裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~

こまの ととと

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第15話 素朴な会食

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 ライベルに付き合わされていろんな店を回って今は昼。確かに俺はこの町に詳しくないが、これじゃ誰が主人かわからねぇなやっぱ。

 服屋に行っては最新のファッションだがなんだか、俺の領域外の話を延々と聞かされては着せ替え人形にされ。
 アクセサリーショップに行っては、あれこれと目利きして俺の腕やら首やらにあてがって行く始末。

 ただ、ライベルという奴はこの手の事に相当強かった。
 どれもこれも、俺が気に入るものばかり進めてきて実際気に入ったものも多い。

 とはいえだ、元々そんなに買い込む予定もないため、実際に買ったのはその内数点だけ。
 ライベルときたら落ち込んでいたが、それとなくコセルアが慰めてたな。

 この二人のやりとりからして、前々からこういう事が起こってるんだろう。コセルアも手慣れたもんだ。

 それからは広場近くのカフェへ飯を食う流れ。で、現在に至る。

「対して店を回ったわけじゃねえってのに、もう昼とはな」

「それだけ楽しまれたということではありませんか?」

「かもな」

「いや、よかったです。ぼくもオススメのお店を紹介した甲斐がありましたよ。あんまり買えませんでしたけど……」

「まだ言ってんのかよ。今日は町を見て回るのがメインなんだから、荷物なんてそんな持てねえって言ってんだろ」

「それはそうですけど……。だったらそのペンダント、気に入ってくれます?」

「はいはい、気が向いたらまたつけてやるよ」

 ライベルが自分の金で個人的にプレゼントしてくれたもの、それが俺の首のペンダントだ。

「アンタから見てどうだ、コセルア?」

「ええ大変にお似合いかと。……その点に関しては流石はライベル君だな」

「へへ~、そんなに褒められると恥ずかしいじゃないですか」

「いやそんなには褒めてないだろ」

「えぇ……、そんなばっさり」

 なんて会話をしながらカフェを訪れ、テーブルへと案内される。

 そうして俺とコセルアが席に着いた時――一人立ったままのライベルを見た。

「え?」

「おいおい、今回はお忍びだぜ? 勘のいい奴が見てたら今ので俺かコセルアのどっちかが貴族だって思うだろうな」

「……あっ。す、すいません! 屋敷では主人と一緒のテーブルにはまず着きませんから」

 屋敷でなら何の違和感も無いが、今日はバレないように町を訪れている。
 身元は出来るだけ隠せ、ってのがお袋と侍従長からのお達しだからな。

「そういうところを見ると、お袋とも一緒に町に来た事は無さそうだな」

「ええ、そうなんです。ここに来るのは休みの日に一人、もしくは同じ日が休みになった使用人の人達とだけですから」

「プライベート以外は今日が初めてってか。……そうなるとコセルアは随分と慣れてるな。屋敷で働き出してからは長いのか?」

 チラリとコセルアを見る、その佇まいは涼しくも堂々と椅子に腰かけていて、その見栄えの良さもあってか妙に絵になっていた。
 ……隣のテーブルの奴もぽーっとして見てるな。見た目からしてライベルくらいか?

「そうですね……実のところライベル君とはそれ程差はありません」

「それって短いって事か?」

「いえ、彼は幼少期から屋敷で働いています。数ヶ月ほどの差しかありません」

「ふうん。それだけしかないのに、こいつは家の人間と外に出た事無かったんだな」

「え? いやちょっと待ってください。ぼくは基本的に屋敷の中で働いていますし、侍従になってからも、記憶を無くされる前の坊ちゃまは町に来たがらなかったので……だから仕方のない事なんです!」

「そんな熱入れなくたってもよ……」

 こいつ妙なところでスイッチが入るよな、ほんと。
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