邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

文字の大きさ
上 下
284 / 290

第284話 邪神ちゃんの様子見の旅

しおりを挟む
 オピスの一件も終わって、ようやく平和な日々が戻ってきた。時々オピスの様子を見にドラコと一緒に出ていくものの、オピスもしっかり真面目にやっているようで、どこか雰囲気が柔らかくなった感じだった。あまりの変わりようにフェリスもドラコも驚いたものだが、おそらくどこか吹っ切れたのだろう。これならとりあえず安心できそうなので、簡単に話をして戻ってくるという風になっていた。
 職員を連れてきたレックスの街との間では交流も始まったらしい。あの場所もそのうち街として発展していくのだろう。

「そうか、オピスはあそこに留まる事にしたのか……」
 あの後初めてオピスの元へ出かけた帰り、フェリスとドラコはコネッホの居るモスレに立ち寄っていた。
 事情を聞いたコネッホはそのように呟いていた。
「そのようじゃな。まあ、あそこはサイコシスの屋敷のあった場所じゃからな。慕っておるのならば、離れたくもないじゃろうて。自分で派手に壊してしもうたしな」
 それに対して、ドラコはこのように推察していた。サイコシスの屋敷が壊れた原因にはドラコも絡んでいるが、原因はオピスなのだからここでは話さなかった。
「今回顔を出して驚いたわよ。あれだけあたしに対して敵意剥き出しだったオピスが、ものすごく柔らかい表情で出迎えたんだからね。まったく何があったのかしらね」
「だったら聞けばよかったでしょうに。さすがのあたいでも、オピスの心中までは察せないよ」
 フェリスの疑問に、コネッホは正論で返しておいた。
「でもさ、あたしがオピスに聞けると思う?」
「まあ、無理じゃろうの」
「ちょっとドラコ!」
 フェリスがさらに返すと、ドラコが即ツッコミを入れていた。的確過ぎる。
 目の前でギャーギャーと言い合うフェリスとドラコの姿に、さすがにコネッホも笑いを堪え切れなかった。
「あっはっはっはっ、相変わらずだなぁ、二人とも」
「なに笑っているのよ、コネッホ。あんたも責任取りなさいよね」
「フェリス、何を言っているんだ」
 コネッホが笑っていると、フェリスがぎろりと睨むような視線をコネッホに向ける。その姿にコネッホは少し焦りを覚えた。
「まったくそうじゃぞ。オピスが来たからといってわしらに連絡寄こしおってからに。解決したからよかったが、おかげでいろいろと面倒になったわい」
 ドラコにまで文句を言われるコネッホ。さすがに予想外なのか戸惑っている。
「それに加えて……、なんじゃこの有り様は! いい加減に片付けを覚えろ、バカもんが!」
 これまで触れないようにしてきたのだが、さすがにドラコは耐え切れなくなったようだった。
 そう、コネッホの家の中はまたとんでもなく散らかり放題だったのである。片付けられないウサギ、それがコネッホなのである。
「ドラコ、どこが散らかっているというんだ。これでもちゃんと分別できているんだぞ!」
「足の踏み場を見ろと言うんじゃ! 本当に一度ついた癖は直らんのう……」
 必死に言い訳をするコネッホだが、ドラコは甘くはなかった。いろいろと溜め込む癖のあったドラコですら片付けられるのだから、それはもうこの散らかり具合は怒らざるを得ない。
「いつまでも甘えるな。弟子を持ったんじゃろうが。少しはきちんと片付けるんじゃ!」
 さすがに耐え切れないドラコは、コネッホに雷を落としていた。
 するとコネッホは渋々部屋の片付けをし始めたのだった。まったくもって邪神というのは長生きであるがために、惰性に陥りやすいようだった。長生きというのも考え物なのである。
「それじゃ、あたしたちはそろそろフェリスメルに戻るわ。コネッホの事も時々見させてもらうわよ」
「やめてくれ」
 フェリスが席を立ってコネッホに声を掛けると、即座に拒否の反応するコネッホである。どれだけ掃除が嫌なのだろうか。だが、ドラコはもう甘くするつもりはないらしい。もう遠慮はなしないとはっきり言い放っていたのだから。フェリスもコネッホに同情する気がまったく起きなかったのである。
 フェリスにもドラコにもきっぱりと態度を示されたコネッホは、床に両手をついて落ち込んでいた。
「それじゃ、わしらは帰るからな」
「あ、ああ……。あたい、片付けられるようになるから、また……来てちょうだい」
 コネッホは落ち込んだまま、フェリスとドラコを見送ったのだった。

「ちょっとやり過ぎたかしらね」
「いや、あれくらいでも足りんじゃろうて。コネッホの面倒くさがりは筋金入りじゃからのう」
 フェリスメルに帰る道中、コネッホとのやり取りを思い出す二人。
「それにじゃ、今回の面倒事はコネッホがオピスに乗っかったのが悪い。結果としてはいい方向に転んだが、これはその罰としてしっかり受けてもらわんとな」
 ドラコは最年長者として厳しい意見のようだった。フェリスもこの言い分には同感である。実際さっきも本人に言った通りなのだから。
「とりあえず、これで安心してフェリスメルでのんびりできるわ。つき合わせちゃって悪かったわね、ドラコ」
「別に構わんぞ。わしらの仲じゃろうが」
 ドラコを気遣うフェリスだが、ドラコは特に気にしていないようだった。
 こうして、初めての様子を終えたフェリスとドラコは、のんびりとフェリスメルに戻ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

追放された【助言士】のギルド経営 不遇素質持ちに助言したら、化物だらけの最強ギルドになってました

柊彼方
ファンタジー
*『第14回ファンタジー小説大賞【大賞】受賞作』 1.2巻発売中! コミカライズ好評連載中! 「お前はもう用済みだ。ギルドから去れ」 不遇スキルである『鑑定』を持つ【助言士】ロイドは優秀な人材を見つけるために、最強ギルドと呼ばれる『太陽の化身』でボロ雑巾のように扱われていた。 そして、一通り勧誘を終えるとギルドマスターであるカイロスから用済みだと、追放されてしまう。 唐突な追放に打ちひしがれてしまうロイドだったが、エリスと名乗る女性に自分たちでギルドを作らないかと提案された。 エリスはなんと昔、ロイドが一言だけ助言をした底辺鍛冶師だったのだ。 彼女はロイドのアドバイスを三年間ひたすら守り続け、初級魔法を上級魔法並みに鍛え上げていた。 更にはあり得るはずもない無詠唱、魔法改変等を身につけていたのだ。 そんな事実に驚愕したロイドは、エリスとギルドを作ることを決意する。 そして、それなら不遇な素質持ちを集めよう。自分たちと同じ環境である人を誘おうというルールを設けた。 ロイドは不遇な素質を持つ人たちをギルドに加入させ、ただ一つのことを極めさせ始めた。一般レベルで戦えるようにするために。 だが、これが逆に最強への近道になってしまう。 そして、ロイドが抜けた太陽の化身では徐々に腐敗が始まり、衰退し始めていた。 新たな人材、策略。どんな手を使ってでもロイドたちを蹴落とそうとするが、すべて空回り。 これは、ロイドによって不遇な素質を極めた仲間たちが、ロイドとともに最強のギルドを作っていくような、そんな物語。

処理中です...