異世界帰りの男は知っていた、何事も力で解決した方が手っ取り早い~容赦しない事を覚えて来た男の蹂躙伝~

こまの ととと

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第9話 勘違いの解消

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 せめて励ましの言葉だけは送る事にしようじゃいか。

「と、取り敢えずは落ち着けよお前ら。仮にだ、仮に! 戻らなかったとしても、ここは……そう、発想の転換だよ! 今までの人生よりこれからの方が長いんだから、シフトして行くんだ! そう、これからの人生という奴をだな……」

「てめぇ!! 一人だけ無事だからって無責任な事言ってんじゃねぇぞチクショウ!!」

「江野君! さすがにそんな言葉を今すぐ受け入れるのは不可能だ! 僕だって、僕だって……うぅ」

「わ、わかったよ……。そうだよな、悪い。ちょっと俺も混乱しててさ……」

 二人の剣幕にたじろいでしまう。確かに俺が軽率だったかもしれないな。二人は俺のせいでこんな体になったっていうのに。

「クソがっ!! ……これじゃアイツに合わせる顔がねぇよ」

 両手で顔を覆う元イケメンヤンキーの現勝気な美少女(偽)。事情を知らなければグッとくる仕草だな。その事情を作ったのは俺だけどさ。

 しかしアイツ? 誰の事だ?

 そんな事を考えていた時、この異様な集団に近づく影があった。

「あ、あの~」

「うん? あれ、確かこいつは……」

 その小柄で気弱そうな少年――質の悪い不良から金を巻き上げられていた、あのいじめられっ子だ。

「その、この辺りにすずちゃ……いや中瀬君って男子が来ませんでしたか?」

「ッ!!?」

「中瀬? あぁ悪いな、俺はあんまり生徒の顔とか名前と知らなくてよ。あ、そうだ! これ、お前さんのだろ?」

 俺は左手に持っていた一万円をその名も知らぬ少年に返還した。
 するとそいつは驚いたような顔を俺に向けてくる。当たり前と言えば当たり前だろう、全く知らない奴が取り上げられていた自分の金を返したんだから。普通驚く。
 そう、俺はこの少年と知り合いでも何でもない。カツアゲの現場を遠くで見ていただけだ。

「こ、これどうしたんですか?! まさか喧嘩でもして取返したんじゃ」

「安心しろよ、俺が怪我してるように見えるか? ちょっとお話しただけさ」

「は、はぁ。でもどうしてこれが僕のお金だって?」

「偶々現場を見てただけさ。俺はああいう手合いが嫌いでね、勝手にやらせてもらった。だから気にせず懐に収めといてくれよ」

「ありがとうございます、本当に。僕もうどうしうようか「おいそりゃどういう事だ?!」と?」

 少年の声を遮り、元イケメンヤンキーの現勝気な美少女(偽)が俺に凄んで来た。何だこいつ急に?

「お前が金を巻き上げたんじゃないのかよ!」

「何言ってんだお前? 俺は巻き上げた奴から巻き上げて、たった今元の持ち主に返したんだよ。つーかそれがお前に何の関係が」

「俺は、キロが金をヤンキーに盗られたって言うから……それで飛び出した先にお前が一万円握りしめてて」

「え? あの~すいませんが何故貴女がぼくのあだ名を知ってるんですか?」

 質問に対して、ウッとまずそうなリアクションを取って黙り込む元イケメンヤンキーの現勝気な美少女(偽)。しかし、この少年はキロって呼ばれてるのか。異常に体重が軽いからとか? どう見ても小柄だし。……そんな訳無いか。

「あぁ、一ついいだろうか?」

 今まで黙っていた黄畠が割って入るように沈黙に切り込んでくる。何か事態を動かす重要な答えでも思いついたのだろうか?

「今の会話を察するに、江野君はこのキロ君が取り上げられたお金を取り返した、と?」

「おう、そうだな」

「で、こちらの人物は、君がキロ君からお金を盗ったと勘違いして君に突っかかって来た。……もしかしてだが、キロ君。君が探していた中瀬というのはこちらの人物の事かも知れない」

 …………あ、そうか! 確かにそれなら納得が行く。おそらくそれが答えで間違い無いだろう。あれ? これ俺やっちゃってない?
 俺と黄畠は元イケメンヤンキーの現勝気な美少女(偽)こと、推定中瀬の姿を改めて見る。
 キロと呼ばれた少年は全く事態について行けてないようだが、仕方ないわな。

「え~っと、何でこちらの女性が中瀬君になるんですか?」

「あ、ああそれはな……」

「ぅぅぅうあああああ!!! ああそうだよ! 俺が中瀬だ文句あるか?!!」

「いや何も無いよ。そんな怒鳴る事ねぇだろ」

 美女の迫力ある怒鳴り顔に思わず萎縮するキロ少年。
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