5 / 64
第5話 まさかの待遇
しおりを挟む
外へと出ると、これまたコスプレ女と同じ格好をした集団がいた。それも全員女。
なるほど、こいつらはそういうサークルか劇団なんだろう。
俺の隣を歩く女はそこの一員、もしかしたらリーダーなのかもしれないが……しかし派手にやりやがる。
こういうのをなんて言ったか? フラッシュモブ?
……そういう事か。これまでの流れは全部あの世に来た奴を歓迎するサプライズなんだ。
やっとわかったぜ。だから俺もよくわからない場所に監禁されていたって訳だ。ロープで縛られて無かった理由もこれでわかった。
(そう思うとあの二人には悪い事をした。……いや、きっとあっちもプロだ。俺みたいな反応には慣れてるはず)
これがあの世なりの歓迎ってか。この手の事は苦手なんだがな。
しかし、驚いたのは意外に空気が上手いって事だ。
あの世でもそういう感覚が味わえるとはな。って言っても俺は都会育ちだからこういう感覚事態が初めてなんだが。
緑に溢れる場所、振り返れば木造の古めかしい建物。今まで何人がこのサプライズを受けたんだろうか?
「お坊ちゃま! ご、ご無事で何よりです!」
「到着が遅れた事、どうかお許し下さい!」
コスプレ女の集団がそう声を掛けて来る。随分と芝居に熱が入ってるな。
しかし、俺は一体どういう役柄なんだ? お坊ちゃまって事は金持ちのボンボンって事なんだろうが、この反応……まるで失敗を許さないわがままな子供を相手してるみたいだぜ。
流石にそんなひでぇ役はやりたくねぇな……ここは一つ修正するか。
「ああ? んな事は気にすんな。取って食おうなんざ思っちゃいねぇよ」
「あ、ありがとうございます! まさかお坊ちゃまからそのような寛大なお言葉を掛けられるなど……!」
この女、かなりの演技派な上にアドリブにも強ぇな。
周りを見れば似たように驚いてる様子だった。こりゃあ相当腕のある連中のようだ。
やっぱサプライズに力入れてるだけあって実力派揃いって事か。
「さ、坊ちゃま。こちらの馬車にお乗り下さい。……さあ、お手をどうぞ」
俺と建物から出て来た女がいつの間にか馬車の前へと移動していた。
しかし馬車とは、初めてみるぜ。それも随分と豪勢に見える。
(金掛かってんな。こういうのってどっから金が出てんだ? あの世の税金か?)
やっぱ生まれ変わるまでは暮らすってなると、納めるもんが必要なんだろうな。
どこ行っても世知辛いのは変わりねえんだな。
「さあ、私の手を取って下さいませ」
俺に向かって手を差し出す女。やっぱ背が高いな。
思えばここにいる連中みんな俺より高いじゃねえか。これがあの世の平均サイズなのか? それともあえてそういう連中を集めて劇をやってるか。
……なんか癪だな。
俺は手を取らずにそのまま馬車へと入っていった。
「坊ちゃま……。それほど私に対して警戒をなさっているのですね。お労しい……」
この悲しそうな振り、ほんとに演技派だな。アドリブが上手い演者は大成するなんて聞くし、今度この連中の講演でも見に行くか。
そんな余裕があるのかは知らないが。……今はあの世の沙汰を受けに行くのが先決だな。
なるほど、こいつらはそういうサークルか劇団なんだろう。
俺の隣を歩く女はそこの一員、もしかしたらリーダーなのかもしれないが……しかし派手にやりやがる。
こういうのをなんて言ったか? フラッシュモブ?
……そういう事か。これまでの流れは全部あの世に来た奴を歓迎するサプライズなんだ。
やっとわかったぜ。だから俺もよくわからない場所に監禁されていたって訳だ。ロープで縛られて無かった理由もこれでわかった。
(そう思うとあの二人には悪い事をした。……いや、きっとあっちもプロだ。俺みたいな反応には慣れてるはず)
これがあの世なりの歓迎ってか。この手の事は苦手なんだがな。
しかし、驚いたのは意外に空気が上手いって事だ。
あの世でもそういう感覚が味わえるとはな。って言っても俺は都会育ちだからこういう感覚事態が初めてなんだが。
緑に溢れる場所、振り返れば木造の古めかしい建物。今まで何人がこのサプライズを受けたんだろうか?
「お坊ちゃま! ご、ご無事で何よりです!」
「到着が遅れた事、どうかお許し下さい!」
コスプレ女の集団がそう声を掛けて来る。随分と芝居に熱が入ってるな。
しかし、俺は一体どういう役柄なんだ? お坊ちゃまって事は金持ちのボンボンって事なんだろうが、この反応……まるで失敗を許さないわがままな子供を相手してるみたいだぜ。
流石にそんなひでぇ役はやりたくねぇな……ここは一つ修正するか。
「ああ? んな事は気にすんな。取って食おうなんざ思っちゃいねぇよ」
「あ、ありがとうございます! まさかお坊ちゃまからそのような寛大なお言葉を掛けられるなど……!」
この女、かなりの演技派な上にアドリブにも強ぇな。
周りを見れば似たように驚いてる様子だった。こりゃあ相当腕のある連中のようだ。
やっぱサプライズに力入れてるだけあって実力派揃いって事か。
「さ、坊ちゃま。こちらの馬車にお乗り下さい。……さあ、お手をどうぞ」
俺と建物から出て来た女がいつの間にか馬車の前へと移動していた。
しかし馬車とは、初めてみるぜ。それも随分と豪勢に見える。
(金掛かってんな。こういうのってどっから金が出てんだ? あの世の税金か?)
やっぱ生まれ変わるまでは暮らすってなると、納めるもんが必要なんだろうな。
どこ行っても世知辛いのは変わりねえんだな。
「さあ、私の手を取って下さいませ」
俺に向かって手を差し出す女。やっぱ背が高いな。
思えばここにいる連中みんな俺より高いじゃねえか。これがあの世の平均サイズなのか? それともあえてそういう連中を集めて劇をやってるか。
……なんか癪だな。
俺は手を取らずにそのまま馬車へと入っていった。
「坊ちゃま……。それほど私に対して警戒をなさっているのですね。お労しい……」
この悲しそうな振り、ほんとに演技派だな。アドリブが上手い演者は大成するなんて聞くし、今度この連中の講演でも見に行くか。
そんな余裕があるのかは知らないが。……今はあの世の沙汰を受けに行くのが先決だな。
47
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。


母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる