わりに口を開いた。
「ん……、それでイレスカトラ様。お坊ちゃまには一体どのような御用でお近づきになられたのでしょうか? 失礼ながら、この度はお忍びでこの町を訪れたものですので表立って貴族同士の交流を行う事が出来ません。ご了承くださいませ」
「おおコセルア卿、貴女は今日も冷静な佇まいが眩しいな。勿論、貴族としての身分で話し合おうとした訳じゃない。見ての通りボクも世を忍んだ格好をしているからね」
(見ての通り……?)
「先ほどの騒動、最初はボクが身を乗り出して事を収めるつもりだったんだ。レディたるもの、ジェントルの剣となる心構えは常なのだから。まさか彼が決闘を申し込むと思わなかったが……。全てが終わってその後をつけて見れば――なんとそれが、終始そこにいるライベル君の為の行いだと知った! 牙無き者から不当な悪意を払いのけるそのあまりに貴い振る舞いには、真に高貴なる者の在り方を教えられたようで……! それで嬉しくなって止まらなくなってしまったんだ!!」
「そう、ですか……それはようございました」
コセルアが押されてやがる。引いてるじゃねぇか。
そんな事に気づきもせずに俺の手を取ってきて……?
「だから――今のキミの事をもっと知りたくなったのさ」
手を取りつつ顔を近づけて来て、そして俺の耳に向けてそっとそんな風に囁いてきた。
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