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第1話 破棄
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アタイ! ではなく、わたくしの名前はペルケ・ペルケケン。
このドーヘワ王国の貴族、ペルケケン家に生を受けた子爵令嬢でござあます。
人からは、「ノーザンライトボム」やら「フランケンシュタイナー」などどからかわれる事もございますだ。
そもそもにして我がペルケケン家とは…………なんて説明しても仕方ないですのことよね。
では早速の本題へゴーでありやす。
「ペルペル! 貴様との婚約を破棄させて貰う!!」
数日後に結婚式を控えたある日のこと、婚約者であるそのお方はわたくしの住まう屋敷を訪れると開口一番にそのようなことを申されました。
「はへ?」
思わずすっ頓狂な声を出してしまいまして、お恥ずかしい恥かしい。
「本当にごめんなさい先輩! ですけれども、私は自分の思いをこの胸の内にとどめておくことはできません! とどめておくには思いが重いかなって。ちょっと口からうぇって吐き出したくなっちゃう程に止められなかったんです!」
そうおっしゃるのは、学園の後輩にあたるトイーモさん。わたくしが実の妹のようにそれはそれは可愛がっていた女の子でしたのよ。おほほ。
そんな彼女が、わたくしの婚約者の隣に立って、このわたくしに向かって婚約の破棄をお願いしに来たのでがす。
「婚約者の貴様がいる身で他の女性を見初めるというのは、本来ならばあってはならんことだろうが、貴様ならば問題無しと判断して婚約を破棄させて貰うぞペルペル!!」
「『道ならぬ、恋の田畑に、燃ゆる春』という感じなもんで……どうでしょう?」
「う~ん、三七点ですの。もうちょっと捻りが欲しいと言いますか『恋の田畑に』の部分を入れ替えてみましょう。『田畑の恋に』みたいな感じにすると多少は玄人感が出せるのではありませんの?」
「なるほど……! さすがです先輩!!」
尊敬のまなざしを向けられると、どうしてこうも気持ちが良いのでしょうか。
「いや、そんなことはどうでもよいのだ! ペルペル、貴様認めてくれるな?」
再度問いを掛けてくるのは、学園でも一、二を争う美丈夫と名高い公爵家のダンダーリオット・タナ・カー・ジョン・ドゥーイット様でございます。
「しかしタナ様。婚約とはお互いの家同士での繋がりでもあるわけで、わたくしの一存では決められることではごじゃりんせん。一度両親に相談させて頂いてもよろしいですの? それくらいの時間なら待ってくれるわいね? ね?」
「ふん、良いだろう。俺は気が長い方だからな。いつまでも待っていよう」
こうしてわたくしは一旦自室に戻ると両親へと相談しました。
「うんいいんじゃない」
「はい」
戻ってきました。
「『うんいいんじゃない』との事であました。というわけで今日からわたくしとカー様は全くの完全なる赤の他人ということになります。トイーモさん、お幸せにね。……じゃあジョンもこれでコトが済んだのだからとっとと回れ右してお帰りくりゃしゃんせ。へいへい」
「ありがとうございます先輩……! 私、先輩の御恩は一生忘れません! 子供が出来たあともキッチリと先輩の雄大さを語り継がせていく所存です! あーしたッ!」
「代わりといってはなんだがペルペル。貴様に縁談を持って来てやったぞ、相手は救国の魔王とも名高い男だ。俺の代わりとしてこれ以上の代打は無いな」
ダンダンの言葉に思わず戸惑ってしまいました。
救国の魔王とはあの、どのような相手も沈めてきた百戦錬磨のあの救国の魔王の事でしょうか? この間の遠征でまた賞を獲得したとかしなかったとか。一ファンとしてつい嬉しくなって飛び跳ねてしまいましたわ。
「あらまあ本当でありますか!? それは是非ともサインが欲しいですわ!! ありがとうございますダンダン、愛しておりましたわ!!」
「その愛は先祖代々の墓場まで持っていこう。……さあこれで貴様と次に会う事も結婚式ぐらいしか無いだろう。さらばだ!!」
「式場はそのまま流用になると思います先輩。でも、先輩の好きなお料理を一杯手作りしますから楽しみにしてくださいね!!」
こうして、このわたくしペルケは彼のお人こと、シグナス・リード・アヴェニス・プリマベーラ様の元へと婚約に赴く事になりましたのです。
このドーヘワ王国の貴族、ペルケケン家に生を受けた子爵令嬢でござあます。
人からは、「ノーザンライトボム」やら「フランケンシュタイナー」などどからかわれる事もございますだ。
そもそもにして我がペルケケン家とは…………なんて説明しても仕方ないですのことよね。
では早速の本題へゴーでありやす。
「ペルペル! 貴様との婚約を破棄させて貰う!!」
数日後に結婚式を控えたある日のこと、婚約者であるそのお方はわたくしの住まう屋敷を訪れると開口一番にそのようなことを申されました。
「はへ?」
思わずすっ頓狂な声を出してしまいまして、お恥ずかしい恥かしい。
「本当にごめんなさい先輩! ですけれども、私は自分の思いをこの胸の内にとどめておくことはできません! とどめておくには思いが重いかなって。ちょっと口からうぇって吐き出したくなっちゃう程に止められなかったんです!」
そうおっしゃるのは、学園の後輩にあたるトイーモさん。わたくしが実の妹のようにそれはそれは可愛がっていた女の子でしたのよ。おほほ。
そんな彼女が、わたくしの婚約者の隣に立って、このわたくしに向かって婚約の破棄をお願いしに来たのでがす。
「婚約者の貴様がいる身で他の女性を見初めるというのは、本来ならばあってはならんことだろうが、貴様ならば問題無しと判断して婚約を破棄させて貰うぞペルペル!!」
「『道ならぬ、恋の田畑に、燃ゆる春』という感じなもんで……どうでしょう?」
「う~ん、三七点ですの。もうちょっと捻りが欲しいと言いますか『恋の田畑に』の部分を入れ替えてみましょう。『田畑の恋に』みたいな感じにすると多少は玄人感が出せるのではありませんの?」
「なるほど……! さすがです先輩!!」
尊敬のまなざしを向けられると、どうしてこうも気持ちが良いのでしょうか。
「いや、そんなことはどうでもよいのだ! ペルペル、貴様認めてくれるな?」
再度問いを掛けてくるのは、学園でも一、二を争う美丈夫と名高い公爵家のダンダーリオット・タナ・カー・ジョン・ドゥーイット様でございます。
「しかしタナ様。婚約とはお互いの家同士での繋がりでもあるわけで、わたくしの一存では決められることではごじゃりんせん。一度両親に相談させて頂いてもよろしいですの? それくらいの時間なら待ってくれるわいね? ね?」
「ふん、良いだろう。俺は気が長い方だからな。いつまでも待っていよう」
こうしてわたくしは一旦自室に戻ると両親へと相談しました。
「うんいいんじゃない」
「はい」
戻ってきました。
「『うんいいんじゃない』との事であました。というわけで今日からわたくしとカー様は全くの完全なる赤の他人ということになります。トイーモさん、お幸せにね。……じゃあジョンもこれでコトが済んだのだからとっとと回れ右してお帰りくりゃしゃんせ。へいへい」
「ありがとうございます先輩……! 私、先輩の御恩は一生忘れません! 子供が出来たあともキッチリと先輩の雄大さを語り継がせていく所存です! あーしたッ!」
「代わりといってはなんだがペルペル。貴様に縁談を持って来てやったぞ、相手は救国の魔王とも名高い男だ。俺の代わりとしてこれ以上の代打は無いな」
ダンダンの言葉に思わず戸惑ってしまいました。
救国の魔王とはあの、どのような相手も沈めてきた百戦錬磨のあの救国の魔王の事でしょうか? この間の遠征でまた賞を獲得したとかしなかったとか。一ファンとしてつい嬉しくなって飛び跳ねてしまいましたわ。
「あらまあ本当でありますか!? それは是非ともサインが欲しいですわ!! ありがとうございますダンダン、愛しておりましたわ!!」
「その愛は先祖代々の墓場まで持っていこう。……さあこれで貴様と次に会う事も結婚式ぐらいしか無いだろう。さらばだ!!」
「式場はそのまま流用になると思います先輩。でも、先輩の好きなお料理を一杯手作りしますから楽しみにしてくださいね!!」
こうして、このわたくしペルケは彼のお人こと、シグナス・リード・アヴェニス・プリマベーラ様の元へと婚約に赴く事になりましたのです。
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