15 / 16
第15話 殺意/歓喜
しおりを挟む
「お久しぶりだ? 随分とご挨拶じゃねえか、俺を殺しかけて言う事がそれか」
「確実に仕留めたと思いました。ですからあれが別れの挨拶でしたが……こうして会うと上手な再開の言葉も思いつきませんね。しかしながら、よく生きてここまで来たものです。お互いの幸運を祝して、そうですね……言葉は思いつきませんが、再開のハグなどはいかがでしょうか?」
「ふざける余裕はあるみたいだな……っ」
残念ですね、決してふざけてなどいないのですが……彼は気に入らなかったようで。
私はこの神の祝福に感謝し、是非その身を抱きしめたいところなのですが。
しかし、本当に彼がここに現れるとは思いませんでした。
内心の興奮を顔に出さないようにするだけで精一杯ですよ。
ああ、サーライル。しかし君は今まで私に見せた事のない憤怒の睨みを披露してくれる。
全く知らない彼の表情を見れて、私は嬉しい限り。
今、この瞬間において彼は私だけに意識を向ける。私だけを見て、私だけに生の感情をぶつけてくれる。
神に祈りを捧げて来た私に対するご褒美と言って過言ではありませんね。
今、彼の頭の中には私の事しかない。素晴らしい……!
ある事を確認する為、質問を投げかけました。
「目的は復讐でしょうか? 私は何番目の復讐相手なのです?」
「喜べよ、お前でこの復讐劇はフィナーレだ。お前だけはトリに回さないと気が済まなかった。――どうして俺を裏切った? なあ兄弟!!」
――っ!!
体をゾクゾクが駆け巡る感覚、思わず酔いしれてしまいそうで……。
いけませんね、顔が赤くなりそうです。
しかしそうですか、彼女達は全員死にましたか。
という事はやはり、私だけが彼の”特別”だった。そう考えて問題無いのでしょう。
「ふふ、兄弟……兄弟ですか。ですがサーライル、私はあなたを兄弟だなんて思った事は無いのですよ。申し訳ございません」
「っ! そうかよ、わかっていたが……随分と薄情な奴だったみたいだ。あの時まで、俺はお前はいい奴だと思ってた。いつからそんな風になってんだ……!」
「ふふふっ」
残念ながら、私は君が思うような良い子では無かったのですよ。元々、ね。
ただ喜びを分かち合う兄弟では満足が出来無かった。
手に入れたかったのですよ。君の感情も人生も。だから私の手で死へと追いやった。
その人生を私の色で閉じる為に……!
「私は変わったつもりはありません、ただ君の前では自分を良く見せたかっただけです。好きな人には着飾って見せたいものでしょう?」
「ああそうかよ。俺もお前の事が好きだった、自慢だったぜ。――今は反吐が出る思いだけどな」
わかってはいましたが、好きのニュアンスがお互い違うようで……そこは非常に残念です。
ああ、どうして……君はその感情をラキナ”など”に向けていたのでしょう。
……あんな女。
だからこれは、私からちょっとした意地悪です。
「そういえば、君は知りませんでしたね」
「……何がだ? せめてもの情けで遺言代わりに聞いてやる」
「そう怖い事を言わないでください。何、ちょっとした世間話ですよ。実の所君とラキナが付き合うように仕向けたのは私です」
「は?」
「ちょっとした遊びですよ。いつか冗談だと伝えるつもりでした。丁度それがあの時になったのは偶然ですが。ああ、それと……彼女と私は何度も床を共にしていました。でも安心してください、お互い体だけの付き合いでした。……あ、申し訳ありません。そういえば君は彼女とキスまでしかした事が無いのでしたか。――これはつまらない事を言ってしまいました」
「――クアンッッ!!!」
彼がそれまでにない程に感情を爆発させ、首に掛けたペンダントを握り込みました。
そしてその両手に黒い籠手のようなものを纏うと私に殴りかかってくる。
同じくあの宝物の白い籠手を纏った腕で、私はその一撃を受け止めました。
伝わってくる衝撃――興奮して仕方がない。
視線だけで人を殺害出来てしまいそうになりそうな程の睨み。
(美しい……っ)
彼の殺意の篭もった視線で、私の体を火照って来ました。
あの目と視線を交わせた瞬間こそ、私にとって最高の喜びです。
「確実に仕留めたと思いました。ですからあれが別れの挨拶でしたが……こうして会うと上手な再開の言葉も思いつきませんね。しかしながら、よく生きてここまで来たものです。お互いの幸運を祝して、そうですね……言葉は思いつきませんが、再開のハグなどはいかがでしょうか?」
「ふざける余裕はあるみたいだな……っ」
残念ですね、決してふざけてなどいないのですが……彼は気に入らなかったようで。
私はこの神の祝福に感謝し、是非その身を抱きしめたいところなのですが。
しかし、本当に彼がここに現れるとは思いませんでした。
内心の興奮を顔に出さないようにするだけで精一杯ですよ。
ああ、サーライル。しかし君は今まで私に見せた事のない憤怒の睨みを披露してくれる。
全く知らない彼の表情を見れて、私は嬉しい限り。
今、この瞬間において彼は私だけに意識を向ける。私だけを見て、私だけに生の感情をぶつけてくれる。
神に祈りを捧げて来た私に対するご褒美と言って過言ではありませんね。
今、彼の頭の中には私の事しかない。素晴らしい……!
ある事を確認する為、質問を投げかけました。
「目的は復讐でしょうか? 私は何番目の復讐相手なのです?」
「喜べよ、お前でこの復讐劇はフィナーレだ。お前だけはトリに回さないと気が済まなかった。――どうして俺を裏切った? なあ兄弟!!」
――っ!!
体をゾクゾクが駆け巡る感覚、思わず酔いしれてしまいそうで……。
いけませんね、顔が赤くなりそうです。
しかしそうですか、彼女達は全員死にましたか。
という事はやはり、私だけが彼の”特別”だった。そう考えて問題無いのでしょう。
「ふふ、兄弟……兄弟ですか。ですがサーライル、私はあなたを兄弟だなんて思った事は無いのですよ。申し訳ございません」
「っ! そうかよ、わかっていたが……随分と薄情な奴だったみたいだ。あの時まで、俺はお前はいい奴だと思ってた。いつからそんな風になってんだ……!」
「ふふふっ」
残念ながら、私は君が思うような良い子では無かったのですよ。元々、ね。
ただ喜びを分かち合う兄弟では満足が出来無かった。
手に入れたかったのですよ。君の感情も人生も。だから私の手で死へと追いやった。
その人生を私の色で閉じる為に……!
「私は変わったつもりはありません、ただ君の前では自分を良く見せたかっただけです。好きな人には着飾って見せたいものでしょう?」
「ああそうかよ。俺もお前の事が好きだった、自慢だったぜ。――今は反吐が出る思いだけどな」
わかってはいましたが、好きのニュアンスがお互い違うようで……そこは非常に残念です。
ああ、どうして……君はその感情をラキナ”など”に向けていたのでしょう。
……あんな女。
だからこれは、私からちょっとした意地悪です。
「そういえば、君は知りませんでしたね」
「……何がだ? せめてもの情けで遺言代わりに聞いてやる」
「そう怖い事を言わないでください。何、ちょっとした世間話ですよ。実の所君とラキナが付き合うように仕向けたのは私です」
「は?」
「ちょっとした遊びですよ。いつか冗談だと伝えるつもりでした。丁度それがあの時になったのは偶然ですが。ああ、それと……彼女と私は何度も床を共にしていました。でも安心してください、お互い体だけの付き合いでした。……あ、申し訳ありません。そういえば君は彼女とキスまでしかした事が無いのでしたか。――これはつまらない事を言ってしまいました」
「――クアンッッ!!!」
彼がそれまでにない程に感情を爆発させ、首に掛けたペンダントを握り込みました。
そしてその両手に黒い籠手のようなものを纏うと私に殴りかかってくる。
同じくあの宝物の白い籠手を纏った腕で、私はその一撃を受け止めました。
伝わってくる衝撃――興奮して仕方がない。
視線だけで人を殺害出来てしまいそうになりそうな程の睨み。
(美しい……っ)
彼の殺意の篭もった視線で、私の体を火照って来ました。
あの目と視線を交わせた瞬間こそ、私にとって最高の喜びです。
32
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
チョッキリ
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる