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第5話 大団円
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「お待ち下さい皆々様! ここは双方の代表者を一人決め、その勝敗で全てを決めるなど如何でござんしょ?」
「むぅ……。しかし、ペルペル。その代表には誰が? いや、やはりここは俺が行こう。自分達の式を邪魔されているからな。貴様に対するつまらんケチをいつまでもつけさせる訳にはいかん」
「ダンダン……。いえ、その心配は無用ですわ。何故なら、このわたくしが代表としてお役目を果たす所存!」
「な、なんだって!? ペルケ、正気なのかい? だが、俺は君を傷つける事は出来ない」
どうやら向こうの代表はリオさんのご様子。
では速攻で終わらせるとしましょう。わたくしも流石に鶏冠に来ております故!
「そちらが来ないのなら一瞬で終わらせちまいますの!! はぁあ!!」
「え?」
わたくしは勢いよくジャンプ! リオさんのド頭に乗っかって、両足でロックであます!
「はいぃぃぃ!!!」
「ぐほぉ!!?」
そっから目いっぱいにバク転にござい! 見事! 空中を舞うわたくしとリオさんのお体! リオさんは受け身を取る事も出来ずに地面にぶちゅうですわ!!
そしてそのままわたくしは華麗に着地。会場内に拍手が巻き起こりますの。
「おお! 相変わらずお嬢のフランケンシュタイナーは見事やな!」
「ボクは前に暴漢に使ったノーザンライトボムも好きだけどね」
「いやいや、学園に乗り込んで来た不良の三半規管をズタズタにしたローリング・クレイドルも捨てがたい」
「ぐ、ぐふぅっ。見事、だ……ぜ」
「お坊ちゃまぁ!!?」
満身創痍のリオさんは御付きの人達に抱えられて会場から出て行かれました。
少々やり過ぎたかしら。
「はぁ、凄いなぁペルペル殿は。僕なんて何の役にも立たなかったよ」
「そのような事はありませんわシグナス様。わたくしが出ていけたのも、貴方様が諫めようとしてくれた事が切っ掛けですの。わたくし、あの時のリオさんの対応に思わずカチンときちゃったのでげす」
「先輩! かっこよかったですよ、もう感激です!! でもあんな勘違いストーカー野郎にはもっときっつくジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスホールドでもぶちかましてやればよかったと思います!」
「まぁ! でもこれで危機は去りましたわ。早く式を再開しなければ」
そうして、つつがなく結婚式は進み、
「ではその唇、今日を以って俺のものとさせて頂く」
「バッチコーイ!」
「ひゅ~ひゅ~! ですの!」
ブーケトスを迎えました。
「せんぱ~い! そぅれっ!」
「あ! っとっとっと。ふぅ……。もうトイーモさん、ブーケトスは平等でなければなりませんのよ?」
「みんなに相談してから投げてるから問題ありませ~ん!!」
「まぁ!」
◇◇◇
「いやはや、彼女は随分と慕われているのだね。みんなペルペル殿の周りに集まって騒いでいるよ」
「当たり前だろう。ペルペルはこの俺が憧れた元婚約者だぞ?」
昼の公民館の庭先では、数多くの料理が並べられている。そのメニューは全て新婦であるトイーモが考え、彼女が主導となって手作りしたものばかり。
ペルケはその味に舌鼓を打ち、満足気に顔をとろけさせている。
そんな彼女の周りでは、新婦であるトイーモを始め、学友達が集まって今日の暴漢退治についてで話が盛り上がっていた。
その様子を少し離れたところで観察する男が二人。
新郎であるダンダーリオットと――その遠い親戚であるシグナスだ。
「憧れとは? 大体どうして彼女との交際を止めてしまったのか理由を聞いていなかったけど」
「俺はペルペルを好きだ。その気持ちは嘘では無く、今も陰りは無い。だが、いつの頃かその気持ちが愛とは別のものとは違う事に気付いたのだ。見ていて飽きない面白い女。あの女を眺めているだけで満足している自分がいた。そんな時俺とほぼ同じ感情を持ったトイーモと知り合った。ペルペルの後輩だと話は聞いていたが。彼女は言った『貴方も先輩を推しているのね』とな。それで自分の感情の正体に気付いたのだ。これでは駄目だと思った、不誠実であると。それと同時に同好の士としてトイーモに惹かれてしまった。それが婚約を解消した理由だ。が、もっとも、正式に婚約を破棄するまでトイーモとは手すら握った事も無かったがな」
はっはっは。そう笑うダンダーリオットを、シグナスは不思議なものを見る目で見つめた。
彼の知るダンダーリオットとは、どこか傲慢ですらある自分主体の面を持っていたからだ。恐らく、それを変えてくれたのがペルケなのだろうと思った。
「でも、僕は彼女の婚約者として相応しいのだろうか? ペルペル殿はすごい、レースしか取り柄の無い男はつまらないんじゃないかとも思う」
「そんな事は知らん。だが、俺よりもあいつの隣が相応しい男は貴様以外には知らんな。少なくとも、ペルペルのあの笑顔を見る限りは、つまらない生活は送ってはいないんだろう」
「二人とも~! こっちに来て御飯を食べましょうですわ~!」
「さて行くか。貴様もいつまでもクヨクヨと悩むなよ。レースの上での貴様はいつも無敵だった。その時の心持ちがあれば、ペルペルを真に射止める事も出来るだろう」
「言ってくれるなぁ。でも、頑張るしかないか。……彼女に一目惚れしちゃったなんて、恥ずかしくて君以外には言えてないしね」
男達は口元をクスリとさせ、互いに肩をすくめた。
今日、一つのカップルが幸せを手に入れた。
「ペルペル殿、君は楽しんでいるかい?」
「はいざます! わたくし、人生で今が一番楽しいでござりゃんせ!」
「はは。……うぅんこの楽しさに勝つのは厳しいか。いや、強敵程ぶつかっていかないとね! 無敵で行くぞ!」
「おお! なんだか知りゃしませんが、カッコイイでござあますシグナス様!」
そしてまた、新たな恋が実り始める……のかもしれない。
「むぅ……。しかし、ペルペル。その代表には誰が? いや、やはりここは俺が行こう。自分達の式を邪魔されているからな。貴様に対するつまらんケチをいつまでもつけさせる訳にはいかん」
「ダンダン……。いえ、その心配は無用ですわ。何故なら、このわたくしが代表としてお役目を果たす所存!」
「な、なんだって!? ペルケ、正気なのかい? だが、俺は君を傷つける事は出来ない」
どうやら向こうの代表はリオさんのご様子。
では速攻で終わらせるとしましょう。わたくしも流石に鶏冠に来ております故!
「そちらが来ないのなら一瞬で終わらせちまいますの!! はぁあ!!」
「え?」
わたくしは勢いよくジャンプ! リオさんのド頭に乗っかって、両足でロックであます!
「はいぃぃぃ!!!」
「ぐほぉ!!?」
そっから目いっぱいにバク転にござい! 見事! 空中を舞うわたくしとリオさんのお体! リオさんは受け身を取る事も出来ずに地面にぶちゅうですわ!!
そしてそのままわたくしは華麗に着地。会場内に拍手が巻き起こりますの。
「おお! 相変わらずお嬢のフランケンシュタイナーは見事やな!」
「ボクは前に暴漢に使ったノーザンライトボムも好きだけどね」
「いやいや、学園に乗り込んで来た不良の三半規管をズタズタにしたローリング・クレイドルも捨てがたい」
「ぐ、ぐふぅっ。見事、だ……ぜ」
「お坊ちゃまぁ!!?」
満身創痍のリオさんは御付きの人達に抱えられて会場から出て行かれました。
少々やり過ぎたかしら。
「はぁ、凄いなぁペルペル殿は。僕なんて何の役にも立たなかったよ」
「そのような事はありませんわシグナス様。わたくしが出ていけたのも、貴方様が諫めようとしてくれた事が切っ掛けですの。わたくし、あの時のリオさんの対応に思わずカチンときちゃったのでげす」
「先輩! かっこよかったですよ、もう感激です!! でもあんな勘違いストーカー野郎にはもっときっつくジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスホールドでもぶちかましてやればよかったと思います!」
「まぁ! でもこれで危機は去りましたわ。早く式を再開しなければ」
そうして、つつがなく結婚式は進み、
「ではその唇、今日を以って俺のものとさせて頂く」
「バッチコーイ!」
「ひゅ~ひゅ~! ですの!」
ブーケトスを迎えました。
「せんぱ~い! そぅれっ!」
「あ! っとっとっと。ふぅ……。もうトイーモさん、ブーケトスは平等でなければなりませんのよ?」
「みんなに相談してから投げてるから問題ありませ~ん!!」
「まぁ!」
◇◇◇
「いやはや、彼女は随分と慕われているのだね。みんなペルペル殿の周りに集まって騒いでいるよ」
「当たり前だろう。ペルペルはこの俺が憧れた元婚約者だぞ?」
昼の公民館の庭先では、数多くの料理が並べられている。そのメニューは全て新婦であるトイーモが考え、彼女が主導となって手作りしたものばかり。
ペルケはその味に舌鼓を打ち、満足気に顔をとろけさせている。
そんな彼女の周りでは、新婦であるトイーモを始め、学友達が集まって今日の暴漢退治についてで話が盛り上がっていた。
その様子を少し離れたところで観察する男が二人。
新郎であるダンダーリオットと――その遠い親戚であるシグナスだ。
「憧れとは? 大体どうして彼女との交際を止めてしまったのか理由を聞いていなかったけど」
「俺はペルペルを好きだ。その気持ちは嘘では無く、今も陰りは無い。だが、いつの頃かその気持ちが愛とは別のものとは違う事に気付いたのだ。見ていて飽きない面白い女。あの女を眺めているだけで満足している自分がいた。そんな時俺とほぼ同じ感情を持ったトイーモと知り合った。ペルペルの後輩だと話は聞いていたが。彼女は言った『貴方も先輩を推しているのね』とな。それで自分の感情の正体に気付いたのだ。これでは駄目だと思った、不誠実であると。それと同時に同好の士としてトイーモに惹かれてしまった。それが婚約を解消した理由だ。が、もっとも、正式に婚約を破棄するまでトイーモとは手すら握った事も無かったがな」
はっはっは。そう笑うダンダーリオットを、シグナスは不思議なものを見る目で見つめた。
彼の知るダンダーリオットとは、どこか傲慢ですらある自分主体の面を持っていたからだ。恐らく、それを変えてくれたのがペルケなのだろうと思った。
「でも、僕は彼女の婚約者として相応しいのだろうか? ペルペル殿はすごい、レースしか取り柄の無い男はつまらないんじゃないかとも思う」
「そんな事は知らん。だが、俺よりもあいつの隣が相応しい男は貴様以外には知らんな。少なくとも、ペルペルのあの笑顔を見る限りは、つまらない生活は送ってはいないんだろう」
「二人とも~! こっちに来て御飯を食べましょうですわ~!」
「さて行くか。貴様もいつまでもクヨクヨと悩むなよ。レースの上での貴様はいつも無敵だった。その時の心持ちがあれば、ペルペルを真に射止める事も出来るだろう」
「言ってくれるなぁ。でも、頑張るしかないか。……彼女に一目惚れしちゃったなんて、恥ずかしくて君以外には言えてないしね」
男達は口元をクスリとさせ、互いに肩をすくめた。
今日、一つのカップルが幸せを手に入れた。
「ペルペル殿、君は楽しんでいるかい?」
「はいざます! わたくし、人生で今が一番楽しいでござりゃんせ!」
「はは。……うぅんこの楽しさに勝つのは厳しいか。いや、強敵程ぶつかっていかないとね! 無敵で行くぞ!」
「おお! なんだか知りゃしませんが、カッコイイでござあますシグナス様!」
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