2 / 11
第2話 空間を駆ける電撃の一撃が敵を倒すのだ
しおりを挟む
「……ふうぅ……」
ダンジョンの中は思ったより薄暗かった。それに少し肌寒い。厚手のジャケットでも着てくればよかったぜ。
でも、ドローンに貯金のほとんどを持っていかれたから服装が私服しかない。
これが個人じゃなくて事務所に所属していたら、装備一式そっちで貸してくれるんだろうなぁ。個人配信の弱みだぜ。
<っていうか何? 君、護衛とか雇ってないの? 一人でモンスター退治までするの? お金ないんだなぁ>
<やめとけやめとけ。金のないやつが一発逆転狙って個人配信とかするけど、結局金がないとスタートラインにも立てないぜ?>
「い、いやですねぇ。俺の場合、ちょっとのお金さえあれば、あとは余裕で巻き返しとかできるんで。できるはずなんで! まあ見てくださいよ。見た上で判断をして欲しいなぁって。ほらさっきも言ったけどこれ初回配信なんで、もう少し広い心でね?」
くっ、こいつら……! 俺が折角気分良くやっているのに、どうしてこうも邪魔をするんだ。
まあいいさ、今はいくらでも好きに言ってろ。お前たちは今日から俺が作り上げる伝説の目撃者になるんだ。最古参のファンとして未来永劫そのことを誇りに持つようになるんだよ。
俺は近所の不良中学生から巻き上げたバタフライナイフを片手に、ダンジョンを突き進んでいく。
意外とモンスター出てこないなあ、なんて思いながらも華麗なトークで場をつなぐこと数十分、ついに第一モンスターを発見したのだ!
「皆さん見てください! これぞ運命の相手、俺の初回配信に相応しいモンスターです! あのトロトロで緑色とした見た目、まさしくスライムですよスライム!!」
半ばやけくそ気味に盛り上げてみたが、スライムなんて弱点のコアがむき出しになってる最下級モンスターだ。これを相手にどうやって視聴者を楽しませればいいんだ? いや、やるんだよ。俺のスマートな立ち回りで盛り上げてみせるんだ!
「さーて、それじゃ早速戦っちゃいますか! まずは小手調べにっと」
そう言うなり俺は素早く駆け出して、勢いそのままにナイフで切りつけた。
「よっしゃ! いいぞ! このまま一気に畳みかけちゃるもんね!!」
だが、そこで俺はとんでもないミスを犯してしまった。
「……あっ!?」
足元の段差につまずいて盛大に転び、手に持っていたナイフを落としてしまうという致命的な失態である。
「ちょ、ちょっとタンマ! お互いここは仕切り直してよーいどんでまた始めようぜ?! な? な!」
なんて言ったって聞いてくれるわけもない。やつはそのまま俺の若々しい肢体に襲いかかろうとして――そのコアを撃ち抜かれた。
「あ!」
振り向いた先には小型ドローン。
そういえば忘れてた、あのドローンは持ち主の警護の為に電撃を飛ばせるようになってるんだっけ? この機能も値が張る要因だった。
ちなみに投げ銭システムと連動していて、払ってもらったお金の分だけ電撃の威力が上がるように設定していたことを今思い出した。
俺からは見えないが、その説明は視聴者の動画概要欄に自動で書かれるらしい。
<危なっかしくて思わずお金払っちゃった。怪我はない?>
<このドローン面白いシステムだなぁ。他で使ってるのまだ見た事無いから、これが見れただけ視聴してよかったかも>
キョトンとしてしまったが、それも一瞬で立ち直り、気を取り直して見せた。
「いやはや思わず油断してしまいました。援護の方ありがとうございます! おかげでまだまだピンピンしてますよ! では改めて探索再開といたしましょう!」
これは意外とつかみに成功しているのでは?
そんなこと思いながらも、再び足を前へと進み出すのであった。
その後は俺の快進撃。華麗な体裁きに視聴者の投げ銭ボルトの連携で、バッタバッタと倒れていくモンスターども。
やはり天職なのでは?
