嵌められた男の腕は信頼を踏みにじり嘲り笑う者達の首を狙う ~復讐は愛と執着の破壊~

こまの ととと

文字の大きさ
上 下
4 / 16

第4話 バカンスの四人

しおりを挟む
 わたくし達が天からの恵みたる宝物を授かって早数ヶ月。
 各地で暴虐を尽くす悪鬼達を払い、人々を救済しては感謝を得る日々。

 それ自体はパーティを組んだ当初からでしたが……、やはりあのお宝。
 クアンさんが扱うあの籠手の力のおかげで、一層の名声を手にしました。

 格闘術に優れた人物と武具。この組み合わせに加え、どのような攻勢すらも払いのける力。
 さすが、尊い犠牲の上に手にしただけはございましたわ。
 神の国にきっと……。

 さて? あのお方の名前はなんでしたか?
 ……まあ、そのような事はどうでもいいでしょう。

 そのお方もきっと、天にまで届くわたくし達の栄光に鼻が高い思いを味わっておられる事でしょうね。

「さあ、見えてきましたよ。みんな」

 クアンさんがそう言って指を示すのは、この国でも有数のリゾート地。
 激戦続きのわたくし達の心を荒ませない為には、時折こういった世俗の風流を楽しむ必要がございます。

「じゃあ、あそこに入ったら一旦解散ってことで。みんなで一人ひとりの時間を楽しもうじゃん」

 ルロリアさんが声を弾ませ、同意するわたくし達。
 普段一緒に過ごしている分、見知った方々の目を気にせずに楽しむ時間は貴重ですので。

「分かってると思うが、何か問題が起きても自分で解決しろ。休暇にわざわざ面倒を見るのはごめんだ」

「分かっていますよ、ラキナ。ただ……少しばかりの”手合わせ”などはむしろよろしいでしょう? 折角こういう場所に来られたのだから、違った味わいもある。そうは思いませんか?」

「……好きにしろ」

 ぶっきらぼうなラキナさん、ですがクアンさんの誘いを断ることなく、了承していました。
 ……いやはや、名前も覚えていないあの方がここに居たらと思うと、ゾッとしないでも……無いかもしれませんわね。

 まったくいつの頃からだったのか……。興味などはございませんが。



 いざ街に入れば、リゾート地特有の陽気な雰囲気に高揚してしまいますが、だからこそ楽しめるというもの。

 今はもう一人で行動して、各々が好きに過ごし始めていました。
 最終日の集合時間まで完全な自由。

 聖職者たるもの、どのような土地であれ質素を嗜むものとはいいますが……。

「お客様、お飲みものをお持ち致しました」

「あら、ご苦労様です」

「では、ごゆっくりお楽しみ下さいませ」

 ボーイの男性からお酒を受け取り、喉に流れていく甘さに一口で酔いしれる。
 ここは街の中央にあるカジノ。

 皆々様がお金で欲を掛け、そして一瞬の煌めきを追い求める場所。
 ドレスをレンタルし、着飾った今のわたくしを、一体誰がプリーストなどと思うのでしょうね。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

チョッキリ
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

処理中です...