17 / 31
第17話 もし、未練が死んだなら
しおりを挟む
俺が芽亜里の本当の姿に気づいてなかっただけで、本当は最初からあいつはクズ女だったんじゃないのか。あんなに楽しかった日々は全部嘘っぱちでしかなかったのか?
少なくとも今のあいつは男を手玉に取れると思ってる悪女を気取ってやがる。実際は男に騙されているだけにも気づかずに。俺はあんな女を好きになっていたのか。
この十年近くも、あの女の正体にも気づかずに愛していたのか。
胃がキリキリと痛む。ああ、イライラするな……!
俺は何もかもぶちまけそうになるのを必死に抑えて、奴らの不貞の証拠を集め続けた。ここで台無しにしてしまえば、協力してくれた裕や滝や先輩たちに申し訳が立たない。
そのまま奴らの後をつけていき、証拠をかき集め続けた。憎い相手のデートに着いて行くのはストレスがバカみたいに溜まるが仕方がない。
◇◇◇
気づけばすっかり日が傾き始めている。
今奴らと俺がいるのは木山の住むマンションの近くだ。
奴らはこのまま家に帰ってイチャイチャするつもりなんだろうな。
外資系で働く木山の両親だ、確実に毎日家にいるわけじゃないだろうから色々と都合がいいんだろうな。
「ねえ、そー君……」
芽亜里が甘えた声で木山に話しかける。
「どうしたんだい? 芽亜里」
「私ぃ、そー君と一緒にいたいなぁ」
「でも君の両親が許すかな? 大事な可愛い一人娘を男の元にやるだなんて」
「今日は友達の家に泊まるって言ってるから大丈夫だよ。明日は学校だけど、制服持ってきてるから」
あいつ、デートするにはカバンが大きいと思っていたがそういうことだったのか。
「君は頭がいいな、そういうことなら断るなんてできないよ。わかった、今日は朝まで一緒に過ごそうじゃないか」
「ほんと? やったぁ! そー君、だ~いっ好き!」
「でも一つだけ――君は殿島君という彼氏がいるのに、それでも僕と一緒にいたいんだね?」
奴の言葉にピンとくるものを感じて俺は、気を引き締めてボイスレコーダーを奴らに向けた。
「こー君の事は、勿論嫌いじゃない。けど……けどやっぱりそー君が一番好きなの! そー君がお願いするなら私、こー君とは別れる! また普通の幼馴染に戻ってみせるよ! 大丈夫っ、こー君だってきっと私の気持ちを分かってくれる。だって――こー君はいつも私の頼みを喜んで聞いてくれるもん! きっと大丈夫だよ!」
あの女、それが本音か!!
結局、あいつにとって俺は便利屋か何かでしか無かったって訳だ。
俺の中で最後に残っていたものがさらさらと音を立てて消え去っていく。そんな感覚に襲われた。
何の根拠も中身もない、大丈夫という言葉。薄っぺらが過ぎて思わず鼻で笑いそうになった。
芽亜里の言葉を聞いた木山は、大げさなぐらいに嬉しそうな顔をして芽亜里に抱きついた。
「ありがとう、芽亜里。君のその気持ちがとても嬉しい、僕も愛してるよ」
「うん、知ってる! だから、もっと愛して! 愛してるって言って! 愛してるって言ってぇ!!」
そうして二人、唇を重ねる。
人の少なくなった時間帯とはいえ、ギャアギャアと騒ぎやがって。
……だんだん馬鹿らしくなってきたな。どこかに残っていたあいつを好きだって気持ちが消え去ったからかもしれない。
でもそれでいい。――これで未練がなくなった。
ボイスレコーダーの電源を切ると、スマホのカメラを起動して奴らがマンションに入っていくのをしっかりと記録した。
これで準備は整った。……やっと始まる、俺の復讐劇が。
少なくとも今のあいつは男を手玉に取れると思ってる悪女を気取ってやがる。実際は男に騙されているだけにも気づかずに。俺はあんな女を好きになっていたのか。
この十年近くも、あの女の正体にも気づかずに愛していたのか。
胃がキリキリと痛む。ああ、イライラするな……!
俺は何もかもぶちまけそうになるのを必死に抑えて、奴らの不貞の証拠を集め続けた。ここで台無しにしてしまえば、協力してくれた裕や滝や先輩たちに申し訳が立たない。
そのまま奴らの後をつけていき、証拠をかき集め続けた。憎い相手のデートに着いて行くのはストレスがバカみたいに溜まるが仕方がない。
◇◇◇
気づけばすっかり日が傾き始めている。
今奴らと俺がいるのは木山の住むマンションの近くだ。
奴らはこのまま家に帰ってイチャイチャするつもりなんだろうな。
外資系で働く木山の両親だ、確実に毎日家にいるわけじゃないだろうから色々と都合がいいんだろうな。
「ねえ、そー君……」
芽亜里が甘えた声で木山に話しかける。
「どうしたんだい? 芽亜里」
「私ぃ、そー君と一緒にいたいなぁ」
「でも君の両親が許すかな? 大事な可愛い一人娘を男の元にやるだなんて」
「今日は友達の家に泊まるって言ってるから大丈夫だよ。明日は学校だけど、制服持ってきてるから」
あいつ、デートするにはカバンが大きいと思っていたがそういうことだったのか。
「君は頭がいいな、そういうことなら断るなんてできないよ。わかった、今日は朝まで一緒に過ごそうじゃないか」
「ほんと? やったぁ! そー君、だ~いっ好き!」
「でも一つだけ――君は殿島君という彼氏がいるのに、それでも僕と一緒にいたいんだね?」
奴の言葉にピンとくるものを感じて俺は、気を引き締めてボイスレコーダーを奴らに向けた。
「こー君の事は、勿論嫌いじゃない。けど……けどやっぱりそー君が一番好きなの! そー君がお願いするなら私、こー君とは別れる! また普通の幼馴染に戻ってみせるよ! 大丈夫っ、こー君だってきっと私の気持ちを分かってくれる。だって――こー君はいつも私の頼みを喜んで聞いてくれるもん! きっと大丈夫だよ!」
あの女、それが本音か!!
結局、あいつにとって俺は便利屋か何かでしか無かったって訳だ。
俺の中で最後に残っていたものがさらさらと音を立てて消え去っていく。そんな感覚に襲われた。
何の根拠も中身もない、大丈夫という言葉。薄っぺらが過ぎて思わず鼻で笑いそうになった。
芽亜里の言葉を聞いた木山は、大げさなぐらいに嬉しそうな顔をして芽亜里に抱きついた。
「ありがとう、芽亜里。君のその気持ちがとても嬉しい、僕も愛してるよ」
「うん、知ってる! だから、もっと愛して! 愛してるって言って! 愛してるって言ってぇ!!」
そうして二人、唇を重ねる。
人の少なくなった時間帯とはいえ、ギャアギャアと騒ぎやがって。
……だんだん馬鹿らしくなってきたな。どこかに残っていたあいつを好きだって気持ちが消え去ったからかもしれない。
でもそれでいい。――これで未練がなくなった。
ボイスレコーダーの電源を切ると、スマホのカメラを起動して奴らがマンションに入っていくのをしっかりと記録した。
これで準備は整った。……やっと始まる、俺の復讐劇が。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
クールな生徒会長のオンとオフが違いすぎるっ!?
ブレイブ
恋愛
政治家、資産家の子供だけが通える高校。上流高校がある。上流高校の一年生にして生徒会長。神童燐は普段は冷静に動き、正確な指示を出すが、家族と、恋人、新の前では

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

美人な姉と『じゃない方』の私
LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。
そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。
みんな姉を好きになる…
どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…?
私なんか、姉には遠く及ばない…


貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる