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第5話 まさかの待遇

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 外へと出ると、これまたコスプレ女と同じ格好をした集団がいた。それも全員女。

 なるほど、こいつらはそういうサークルか劇団なんだろう。
 俺の隣を歩く女はそこの一員、もしかしたらリーダーなのかもしれないが……しかし派手にやりやがる。
 こういうのをなんて言ったか? フラッシュモブ?

 ……そういう事か。これまでの流れは全部あの世に来た奴を歓迎するサプライズなんだ。
 やっとわかったぜ。だから俺もよくわからない場所に監禁されていたって訳だ。ロープで縛られて無かった理由もこれでわかった。

(そう思うとあの二人には悪い事をした。……いや、きっとあっちもプロだ。俺みたいな反応には慣れてるはず)

 これがあの世なりの歓迎ってか。この手の事は苦手なんだがな。

 しかし、驚いたのは意外に空気が上手いって事だ。
 あの世でもそういう感覚が味わえるとはな。って言っても俺は都会育ちだからこういう感覚事態が初めてなんだが。

 緑に溢れる場所、振り返れば木造の古めかしい建物。今まで何人がこのサプライズを受けたんだろうか?

「お坊ちゃま! ご、ご無事で何よりです!」

「到着が遅れた事、どうかお許し下さい!」

 コスプレ女の集団がそう声を掛けて来る。随分と芝居に熱が入ってるな。
 しかし、俺は一体どういう役柄なんだ? お坊ちゃまって事は金持ちのボンボンって事なんだろうが、この反応……まるで失敗を許さないわがままな子供を相手してるみたいだぜ。

 流石にそんなひでぇ役はやりたくねぇな……ここは一つ修正するか。

「ああ? んな事は気にすんな。取って食おうなんざ思っちゃいねぇよ」

「あ、ありがとうございます! まさかお坊ちゃまからそのような寛大なお言葉を掛けられるなど……!」

 この女、かなりの演技派な上にアドリブにも強ぇな。
 周りを見れば似たように驚いてる様子だった。こりゃあ相当腕のある連中のようだ。
 やっぱサプライズに力入れてるだけあって実力派揃いって事か。

「さ、坊ちゃま。こちらの馬車にお乗り下さい。……さあ、お手をどうぞ」

 俺と建物から出て来た女がいつの間にか馬車の前へと移動していた。
 しかし馬車とは、初めてみるぜ。それも随分と豪勢に見える。

(金掛かってんな。こういうのってどっから金が出てんだ? あの世の税金か?)

 やっぱ生まれ変わるまでは暮らすってなると、納めるもんが必要なんだろうな。
 どこ行っても世知辛いのは変わりねえんだな。

「さあ、私の手を取って下さいませ」

 俺に向かって手を差し出す女。やっぱ背が高いな。
 思えばここにいる連中みんな俺より高いじゃねえか。これがあの世の平均サイズなのか? それともあえてそういう連中を集めて劇をやってるか。

 ……なんか癪だな。

 俺は手を取らずにそのまま馬車へと入っていった。

「坊ちゃま……。それほど私に対して警戒をなさっているのですね。お労しい……」

 この悲しそうな振り、ほんとに演技派だな。アドリブが上手い演者は大成するなんて聞くし、今度この連中の講演でも見に行くか。
 そんな余裕があるのかは知らないが。……今はあの世の沙汰を受けに行くのが先決だな。
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