例えば、彼女に浮気されて自殺しようとした俺を止めて恋人宣言をしてきたのが美少女のお嬢様だったら

こまの ととと

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第23話 もし、思わぬ援軍がトドメを差したら

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 俺のスマホに映し出されたものは、木山と芽亜里がキスをしている隠し撮り画像。しかしこんなものをわざわざ隠し撮りするなんて木山もイイ趣味してやがる。そのせいで自分の首を絞めることになったんだからお笑いだがな。

「え? どうして? なんで、こんな写真が……?」

 こいつのこの絶望に満ちた顔を見る限り、同意無しで木山が勝手に撮ったものなんだろう。同情してやるよ、その点だけはな。

「嘘、だよね……? ねえ、なんで? なんでこんな写真持ってるの? なんで? ねぇ……答えてよ!!」

「答えて、ね。そうだな、じゃあこれも見たら分かるかもな」

 次に見せたのは木山と芽亜里が楽しそうに腕を取りながら、木山のマンションの玄関に入っていく姿だった。

「迂闊な奴だ、周りの目も気にせずによ。二人の世界に入るのは部屋に行ってからにすべきだったな」

「……見てたの? あの時、あの場所に居たんだ。……………………ひどい」

「あん?」

「酷いよ! こー君まで私の事騙して! 何でこんなことするの?! 何でこんなことするの!? 面白かったんだ、私の居ない所で笑ってたんでしょ!? こー君もそー君も!!」

「どういう理屈で俺とあのクソ野郎が共犯になるんだよ? 安心しろ、お前を騙してたのは木山だけだ。俺はどっちかと言えば騙されていた方だな。だから今お前が惨めを味わうんだ。こっちこそ言わせてくれよ――人を騙して面白かったか?」

 逆ギレ起こしやがって。
 何だろうな? こいつのこの血走った目を見ると、さっきまでの興奮が少しずつ冷めてくるな。個人的にはもっとこう、悲劇に泣き叫ぶような感じが好みなんだけれど。
 ……そういやさっきから取り巻き女が妙に静かだな?

 そう思った瞬間だった、いつも芽亜里に纏わりついて俺の事を目の敵にしていたあの女が――まさか、芽亜里の頬にビンタをするなんて。

 バシッ!

 結構響くもんだ。ついさっきまで興奮していた芽亜里が、水をぶっかけられたように静まり返ってしまった。

「芽亜里……あんたさ、どういう事これ?」

「な、何が? どうしてぶって……」

「どういう事かって聞いてんのよ?! あんた、最近殿島君が冷たいって浮気してるかもって、私に相談してきたわよね?! それなのに、なにこれ? ふざけんじゃないわよ!」

「ご、誤解だよ! 私はただ、こー君が私に構ってくれないのが寂しくってそれでっ!」

「はぁ?! 言い訳にもなってないし! それに、そんなのどうでもいいのよ! 問題はアンタが殿島君を裏切って、他の男に股開いてたことよ! 何が厳しく言ってやって、よ。あんたは無実の彼に私から説教させたわけ!? ほんっと最低! 信じらんない!」

「ごめんなさい! でも私だって……」

「謝る相手が違うでしょうが!!!」

 ヒートし過ぎじゃないか? 周りの人だかりも増えて来た。
 しかしこの女も別に二人の協力者じゃ無かったんだな。単に融通が利かないだけで真面目だったんだ。……誤解してた。確か名前は――。

 もう一発ぶん殴ろうとしている、その人物の腕を掴んで落ち着くように促す。

「まあその辺にしといてやれよ柄澤。どのみちこいつはもう終わりだ、これ以上は殴る価値が無い。わざわざお前の手を汚す事は無いだろ」

「だけどっ! ……わかったわ殿島君。それと、今まで辛く当たってごめんなさい」

「ああ。ま、分かってくれりゃいいんだ。気にすんな、な?」

 まさか俺以上に怒り狂う奴がいるなんて思わなかった。
 自分よりも興奮している相手を見たせいで、多分俺は今この中の誰よりも冷静な自信がある。

「だって、私……。私もそー君に……」

 うわごとのようにつぶやくしか出来なくなった芽亜里を横目に、俺は柄澤に教室に戻るように言って、そのついでに……。

「お前、そのうちきっといい彼氏が出来ると思う」

「何? どうしたの急に?」

「……何だろうな?」

 なんか急にそう思ったんだよな。何を言ってるんだろうか俺は?
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