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第280話 邪神ちゃんの別れの時
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ひと晩、フェリスの眷属となった魔物たちと一緒に過ごした冒険者組合の職員たち。その結果、問題ないと判断したために、報告のためにレックスに戻る事になった。
「このような魔物も居るとは勉強になりました」
そう言って、フェリスたちに敬礼のようなポーズを取っていた。そこまでされると、悪い気はしないもののどこかむず痒くなるフェリスたちである。
「まぁ、魔物とはひと口にいっても、野良か主持ちでも変わるし、主持ちでも主によって変わるからね。まぁ、あたしが主ならこんなものよ」
フェリスはそう言いながら、腰に手を当てて笑っている。さすがにこの自慢げな態度にドラコとオピスはジト目を向けて、ラータは呆れ、マイオリーは笑っていた。変なところで調子に乗るのがフェリスの悪い癖である。
「では、ご主人様。ここの事は僕たちに任せて下さい」
「そうですよ。いい思い出はないですけれど、ここはご主人様と会った記念の場所ですからね」
魔物たちは口々にそう言ってくれている。これにはフェリスはにっこりするし、オピスは複雑な表情で顔を背けていた。やはりオピスはどこか後ろめたいのだろう。単純に慕われているフェリスが気に食わないだけかも知れないが、オピスはこれからそんな魔物たちを相手にしなければならないので、もしそうであるならばこれから先が思いやられるばかりである。
わいわいと話をする魔物たちを横目に、フェリスは改めてオピスを見る。
「まっ、別にあたしの事を好きになれなんて言わないわ。多分これから先も気が合う事はないでしょうし、変に合わせようとするよりも、自分のやりたい事をやる方がいいんじゃないの? コネッホみたいにさ」
フェリスの言葉に、きょとんと目を丸くするオピスだった。
「あたくしの……やりたい事か……」
「占いをしてるみたいだし、来た人占ってみるのもいいかもよ。当たるって評判らしいじゃないの」
フェリスはにししと笑いながらオピスに提案する。だが、文句を言ってくるかと思っていたフェリスに、予想外な反応が返ってくる。
「そうね、それもいいかも知れないですわね」
「おっとぉ?!」
前向きなオピスの言葉だった。
「勘違いしないで下さいな。あたくしは、あなたを許したわけではありません。ただ確かに、恨んで生きていくだけというのもつまらないと感じましたの。サイコシス様の研究も、純粋な気持ちで続けていきたいですしね」
やけにしおらしいオピスである。
「そっか。まっ、その決意が本物か、ドラコとたまに確認させてもらうわよ」
「あたくしを舐めている事を、後悔させて差し上げますわよ」
フェリスとオピスは、その間でバチバチと火花を散らしていた。本当に根本的に仲の悪い二人なのである。
「おい、そろそろいいか、二人とも。みんな待たされ過ぎて飽きてきておるぞ」
様子を見かねたドラコが声を掛けてくる。これにはさすがにフェリスも慌てたようである。
「悪いわね、みんな」
とりあえず謝るフェリスである。
「いえいえ。フェリス様が気の済むまでお話されてるのでしたら、いくらでもお待ちしますよ」
マイオリーはそういう事を言っていたが、さすがに今回はレックスの人間も居るので限度があるというものだった。そんなわけで、ラータがマイオリーを諫めていた。そしたらマイオリーは、
「それもそうでしたね。失礼致しました」
こちらもこちらで笑いながら謝罪していた。まったく、聖女がそれでいいのかと思うフェリスである。
「……ねえ、帰るのか帰らないのかはっきりして下さいません?」
オピスも呆れてツッコミを入れるくらいである。
「わしもさすがに付き合いきれん。さあ、とっとと背中に乗らんか」
ドラコはドラゴンの姿となって地べたに横たわる。レックスの職員たちは、ラータに手伝ってもらいながらその背中に乗り込んでいた。
「それじゃ、あたしたちは行くわよ。まあ心配要らないだろうけど、元気にやんなさいよね」
「あなたに心配されるほど、あたくしはやわではないわ。さっさと行ったらどうなのかしら」
口げんかをしているフェリスとオピスだが、どことなくその空気は和やかのように思えた。
「これ、そのくらいにしておかんか。そのまましてると置いていくぞ、フェリス」
すでに堪忍袋の緒が切れかかっているドラコは、フェリスを急かしている。なにせフェリス以外は既に全員が背中に乗っている状態だからだ。ちなみにマイオリーに懐いたビエールもちゃんと乗っている。
「それじゃ、あたしは行くわね。寂しくなってちょっかい掛けに来るんじゃないわよ」
「だ、誰が行くもんですか!」
意地悪そうに言うフェリスに、顔を真っ赤にして文句を返すオピス。その光景にドラコたちは苦笑いをするばかりだった。
そして、ぴょんと跳び上がって、フェリスはドラコの背中に乗った。
「それじゃあの、オピス。元気にしておるんじゃぞ」
「フェリスの鼻を明かすまで、死んでたまるものですか!」
上空へ舞い上がるドラコに、最後まで憎まれ口を叩くオピスである。
だが、その小さくなっていく姿を見ながら、オピスの頬には確かに光るものが流れていたのだった。
「このような魔物も居るとは勉強になりました」
そう言って、フェリスたちに敬礼のようなポーズを取っていた。そこまでされると、悪い気はしないもののどこかむず痒くなるフェリスたちである。
「まぁ、魔物とはひと口にいっても、野良か主持ちでも変わるし、主持ちでも主によって変わるからね。まぁ、あたしが主ならこんなものよ」
フェリスはそう言いながら、腰に手を当てて笑っている。さすがにこの自慢げな態度にドラコとオピスはジト目を向けて、ラータは呆れ、マイオリーは笑っていた。変なところで調子に乗るのがフェリスの悪い癖である。
「では、ご主人様。ここの事は僕たちに任せて下さい」
「そうですよ。いい思い出はないですけれど、ここはご主人様と会った記念の場所ですからね」
魔物たちは口々にそう言ってくれている。これにはフェリスはにっこりするし、オピスは複雑な表情で顔を背けていた。やはりオピスはどこか後ろめたいのだろう。単純に慕われているフェリスが気に食わないだけかも知れないが、オピスはこれからそんな魔物たちを相手にしなければならないので、もしそうであるならばこれから先が思いやられるばかりである。
わいわいと話をする魔物たちを横目に、フェリスは改めてオピスを見る。
「まっ、別にあたしの事を好きになれなんて言わないわ。多分これから先も気が合う事はないでしょうし、変に合わせようとするよりも、自分のやりたい事をやる方がいいんじゃないの? コネッホみたいにさ」
フェリスの言葉に、きょとんと目を丸くするオピスだった。
「あたくしの……やりたい事か……」
「占いをしてるみたいだし、来た人占ってみるのもいいかもよ。当たるって評判らしいじゃないの」
フェリスはにししと笑いながらオピスに提案する。だが、文句を言ってくるかと思っていたフェリスに、予想外な反応が返ってくる。
「そうね、それもいいかも知れないですわね」
「おっとぉ?!」
前向きなオピスの言葉だった。
「勘違いしないで下さいな。あたくしは、あなたを許したわけではありません。ただ確かに、恨んで生きていくだけというのもつまらないと感じましたの。サイコシス様の研究も、純粋な気持ちで続けていきたいですしね」
やけにしおらしいオピスである。
「そっか。まっ、その決意が本物か、ドラコとたまに確認させてもらうわよ」
「あたくしを舐めている事を、後悔させて差し上げますわよ」
フェリスとオピスは、その間でバチバチと火花を散らしていた。本当に根本的に仲の悪い二人なのである。
「おい、そろそろいいか、二人とも。みんな待たされ過ぎて飽きてきておるぞ」
様子を見かねたドラコが声を掛けてくる。これにはさすがにフェリスも慌てたようである。
「悪いわね、みんな」
とりあえず謝るフェリスである。
「いえいえ。フェリス様が気の済むまでお話されてるのでしたら、いくらでもお待ちしますよ」
マイオリーはそういう事を言っていたが、さすがに今回はレックスの人間も居るので限度があるというものだった。そんなわけで、ラータがマイオリーを諫めていた。そしたらマイオリーは、
「それもそうでしたね。失礼致しました」
こちらもこちらで笑いながら謝罪していた。まったく、聖女がそれでいいのかと思うフェリスである。
「……ねえ、帰るのか帰らないのかはっきりして下さいません?」
オピスも呆れてツッコミを入れるくらいである。
「わしもさすがに付き合いきれん。さあ、とっとと背中に乗らんか」
ドラコはドラゴンの姿となって地べたに横たわる。レックスの職員たちは、ラータに手伝ってもらいながらその背中に乗り込んでいた。
「それじゃ、あたしたちは行くわよ。まあ心配要らないだろうけど、元気にやんなさいよね」
「あなたに心配されるほど、あたくしはやわではないわ。さっさと行ったらどうなのかしら」
口げんかをしているフェリスとオピスだが、どことなくその空気は和やかのように思えた。
「これ、そのくらいにしておかんか。そのまましてると置いていくぞ、フェリス」
すでに堪忍袋の緒が切れかかっているドラコは、フェリスを急かしている。なにせフェリス以外は既に全員が背中に乗っている状態だからだ。ちなみにマイオリーに懐いたビエールもちゃんと乗っている。
「それじゃ、あたしは行くわね。寂しくなってちょっかい掛けに来るんじゃないわよ」
「だ、誰が行くもんですか!」
意地悪そうに言うフェリスに、顔を真っ赤にして文句を返すオピス。その光景にドラコたちは苦笑いをするばかりだった。
そして、ぴょんと跳び上がって、フェリスはドラコの背中に乗った。
「それじゃあの、オピス。元気にしておるんじゃぞ」
「フェリスの鼻を明かすまで、死んでたまるものですか!」
上空へ舞い上がるドラコに、最後まで憎まれ口を叩くオピスである。
だが、その小さくなっていく姿を見ながら、オピスの頬には確かに光るものが流れていたのだった。
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