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第6話 驚愕の事実

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「お、お帰りなさいませお坊ちゃま! ふ、再びお顔を見る事となって……その、う、嬉しい……です」

 でけえ屋敷に通されたかと思うと、一人の深い藍色の髪の小僧が俺の前へと立って挨拶していた。
 小僧? ……いや、男のはずだ。本当にそうか? でも……。

 いまいち自信が無いのは正直男に見えないからか。でも俺の勘が女じゃないと告げている。
 ……女に裏切られて死んだ影響か、どうやら妙なもんを身に着けてしまったらしい。

 そいつが使用人? 侍従? どっちか分からないがそれらしい恰好をしている以上、そういう役柄なんだろう。
 こんな子供も劇団員か。それもこの怯えよう、若いのに演技派だ。きっと大成するだろうな。
 
 ここまでの事で、多分に俺はいじわるなボンボンという設定だという事が分かっている。
 だが、その役柄は俺の好みじゃない。

「挨拶もそうそうに悪いが、俺はお前を知らないんだ」

「え? ぼ、ぼくの事を忘れたのですか? ……それに怒らないなんて」

 やっぱ俺の役柄はこの手に人間をビビらせて楽しむタイプだったか。
 気づいた人間はそれに乗って演じる。そうじゃない人間は困惑するままだろうが、それに合わせて対応するこの演技力。

(素人の俺にもわかる。やっぱこの連中、かなりのやり手だ)

 目の前のこいつ、困らせるくらいの気持ちで言った俺の言葉にもあえて困惑する事で応えている。
 これが即座に出来るなんて並みの腕じゃねえ。

 流石にここまで来ると、俺も気分が良くなってくる。
 その気にさせるなんて、流石あの世の歓迎ってところか。とんでもねえ力の入れようだ。

「ライベル君。気持ちは分かるが、何時までもそうしてないでお坊ちゃまを部屋まで案内して差し上げなさい」

「……あっ。申し訳ありませんコセルア卿! お、お坊ちゃま。では、お部屋まで案内させていただきます!」

 俺の後ろに立つコスプレ女、コセルアって名前だったのか。思えば出会ってから名前聞いて無かったな。
 ま、それも役名かも知れないんだよな。……あんまり覚えなくていいか。

「それではお坊ちゃま、私は今回の件の報告に行って参りますので」

 そう言って、頭を下げた後にどっかに言った仮称コセルア。


 俺は体を緊張させながら進む仮称ライベルの後をついて回って、案内された部屋へと通された。

「この部屋がお坊ちゃまの私室にございます。……あ、あの~」

「あ? ああ、サンキュー。お前も大変だな、いろいろ」

「はぁ……。あ、いや! 労いの言葉を頂けるなんて思いませんでした。では扉をお開けしますね」

「別にそこまで……ってもう開いてるし」

 困惑する表情がまるで本当に不思議がってるように見える。
 そんな事を考えてるうちに開かれた扉をくぐって行く。

 すると。

「なんだこりゃ? 随分とまあ……豪勢と言うか、悪趣味と言うか」

「ですが、その、お坊ちゃまが好みに合わせた部屋ですので。……本当に覚えていらっしゃらないんですね」

 通された部屋は、なんというか目に痛い煌びやかさというか。
 言ってしまえば成金趣味丸出しの悪趣味全開だった。
 壁紙や天井、絨毯やら、とにかくあらゆる物に金がかかっている。金ピカって感じが落ち着かない。

 本当マジどういう道楽息子の設定なんだよ。

「坊ちゃまはこういう派手なのがお好きだったんです」

「……ああそう。もうツッコむ気力もねぇや」

「それと、そのお着換えなさった方がよろしいかと……。汚れが目立ちますし、お坊ちゃまは一日に何度も服を変える趣味も持ち合わせていましたよ」

 マジかよ。ロクでもねえ設定を押し付けてくるなおい。
 もしかしてこいつら、こっちの対応力ってのも試してるんじゃねえのか?
 体験型のアトラクション的な。

 しかし服ねぇ。
 そう言われて、改めて自分の着させられた服を見る。よく見ると確かに嫌味な金持ち臭が漂う派手な格好だ。なんだこの色遣い? 理解出来ない感性だぜ。

「髪の毛も乱れていますし、あちらの鏡で確認なさいますか?」

 指差す方向には姿見があった。この際だ、全身がどうなってるのか見て見るか。
 そう思ってなんのけなしに鏡をのぞき込んだ時だ。


「…………は?」


 そこには――俺と似ても似つかない顔つきの男が居た。
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