ダンジョンの中は思ったより薄暗かった。それに少し肌寒い。厚手のジャケットでも着てくればよかったぜ。
でも、ドローンに貯金のほとんどを持っていかれたから服装が私服しかない。
これが個人じゃなくて事務所に所属していたら、装備一式そっちで貸してくれるんだろうなぁ。個人配信の弱みだぜ。
<っていうか何? 君、護衛とか雇ってないの? 一人でモンスター退治までするの? お金ないんだなぁ>
<やめとけやめとけ。金のないやつが一発逆転狙って個人配信とかするけど、結局金がないとスタートラインにも立てないぜ?>
「い、いやですねぇ。俺の場合、ちょっとのお金さえあれば、あとは余裕で巻き返しとかできるんで。できるはずなんで! まあ見てくださいよ。見た上で判断をして欲しいなぁって。ほらさっきも言ったけどこれ初回配信なんで、もう少し広い心でね?」
くっ、こいつら……! 俺が折角気分良くやっているのに、どうしてこうも邪魔をするんだ。
まあいいさ、今はいくらでも好きに言ってろ。お前たちは今日から俺が作り上げる伝説の目撃者になるんだ。最古参のファンとして未来永劫そのことを誇りに持つようになるんだよ。
俺は近所の不良中学生から巻き上げたバタフライナイフを片手に、ダンジョンを突き進んでいく。
意外とモンスター出てこないなあ、なんて思いながらも華麗なトークで場をつなぐこと数十分、ついに第一モンスターを発見したのだ!
「皆さん見てください! これぞ運命の相手、俺の初回配信に相応しいモンスターです! あのトロトロで緑色とした見た目、まさしくスライムですよスライム!!」
半ばやけくそ気味に盛り上げてみたが、スライムなんて弱点のコアがむき出しになってる最下級モンスターだ。これを相手にどうやって視聴者を楽しませればいいんだ? いや、やるんだよ。俺のスマートな立ち回りで盛り上げてみせるんだ!
「さーて、それじゃ早速戦っちゃいますか! まずは小手調べにっと」
そう言うなり俺は素早く駆け出して、勢いそのままにナイフで切りつけた。
「よっしゃ! いいぞ! このまま一気に畳みかけちゃるもんね!!」
だが、そこで俺はとんでもないミスを犯してしまった。
「……あっ!?」
足元の段差につまずいて盛大に転び、手に持っていたナイフを落としてしまうという致命的な失態である。
「ちょ、ちょっとタンマ! お互いここは仕切り直してよーいどんでまた始めようぜ?! な? な!」
なんて言ったって聞いてくれるわけもない。やつはそのまま俺の若々しい肢体に襲いかかろうとして――そのコアを撃ち抜かれた。
「あ!」
振り向いた先には小型ドローン。
そういえば忘れてた、あのドローンは持ち主の警護の為に電撃を飛ばせるようになってるんだっけ? この機能も値が張る要因だった。
ちなみに投げ銭システムと連動していて、払ってもらったお金の分だけ電撃の威力が上がるように設定していたことを今思い出した。
俺からは見えないが、その説明は視聴者の動画概要欄に自動で書かれるらしい。
<危なっかしくて思わずお金払っちゃった。怪我はない?>
<このドローン面白いシステムだなぁ。他で使ってるのまだ見た事無いから、これが見れただけ視聴してよかったかも>
キョトンとしてしまったが、それも一瞬で立ち直り、気を取り直して見せた。
「いやはや思わず油断してしまいました。援護の方ありがとうございます! おかげでまだまだピンピンしてますよ! では改めて探索再開といたしましょう!」
これは意外とつかみに成功しているのでは?
そんなこと思いながらも、再び足を前へと進み出すのであった。
その後は俺の快進撃。華麗な体裁きに視聴者の投げ銭ボルトの連携で、バッタバッタと倒れていくモンスターども。
やはり天職なのでは?
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~
椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。
探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。
このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。
自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。
ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。
しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。
その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。
まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた!
そして、その美少女達とパーティを組むことにも!
パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく!
泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

超人気美少女ダンジョン配信者を救ってバズった呪詛師、うっかり呪術を披露しすぎたところ、どうやら最凶すぎると話題に
菊池 快晴
ファンタジー
「誰も見てくれない……」
黒羽黒斗は、呪術の力でダンジョン配信者をしていたが、地味すぎるせいで視聴者が伸びなかった。
自らをブラックと名乗り、中二病キャラクターで必死に頑張るも空回り。
そんなある日、ダンジョンの最下層で超人気配信者、君内風華を呪術で偶然にも助ける。
その素早すぎる動き、ボスすらも即死させる呪術が最凶すぎると話題になり、黒斗ことブラックの信者が増えていく。
だが当の本人は真面目すぎるので「人気配信者ってすごいなあ」と勘違い。
これは、主人公ブラックが正体を隠しながらも最凶呪術で無双しまくる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる