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第2話

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 学園に入学しそこそこ止まりを常にキープし続け、地味で、かつ孤立して目立たない程度に交友関係を広げる事でモブになりきった。そのつもりだったのだ。

 だが、何を間違ったのか同学年の王子様に目をつけられたのだ。ずっと断り続けているのに、婚約を申し込んでくるその執拗さ。さすがに今日の婚約破棄劇には呆れ果てた。

 ティムが勝手に私の肩を抱いて来て「いいね、マーシャ?」とか酔った事言い出したけれど、私は即座に断った。

「いや、普通に嫌です。お断りします。近づかないで下さい」

 抑揚無い私の声が広間に響き渡る。当然、目を丸くして戸惑うティム。

(何度言ったら分かんのよこの人? 私にはもう婚約者がいるのよ。貴族の婚約がどれほど重要か理解してないの?)

 何が起きてるのかわからないと言わんばかりの顔を見て、私は嫌々ながらも冷静に話を続けた。

「知っているように私には婚約者がいます。そもそも貴族同士の結婚は家同士の繋がりを重視するもの。王子ともあろうお方がそれを無視なさるおつもりですか?」

 彼は答えに詰まり、周囲もざわめく。そう、この程度で言い負かされるような男でしかないのだ。
 一丁前なのは肩書きだけか、このボンボン!!

(王族としての自覚がない。人も国の未来も想像出来ない。こんなのが王子様だなんて……。そんな相手と結婚するのは、もはや拷問以外の何物でもないでしょうよ)

 私は皮肉を込めて、彼に冷ややかに告げた。

「大体相手が気に入らないからと、正式に婚約関係を解消した訳でもないのに他の令嬢を口説くなど。そんな浮気性で無責任な方とは結婚しろと?」

 私の視線がヴェラに向く。その顔は相変わらず涼しく、しかしその目の奥には王子に対する嫌気が見えていた。
 彼女も嫌々って訳ね。そりゃこんな王子が婚約者じゃあ仕方ない。

(このまま帰っちゃダメだろうか? これでも友人と卒業後の事とか話したかったんだけど、もうそういう雰囲気じゃ無くなったし。友達も巻き込めないし)

 地味に生きて来たとはいえ、仲の良い友達が居ないわけじゃない。でもこの状況で彼女達に話し掛けに行くのは迷惑が掛かる。
 ならばせめて、さっさと退場したい。

 だが私がその場を離れようとした瞬間、大広間の扉が重々しく開いた。その音に振り返ると、そこには黒い礼服に身を包んだ一人の男性が立っていた。

「失礼します」

 その声には広間もさらにざわめく。
 なんせその人物――彼は第二王子であり、馬鹿王子の異母弟。レオン・トーヴィーだった。
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