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第20話 もし、復讐を開始したら
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急いで教室へと向かった俺は、この後の事を考えふけっていた。
手順を間違えるわけにはいかない、脳内シミュレートにやり過ぎって事は無い。
イメージに思いを馳せている所、話しかける女の声が聞こえる。
「こー君、今大丈夫?」
今朝方、木山とイチャイチャしていた馬鹿女こと俺の元カノ(確定)の芽亜里だ。
「おうどうした? 何かあったか? ん?」
少し前までならイラついて仕方無かっただろうが、今の俺はすっかり余裕を取り戻していた。後々の事を思えば、むしろテンションが上げってると言ってもいい。
だからフレンドリーに聞き返す事が出来た。
「うん実は、……今日は元気だねこー君。何かいい事あったの?」
「ああ。まあ、あるって言った方がいいか。気分は悪くない、何か相談か? 遠慮なく言えよ」
「何か、こー君が喜んでると私も嬉しくなってくるよ! やっぱりこー君はそうでないとね!」
ああ、俺はこうでなきゃな。お前のせいでイラついていたが、今はある意味お前のおかげで元通りになりかけてるぜ。
感謝してやるよ、お前に。
「ありがとう。それで、どうかしたのか?」
「あっ、ごめん。そうだ、忘れるところだったよ。あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「なんだ? なんでも言ってみろ」
「じゃあさ、今日の放課後――」
そうして一方的に約束を取り付けると、元カノ(確定)は取り巻きに呼ばれて教室を出て行った。今朝盗み聞きした会話から考えるに、放課後に俺のことを振るつもりなんだろう。
だがあいつにとっては残念なことにその放課後が訪れることなんてないんだよな。
………………そして時は流れ、昼休みの時間になった。
昨日、裕に言われた通りにパソコン室へと入る。
「よう待ってたぜ」
気さくに声をかける裕、やつのいる足元には奇妙なものがあった。
「なんだお前、そのボロボロのノートパソコンは?」
何年前の型かも分らんが、とにかく古臭さを感じさせる傷が入って塗装も剥がれたパソコンが置いてあった。
「ここのパソコン部の連中がな、倉庫にしまっておいたジャンク品から遊びで組み上げたものを貸してもらったんだよ。いややっぱこの手の部活の野郎はモテないんだろうな、事情を話したら好きに使ってくれと言ってきたんだ。最悪壊してもいいともな」
具体的な計画を立てたのは昨日の夜だぞ。一体いつパソコン部の連中と約束を取り付けたんだ? 行動の早い奴だ。
「古臭いジャンク品を組み上げただけのパソコンだ。立ち上がりが遅いし、何やるにしてももたついて仕方がない。でも、今回限りしか使わないからな。学校のパソコンを使えばすぐに探知される、でもこいつはそうじゃない」
そのパソコンを覗き込むと、やたら懐かしいデスクトップ画面が浮かんでいた。これは二つ前のOSのデフォルトじゃなかったか?
「でだ、まずはこのUSB式のルーターを取り付けて。そして持ってきたポケットWiFiをつなぐ」
学校のサーバーが使えないからこその対応策、か。
そうして手際よく作業を進める裕。
こいつはこういう機械いじりが好きだったっけか?
「そしてあらかじめ作った捨てアドに、木山の連絡先を一斉にぶち込む。……前準備は済んでるからな、ひとつひとつ入力していく必要もない。そしてこれがメインディッシュ! 木山の悪行の証拠がたんまり入ったファイルを、メールに添付するだけだ。連中は俺達がこんなもん持ってるなんて夢にも思っちゃいないだろうな。くっくっく……」
「悪い顔してんなお前。でも気持ちはわかる」
確かに動作は遅いが確実に作業を進めていく。時間はかかったがあとはもうクリック一つ押すだけだ。
「さてこっから先はお前の仕事だ。一番美味しいところを残しておいたぜ」
パソコンの前からどいた裕は、仕上げは任せたと言わんばかりの態度だ。
「ああ。ここまで来たら後は俺に任せとけ。……今まで散々付き合ってきた報いを受けさせてやる。たっぷりと地獄を味わうといいっ!」
「ひゅ~、怖い怖い。でも、ま。これであのいけすかない野郎の鼻を明かせると思うと、……いやはや笑いが止まらなくなるな! ひゃひゃひゃ!」
俺たち以外に誰もいないからって豪快に笑う裕をバックに、俺は木山と芽亜里に対して地獄への片道切符の送信ボタンを、ゆっくりと押し込んだ。
「これが終わったら、協力してくれた先輩達やら滝を集めてさ。お前のバイト先でカラオケパーティーでもするか?」
「お、いいねえ。パーっと金落としてくれよ!」
「見てな、人生最大の大盤振る舞いを見せてやるよ」
復讐開始と同時に、なんとなくそういう軽口を叩き合いたくなったのは……俺自身どういう心境なんだろうか?
