7 / 10
第7話 理不尽がやって来る
しおりを挟む
「え!? どういう事だ? 何故彼が」
その名前を聞いた時、飛び上がるかのような衝撃さえ受けた。
かつての婚約者の名前、自分を罵倒して王家へと婿入りする予定の彼が一体何をしに来たというんだろう?
何か嫌な予感がする。
「玄関にてお待ちしております。何やら焦燥しているご様子ですが、お会いにならないのでしたらお帰り頂くという事で宜しいでしょうか?」
「ううん、会う。何の用か知らないけど、ここで会わなかったら後が怖そうだから」
「畏まりました。では支度の済み次第お越し下さいませ」
本音を言うと会いたくないが、そのせいで騒がられても困る。
軽い身支度だけを済ませて玄関へ向かうために部屋の外へ出た。
階段を下りて玄関へと向かうと、確かにそこには元婚約者の姿があった。
一体どうしたというのだろうか? 私に用があるなんて。
でもわざわざ来てくれたのだ、少なくともただ蔑みたいが為に来たんじゃないんだと思う。王家へと婿入りする身でそんな暇は無いはずだ。
「先日ぶりねエレット。今日は一体何の用? こっちも王家の人間になる貴女の手を煩わせたく無いから手短に頼みたいのだけれど」
「そんな寂しい事を言わないでくれリフィ。私と君の仲じゃないか」
(何を白々しい)
だが、確かに彼の表情に焦りが見える。それを少しでも抑えようと必死なようだ。本当に何があったんだ?
「なあ聞いてくれリフィ。王女は貴族の婚約を無理矢理壊したからと王室からの追放処分を受けたのだ! それも東の果てにある国境に数日中に移住しろだなどと。知ってるだろうリフィ? あそこはとっくの昔に土地が枯れた不毛の土地、そんな所へ住めだなんていくら陛下でもあんまりだ、実の子に対する仕打ちじゃない!!」
ヒステリックに喚くエレット。あの人を見下していた時の余裕が一欠けらも見当たらない。
状況を整理するとこういう事だろうか?
王家の人間とは言え、貴族同士の婚約を潰して令息を自分の夫とする行為に陛下は腹を立てた。その理由は分からないが、推測するに王家の面子を潰したとかだろうか?
王家として品位を汚されたと考えた陛下は、王位継承権こそ取り上げないものの城から追い出した。
東の国境といえば、エレテレテの言った通りに不毛の大地の広がっていて軍事拠点以外には何も無い場所だ。実質的な王室からの追放だろう、陛下がご存命の限りは恐らく一生帰らせてもらえないと思う。いや、次期の国王の代になっても帰れるかどうか……。
でもそれを私に言って何になるんだ? もう縁は切れてるし、それで無くとも貧乏男爵家には何の力も無い。
私の考えを知らずか、彼はまだ話を続けた。
「王女と結婚する事になってしまった以上私もそこで暮らさねばならないのだ!? それでも信じられないくらいなのに、父上は君との婚姻を一方的に破棄した事に関する慰謝料を私の小遣いで出せだなどと仰るのだ! 家同士の事なら慰謝料は家の金庫から出るものじゃないのか?!」
なんて身勝手な、こんな男性が好きだった自分が嫌になる。
家名に泥を塗ったと思われたのは何も陛下だけじゃなかったのかも知れない。
エレットの父親には何度もお会いしたが、あの方は貴族としての貴い振る舞いについて私に聞かせてくれた事がある。
王家と繋がりが出来たとか以上に、息子の貴族として在り方に我慢が出来無くなったんだろう。
……思えばここ数日会って無かったな、今度改めて挨拶に行かないと。
まだまだ人の家の玄関で喚き散らすエレット、流石にうんざりだ。愚痴を言いに来たなら少なくとも元婚約者の屋敷に来るのは間違ってる。早く帰ってよ。
それでも彼は続けるが、次に出て来た言葉に絶句してしまう。
「君とよりを戻してもいいんだぞ? こうなった以上は再び婚約者となって慰謝料は免除、君を妻とすれば王都から出て行く必要も無くなるのだから」
その名前を聞いた時、飛び上がるかのような衝撃さえ受けた。
かつての婚約者の名前、自分を罵倒して王家へと婿入りする予定の彼が一体何をしに来たというんだろう?
何か嫌な予感がする。
「玄関にてお待ちしております。何やら焦燥しているご様子ですが、お会いにならないのでしたらお帰り頂くという事で宜しいでしょうか?」
「ううん、会う。何の用か知らないけど、ここで会わなかったら後が怖そうだから」
「畏まりました。では支度の済み次第お越し下さいませ」
本音を言うと会いたくないが、そのせいで騒がられても困る。
軽い身支度だけを済ませて玄関へ向かうために部屋の外へ出た。
階段を下りて玄関へと向かうと、確かにそこには元婚約者の姿があった。
一体どうしたというのだろうか? 私に用があるなんて。
でもわざわざ来てくれたのだ、少なくともただ蔑みたいが為に来たんじゃないんだと思う。王家へと婿入りする身でそんな暇は無いはずだ。
「先日ぶりねエレット。今日は一体何の用? こっちも王家の人間になる貴女の手を煩わせたく無いから手短に頼みたいのだけれど」
「そんな寂しい事を言わないでくれリフィ。私と君の仲じゃないか」
(何を白々しい)
だが、確かに彼の表情に焦りが見える。それを少しでも抑えようと必死なようだ。本当に何があったんだ?
「なあ聞いてくれリフィ。王女は貴族の婚約を無理矢理壊したからと王室からの追放処分を受けたのだ! それも東の果てにある国境に数日中に移住しろだなどと。知ってるだろうリフィ? あそこはとっくの昔に土地が枯れた不毛の土地、そんな所へ住めだなんていくら陛下でもあんまりだ、実の子に対する仕打ちじゃない!!」
ヒステリックに喚くエレット。あの人を見下していた時の余裕が一欠けらも見当たらない。
状況を整理するとこういう事だろうか?
王家の人間とは言え、貴族同士の婚約を潰して令息を自分の夫とする行為に陛下は腹を立てた。その理由は分からないが、推測するに王家の面子を潰したとかだろうか?
王家として品位を汚されたと考えた陛下は、王位継承権こそ取り上げないものの城から追い出した。
東の国境といえば、エレテレテの言った通りに不毛の大地の広がっていて軍事拠点以外には何も無い場所だ。実質的な王室からの追放だろう、陛下がご存命の限りは恐らく一生帰らせてもらえないと思う。いや、次期の国王の代になっても帰れるかどうか……。
でもそれを私に言って何になるんだ? もう縁は切れてるし、それで無くとも貧乏男爵家には何の力も無い。
私の考えを知らずか、彼はまだ話を続けた。
「王女と結婚する事になってしまった以上私もそこで暮らさねばならないのだ!? それでも信じられないくらいなのに、父上は君との婚姻を一方的に破棄した事に関する慰謝料を私の小遣いで出せだなどと仰るのだ! 家同士の事なら慰謝料は家の金庫から出るものじゃないのか?!」
なんて身勝手な、こんな男性が好きだった自分が嫌になる。
家名に泥を塗ったと思われたのは何も陛下だけじゃなかったのかも知れない。
エレットの父親には何度もお会いしたが、あの方は貴族としての貴い振る舞いについて私に聞かせてくれた事がある。
王家と繋がりが出来たとか以上に、息子の貴族として在り方に我慢が出来無くなったんだろう。
……思えばここ数日会って無かったな、今度改めて挨拶に行かないと。
まだまだ人の家の玄関で喚き散らすエレット、流石にうんざりだ。愚痴を言いに来たなら少なくとも元婚約者の屋敷に来るのは間違ってる。早く帰ってよ。
それでも彼は続けるが、次に出て来た言葉に絶句してしまう。
「君とよりを戻してもいいんだぞ? こうなった以上は再び婚約者となって慰謝料は免除、君を妻とすれば王都から出て行く必要も無くなるのだから」
1
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説

寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。


【完結】己の行動を振り返った悪役令嬢、猛省したのでやり直します!
みなと
恋愛
「思い出した…」
稀代の悪女と呼ばれた公爵家令嬢。
だが、彼女は思い出してしまった。前世の己の行いの数々を。
そして、殺されてしまったことも。
「そうはなりたくないわね。まずは王太子殿下との婚約解消からいたしましょうか」
冷静に前世を思い返して、己の悪行に頭を抱えてしまうナディスであったが、とりあえず出来ることから一つずつ前世と行動を変えようと決意。
その結果はいかに?!
※小説家になろうでも公開中

あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。
ふまさ
恋愛
「……き、きみのこと、嫌いになったわけじゃないんだ」
オーブリーが申し訳なさそうに切り出すと、待ってましたと言わんばかりに、マルヴィナが言葉を繋ぎはじめた。
「オーブリー様は、決してミラベル様を嫌っているわけではありません。それだけは、誤解なきよう」
ミラベルが、当然のように頭に大量の疑問符を浮かべる。けれど、ミラベルが待ったをかける暇を与えず、オーブリーが勢いのまま、続ける。
「そう、そうなんだ。だから、きみとの婚約を解消する気はないし、結婚する意思は変わらない。ただ、その……」
「……婚約を解消? なにを言っているの?」
「いや、だから。婚約を解消する気はなくて……っ」
オーブリーは一呼吸置いてから、意を決したように、マルヴィナの肩を抱き寄せた。
「子爵令嬢のマルヴィナ嬢を、あ、愛人としてぼくの傍に置くことを許してほしい」
ミラベルが愕然としたように、目を見開く。なんの冗談。口にしたいのに、声が出なかった。
婚約破棄されてしまいました。別にかまいませんけれども。
ココちゃん
恋愛
よくある婚約破棄モノです。
ざまぁあり、ピンク色のふわふわの髪の男爵令嬢ありなやつです。
短編ですので、サクッと読んでいただけると嬉しいです。
なろうに投稿したものを、少しだけ改稿して再投稿しています。
なろうでのタイトルは、「婚約破棄されました〜本当に宜しいのですね?」です。
どうぞよろしくお願いしますm(._.)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる