3 / 16
第3話 去った思い出
しおりを挟む
「ぅ、ぅ…………こ、こは?」
目が覚めると、俺は暗い空間に居た。
死んだのか。そう思ったがこの空間、どうやら俺以外にも先客がいたらしい。
暗闇に目が慣れ、そして映し出される。
ボロボロの衣服を纏いつつも朽ち果てた骸骨。
それも一つが二つではない。
「そうか……」
理解した。ここはあのトラップの行きつく先だ。
引っかかった人間は最終的にこの空間に送られ閉じ込められ、そして餓死するんだろう。
ダメだ、体に力が入らない。
今も俺の足からは血が流れ、餓死の前に出血で死にかねない。
……いや、もうここで餓死する方がマシなのかもしれないな。
裏切り。
俺は裏切られたんだな。
ぼんやりとしてくる意識にあらがう事もせず、俺は力を抜いて瞼を閉ざす。
何故? 考えても分からない。
これが夢だったらよかったのに、なんて思いながら……。
その瞬間だ。
俺の倒れている地面、より正確に言うならば足先から光が粒となってあふれ出した。
(一体……?)
よく見ると、俺の足から流れた血が地面に触れ、そこから粒子が生まれていた。
この現象には何の覚えもない。これでもそれなりに色んな経験をしたはずなんだが……。
薄ぼんやりとした脳の働きは、それでも光が広がりを捉え、それがやがて宙に集まっていく様を認識していた。
集まった粒子はやがて何かを形作り、それが手のひら台の大きさの物体に姿を変えると、地面にうなだれた俺の手の中へとぼとっと落ちて来た。
これは……ペンダント?
首から下げるアクセサリーの形をしたその物体は、こんな死者の掃き溜めには似つかわしくもない。
だが、これが店に売ってるような物ではない事くらいわかる。
ダンジョンの奥にそんな物がある理由がない。それも、こんな異常現象を伴いながらなど。
「アイテム、か。今更こんな……」
もう死体も目前の俺がこんなものを手にしたところで、何をすればいいのか……。
……だが。
「これが、物凄い力のあるアイテムってなら……。そして俺にっ、まだ力が残っていたら……!」
意味の無い仮定なのは理解している。でも、”もし”があったなら。
「あいつら……あいつらをっ……! 同じような目にしてやりたい!」
一度口に出したなら、後悔が沸いて来る。
そうだ! もしチャンスがあるなら、あの四人……っ。
――復讐したい――
この次から次に滲み出す恨みのままにッ!!
俺は途方も無い悔しさでそのペンダントを握り締めた。
その瞬間、ペンダントは眩い光を放つ。
…………っ。
気付いた時、俺は洞窟の外に立っていた。
当たりはもう日が落ちて、もうすぐ夜になる。
「夢でも見ていたのか……」
いや、夢じゃない。
体を見下ろす目に映るくたびれた服装。土に塗れ、血が滲み、浮浪者よりもみすぼらしくなった格好。傷だらけの皮膚が痛みを訴えていた。
そして何より――。
「……っ!」
いつの間にか首元に下がっていたペンダントを握りしめる。
何よりこいつの存在が、無様な現実を俺に教えてくれる。
怒りを認めると、握りしめたペンダントが手の中から消える。
何よりも――。
胸から降ろした拳を静かに握りしめる。
その拳を、恨みが形となって黒く包み込む。
堕ちる夕日に照らされて、なおの事の暗い光沢を放つそれは手甲。
『さすがはサーライルさん、頼りになります!』
『キミみたいのなのがいると、心配せずに背中を任せられるよ』
『なぁ……私達、そう悪くない関係を築けるんじゃないか?』
『一緒に冒険をしませんか? よく知ってる君だからこそ、誰より頼りに出来るんです』
(――俺に復讐しろと囁いてくる……!)
華やかに浮かぶ思い出と共に目元から流れる一筋の涙が、今生での最後の涙と悟るのに一瞬の時間も掛からなかった。
目が覚めると、俺は暗い空間に居た。
死んだのか。そう思ったがこの空間、どうやら俺以外にも先客がいたらしい。
暗闇に目が慣れ、そして映し出される。
ボロボロの衣服を纏いつつも朽ち果てた骸骨。
それも一つが二つではない。
「そうか……」
理解した。ここはあのトラップの行きつく先だ。
引っかかった人間は最終的にこの空間に送られ閉じ込められ、そして餓死するんだろう。
ダメだ、体に力が入らない。
今も俺の足からは血が流れ、餓死の前に出血で死にかねない。
……いや、もうここで餓死する方がマシなのかもしれないな。
裏切り。
俺は裏切られたんだな。
ぼんやりとしてくる意識にあらがう事もせず、俺は力を抜いて瞼を閉ざす。
何故? 考えても分からない。
これが夢だったらよかったのに、なんて思いながら……。
その瞬間だ。
俺の倒れている地面、より正確に言うならば足先から光が粒となってあふれ出した。
(一体……?)
よく見ると、俺の足から流れた血が地面に触れ、そこから粒子が生まれていた。
この現象には何の覚えもない。これでもそれなりに色んな経験をしたはずなんだが……。
薄ぼんやりとした脳の働きは、それでも光が広がりを捉え、それがやがて宙に集まっていく様を認識していた。
集まった粒子はやがて何かを形作り、それが手のひら台の大きさの物体に姿を変えると、地面にうなだれた俺の手の中へとぼとっと落ちて来た。
これは……ペンダント?
首から下げるアクセサリーの形をしたその物体は、こんな死者の掃き溜めには似つかわしくもない。
だが、これが店に売ってるような物ではない事くらいわかる。
ダンジョンの奥にそんな物がある理由がない。それも、こんな異常現象を伴いながらなど。
「アイテム、か。今更こんな……」
もう死体も目前の俺がこんなものを手にしたところで、何をすればいいのか……。
……だが。
「これが、物凄い力のあるアイテムってなら……。そして俺にっ、まだ力が残っていたら……!」
意味の無い仮定なのは理解している。でも、”もし”があったなら。
「あいつら……あいつらをっ……! 同じような目にしてやりたい!」
一度口に出したなら、後悔が沸いて来る。
そうだ! もしチャンスがあるなら、あの四人……っ。
――復讐したい――
この次から次に滲み出す恨みのままにッ!!
俺は途方も無い悔しさでそのペンダントを握り締めた。
その瞬間、ペンダントは眩い光を放つ。
…………っ。
気付いた時、俺は洞窟の外に立っていた。
当たりはもう日が落ちて、もうすぐ夜になる。
「夢でも見ていたのか……」
いや、夢じゃない。
体を見下ろす目に映るくたびれた服装。土に塗れ、血が滲み、浮浪者よりもみすぼらしくなった格好。傷だらけの皮膚が痛みを訴えていた。
そして何より――。
「……っ!」
いつの間にか首元に下がっていたペンダントを握りしめる。
何よりこいつの存在が、無様な現実を俺に教えてくれる。
怒りを認めると、握りしめたペンダントが手の中から消える。
何よりも――。
胸から降ろした拳を静かに握りしめる。
その拳を、恨みが形となって黒く包み込む。
堕ちる夕日に照らされて、なおの事の暗い光沢を放つそれは手甲。
『さすがはサーライルさん、頼りになります!』
『キミみたいのなのがいると、心配せずに背中を任せられるよ』
『なぁ……私達、そう悪くない関係を築けるんじゃないか?』
『一緒に冒険をしませんか? よく知ってる君だからこそ、誰より頼りに出来るんです』
(――俺に復讐しろと囁いてくる……!)
華やかに浮かぶ思い出と共に目元から流れる一筋の涙が、今生での最後の涙と悟るのに一瞬の時間も掛からなかった。
39
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
チョッキリ
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる