5 / 6
第5話 磨き上げたもの
しおりを挟む
「ちぃっ! 相手は速度が乗ってるわ、でもそんな程度のスピードなら……!」
いくら横並びの状態とはいえ相手はアウト。インのこちらが確実に有利。
それに馬力差から考えて、いくらスピードが乗った相手でも……!
コーナー入口、ブレーキングに入った私の隣にあの醜いFAが並ぶ。
それだけでも嫌気が差す。貧弱なくせにバトルマシンを装うその姿、反吐が出て仕方が無い。
ここでちぎって……何!?
「前に出たですって!? ……大丈夫よ何を焦ってるの私。バトルはまだ始まったばかり、このくらいの華……持たせた方がむしろこちらの格好がつくというものッ」
それに相手はまだ抜け切れたというわけじゃない。
この先はコース最長のストレート。パワーで勝る以上どうとでもなるポイントだ。
「そうよ……。ふふ、むしろあの娘の希望を摘むのにいいポイントだわ」
そう思っていた、こちらにはまだ全くの余裕があると……。
◇◇◇
このストレート、コースで最も加速が要求されるポイントですの。
パワーの無いこの子にとっては最大の泣き所でもありますわ。
力強くアクセルを踏み切るわたくしのFASの隣、彼女のLKがブースト圧を上げていましたわ。
彼女にとってもここは仕掛けるポイント、むしろLKが最も得意とする戦場でございましてよ。
たやすく前に出た……いえ、出させたこのストレート。
さあ――今こそ度肝を抜く瞬間ですわッ!!
狙うはそう、コーナーのイン……そのさらに内側にある――ッ。
狙いは決して外しませんわ!!
◇◇◇
また抜かれた!?
いえ、あの娘はさっき私よりも前に出ていた。
加速が乗っていた分、此方を抜きやすかったという事ね。
でもそれだけじゃ――なんですって!!?
「あ、ありえない……! そ、そんなバカな!?」
だってそうでしょう。確かにFAはオーバースピードでコーナーへと入った。
横並びにアウトを取らざるを得なかったとはいえ、焦る必要はない。
あんな無茶な加速ではブレーキにも相応に気を付けなければならないからだ。
このLKの戦闘力ならアウトからでも抜き返せる。
相手が立ち上がりに手間取ってる間に優雅に再加速出来る。そのはずだったのに……。
ありえないものを見た。
◇◇◇
ガードレール外。
ギャラリーたちは派手な立ち回りを見せたFAに大歓声をあげざるを得なかった。
「うおおお!! な、なんだあのFA!? こ、コーナリングで加速して行きやがったぞ!!」
「うそだろおい!? どうやったらあんな事が出来る?!」
「普通コーナリングってのはスピードを落とさなきゃ抜けないはずだぜ? お、俺目がおかしくなっちまったのか!?」
◇◇◇
遠くに歓声を置き去りにしてわたくしは前へと出ましたの。
きっと皆さん驚いた事でしょうね。
これこそが師匠との特訓の成果……! この峠だからこそ使用できる秘技!
あのストレート終点のコーナーには小さな側溝が彫られておりますの。
これにイン側のタイヤを引っ掛ける事によって――スピードの減速をコーナリング中に取り戻す事が出来るんですわ!
本来オーバースピードで進入すればアウト側へ膨らむのは確実。
しかし、側溝に落としたタイヤがそれを防ぐんですわ!
進入時よりも鋭さを増しながら、コーナーを抜けて行くこの感覚っ!
わたくしも初めて聞いた時は耳を疑いました。
しかし師匠はこの技を熱心に教えて下さいましたわ。マシンのスペック差を埋める数少ない方法。
それは、マシンの軽さと旋回性能と――この技ですわ!
いくら横並びの状態とはいえ相手はアウト。インのこちらが確実に有利。
それに馬力差から考えて、いくらスピードが乗った相手でも……!
コーナー入口、ブレーキングに入った私の隣にあの醜いFAが並ぶ。
それだけでも嫌気が差す。貧弱なくせにバトルマシンを装うその姿、反吐が出て仕方が無い。
ここでちぎって……何!?
「前に出たですって!? ……大丈夫よ何を焦ってるの私。バトルはまだ始まったばかり、このくらいの華……持たせた方がむしろこちらの格好がつくというものッ」
それに相手はまだ抜け切れたというわけじゃない。
この先はコース最長のストレート。パワーで勝る以上どうとでもなるポイントだ。
「そうよ……。ふふ、むしろあの娘の希望を摘むのにいいポイントだわ」
そう思っていた、こちらにはまだ全くの余裕があると……。
◇◇◇
このストレート、コースで最も加速が要求されるポイントですの。
パワーの無いこの子にとっては最大の泣き所でもありますわ。
力強くアクセルを踏み切るわたくしのFASの隣、彼女のLKがブースト圧を上げていましたわ。
彼女にとってもここは仕掛けるポイント、むしろLKが最も得意とする戦場でございましてよ。
たやすく前に出た……いえ、出させたこのストレート。
さあ――今こそ度肝を抜く瞬間ですわッ!!
狙うはそう、コーナーのイン……そのさらに内側にある――ッ。
狙いは決して外しませんわ!!
◇◇◇
また抜かれた!?
いえ、あの娘はさっき私よりも前に出ていた。
加速が乗っていた分、此方を抜きやすかったという事ね。
でもそれだけじゃ――なんですって!!?
「あ、ありえない……! そ、そんなバカな!?」
だってそうでしょう。確かにFAはオーバースピードでコーナーへと入った。
横並びにアウトを取らざるを得なかったとはいえ、焦る必要はない。
あんな無茶な加速ではブレーキにも相応に気を付けなければならないからだ。
このLKの戦闘力ならアウトからでも抜き返せる。
相手が立ち上がりに手間取ってる間に優雅に再加速出来る。そのはずだったのに……。
ありえないものを見た。
◇◇◇
ガードレール外。
ギャラリーたちは派手な立ち回りを見せたFAに大歓声をあげざるを得なかった。
「うおおお!! な、なんだあのFA!? こ、コーナリングで加速して行きやがったぞ!!」
「うそだろおい!? どうやったらあんな事が出来る?!」
「普通コーナリングってのはスピードを落とさなきゃ抜けないはずだぜ? お、俺目がおかしくなっちまったのか!?」
◇◇◇
遠くに歓声を置き去りにしてわたくしは前へと出ましたの。
きっと皆さん驚いた事でしょうね。
これこそが師匠との特訓の成果……! この峠だからこそ使用できる秘技!
あのストレート終点のコーナーには小さな側溝が彫られておりますの。
これにイン側のタイヤを引っ掛ける事によって――スピードの減速をコーナリング中に取り戻す事が出来るんですわ!
本来オーバースピードで進入すればアウト側へ膨らむのは確実。
しかし、側溝に落としたタイヤがそれを防ぐんですわ!
進入時よりも鋭さを増しながら、コーナーを抜けて行くこの感覚っ!
わたくしも初めて聞いた時は耳を疑いました。
しかし師匠はこの技を熱心に教えて下さいましたわ。マシンのスペック差を埋める数少ない方法。
それは、マシンの軽さと旋回性能と――この技ですわ!
10
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
王太子に婚約破棄されたら、王に嫁ぐことになった
七瀬ゆゆ
恋愛
王宮で開催されている今宵の夜会は、この国の王太子であるアンデルセン・ヘリカルムと公爵令嬢であるシュワリナ・ルーデンベルグの結婚式の日取りが発表されるはずだった。
「シュワリナ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!!」
「ごきげんよう、アンデルセン様。挨拶もなく、急に何のお話でしょう?」
「言葉通りの意味だ。常に傲慢な態度な貴様にはわからぬか?」
どうやら、挨拶もせずに不躾で教養がなってないようですわね。という嫌味は伝わらなかったようだ。傲慢な態度と婚約破棄の意味を理解できないことに、なんの繋がりがあるのかもわからない。
---
シュワリナが王太子に婚約破棄をされ、王様と結婚することになるまでのおはなし。
小説家になろうにも投稿しています。
その公女、至極真面目につき〜デラム公女アリスタの婚約破棄ショー〜
ルーシャオ
恋愛
デラム公女アリスタは、婚約者であるクラルスク公爵家嫡男ヴュルストがいつも女性を取っ替え引っ替えして浮気していることにいい加減嫌気が差しました。
なので、真面目な公女としてできる手を打ち、やってやると決めたのです。
トレディエールの晩餐会で、婚約破棄ショーが幕を開けます。
【短編】公爵子息は王太子から愛しい彼女を取り戻したい
宇水涼麻
恋愛
ジノフィリアは王太子の部屋で婚約解消を言い渡された。
それを快諾するジノフィリア。
この婚約解消を望んだのは誰か?
どうやって婚約解消へとなったのか?
そして、婚約解消されたジノフィリアは?
初夜に「私が君を愛することはない」と言われた伯爵令嬢の話
拓海のり
恋愛
伯爵令嬢イヴリンは家の困窮の為、十七歳で十歳年上のキルデア侯爵と結婚した。しかし初夜で「私が君を愛することはない」と言われてしまう。適当な世界観のよくあるお話です。ご都合主義。八千字位の短編です。ざまぁはありません。
他サイトにも投稿します。
手のひら返しが凄すぎて引くんですけど
マルローネ
恋愛
男爵令嬢のエリナは侯爵令息のクラウドに婚約破棄をされてしまった。
地位が低すぎるというのがその理由だったのだ。
悲しみに暮れたエリナは新しい恋に生きることを誓った。
新しい相手も見つかった時、侯爵令息のクラウドが急に手のひらを返し始める。
その理由はエリナの父親の地位が急に上がったのが原因だったのだが……。
【完結】わたしの隣には最愛の人がいる ~公衆の面前での婚約破棄は茶番か悲劇ですよ~
岡崎 剛柔
恋愛
男爵令嬢であるマイア・シュミナールこと私は、招待された王家主催の晩餐会で何度目かの〝公衆の面前での婚約破棄〟を目撃してしまう。
公衆の面前での婚約破棄をしたのは、女好きと噂される伯爵家の長男であるリチャードさま。
一方、婚約を高らかに破棄されたのは子爵家の令嬢であるリリシアさんだった。
私は恥以外の何物でもない公衆の面前での婚約破棄を、私の隣にいた幼馴染であり恋人であったリヒトと一緒に傍観していた。
私とリヒトもすでに婚約を済ませている間柄なのだ。
そして私たちは、最初こそ2人で婚約破棄に対する様々な意見を言い合った。
婚約破棄は当人同士以上に家や教会が絡んでくるから、軽々しく口にするようなことではないなどと。
ましてや、公衆の面前で婚約を破棄する宣言をするなど茶番か悲劇だとも。
しかし、やがてリヒトの口からこんな言葉が紡がれた。
「なあ、マイア。ここで俺が君との婚約を破棄すると言ったらどうする?」
そんな彼に私が伝えた返事とは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる