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第1話 張り切った報い
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それは、酒場で一人の酔っ払いがくれた情報から始まった。
『そういえば知ってるか? この近くの山脈を登って奥深く、ひっそりと目立たない洞窟の入り口があるんだと。そこにはお宝が眠ってるらしい。挑んだ人間は少ないが、戻ってきた人間もいないってさ。だから本当にそんな洞窟があるかどうかもわからないらしい』
というなんともあやふやなものだった。が、俺達は名の知れたパーティでもあったし、もし本当にレアなアイテムでもあるんだったら……。
ということで、俺達五人は向かうことになった。
相変わらず俺は全員分の荷物持ち。実戦闘じゃ目立ちにくいサポーターだから、普段の行動で目立って見せる必要があるってことだ。
でもいいんだ。これはこれで鍛錬になるし、全く不満が無いわけじゃないがみんなの助けになってるって実感が嬉しい。
実際……。
「さすがはサーライルさんですね。本当に頼りになります!」
「ボクたち後衛職の頼りになるから、キミみたいなのがいるだけでいざって時に力を出せるんだよね」
と喜んでいるのはプリーストのアモネにウィザードのルロリア。
二人は回復と攻撃という違いはあれど、呪文を唱えるのが専門だけあって体力も筋力もあまりない。
俺が荷物持ちを買って出始めたのはこの二人がいるからでもある。
二人共可愛らしい女の子で、旅先でよく男たちに声を掛けられている。
そんな二人の役に立てるのだから、男冥利も尽きるというものだろう。
なんて内心デレデレしながら山中を進んでいたが、そこに不満の声を上げる女性の声がある。
「お前が今何を考えているか当ててやろうか?」
「やめてくれよ、勘違いだって。俺にとっては君以上の女性はいないさ」
すねたように顔を少しばかりしかめるのは、俺の恋人でもあるラキナ。
前衛を担当するナイトであり、彼女に勝てる剣の使い手はちょっと思いつかない。
それほどの相手と恋人になれたのは、これが意外にも彼女の告白からだった。
いつもより恥ずかしそうにしながらも、勇気を出して好きだと言った唇を思わず塞いでしまったのが、俺達のファーストでもあったな。
「まあまあ、そのくらいにしてあげて下さい。彼、困ってるじゃないですか。わがままで困らせるのは二人きりの時だけにして下さいね」
「からかうんじゃない」
茶化して来た声の主はクアン。
俺の幼馴染で、俺と一緒にパーティを結成したリーダーでもある。
神に仕えるモンクでもあり、世の乱れを正さんと立ち上がった正義感の男だ。
この俺達五人、旅を初めて早二年程立つ。
その間に各地で活躍し、名声を得てきた。
人によっては無条件で尊敬の眼差しをくれる。ま、主に俺を覗いた四人だが。
サポーターである俺はどうしても目立てないし、仕方がないけどな。
なんて感じで和気あいあいとしながらも山を越え、ついに件の洞窟と思わしき場所を発見。
「これは……、確かに何かありそうですね」
なんて静かにつぶやくリーダーの後をついていく俺達、薄暗い洞窟の奥は複雑なダンジョンでもあり、現れるモンスター達を退治しては歩みを続け、ついに意味ありげな祭壇へとたどり着いた。
「まさか本当にあるなんてね……」
と感慨深げに呟くのはルロリア。
アイテムの類の知識が豊富で、その知識を元に様々な薬を調合することが出来る天才でもある。
そんな彼女は高い分析力を持っていて、それが今まさに発揮されている。
「一体、なんなのでしょうかね? このような――」
アモネが続けようとした時、祭壇に乗っていた箱が一人でに開き、何かが光を放ちながら宙に浮き始める。
「これは……! ここに人が訪れた時に反応するようになっていたのでしょうか」
「おそらくそのようだね。……なるほど、ねぇ」
アモネの言葉に同意するルロリアは、何か納得したような表情を浮かべながらも小さく呟く。
彼女の頭脳が閃いたんだろうか。
光を放って現れたのは、一対の籠手だった。
まばゆく白い輝きを持つ、とても美しいそれは、芸術品にも見えるが――だが違う。
こいつからはとても大きな力を感じる。
「これが噂の宝の正体、なのでしょうね。なるほど、確かに神々しい。人が訪れない洞窟の奥にこのような物があるなどと……」
「誰が最初に言いだしたのか知らないが、ガセじゃなかったって訳だな」
クアンの言葉にうなずく俺も、気分が高揚してきた。
大抵、何処にお宝が眠ってるなんて話は単なるガセが勘違いってオチだが、極偶にこういったものが見つかるから無視出来ない。
俺達はモンスター退治が主な旅の理由だが、冒険者たるもの、お宝の噂にはどうしても敏感になる。
レアなアイテムなら利用出来るし、高いなら金にもなる。
そして今回は当たりだった。
「あの情報が確かだった。という事は――」
「――ええ、そういう事でもあるんでしょうね」
ラキナがクアンとアイコンタクトを取りながら会話をする。
好きな女が他の男とそういう事をするのはちょっと嫉妬するが、二人は仲間だ。
そういう関係でも無いし、結局俺が嫉妬深いだけなんだよな。
ただ、そういう事ってのは何だ?
……そうか! 誰も戻ってきてないって話だ。という事はトラップの類もあるって事じゃないか。
「よし、みんな気をつけろ! 何が来るかわからないぞ!」
戦闘で活躍しない分、こういう所で仲間の為に動かないと。
俺はみんなに警告をしつつ、懐からナイフを取り出しつつ慎重に祭壇に近づきつつ――。
「――がッ!?」
背後から衝撃を受けた。
(攻撃を受けた!? 後ろに誰かいたのか! まずい、このままじゃみんなが……!)
態勢をなんとか立て直しつつ、仲間の安否を確かめるべく背後を振り返る。
「みんな! 無事か!」
振り返った先に見えたのは、無傷の仲間達。
だが、その顔は……特に先頭に立っていたルロリアはつまらないものでも見るような目で左手を前へと――正確には俺に向けて突き出していた。
『そういえば知ってるか? この近くの山脈を登って奥深く、ひっそりと目立たない洞窟の入り口があるんだと。そこにはお宝が眠ってるらしい。挑んだ人間は少ないが、戻ってきた人間もいないってさ。だから本当にそんな洞窟があるかどうかもわからないらしい』
というなんともあやふやなものだった。が、俺達は名の知れたパーティでもあったし、もし本当にレアなアイテムでもあるんだったら……。
ということで、俺達五人は向かうことになった。
相変わらず俺は全員分の荷物持ち。実戦闘じゃ目立ちにくいサポーターだから、普段の行動で目立って見せる必要があるってことだ。
でもいいんだ。これはこれで鍛錬になるし、全く不満が無いわけじゃないがみんなの助けになってるって実感が嬉しい。
実際……。
「さすがはサーライルさんですね。本当に頼りになります!」
「ボクたち後衛職の頼りになるから、キミみたいなのがいるだけでいざって時に力を出せるんだよね」
と喜んでいるのはプリーストのアモネにウィザードのルロリア。
二人は回復と攻撃という違いはあれど、呪文を唱えるのが専門だけあって体力も筋力もあまりない。
俺が荷物持ちを買って出始めたのはこの二人がいるからでもある。
二人共可愛らしい女の子で、旅先でよく男たちに声を掛けられている。
そんな二人の役に立てるのだから、男冥利も尽きるというものだろう。
なんて内心デレデレしながら山中を進んでいたが、そこに不満の声を上げる女性の声がある。
「お前が今何を考えているか当ててやろうか?」
「やめてくれよ、勘違いだって。俺にとっては君以上の女性はいないさ」
すねたように顔を少しばかりしかめるのは、俺の恋人でもあるラキナ。
前衛を担当するナイトであり、彼女に勝てる剣の使い手はちょっと思いつかない。
それほどの相手と恋人になれたのは、これが意外にも彼女の告白からだった。
いつもより恥ずかしそうにしながらも、勇気を出して好きだと言った唇を思わず塞いでしまったのが、俺達のファーストでもあったな。
「まあまあ、そのくらいにしてあげて下さい。彼、困ってるじゃないですか。わがままで困らせるのは二人きりの時だけにして下さいね」
「からかうんじゃない」
茶化して来た声の主はクアン。
俺の幼馴染で、俺と一緒にパーティを結成したリーダーでもある。
神に仕えるモンクでもあり、世の乱れを正さんと立ち上がった正義感の男だ。
この俺達五人、旅を初めて早二年程立つ。
その間に各地で活躍し、名声を得てきた。
人によっては無条件で尊敬の眼差しをくれる。ま、主に俺を覗いた四人だが。
サポーターである俺はどうしても目立てないし、仕方がないけどな。
なんて感じで和気あいあいとしながらも山を越え、ついに件の洞窟と思わしき場所を発見。
「これは……、確かに何かありそうですね」
なんて静かにつぶやくリーダーの後をついていく俺達、薄暗い洞窟の奥は複雑なダンジョンでもあり、現れるモンスター達を退治しては歩みを続け、ついに意味ありげな祭壇へとたどり着いた。
「まさか本当にあるなんてね……」
と感慨深げに呟くのはルロリア。
アイテムの類の知識が豊富で、その知識を元に様々な薬を調合することが出来る天才でもある。
そんな彼女は高い分析力を持っていて、それが今まさに発揮されている。
「一体、なんなのでしょうかね? このような――」
アモネが続けようとした時、祭壇に乗っていた箱が一人でに開き、何かが光を放ちながら宙に浮き始める。
「これは……! ここに人が訪れた時に反応するようになっていたのでしょうか」
「おそらくそのようだね。……なるほど、ねぇ」
アモネの言葉に同意するルロリアは、何か納得したような表情を浮かべながらも小さく呟く。
彼女の頭脳が閃いたんだろうか。
光を放って現れたのは、一対の籠手だった。
まばゆく白い輝きを持つ、とても美しいそれは、芸術品にも見えるが――だが違う。
こいつからはとても大きな力を感じる。
「これが噂の宝の正体、なのでしょうね。なるほど、確かに神々しい。人が訪れない洞窟の奥にこのような物があるなどと……」
「誰が最初に言いだしたのか知らないが、ガセじゃなかったって訳だな」
クアンの言葉にうなずく俺も、気分が高揚してきた。
大抵、何処にお宝が眠ってるなんて話は単なるガセが勘違いってオチだが、極偶にこういったものが見つかるから無視出来ない。
俺達はモンスター退治が主な旅の理由だが、冒険者たるもの、お宝の噂にはどうしても敏感になる。
レアなアイテムなら利用出来るし、高いなら金にもなる。
そして今回は当たりだった。
「あの情報が確かだった。という事は――」
「――ええ、そういう事でもあるんでしょうね」
ラキナがクアンとアイコンタクトを取りながら会話をする。
好きな女が他の男とそういう事をするのはちょっと嫉妬するが、二人は仲間だ。
そういう関係でも無いし、結局俺が嫉妬深いだけなんだよな。
ただ、そういう事ってのは何だ?
……そうか! 誰も戻ってきてないって話だ。という事はトラップの類もあるって事じゃないか。
「よし、みんな気をつけろ! 何が来るかわからないぞ!」
戦闘で活躍しない分、こういう所で仲間の為に動かないと。
俺はみんなに警告をしつつ、懐からナイフを取り出しつつ慎重に祭壇に近づきつつ――。
「――がッ!?」
背後から衝撃を受けた。
(攻撃を受けた!? 後ろに誰かいたのか! まずい、このままじゃみんなが……!)
態勢をなんとか立て直しつつ、仲間の安否を確かめるべく背後を振り返る。
「みんな! 無事か!」
振り返った先に見えたのは、無傷の仲間達。
だが、その顔は……特に先頭に立っていたルロリアはつまらないものでも見るような目で左手を前へと――正確には俺に向けて突き出していた。
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