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第1話 もし、最愛の彼女が別の男と愛おしそうにキスをしていたら
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俺は、生まれて初めて出来た彼女の浮気現場を見てしまった。
「あれ? 芽亜里はもういないのか?」
いつものように彼女を迎えに彼女の教室に行くと、既にいなくなったあとだという。
それで仕方なく校舎中を歩き回ったその時、屋上へ向かう階段の踊り場でキスをする愛しの恋人の姿を見た。
「ダメだってこんな……誰かに見られたら。私恥ずかしいよぉ」
「こんな時間にこんなところに誰が来るって? 安心しなよ、そんな事気にならないくらいキスをすればいいさ」
「あ、ん……」
その相手は俺も良く知る学年一のイケメンにして秀才の男だった。
名前は確か木山と言ったか。
その容姿と人の好さから、浮いた話の絶えないたらしであると噂されており、モテない男達には毛嫌いされていた男。
なのに、女達からの人気はあった。噂なんて所詮、冴えない男共の流したやっかみ程度にしか考えていないからだ。
彼女からはその男について、そういう噂がある人は好きになれそうも無い、と聞いていた。なのに、なのに……。
なんで、こんなことが起きたのだろう?
しかし、よくよく思い返せば確かに近頃様子がおかしかった気がする。
一月ぐらい前は毎日のように会って遊んでいたのに、それが急にすっぽかされるようになった。
理由はバラバラだったが、つまりこういうことだったんだろうなぁ。
俺以外に好きな男が出来て、俺に会うよりそっちに会う方がよっぽど優先順位が高くて。
もうすぐ誕生日だって近いから隠れてバイトなんかしてたのに、それも全部無駄になっちまった。
「ん……っ」
二人は、到底高校生とは思えないような深いキスを重ねていく。
俺はいたたまれなくなり、腰が引けて逃げるようにその場を立ち去ってしまった。
何も考えたくなかった。俺はひたすらに走った。
校舎を出ていつもの帰り道をひたすらに走った。
いつも二人で帰っていた道、歩いて帰っていた道。
目頭を中心に顔が熱い。なんでこんな惨めな目に遭わなければならないんだ!
気づけば俺は、自分の部屋のベッドの上に転がり込んでいた。
いつ帰ってきたのかもわからない。
「くぅ……! うぅっ! どうしてだよ?! なん、で……」
何がそんなに気に入らなかったって言うんだ!
俺はあいつのために毎日毎日……!
なのにダメだった。
俺が嫌だって言うんだったらはっきりそう言えばいいだろうが!
他に好きな男が出来たって言うんだったら正々堂々告げてくれれば、こんなに惨めな思いはしなずに済んだのに。
汚い、汚い汚い汚い汚い汚いッ!!!
何が好きになりそうも無いだ! あの嘘つき女!!
いくら罵っても足りない。
でも何よりも悔しいのは――それを本人達の前で言えなかったことだ。
俺はこんなに意気地なしだったのか……。何もかもが嫌になった。
そうだ、そういえば誰かが言っていた。
最近、駅前のカフェに入っていく彼女の姿を見たって。よく見えなかったけど一人じゃなかったって。
あそこで感づいていれば少しは違ったのか?
今となっては何もかもが遅いけど。
一通り涙を流したら、眠気が襲ってきた。
このまま寝よう疲れてしまった何もかもに。
『こー君。私今日からこの人と付き合うことになったから。だってこー君ってよく考えたら、単に幼馴染ってだけで、本当にそれだけの人だったし。一緒にいてつまんないよ。じゃあね、二度と話しかけないでいいからね。あなたは結局一人で生きていくのがお似合いなんだよ、それでも少しの間でも夢が見れただけよかったって思っていてね』
悪夢を見た。
寝ても全然疲れが取れない、なんで夢の中でも楽になれないんだ!
結局、その日は夕飯を食べる気もおきなかった。
朝、とても最悪な気分で目を覚ました。
また悪夢を見た。夢の内容は思い出したくもない! あの女!!
怒りととてつもない倦怠感と、俺の体は心身ともにボロボロだ。
胃が痛い。荒れてるな、これ。
スマホを見ると入っていたメッセージ。あいつからだ。
開く気にはなれなかった、どうせ嘘しか書いてないだろうから。俺を騙して何がそんなに面白いんだ? 俺は何一つ面白くない。
俺はあいつとキスなんてしたことがない。させてくれなかったからだ。まだ恥ずかしいからって。それなのに、あの男とはキスをしていた。
あの男しか知らないあいつの味っ! イライラする!
苛立ちのまま起き上がって、ゴミ箱を蹴っ飛ばす。
どうして床にゴミが散らばるんだ? イライラする!
悪いのは俺だ、でもそうさせたのはあいつだ! あいつらだ!
結局ゴミを拾い集めることもなく、勢いよく部屋を飛び出す。
あいつの関係を終わらせよう。
本当に終わらせられるか? 俺は……。
考えが次の瞬間には変わり続ける。いろんな感情が悩ませになってイライラ仕方がなかった。
俺はこんなにはっきりしない性格だったんだな。
だからなんだって言うんだ!!
「あれ? 芽亜里はもういないのか?」
いつものように彼女を迎えに彼女の教室に行くと、既にいなくなったあとだという。
それで仕方なく校舎中を歩き回ったその時、屋上へ向かう階段の踊り場でキスをする愛しの恋人の姿を見た。
「ダメだってこんな……誰かに見られたら。私恥ずかしいよぉ」
「こんな時間にこんなところに誰が来るって? 安心しなよ、そんな事気にならないくらいキスをすればいいさ」
「あ、ん……」
その相手は俺も良く知る学年一のイケメンにして秀才の男だった。
名前は確か木山と言ったか。
その容姿と人の好さから、浮いた話の絶えないたらしであると噂されており、モテない男達には毛嫌いされていた男。
なのに、女達からの人気はあった。噂なんて所詮、冴えない男共の流したやっかみ程度にしか考えていないからだ。
彼女からはその男について、そういう噂がある人は好きになれそうも無い、と聞いていた。なのに、なのに……。
なんで、こんなことが起きたのだろう?
しかし、よくよく思い返せば確かに近頃様子がおかしかった気がする。
一月ぐらい前は毎日のように会って遊んでいたのに、それが急にすっぽかされるようになった。
理由はバラバラだったが、つまりこういうことだったんだろうなぁ。
俺以外に好きな男が出来て、俺に会うよりそっちに会う方がよっぽど優先順位が高くて。
もうすぐ誕生日だって近いから隠れてバイトなんかしてたのに、それも全部無駄になっちまった。
「ん……っ」
二人は、到底高校生とは思えないような深いキスを重ねていく。
俺はいたたまれなくなり、腰が引けて逃げるようにその場を立ち去ってしまった。
何も考えたくなかった。俺はひたすらに走った。
校舎を出ていつもの帰り道をひたすらに走った。
いつも二人で帰っていた道、歩いて帰っていた道。
目頭を中心に顔が熱い。なんでこんな惨めな目に遭わなければならないんだ!
気づけば俺は、自分の部屋のベッドの上に転がり込んでいた。
いつ帰ってきたのかもわからない。
「くぅ……! うぅっ! どうしてだよ?! なん、で……」
何がそんなに気に入らなかったって言うんだ!
俺はあいつのために毎日毎日……!
なのにダメだった。
俺が嫌だって言うんだったらはっきりそう言えばいいだろうが!
他に好きな男が出来たって言うんだったら正々堂々告げてくれれば、こんなに惨めな思いはしなずに済んだのに。
汚い、汚い汚い汚い汚い汚いッ!!!
何が好きになりそうも無いだ! あの嘘つき女!!
いくら罵っても足りない。
でも何よりも悔しいのは――それを本人達の前で言えなかったことだ。
俺はこんなに意気地なしだったのか……。何もかもが嫌になった。
そうだ、そういえば誰かが言っていた。
最近、駅前のカフェに入っていく彼女の姿を見たって。よく見えなかったけど一人じゃなかったって。
あそこで感づいていれば少しは違ったのか?
今となっては何もかもが遅いけど。
一通り涙を流したら、眠気が襲ってきた。
このまま寝よう疲れてしまった何もかもに。
『こー君。私今日からこの人と付き合うことになったから。だってこー君ってよく考えたら、単に幼馴染ってだけで、本当にそれだけの人だったし。一緒にいてつまんないよ。じゃあね、二度と話しかけないでいいからね。あなたは結局一人で生きていくのがお似合いなんだよ、それでも少しの間でも夢が見れただけよかったって思っていてね』
悪夢を見た。
寝ても全然疲れが取れない、なんで夢の中でも楽になれないんだ!
結局、その日は夕飯を食べる気もおきなかった。
朝、とても最悪な気分で目を覚ました。
また悪夢を見た。夢の内容は思い出したくもない! あの女!!
怒りととてつもない倦怠感と、俺の体は心身ともにボロボロだ。
胃が痛い。荒れてるな、これ。
スマホを見ると入っていたメッセージ。あいつからだ。
開く気にはなれなかった、どうせ嘘しか書いてないだろうから。俺を騙して何がそんなに面白いんだ? 俺は何一つ面白くない。
俺はあいつとキスなんてしたことがない。させてくれなかったからだ。まだ恥ずかしいからって。それなのに、あの男とはキスをしていた。
あの男しか知らないあいつの味っ! イライラする!
苛立ちのまま起き上がって、ゴミ箱を蹴っ飛ばす。
どうして床にゴミが散らばるんだ? イライラする!
悪いのは俺だ、でもそうさせたのはあいつだ! あいつらだ!
結局ゴミを拾い集めることもなく、勢いよく部屋を飛び出す。
あいつの関係を終わらせよう。
本当に終わらせられるか? 俺は……。
考えが次の瞬間には変わり続ける。いろんな感情が悩ませになってイライラ仕方がなかった。
俺はこんなにはっきりしない性格だったんだな。
だからなんだって言うんだ!!
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