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第11話 新たなる感動の旅立ちに涙を飲む男
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そもそも、そんな事はどうでもいい! 今重要なのはだな!
「何で俺の配信がお前の功績になってんだよォオオン!!!?」
「そ、そんなに凄まないでよ。僕だって詳しくは知らないけど、何でも昨日の配信を見たどこかのインフルエンサーが動画をSNSに上げたらしいんだ。……その、僕の出ていた所を」
「つまり何か? お前の活躍しているトコだけ全面的に押し出して、さもお前が配信したみたいに見せたってのか? どういう事だよそれよォ!!?」
「だから知らないって。僕だって朝から女の子達に取り囲まれて迷惑してるんだから」
は? 朝からってどういう事? 俺知らんぞ。
それでも、今朝からの記憶をほじくり返してみる。……そういえば微かにだが何か騒がしかったような気もしなくもないような。
俺は朝からいつ自分が女子に囲まれるのかを待ち構えていたから、他の事はあんまり気にして無かったな。
「ちょっと待てよ。それじゃ俺の扱いはどうなってんだよ? 俺の配信なんだから俺だって散々映ってたんだぞ! それも全く映って無かったってのかよ?!」
「そういう訳でも無くてね。何でも画面の端ぐらいには居たらしいよ。女の子達は君の事を僕のアシスタントか手下ぐらいに思ってたみたい」
何だと!? 何で俺の配信で俺が脇役扱いをされないといけないんだよ!! おかしいだろそんなん!!
「くそっ! ふざけんじゃねぇ! だったら俺はこれからどうすりゃいいってんだ!? 俺は人気者になれたはずなのにこれじゃまるで意味がねぇ!! 返せよ! 俺の女と金ェ!!」
「そんな無茶言わないで。それに君、いくらなんでも欲望に忠実すぎるよ。……一度広まった噂を止める方法なんて無いし、いっそのこと諦めたら? 君の立場で言えば納得できる事じゃないかもしれないけれど、実際問題どうしようもないし。まずはこの現実を受け止めようよ」
「偉そうに説教垂れてんじゃねぇぞ! 男好きが高じて男装してるド変態女のクセしてよォ!!」
「それは完全なる君の偏見だよ!! 僕は家のしきたりで男の子の格好をしてるだけだって昨日言ったじゃないか! さすがに怒るよ僕も!?」
そう、昨日偶然にもこいつの正体を知った。
確かに顔立ちは女っぽいと思ったことも無いじゃないが、胸があまりにも無さすぎるので、どう考えても男だろうと思ったら女だったのだ。
古くから続く剣術家の家系のしきたりで、長子として生まれた人間は女であろうと男らしく振る舞い、剣の腕を磨かなければならないらしい。
しきたりだか何だか知らねえが、そんなわけのわからない因習が身近に存在するなんて思わなかった。
しかし、ちょっと胸に手が触れたぐらいで怒りやがって。それでよくこれまでバレなかったもんだ。
ただこれでこいつの弱みを一つ握ったことになるんだよな。
……そうだ、思いついたぜ! こうなったらもうこの手しかねえ!
「おい、お前これから先も俺の配信に出続けろ」
「え? なんで?」
「お前が数字を持って行った以上は、もうお前を利用するしなけりゃ俺の配信業がここで終わりを迎えてしまうんだよ! という事はだ、無駄に女受けだけは良いお前は使ってこれから先も女のファンを呼び込む。そうすれば、そのうち女共は俺の良さに気づくだろう。つまり! 今は苦渋に耐えてお前を動画に出してやるってんだ。いいか、俺の配信が終わるって事は俺の人生が終わるってことと同じなんだよ!」
「それは大げさ過ぎじゃないか? そんな一発逆転みたいなギャンブルなんてせずに、もっとコツコツと頑張っていけば……」
「うるせえ!! 俺はもっと派手に且つ楽にお金が欲しいしモテたいんだよ!! お前なんかに俺の気持ちがわかるか!!」
「え、えぇ……」
長谷山の顔がドン引きしていた。しかし知ったことじゃない。
これが俺の決意だ! 俺の人生、俺の生きる道なんだ!
たっかい服来て、綺麗な姉ちゃんに囲まれる人生を俺は送るんだよ!!
「秘密をバラされたくなかったら俺に協力しろ。それがお前の生きる道だぁ」
「君、改めて思うけど最低だね。……仕方ないなもう! 分かったよやるよ。やればいいんでしょう!?」
と、いうわけで。俺は涙を飲み、二人体勢での動画配信を決定したのだ。
やはり人生とはどこかままならない、己を納得させなければならないことがあるということを、今日改めて思い知ったのだ。
しかしこれもまた、これからの人生の糧となる事だろう!
待ってろよ、俺の未来のファン達!!
「動画収入の取り分は俺が九、お前が一で良いよな?」
「普通に考えて良いわけないだろう」
完
「何で俺の配信がお前の功績になってんだよォオオン!!!?」
「そ、そんなに凄まないでよ。僕だって詳しくは知らないけど、何でも昨日の配信を見たどこかのインフルエンサーが動画をSNSに上げたらしいんだ。……その、僕の出ていた所を」
「つまり何か? お前の活躍しているトコだけ全面的に押し出して、さもお前が配信したみたいに見せたってのか? どういう事だよそれよォ!!?」
「だから知らないって。僕だって朝から女の子達に取り囲まれて迷惑してるんだから」
は? 朝からってどういう事? 俺知らんぞ。
それでも、今朝からの記憶をほじくり返してみる。……そういえば微かにだが何か騒がしかったような気もしなくもないような。
俺は朝からいつ自分が女子に囲まれるのかを待ち構えていたから、他の事はあんまり気にして無かったな。
「ちょっと待てよ。それじゃ俺の扱いはどうなってんだよ? 俺の配信なんだから俺だって散々映ってたんだぞ! それも全く映って無かったってのかよ?!」
「そういう訳でも無くてね。何でも画面の端ぐらいには居たらしいよ。女の子達は君の事を僕のアシスタントか手下ぐらいに思ってたみたい」
何だと!? 何で俺の配信で俺が脇役扱いをされないといけないんだよ!! おかしいだろそんなん!!
「くそっ! ふざけんじゃねぇ! だったら俺はこれからどうすりゃいいってんだ!? 俺は人気者になれたはずなのにこれじゃまるで意味がねぇ!! 返せよ! 俺の女と金ェ!!」
「そんな無茶言わないで。それに君、いくらなんでも欲望に忠実すぎるよ。……一度広まった噂を止める方法なんて無いし、いっそのこと諦めたら? 君の立場で言えば納得できる事じゃないかもしれないけれど、実際問題どうしようもないし。まずはこの現実を受け止めようよ」
「偉そうに説教垂れてんじゃねぇぞ! 男好きが高じて男装してるド変態女のクセしてよォ!!」
「それは完全なる君の偏見だよ!! 僕は家のしきたりで男の子の格好をしてるだけだって昨日言ったじゃないか! さすがに怒るよ僕も!?」
そう、昨日偶然にもこいつの正体を知った。
確かに顔立ちは女っぽいと思ったことも無いじゃないが、胸があまりにも無さすぎるので、どう考えても男だろうと思ったら女だったのだ。
古くから続く剣術家の家系のしきたりで、長子として生まれた人間は女であろうと男らしく振る舞い、剣の腕を磨かなければならないらしい。
しきたりだか何だか知らねえが、そんなわけのわからない因習が身近に存在するなんて思わなかった。
しかし、ちょっと胸に手が触れたぐらいで怒りやがって。それでよくこれまでバレなかったもんだ。
ただこれでこいつの弱みを一つ握ったことになるんだよな。
……そうだ、思いついたぜ! こうなったらもうこの手しかねえ!
「おい、お前これから先も俺の配信に出続けろ」
「え? なんで?」
「お前が数字を持って行った以上は、もうお前を利用するしなけりゃ俺の配信業がここで終わりを迎えてしまうんだよ! という事はだ、無駄に女受けだけは良いお前は使ってこれから先も女のファンを呼び込む。そうすれば、そのうち女共は俺の良さに気づくだろう。つまり! 今は苦渋に耐えてお前を動画に出してやるってんだ。いいか、俺の配信が終わるって事は俺の人生が終わるってことと同じなんだよ!」
「それは大げさ過ぎじゃないか? そんな一発逆転みたいなギャンブルなんてせずに、もっとコツコツと頑張っていけば……」
「うるせえ!! 俺はもっと派手に且つ楽にお金が欲しいしモテたいんだよ!! お前なんかに俺の気持ちがわかるか!!」
「え、えぇ……」
長谷山の顔がドン引きしていた。しかし知ったことじゃない。
これが俺の決意だ! 俺の人生、俺の生きる道なんだ!
たっかい服来て、綺麗な姉ちゃんに囲まれる人生を俺は送るんだよ!!
「秘密をバラされたくなかったら俺に協力しろ。それがお前の生きる道だぁ」
「君、改めて思うけど最低だね。……仕方ないなもう! 分かったよやるよ。やればいいんでしょう!?」
と、いうわけで。俺は涙を飲み、二人体勢での動画配信を決定したのだ。
やはり人生とはどこかままならない、己を納得させなければならないことがあるということを、今日改めて思い知ったのだ。
しかしこれもまた、これからの人生の糧となる事だろう!
待ってろよ、俺の未来のファン達!!
「動画収入の取り分は俺が九、お前が一で良いよな?」
「普通に考えて良いわけないだろう」
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