手順を間違えるわけにはいかない、脳内シミュレートにやり過ぎって事は無い。
イメージに思いを馳せている所、話しかける女の声が聞こえる。
「こー君、今大丈夫?」
今朝方、木山とイチャイチャしていた馬鹿女こと俺の元カノ(確定)の芽亜里だ。
「おうどうした? 何かあったか? ん?」
少し前までならイラついて仕方無かっただろうが、今の俺はすっかり余裕を取り戻していた。後々の事を思えば、むしろテンションが上げってると言ってもいい。
だからフレンドリーに聞き返す事が出来た。
「うん実は、……今日は元気だねこー君。何かいい事あったの?」
「ああ。まあ、あるって言った方がいいか。気分は悪くない、何か相談か? 遠慮なく言えよ」
「何か、こー君が喜んでると私も嬉しくなってくるよ! やっぱりこー君はそうでないとね!」
ああ、俺はこうでなきゃな。お前のせいでイラついていたが、今はある意味お前のおかげで元通りになりかけてるぜ。
感謝してやるよ、お前に。
「ありがとう。それで、どうかしたのか?」
「あっ、ごめん。そうだ、忘れるところだったよ。あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「なんだ? なんでも言ってみろ」
「じゃあさ、今日の放課後――」
そうして一方的に約束を取り付けると、元カノ(確定)は取り巻きに呼ばれて教室を出て行った。今朝盗み聞きした会話から考えるに、放課後に俺のことを振るつもりなんだろう。
だがあいつにとっては残念なことにその放課後が訪れることなんてないんだよな。
………………そして時は流れ、昼休みの時間になった。
昨日、裕に言われた通りにパソコン室へと入る。
「よう待ってたぜ」
気さくに声をかける裕、やつのいる足元には奇妙なものがあった。
「なんだお前、そのボロボロのノートパソコンは?」
何年前の型かも分らんが、とにかく古臭さを感じさせる傷が入って塗装も剥がれたパソコンが置いてあった。
「ここのパソコン部の連中がな、倉庫にしまっておいたジャンク品から遊びで組み上げたものを貸してもらったんだよ。いややっぱこの手の部活の野郎はモテないんだろうな、事情を話したら好きに使ってくれと言ってきたんだ。最悪壊してもいいともな」
具体的な計画を立てたのは昨日の夜だぞ。一体いつパソコン部の連中と約束を取り付けたんだ? 行動の早い奴だ。
「古臭いジャンク品を組み上げただけのパソコンだ。立ち上がりが遅いし、何やるにしてももたついて仕方がない。でも、今回限りしか使わないからな。学校のパソコンを使えばすぐに探知される、でもこいつはそうじゃない」
そのパソコンを覗き込むと、やたら懐かしいデスクトップ画面が浮かんでいた。これは二つ前のOSのデフォルトじゃなかったか?
「でだ、まずはこのUSB式のルーターを取り付けて。そして持ってきたポケットWiFiをつなぐ」
学校のサーバーが使えないからこその対応策、か。
そうして手際よく作業を進める裕。
こいつはこういう機械いじりが好きだったっけか?
「そしてあらかじめ作った捨てアドに、木山の連絡先を一斉にぶち込む。……前準備は済んでるからな、ひとつひとつ入力していく必要もない。そしてこれがメインディッシュ! 木山の悪行の証拠がたんまり入ったファイルを、メールに添付するだけだ。連中は俺達がこんなもん持ってるなんて夢にも思っちゃいないだろうな。くっくっく……」
「悪い顔してんなお前。でも気持ちはわかる」
確かに動作は遅いが確実に作業を進めていく。時間はかかったがあとはもうクリック一つ押すだけだ。
「さてこっから先はお前の仕事だ。一番美味しいところを残しておいたぜ」
パソコンの前からどいた裕は、仕上げは任せたと言わんばかりの態度だ。
「ああ。ここまで来たら後は俺に任せとけ。……今まで散々付き合ってきた報いを受けさせてやる。たっぷりと地獄を味わうといいっ!」
「ひゅ~、怖い怖い。でも、ま。これであのいけすかない野郎の鼻を明かせると思うと、……いやはや笑いが止まらなくなるな! ひゃひゃひゃ!」
俺たち以外に誰もいないからって豪快に笑う裕をバックに、俺は木山と芽亜里に対して地獄への片道切符の送信ボタンを、ゆっくりと押し込んだ。
「これが終わったら、協力してくれた先輩達やら滝を集めてさ。お前のバイト先でカラオケパーティーでもするか?」
「お、いいねえ。パーっと金落としてくれよ!」
「見てな、人生最大の大盤振る舞いを見せてやるよ」
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