278 / 290
第278話 邪神ちゃんの魔物の集落
しおりを挟む
あっという間にサイコシスの屋敷跡の魔物の集落まで戻ってくる。
「おーい、戻ったぞ」
空からドラコが呼び掛ければ、マイオリーとラータ、それと魔物たちが一斉に反応する。
「お帰りなさい、ドラコ様」
ドラコが着陸すると、マイオリーたちが駆け寄って出迎える。
「ぜえぜえ……、つ、着いたのか……?」
レックスの冒険者組合の職員たちはもうヘロヘロに疲れ切っていた。空を飛ぶなど初めての体験な上にドラコのスピードが速すぎたのだから仕方ない。
「その方たちはどなたなのですか?」
「ああ、行きがけに寄ったレックスの街の冒険者組合の職員じゃよ。ここの事を説明するために同行してもらったというわけじゃよ」
「なるほど、そうなのですか」
ついてきた人物の素性を聞いたマイオリーは、その肩書に納得がいった。確かにここは実際に見てもらった方が安心感が違うだろう。マイオリーはラータと顔を合わせながらこくりと頷いていた。
そうしている間に、レックスからやって来た職員はどうにか立ち直ってきていた。そして、どうにか落ち着いたところで、集落を案内する事になった。
ところが、集落に着いた職員たちは、驚きで固まってしまった。
見渡す限りの魔物たちなのである。だが、その姿からは威圧感を感じないために、余計の事職員たちは困惑して固まり続けていた。
「かっかっかっ、これだけの魔物を目にするのは初めてか。まあそうじゃろうのう。街の中に居ればそうそう魔物の実物を見る事など無いからな」
幼女姿に戻っていたドラコが大口を開けて笑っている。
「一応説明しておくが、こやつらは全員そこの白猫フェリスの魔力の影響を受けておる。眷属化しておるから、フェリスの意に沿わん事はやらかさんだろうて」
「もちろんだよ!」
ドラコの説明に、魔物たちは声を上げていた。
「俺たちは本当ならもうとっくに死んでたんだ。フェリス様のおかげでこうやって生きているんだし、従うのは当然だ」
「そうよそうよ」
一概に魔物といっても、性格には個体差がかなりあるようである。しかし、共通しているのはフェリスに対する忠誠心といったところだ。フェリスの方針には逆らわないというのは、ここに居る魔物たち全員の共通の意識となっていた。
「……分かりました。これなら確かに危険はなさそうですね」
レックスの職員は揃ってそういう認識を示したのだった。
「まあ、人間が来たっていうならおもてなしくらいしてやるよ。ただし、こちらに危害を加えないって条件はあるがな」
「だな。俺たちだって生きていたいからな。脅かすっていうんなら、抵抗はさせてもらうよ」
「……しっかり通達を出しておきます」
さすがにこの魔物たちの脅しには、屈さざるを得なかった。ちらっと見せられたさっきは確かに本物だったからだ。それを感じ取れるあたり、さすが冒険者組合の職員である。
「さて、オピスよ」
話がついたところで、ドラコがオピスに話を振る。
「何かしら」
つい斜に構えてしまうオピス。
「これからはここで頑張るんじゃぞ。せっかくサイコシスの屋敷の側なんじゃからな。慕っておるというのなら、しっかりその場は守ってやれ」
こう言われてしまうと、オピスは黙り込んでしまった。魔物に囲まれた生活とはいえ、慕っていた、いやそれ以上の感情だったかもしれない人物の側に居られるのだ。嬉しいはずである。
だが、オピスの心の中には複雑な感情が入り乱れていた。なにせ、その思い出の場所を自分の手で壊してしまったのだから。
「後悔するなら行動は慎むべきじゃったな。感情の制御という点では、お前さんもまだまだ未熟じゃよ」
「……」
悔しいが、まったく言い返せないオピスだった。
「かっかっかっ、たまには見に来るからな、しっかり精進しておけよ」
笑いながら歩いていくドラコの背中を見て、オピスはぎりっと歯を食いしばったのだった。
そこへ、今度はマイオリーとラータがやって来た。
「オピス」
「何かしら、ラータ。にっくき聖女と一緒に居るなんて、あなたも落ちぶれたものね」
睨みながらラータに対応するオピス。だが、ラータはそんな挑発には乗らなかった。
「なんとでも言うといい。今は昔とは違うという事ですから」
淡々と言葉を返すラータの横で、マイオリーはつい笑ってしまっていた。
「何がおかしいのかしら」
「すみませんね。ずいぶんと素直ではない方だと思いまして」
「何が言いたいのよ」
マイオリーの言葉に、すっかり牙を剥くオピス。そして、間にラータが割り込んでマイオリーを守っている。
「ずっと気持ちを秘められてきたとあってか、自分の思いを素直に表に出せてない、そのように感じたまでです」
マイオリーにこう指摘されて、不機嫌な表情を出すオピス。
「そうですね、そのくらい素直に感情を出された方がよろしいかと思います。あなたは本当はとても美しい方なのですから」
にっこりと微笑みながらマイオリーが言うものだから、オピスは顔を真っ赤にしていた。
「う、うるさいですわね。よくも恥ずかしげもなくそんな事を言えますわね!」
「やれやれ、やはり素直ではないですね、オピス」
ラータも呆れていた。
そんないろんなやり取りはあったものの、この魔物の集落は一応安全な場所という認識を伝える事ができたのであった。
それにしても、オピスは天邪鬼というかツンデレさんというか、なんとも難しい性格の邪神だったようだ。
「おーい、戻ったぞ」
空からドラコが呼び掛ければ、マイオリーとラータ、それと魔物たちが一斉に反応する。
「お帰りなさい、ドラコ様」
ドラコが着陸すると、マイオリーたちが駆け寄って出迎える。
「ぜえぜえ……、つ、着いたのか……?」
レックスの冒険者組合の職員たちはもうヘロヘロに疲れ切っていた。空を飛ぶなど初めての体験な上にドラコのスピードが速すぎたのだから仕方ない。
「その方たちはどなたなのですか?」
「ああ、行きがけに寄ったレックスの街の冒険者組合の職員じゃよ。ここの事を説明するために同行してもらったというわけじゃよ」
「なるほど、そうなのですか」
ついてきた人物の素性を聞いたマイオリーは、その肩書に納得がいった。確かにここは実際に見てもらった方が安心感が違うだろう。マイオリーはラータと顔を合わせながらこくりと頷いていた。
そうしている間に、レックスからやって来た職員はどうにか立ち直ってきていた。そして、どうにか落ち着いたところで、集落を案内する事になった。
ところが、集落に着いた職員たちは、驚きで固まってしまった。
見渡す限りの魔物たちなのである。だが、その姿からは威圧感を感じないために、余計の事職員たちは困惑して固まり続けていた。
「かっかっかっ、これだけの魔物を目にするのは初めてか。まあそうじゃろうのう。街の中に居ればそうそう魔物の実物を見る事など無いからな」
幼女姿に戻っていたドラコが大口を開けて笑っている。
「一応説明しておくが、こやつらは全員そこの白猫フェリスの魔力の影響を受けておる。眷属化しておるから、フェリスの意に沿わん事はやらかさんだろうて」
「もちろんだよ!」
ドラコの説明に、魔物たちは声を上げていた。
「俺たちは本当ならもうとっくに死んでたんだ。フェリス様のおかげでこうやって生きているんだし、従うのは当然だ」
「そうよそうよ」
一概に魔物といっても、性格には個体差がかなりあるようである。しかし、共通しているのはフェリスに対する忠誠心といったところだ。フェリスの方針には逆らわないというのは、ここに居る魔物たち全員の共通の意識となっていた。
「……分かりました。これなら確かに危険はなさそうですね」
レックスの職員は揃ってそういう認識を示したのだった。
「まあ、人間が来たっていうならおもてなしくらいしてやるよ。ただし、こちらに危害を加えないって条件はあるがな」
「だな。俺たちだって生きていたいからな。脅かすっていうんなら、抵抗はさせてもらうよ」
「……しっかり通達を出しておきます」
さすがにこの魔物たちの脅しには、屈さざるを得なかった。ちらっと見せられたさっきは確かに本物だったからだ。それを感じ取れるあたり、さすが冒険者組合の職員である。
「さて、オピスよ」
話がついたところで、ドラコがオピスに話を振る。
「何かしら」
つい斜に構えてしまうオピス。
「これからはここで頑張るんじゃぞ。せっかくサイコシスの屋敷の側なんじゃからな。慕っておるというのなら、しっかりその場は守ってやれ」
こう言われてしまうと、オピスは黙り込んでしまった。魔物に囲まれた生活とはいえ、慕っていた、いやそれ以上の感情だったかもしれない人物の側に居られるのだ。嬉しいはずである。
だが、オピスの心の中には複雑な感情が入り乱れていた。なにせ、その思い出の場所を自分の手で壊してしまったのだから。
「後悔するなら行動は慎むべきじゃったな。感情の制御という点では、お前さんもまだまだ未熟じゃよ」
「……」
悔しいが、まったく言い返せないオピスだった。
「かっかっかっ、たまには見に来るからな、しっかり精進しておけよ」
笑いながら歩いていくドラコの背中を見て、オピスはぎりっと歯を食いしばったのだった。
そこへ、今度はマイオリーとラータがやって来た。
「オピス」
「何かしら、ラータ。にっくき聖女と一緒に居るなんて、あなたも落ちぶれたものね」
睨みながらラータに対応するオピス。だが、ラータはそんな挑発には乗らなかった。
「なんとでも言うといい。今は昔とは違うという事ですから」
淡々と言葉を返すラータの横で、マイオリーはつい笑ってしまっていた。
「何がおかしいのかしら」
「すみませんね。ずいぶんと素直ではない方だと思いまして」
「何が言いたいのよ」
マイオリーの言葉に、すっかり牙を剥くオピス。そして、間にラータが割り込んでマイオリーを守っている。
「ずっと気持ちを秘められてきたとあってか、自分の思いを素直に表に出せてない、そのように感じたまでです」
マイオリーにこう指摘されて、不機嫌な表情を出すオピス。
「そうですね、そのくらい素直に感情を出された方がよろしいかと思います。あなたは本当はとても美しい方なのですから」
にっこりと微笑みながらマイオリーが言うものだから、オピスは顔を真っ赤にしていた。
「う、うるさいですわね。よくも恥ずかしげもなくそんな事を言えますわね!」
「やれやれ、やはり素直ではないですね、オピス」
ラータも呆れていた。
そんないろんなやり取りはあったものの、この魔物の集落は一応安全な場所という認識を伝える事ができたのであった。
それにしても、オピスは天邪鬼というかツンデレさんというか、なんとも難しい性格の邪神だったようだ。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる