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第8話
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その日の夜、何故だか寝付けなかった私は、ぼんやりと窓から外を眺めていた。
ゆっくりと月を見るのは初めて。大きい。それ以外の感想は持てなかった。
だけど、その時だった。下を見ると何かが動いているように見えた。あれは?
そう思ってじっと見ていると、それは段々と大きくなっていく。
……違う、近づいてきている。これは――人だ。
それは、私とあまり変わらないくらいの女の子。知っている、そうよく覚えている。妹だ。名前を呼ぶことも許されなかった私の妹。
嫌な感覚に襲われた、一瞬で首筋が寒くなるような……。
部屋の外へと駆け出していた。
◇◇◇
「どこ? ねぇどこなのクズ。返事しなさいよクズのお姉さま」
やっと突き止めた。まさか隣国に逃げ込んでいるなんて思わなかった。ここが誰の御屋敷か知らないけれど。
このわたしの手を煩わせたのだから、たっぷりとお仕置きをして差し上げなきゃ。
邪魔な玄関の扉を無造作に焼いて壊して、中へと進みました。
気に入らない、何この玄関? 悪趣味な煌びやかさ、目障りだわ!
杖を振るって振るって、とにかく焼いて刻んで押しつぶして――そしてそしてそして!!
はぁ、ちょっとスッキリしたわ。ほんのちょっぴりですけれど。
聞こえてくる足音が、ひとーつふたーつみーっつ………………ああっ! うっとうしい!!!
「族が侵入したぞ!」
「玄関の方だ!急げ!!」
うるさいわね、まったく。折角いい気分だったのに台無しだわ。
お姉さまの居場所を聞かないといけないのに、まあいいわ、こんなところにいる方々は皆殺しにしてしまえばいいのですから。
やって来ては吹き飛ばされていく兵士達。
まるで羽虫みたいで鬱陶しくてたまらない。
「何故、ここにいるの?」
懐かしい声が聞こえる。
「お久しぶり、クズ。随分と綺麗な服を着せて貰っていますのね。……あなたにそんなものが似合うと思って? ムカつくわ」
久しぶりに見たクズの姿、いつも同じぼろ切れを着ていたのに。いつも肌を汚していたのに。
今の姿は目障りな程に小奇麗にしていて、本当にむかついたわ。
「貴女は王子と婚約してお城に住んでいたはず、どうしてここに?」
「王子? ああ、あのすぐに壊れたおもちゃの事ね。全く拍子抜けでしたわ、少し痛めつけた程度でみっともなくわめき散らして。挙句の果てには片目を潰しただけで、汚い悲鳴を上げたのよ? クズのあなたでも声一つあげなかったのに。つまらなかった、本当に」
思い出しただけでもイライラしてくる。せっかくの端正な顔立ちを簡単に崩して、涙に涎を垂らして、汚らしくて仕方がなかった。あまりに簡単に壊れちゃったから、飽きて処分して差し上げました。持ち主として責任は取らないと、ね。
「王子様だけじゃない、城の人間は大臣も騎士も王様だって、みーんな簡単に死んでしまったわ。あなたを生んだお母さまに至っては、メイドに殺される程度でしたの。それを知った時は思わず笑ってしまいました」
その時、お父さまは庭師に殺されていた。あんなに醜く歪んだ顔をされたのは初めて見ました。面白かったけれどいつまでも見られたものじゃなかった、だって飽きは来るんですもの。
他のおもちゃを探したけれど、おもちゃどうして勝手に殺し合って結局わたし一人。
「つまらなかったわ、みんな簡単に死んで。それで思いましたの、周りの人間は全員あなた以下でしか無かった。どんなに痛めつけても絶対に壊れないおもちゃ、必死に探したのよ? けど不思議なのは、どんなに汚らわしくても姉妹なのねわたし達、ここにたどり着くことが出来たんですもの」
「……何が言いたいの?」
「わたしの元へ戻りなさいなクズのお姉さま。あなたじゃないと長く楽しめそうに無いの、それに気づいたから……今度は大事に痛めつけてあげますわ」
わたしはクズに向かって手を伸ばした。
クズの顔、その目。いつの間にか潰したはずの目も元に戻っていて、きっとこのクズはどんな傷でも治す事が出来るのだと確信しました。これ以上ないおもちゃ。
「さぁ……」
「いい加減になさったらどうなの?!」
耳障りな声、それが玄関に響いてきた。
品の良さそうな顔、立ち振る舞い。そして自分に対して絶対の自信を持っていそうな態度。
何もかもが許しがたい、見ているだけではらわたが煮えくり返りそう。
「どなたかしら? 今姉妹で大事なお話をしているの、部外者が口を挟まないで」
「部外者ですって!? わたくしはこの屋敷のものです! 勝手に入ってきて暴れ回ってるあなたの狼藉を看過出来ませんわ! ねぇ兄様?」
その少女の問いかけた先を見れば、美しい顔をした男性がいた。どこかで見たような……。
「僕はこの屋敷の主だよお嬢さん。綺麗な淑女の来訪は基本的に歓迎している我が家だけれど、流石にこうも好き勝手にされては否が応でも対応せざるを得ないよ」
「あらごめんなさい、わたしはクズのお姉さまを迎えに来ただけなのですわ? ……そうだわ、あなた達が匿っていたのね?」
「それが? 今は僕の客人なんだ、いくら実の姉妹でも屋敷の人間に無断で連れ去ろうなんてマナーがなっていないと思わないかいレディー?」
その立ち振る舞い、まるで舞台の上で観客の視線を独り占めする主演役者のように堂々と優雅に。
綺麗な方。……壊してあげたくなるわね!
「クズ、あなたはここでは随分と可愛がられているようね? だったら、今のあなたのご主人様をわたしが壊したらどうなるのかしら?」
「何?」
素早く魔法の風を纏ったわたしは、その美丈夫の背後に回ってご尊顔に杖を突き付けてあげました。
「これは……素直に油断したと認めるべきかな」
「! ……離しなさい」
「へぇ、クズ。あなたってそんな顔も出来たんですのね」
僅か、知らない人間からすれば何も変わっていないレベルで眉間に皺を寄せるクズ。
まるで知らない顔。わたしの知らないクズの表情を引き出したこの男。……腹が立つ。
「別に人質のつもりもないわ、だって最後にはみんな片付けてしまうんですもの」
「兄様!? あなた、よくもわたくしの兄を!!」
「負傷者の方は全て避難させました! お嬢様も、ここは危険ですのでどうかお下がりを!!」
いつの間にかメイド姿の女も出て来て、益々獲物が増えてしまったわ。
「あなたはどうするの? このままわたしに新しいご主人様を殺されるのを黙って見ているのかしら?」
ゆっくりと月を見るのは初めて。大きい。それ以外の感想は持てなかった。
だけど、その時だった。下を見ると何かが動いているように見えた。あれは?
そう思ってじっと見ていると、それは段々と大きくなっていく。
……違う、近づいてきている。これは――人だ。
それは、私とあまり変わらないくらいの女の子。知っている、そうよく覚えている。妹だ。名前を呼ぶことも許されなかった私の妹。
嫌な感覚に襲われた、一瞬で首筋が寒くなるような……。
部屋の外へと駆け出していた。
◇◇◇
「どこ? ねぇどこなのクズ。返事しなさいよクズのお姉さま」
やっと突き止めた。まさか隣国に逃げ込んでいるなんて思わなかった。ここが誰の御屋敷か知らないけれど。
このわたしの手を煩わせたのだから、たっぷりとお仕置きをして差し上げなきゃ。
邪魔な玄関の扉を無造作に焼いて壊して、中へと進みました。
気に入らない、何この玄関? 悪趣味な煌びやかさ、目障りだわ!
杖を振るって振るって、とにかく焼いて刻んで押しつぶして――そしてそしてそして!!
はぁ、ちょっとスッキリしたわ。ほんのちょっぴりですけれど。
聞こえてくる足音が、ひとーつふたーつみーっつ………………ああっ! うっとうしい!!!
「族が侵入したぞ!」
「玄関の方だ!急げ!!」
うるさいわね、まったく。折角いい気分だったのに台無しだわ。
お姉さまの居場所を聞かないといけないのに、まあいいわ、こんなところにいる方々は皆殺しにしてしまえばいいのですから。
やって来ては吹き飛ばされていく兵士達。
まるで羽虫みたいで鬱陶しくてたまらない。
「何故、ここにいるの?」
懐かしい声が聞こえる。
「お久しぶり、クズ。随分と綺麗な服を着せて貰っていますのね。……あなたにそんなものが似合うと思って? ムカつくわ」
久しぶりに見たクズの姿、いつも同じぼろ切れを着ていたのに。いつも肌を汚していたのに。
今の姿は目障りな程に小奇麗にしていて、本当にむかついたわ。
「貴女は王子と婚約してお城に住んでいたはず、どうしてここに?」
「王子? ああ、あのすぐに壊れたおもちゃの事ね。全く拍子抜けでしたわ、少し痛めつけた程度でみっともなくわめき散らして。挙句の果てには片目を潰しただけで、汚い悲鳴を上げたのよ? クズのあなたでも声一つあげなかったのに。つまらなかった、本当に」
思い出しただけでもイライラしてくる。せっかくの端正な顔立ちを簡単に崩して、涙に涎を垂らして、汚らしくて仕方がなかった。あまりに簡単に壊れちゃったから、飽きて処分して差し上げました。持ち主として責任は取らないと、ね。
「王子様だけじゃない、城の人間は大臣も騎士も王様だって、みーんな簡単に死んでしまったわ。あなたを生んだお母さまに至っては、メイドに殺される程度でしたの。それを知った時は思わず笑ってしまいました」
その時、お父さまは庭師に殺されていた。あんなに醜く歪んだ顔をされたのは初めて見ました。面白かったけれどいつまでも見られたものじゃなかった、だって飽きは来るんですもの。
他のおもちゃを探したけれど、おもちゃどうして勝手に殺し合って結局わたし一人。
「つまらなかったわ、みんな簡単に死んで。それで思いましたの、周りの人間は全員あなた以下でしか無かった。どんなに痛めつけても絶対に壊れないおもちゃ、必死に探したのよ? けど不思議なのは、どんなに汚らわしくても姉妹なのねわたし達、ここにたどり着くことが出来たんですもの」
「……何が言いたいの?」
「わたしの元へ戻りなさいなクズのお姉さま。あなたじゃないと長く楽しめそうに無いの、それに気づいたから……今度は大事に痛めつけてあげますわ」
わたしはクズに向かって手を伸ばした。
クズの顔、その目。いつの間にか潰したはずの目も元に戻っていて、きっとこのクズはどんな傷でも治す事が出来るのだと確信しました。これ以上ないおもちゃ。
「さぁ……」
「いい加減になさったらどうなの?!」
耳障りな声、それが玄関に響いてきた。
品の良さそうな顔、立ち振る舞い。そして自分に対して絶対の自信を持っていそうな態度。
何もかもが許しがたい、見ているだけではらわたが煮えくり返りそう。
「どなたかしら? 今姉妹で大事なお話をしているの、部外者が口を挟まないで」
「部外者ですって!? わたくしはこの屋敷のものです! 勝手に入ってきて暴れ回ってるあなたの狼藉を看過出来ませんわ! ねぇ兄様?」
その少女の問いかけた先を見れば、美しい顔をした男性がいた。どこかで見たような……。
「僕はこの屋敷の主だよお嬢さん。綺麗な淑女の来訪は基本的に歓迎している我が家だけれど、流石にこうも好き勝手にされては否が応でも対応せざるを得ないよ」
「あらごめんなさい、わたしはクズのお姉さまを迎えに来ただけなのですわ? ……そうだわ、あなた達が匿っていたのね?」
「それが? 今は僕の客人なんだ、いくら実の姉妹でも屋敷の人間に無断で連れ去ろうなんてマナーがなっていないと思わないかいレディー?」
その立ち振る舞い、まるで舞台の上で観客の視線を独り占めする主演役者のように堂々と優雅に。
綺麗な方。……壊してあげたくなるわね!
「クズ、あなたはここでは随分と可愛がられているようね? だったら、今のあなたのご主人様をわたしが壊したらどうなるのかしら?」
「何?」
素早く魔法の風を纏ったわたしは、その美丈夫の背後に回ってご尊顔に杖を突き付けてあげました。
「これは……素直に油断したと認めるべきかな」
「! ……離しなさい」
「へぇ、クズ。あなたってそんな顔も出来たんですのね」
僅か、知らない人間からすれば何も変わっていないレベルで眉間に皺を寄せるクズ。
まるで知らない顔。わたしの知らないクズの表情を引き出したこの男。……腹が立つ。
「別に人質のつもりもないわ、だって最後にはみんな片付けてしまうんですもの」
「兄様!? あなた、よくもわたくしの兄を!!」
「負傷者の方は全て避難させました! お嬢様も、ここは危険ですのでどうかお下がりを!!」
いつの間にかメイド姿の女も出て来て、益々獲物が増えてしまったわ。
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