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第6話 もし、友人が協力してくれたら
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芽亜里と木山、俺の事を傷つけておいて何食わぬ顔で周りから祝福を受けるようなことなんてあっていいわけがない。
「どうしたんです? 何か怖い顔されてましたけど?」
顔に出てたか。
「いやちょっと嫌なこと思い出しただけさ。こんな席でそんなこと考えるのは失礼だよな、ごめんごめん」
そうだ失礼なことだ。だから本格的に考えるのは帰ってからにすればいい。
◇◇◇
「ただいま。なんて言ったって誰も返事なんて返してくれやしないが」
上流階級のお屋敷から庶民のアパートに帰ってきた。
中は当然真っ暗で誰かがいる気配はない。
俺の親は親父だけ、その親父も単身赴任。
母親は――男を作って出て行った。今どこで何をしているかは知らない。知りたくもない。
七歳の頃だ、泣いてすがる俺をゴミを見るような目で振り切ったあの女の顔が今でも焼き付いて離れない。
芽亜里はそのことを知っていたはずなのに……。ずっとそばにいると言ってくれたのに……!
その時は本当にそう思っていたのかもしれない、でもそんなことは問題じゃない。
今のあいつはクズだ。人の嫌がることは平然とする。自分の欲望が優先で、簡単に他人を踏みつけられる女になった。
きっかけが何だったかは問題じゃない、変わってしまったのが許せないんだ。
まともな人間なら何があったってこんな外道な真似はしない。
あいつも所詮は根っこから腐った人間だったんだ。それを今まで常識人の面をかぶってだけにすぎないんだ。
クズは粛清されなきゃならない。
特に外面のいいクズは、徹底的に辱しめてやらなきゃならないんだよ!
あの二人は人望がある。
顔が良くて成績がいい、普通に付き合えばこれほどお似合いのカップルもいないだろう。
だったらまともに友達もいない俺はゴミか? 何されても仕方のないような人間か?
冗談じゃない! ふざけんなよ、あんなクソみたいな連中に狂わされるだけの人生に何の甲斐がある!
だから復讐だ。引きずり下ろしてやる、絶対に後悔させてやるからな。
翌朝、今日は昨日ほど気分が悪くない。むしろ良いように感じるのは悪夢を見なかったからだろうな。
胃の方はまだいまいちな気がするが、親父との約束でたとえ少しでもは飯は取るようにしている。一昨日は取れなかったけど。
単身赴任で大変だって言うのに、それでも必要以上に金を振り込んでくれる親父には本当に頭が上がらない。
俺はこの金に手をつけたくなくて、芽亜里とデート代やプレゼントはバイトで稼いでいた。あいつのために始めたバイトだけど、もうそれも必要ないな。
そんなことを考えながら、朝食をポタージュだけに済ませて学校へと向かった。
◇◇◇
「おい、甲斗。実は俺、昨日とんでもないもの見たんだけどな」
登校すると俺の唯一と言っていい友人の牧田祐が話しかけてきた。
「ああ? またくだらない事じゃないだろうな? この前なんてお前の好きなアイドルがどうたらこうたらって話に一時間くらいつき合わされたんだぞ。そう思うと友達思いだよな俺って」
「馬鹿野郎、俺にとっては重要な話なんだよ。ってそうじゃなくて――昨日、木山の野郎とお前の彼女の戸川さんが俺のバイト先のカラオケに来てるのを見たんだよ」
そういやこいつもバイトしてるんだったな。
「その時たまたま受付じゃなかったから俺のことはバレなかったんだけどさ。ほら、カラオケって各部屋にカメラがあるだろ? それで二人の様子を覗いたんだよ。そしたらな、なんと木山が戸川さんの胸を揉んでやがるんだぜ! しかもキスのおまけ付きだ」
あの二人、個室に入ったらそんなことをおっ始めるぐらいの仲なんだな。
ヒートアップしている裕には悪いが、それを見て余計に心が冷めていく感じだ。
「お前なんか反応遅くない? だってさお前の彼女だぜ? 普通ふざけんなって具合に怒るもんだろう」
「知ってたんだよ。それもあいつら、人のいないのを見計らって学校でぶちゅっとな。全く冗談じゃないぜ」
「……………ああ、それは。何て言うか」
「気遣いはいらんよ。でもいつまでもクソとか言っても仕方ないだろ?」
「諦めるって?」
「違う。やられた以上はやり返さなきゃ気が済まないって話だ。そのためにも色々と考えなきゃならないんだよ」
他人に聞かせるのは初めてだが、口から出して余計に決心が固まった気がした。
そんな俺の姿を見て、裕の奴は感心したような顔をしている。
「何て言うかお前――ガッツあるな! でも嫌いじゃないぜ、泣き寝入りよりよっぽどいい。未練がましくやられっぱなしなんてのは見ていて面白いもんじゃねぇからな」
意外だな、こいつってこういうこと言うんだ。
だからか、馬が合ったのは。今更ながら納得した。
「面白そうだ俺も一口乗らせろよ。幸いなことに、お前ほど戸川さんとは顔を合わせちゃいない。木山なら猶更だ。それに俺はお前と違って友達が多いからな、上にも下にも顔が効く。やろうと思えば学校中どこにだって網を張らせる事が出来るって事だ。よかったな俺が友達でよ」
「へっ全くだ。お前が物好きで感謝してるよ」
「なぁに、お代は今度カラオケに来て金落としてくれるだけでいいさ。まあ、その前にまずはあいつらの悪事の証拠集めだな。ちょっと待ってろ、俺の方でも探り入れてみる」
「おう、頼んだぜ。期待しないで待ってるやるさ」
「おいおいひでえな。だったらその期待を裏切ってやるよ」
そんな風に軽口を叩き合いながら、始業ベルがなるまで会話を続けた。
「どうしたんです? 何か怖い顔されてましたけど?」
顔に出てたか。
「いやちょっと嫌なこと思い出しただけさ。こんな席でそんなこと考えるのは失礼だよな、ごめんごめん」
そうだ失礼なことだ。だから本格的に考えるのは帰ってからにすればいい。
◇◇◇
「ただいま。なんて言ったって誰も返事なんて返してくれやしないが」
上流階級のお屋敷から庶民のアパートに帰ってきた。
中は当然真っ暗で誰かがいる気配はない。
俺の親は親父だけ、その親父も単身赴任。
母親は――男を作って出て行った。今どこで何をしているかは知らない。知りたくもない。
七歳の頃だ、泣いてすがる俺をゴミを見るような目で振り切ったあの女の顔が今でも焼き付いて離れない。
芽亜里はそのことを知っていたはずなのに……。ずっとそばにいると言ってくれたのに……!
その時は本当にそう思っていたのかもしれない、でもそんなことは問題じゃない。
今のあいつはクズだ。人の嫌がることは平然とする。自分の欲望が優先で、簡単に他人を踏みつけられる女になった。
きっかけが何だったかは問題じゃない、変わってしまったのが許せないんだ。
まともな人間なら何があったってこんな外道な真似はしない。
あいつも所詮は根っこから腐った人間だったんだ。それを今まで常識人の面をかぶってだけにすぎないんだ。
クズは粛清されなきゃならない。
特に外面のいいクズは、徹底的に辱しめてやらなきゃならないんだよ!
あの二人は人望がある。
顔が良くて成績がいい、普通に付き合えばこれほどお似合いのカップルもいないだろう。
だったらまともに友達もいない俺はゴミか? 何されても仕方のないような人間か?
冗談じゃない! ふざけんなよ、あんなクソみたいな連中に狂わされるだけの人生に何の甲斐がある!
だから復讐だ。引きずり下ろしてやる、絶対に後悔させてやるからな。
翌朝、今日は昨日ほど気分が悪くない。むしろ良いように感じるのは悪夢を見なかったからだろうな。
胃の方はまだいまいちな気がするが、親父との約束でたとえ少しでもは飯は取るようにしている。一昨日は取れなかったけど。
単身赴任で大変だって言うのに、それでも必要以上に金を振り込んでくれる親父には本当に頭が上がらない。
俺はこの金に手をつけたくなくて、芽亜里とデート代やプレゼントはバイトで稼いでいた。あいつのために始めたバイトだけど、もうそれも必要ないな。
そんなことを考えながら、朝食をポタージュだけに済ませて学校へと向かった。
◇◇◇
「おい、甲斗。実は俺、昨日とんでもないもの見たんだけどな」
登校すると俺の唯一と言っていい友人の牧田祐が話しかけてきた。
「ああ? またくだらない事じゃないだろうな? この前なんてお前の好きなアイドルがどうたらこうたらって話に一時間くらいつき合わされたんだぞ。そう思うと友達思いだよな俺って」
「馬鹿野郎、俺にとっては重要な話なんだよ。ってそうじゃなくて――昨日、木山の野郎とお前の彼女の戸川さんが俺のバイト先のカラオケに来てるのを見たんだよ」
そういやこいつもバイトしてるんだったな。
「その時たまたま受付じゃなかったから俺のことはバレなかったんだけどさ。ほら、カラオケって各部屋にカメラがあるだろ? それで二人の様子を覗いたんだよ。そしたらな、なんと木山が戸川さんの胸を揉んでやがるんだぜ! しかもキスのおまけ付きだ」
あの二人、個室に入ったらそんなことをおっ始めるぐらいの仲なんだな。
ヒートアップしている裕には悪いが、それを見て余計に心が冷めていく感じだ。
「お前なんか反応遅くない? だってさお前の彼女だぜ? 普通ふざけんなって具合に怒るもんだろう」
「知ってたんだよ。それもあいつら、人のいないのを見計らって学校でぶちゅっとな。全く冗談じゃないぜ」
「……………ああ、それは。何て言うか」
「気遣いはいらんよ。でもいつまでもクソとか言っても仕方ないだろ?」
「諦めるって?」
「違う。やられた以上はやり返さなきゃ気が済まないって話だ。そのためにも色々と考えなきゃならないんだよ」
他人に聞かせるのは初めてだが、口から出して余計に決心が固まった気がした。
そんな俺の姿を見て、裕の奴は感心したような顔をしている。
「何て言うかお前――ガッツあるな! でも嫌いじゃないぜ、泣き寝入りよりよっぽどいい。未練がましくやられっぱなしなんてのは見ていて面白いもんじゃねぇからな」
意外だな、こいつってこういうこと言うんだ。
だからか、馬が合ったのは。今更ながら納得した。
「面白そうだ俺も一口乗らせろよ。幸いなことに、お前ほど戸川さんとは顔を合わせちゃいない。木山なら猶更だ。それに俺はお前と違って友達が多いからな、上にも下にも顔が効く。やろうと思えば学校中どこにだって網を張らせる事が出来るって事だ。よかったな俺が友達でよ」
「へっ全くだ。お前が物好きで感謝してるよ」
「なぁに、お代は今度カラオケに来て金落としてくれるだけでいいさ。まあ、その前にまずはあいつらの悪事の証拠集めだな。ちょっと待ってろ、俺の方でも探り入れてみる」
「おう、頼んだぜ。期待しないで待ってるやるさ」
「おいおいひでえな。だったらその期待を裏切ってやるよ」
そんな風に軽口を叩き合いながら、始業ベルがなるまで会話を続けた。
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