2 / 5
第2話
しおりを挟む
学園に入学しそこそこ止まりを常にキープし続け、地味で、かつ孤立して目立たない程度に交友関係を広げる事でモブになりきった。そのつもりだったのだ。
だが、何を間違ったのか同学年の王子様に目をつけられたのだ。ずっと断り続けているのに、婚約を申し込んでくるその執拗さ。さすがに今日の婚約破棄劇には呆れ果てた。
ティムが勝手に私の肩を抱いて来て「いいね、マーシャ?」とか酔った事言い出したけれど、私は即座に断った。
「いや、普通に嫌です。お断りします。近づかないで下さい」
抑揚無い私の声が広間に響き渡る。当然、目を丸くして戸惑うティム。
(何度言ったら分かんのよこの人? 私にはもう婚約者がいるのよ。貴族の婚約がどれほど重要か理解してないの?)
何が起きてるのかわからないと言わんばかりの顔を見て、私は嫌々ながらも冷静に話を続けた。
「知っているように私には婚約者がいます。そもそも貴族同士の結婚は家同士の繋がりを重視するもの。王子ともあろうお方がそれを無視なさるおつもりですか?」
彼は答えに詰まり、周囲もざわめく。そう、この程度で言い負かされるような男でしかないのだ。
一丁前なのは肩書きだけか、このボンボン!!
(王族としての自覚がない。人も国の未来も想像出来ない。こんなのが王子様だなんて……。そんな相手と結婚するのは、もはや拷問以外の何物でもないでしょうよ)
私は皮肉を込めて、彼に冷ややかに告げた。
「大体相手が気に入らないからと、正式に婚約関係を解消した訳でもないのに他の令嬢を口説くなど。そんな浮気性で無責任な方とは結婚しろと?」
私の視線がヴェラに向く。その顔は相変わらず涼しく、しかしその目の奥には王子に対する嫌気が見えていた。
彼女も嫌々って訳ね。そりゃこんな王子が婚約者じゃあ仕方ない。
(このまま帰っちゃダメだろうか? これでも友人と卒業後の事とか話したかったんだけど、もうそういう雰囲気じゃ無くなったし。友達も巻き込めないし)
地味に生きて来たとはいえ、仲の良い友達が居ないわけじゃない。でもこの状況で彼女達に話し掛けに行くのは迷惑が掛かる。
ならばせめて、さっさと退場したい。
だが私がその場を離れようとした瞬間、大広間の扉が重々しく開いた。その音に振り返ると、そこには黒い礼服に身を包んだ一人の男性が立っていた。
「失礼します」
その声には広間もさらにざわめく。
なんせその人物――彼は第二王子であり、馬鹿王子の異母弟。レオン・トーヴィーだった。
だが、何を間違ったのか同学年の王子様に目をつけられたのだ。ずっと断り続けているのに、婚約を申し込んでくるその執拗さ。さすがに今日の婚約破棄劇には呆れ果てた。
ティムが勝手に私の肩を抱いて来て「いいね、マーシャ?」とか酔った事言い出したけれど、私は即座に断った。
「いや、普通に嫌です。お断りします。近づかないで下さい」
抑揚無い私の声が広間に響き渡る。当然、目を丸くして戸惑うティム。
(何度言ったら分かんのよこの人? 私にはもう婚約者がいるのよ。貴族の婚約がどれほど重要か理解してないの?)
何が起きてるのかわからないと言わんばかりの顔を見て、私は嫌々ながらも冷静に話を続けた。
「知っているように私には婚約者がいます。そもそも貴族同士の結婚は家同士の繋がりを重視するもの。王子ともあろうお方がそれを無視なさるおつもりですか?」
彼は答えに詰まり、周囲もざわめく。そう、この程度で言い負かされるような男でしかないのだ。
一丁前なのは肩書きだけか、このボンボン!!
(王族としての自覚がない。人も国の未来も想像出来ない。こんなのが王子様だなんて……。そんな相手と結婚するのは、もはや拷問以外の何物でもないでしょうよ)
私は皮肉を込めて、彼に冷ややかに告げた。
「大体相手が気に入らないからと、正式に婚約関係を解消した訳でもないのに他の令嬢を口説くなど。そんな浮気性で無責任な方とは結婚しろと?」
私の視線がヴェラに向く。その顔は相変わらず涼しく、しかしその目の奥には王子に対する嫌気が見えていた。
彼女も嫌々って訳ね。そりゃこんな王子が婚約者じゃあ仕方ない。
(このまま帰っちゃダメだろうか? これでも友人と卒業後の事とか話したかったんだけど、もうそういう雰囲気じゃ無くなったし。友達も巻き込めないし)
地味に生きて来たとはいえ、仲の良い友達が居ないわけじゃない。でもこの状況で彼女達に話し掛けに行くのは迷惑が掛かる。
ならばせめて、さっさと退場したい。
だが私がその場を離れようとした瞬間、大広間の扉が重々しく開いた。その音に振り返ると、そこには黒い礼服に身を包んだ一人の男性が立っていた。
「失礼します」
その声には広間もさらにざわめく。
なんせその人物――彼は第二王子であり、馬鹿王子の異母弟。レオン・トーヴィーだった。
13
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は勝利する!
リオール
恋愛
「公爵令嬢エルシェイラ、私はそなたとの婚約破棄を今ここに宣言する!!!」
「やりましたわあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」
婚約破棄するかしないか
悪役令嬢は勝利するのかしないのか
はたして勝者は!?
……ちょっと支離滅裂です
私を選ばなかったせいで破滅とかざまぁ、おかげで悪役令嬢だった私は改心して、素敵な恋人できちゃった
高岩唯丑
恋愛
ナナは同級生のエリィをいびり倒していた。自分は貴族、エリィは平民。なのに魔法学園の成績はエリィの方が上。こんなの許せない。だからイジメてたら、婚約者のマージルに見つかって、ついでにマージルまで叩いたら、婚約破棄されて、国外追放されてしまう。
ナナは追放されたのち、自分の行いを改心したら、素敵な人と出会っちゃった?!
地獄の追放サバイバルかと思いきや毎日、甘々の生活?!
改心してよかった!
高慢な王族なんてごめんです! 自分の道は自分で切り開きますからお気遣いなく。
柊
恋愛
よくある断罪に「婚約でしたら、一週間程前にそちらの有責で破棄されている筈ですが……」と返した公爵令嬢ヴィクトワール・シエル。
婚約者「だった」シレンス国の第一王子であるアルベール・コルニアックは困惑するが……。
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しております。
【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?
桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。
天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。
そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。
「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」
イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。
フローラは天使なのか小悪魔なのか…
聖女とは国中から蔑ろにされるものと思っていましたが、どうやら違ったようです。婚約破棄になって、国を出て初めて知りました
珠宮さくら
恋愛
婚約者だけでなく、国中の人々から蔑ろにされ続けたアストリットは、婚約破棄することになって国から出ることにした。
隣国に行くことにしたアストリットは、それまでとは真逆の扱われ方をされ、驚くことになるとは夢にも思っていなかった。
※全3話。
役立たずの追放聖女は、可愛い神聖獣たちになつかれる唯一の存在でした
新野乃花(大舟)
恋愛
聖女の血を引くという特別な存在であることが示された少女、アリシラ。そんな彼女に目を付けたノラン第一王子は、その力を独り占めして自分のために利用してやろうと考え、アリシラの事を自身の婚約者として招き入れた。しかし彼女の力が自分の思い描いたものではなかったことに逆上したノランは、そのまま一方的にアリシラの事を婚約破棄の上で追放してしまう。すべてはアリシラの自業自得であるという事にし、深くは考えていなかったノランだったものの、この後判明するアリシラの特別な力を耳にしたとき、彼は心の底から自分の行いを後悔することとなるのであった…。
それって冤罪ですよね? 名誉棄損で訴えさせていただきます!
柊
恋愛
伯爵令嬢カトリーヌ・ベルテに呼び出された男爵令嬢アンヌ・コルネ。
手紙に書いてあった場所へ行くと、カトリーヌだけではなく、マリー・ダナ、イザベル・クレマンの3人に待ち受けられていた。
言われたことは……。
※pixiv、小説家になろう、カクヨムにも同じものを投稿しております。
婚約者のお姉さんには、悪意しかありません。それを身内だからと信じたあなたとは、婚約破棄するしかありませんよね?
珠宮さくら
恋愛
アリスの婚約者は、いい人で悪意に満ちているお姉さんだけが厄介だと思って、ずっと我慢して来た。
たが、その彼が身内の話を信じて、婚約者の話を全く信じてはくれなかったことで、婚約破棄することになったのだが……。
※全3話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる