裏切られ献身男は図らずも悪役貴族へと~わがまま令息に転生した男はもう他人の喰い物にならない~

こまの ととと

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第4話 そして出会い

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 ごちゃごちゃした小汚い部屋から小汚い二人を置き去りにして、俺は外へと扉を潜った。

 薄暗い廊下といくつかの部屋。
 外に出るのが目的なのでそのまま進んで行き、おそらく玄関だと思われる場所を見つける。

「さて、あの世の国ってのはどうなってるんだろうな? こうなると、ちと楽しみになって来たか」

 ロクでも無い幕締めだったんだ、せめてあの世の始まりには期待したいもんだが……さて。

 ドアノブに手を掛けようとした時、何故かガチャという音が聞こえ、開かれた。


「坊ちゃまご無事ですか!! ……はっ、坊ちゃま!? 脱出なされたのですね」

 開いた先から出て来たのは――何故か俺を見て坊ちゃまだとかほざく、これまた俺よりも背の高い女だった。

 その女が心配そうな顔をして俺の体をベタベタと触って来る。
 一体なんだこの状況は?

「お怪我はありませんか? もし御身に傷の一つでもついたかと思うと……」

「おいちょっと待ちな」

「……何でしょうか? それにそのお言葉遣いは……」

「さっきから随分と気安いけどよ……アンタ誰だ?」

 そうすると、つい今まで冷静に気を遣っていた顔が驚いて目を開いていた。

「……私の事が分からないのですか坊ちゃま?」

「分からねえな。そも、その坊ちゃまってのは何だ? 人違いじゃねぇのか? ここには他にも捕まった奴がいるかもしれねぇし、その一人なんじゃ」

「いえ、そのはずがありません。その端正なお顔に気品溢れる雰囲気を私が見間違えるはずなど。ですが確かに言葉遣いなどは……やはりどこかお体に不調を?」

「あん? ああ……確かに頭が痛い。どっかでぶつけたのか……どっかは知らねぇが」

 ここに運ばれる時に雑に扱われたって所か。人の事誘拐しておいてこんな扱いとはな、誘拐犯としては三流以下だな。

「なるほど。ではそれでしょう」

「は? 何が?」

「頭を強く打ったショックで記憶を失われている。そのような言葉遣いもその影響なのでしょう。……なんという」

 何故か勝手に哀れみ始めた謎の女。よく見れば腰に剣をぶら下げているし、この服装。何かの制服だろう。
 ……もしくは危ないコスプレ女の道楽に付き合わされているかだ。

 付き合い切れねえ。

「何の用か知らないがな、俺は行くぜ。集合時間があるのかは知らないが、人を待たせるってのは嫌いなんでな」

 人、と言っていいのか。この場合は死神か?
 とりあえず三途の川の案内人の所に行って、あの世ってのを案内して貰わないと。

「お待ちください! 一体誰と待ち合わせをしているというのです?」

「ああ? だからあれだよ……死神的な?」

「何を仰っているのですか!? まるで死人のような事を」

「アンタこそ何言ってんだ? その死人なんだから、勝手な都合で待たせたら悪いだろうが」

「坊ちゃまはこうしてここに生きていらっしゃるではありませんか。質の悪い冗談はお止め下さい」

 生きてる? 何を馬鹿な、あんな風に車で跳ねられて助かる訳ねぇだろ。
 仮に助かったとしても病室でうずくまってるはずだ。

 それともこれがあの世ジョークか? こっちの常識やらトレンドやらはからっきしだから分かんねぇんだよな。

 どうにも引き下がりそうにねえし……ここは一旦気が済むまで付き合うか。それで後で一緒に頭下げて貰おう。

「わかったわかった。何時まで付き合えばいいか知らんが、そっちに合わせてやるよ。その代わり後でちょっと付き合って貰うぜ」

「坊ちゃまの頼みとあれば。……さあ、参りましょう。皆、心配しておられます」

 はあ、茶番に付き合ってくれる仲間までいるとはな。意外にダチの多いタイプらしい。
 俺はコスプレ女と一緒に建物から出る事にした。
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