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第278話 邪神ちゃんの魔物の集落
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あっという間にサイコシスの屋敷跡の魔物の集落まで戻ってくる。
「おーい、戻ったぞ」
空からドラコが呼び掛ければ、マイオリーとラータ、それと魔物たちが一斉に反応する。
「お帰りなさい、ドラコ様」
ドラコが着陸すると、マイオリーたちが駆け寄って出迎える。
「ぜえぜえ……、つ、着いたのか……?」
レックスの冒険者組合の職員たちはもうヘロヘロに疲れ切っていた。空を飛ぶなど初めての体験な上にドラコのスピードが速すぎたのだから仕方ない。
「その方たちはどなたなのですか?」
「ああ、行きがけに寄ったレックスの街の冒険者組合の職員じゃよ。ここの事を説明するために同行してもらったというわけじゃよ」
「なるほど、そうなのですか」
ついてきた人物の素性を聞いたマイオリーは、その肩書に納得がいった。確かにここは実際に見てもらった方が安心感が違うだろう。マイオリーはラータと顔を合わせながらこくりと頷いていた。
そうしている間に、レックスからやって来た職員はどうにか立ち直ってきていた。そして、どうにか落ち着いたところで、集落を案内する事になった。
ところが、集落に着いた職員たちは、驚きで固まってしまった。
見渡す限りの魔物たちなのである。だが、その姿からは威圧感を感じないために、余計の事職員たちは困惑して固まり続けていた。
「かっかっかっ、これだけの魔物を目にするのは初めてか。まあそうじゃろうのう。街の中に居ればそうそう魔物の実物を見る事など無いからな」
幼女姿に戻っていたドラコが大口を開けて笑っている。
「一応説明しておくが、こやつらは全員そこの白猫フェリスの魔力の影響を受けておる。眷属化しておるから、フェリスの意に沿わん事はやらかさんだろうて」
「もちろんだよ!」
ドラコの説明に、魔物たちは声を上げていた。
「俺たちは本当ならもうとっくに死んでたんだ。フェリス様のおかげでこうやって生きているんだし、従うのは当然だ」
「そうよそうよ」
一概に魔物といっても、性格には個体差がかなりあるようである。しかし、共通しているのはフェリスに対する忠誠心といったところだ。フェリスの方針には逆らわないというのは、ここに居る魔物たち全員の共通の意識となっていた。
「……分かりました。これなら確かに危険はなさそうですね」
レックスの職員は揃ってそういう認識を示したのだった。
「まあ、人間が来たっていうならおもてなしくらいしてやるよ。ただし、こちらに危害を加えないって条件はあるがな」
「だな。俺たちだって生きていたいからな。脅かすっていうんなら、抵抗はさせてもらうよ」
「……しっかり通達を出しておきます」
さすがにこの魔物たちの脅しには、屈さざるを得なかった。ちらっと見せられたさっきは確かに本物だったからだ。それを感じ取れるあたり、さすが冒険者組合の職員である。
「さて、オピスよ」
話がついたところで、ドラコがオピスに話を振る。
「何かしら」
つい斜に構えてしまうオピス。
「これからはここで頑張るんじゃぞ。せっかくサイコシスの屋敷の側なんじゃからな。慕っておるというのなら、しっかりその場は守ってやれ」
こう言われてしまうと、オピスは黙り込んでしまった。魔物に囲まれた生活とはいえ、慕っていた、いやそれ以上の感情だったかもしれない人物の側に居られるのだ。嬉しいはずである。
だが、オピスの心の中には複雑な感情が入り乱れていた。なにせ、その思い出の場所を自分の手で壊してしまったのだから。
「後悔するなら行動は慎むべきじゃったな。感情の制御という点では、お前さんもまだまだ未熟じゃよ」
「……」
悔しいが、まったく言い返せないオピスだった。
「かっかっかっ、たまには見に来るからな、しっかり精進しておけよ」
笑いながら歩いていくドラコの背中を見て、オピスはぎりっと歯を食いしばったのだった。
そこへ、今度はマイオリーとラータがやって来た。
「オピス」
「何かしら、ラータ。にっくき聖女と一緒に居るなんて、あなたも落ちぶれたものね」
睨みながらラータに対応するオピス。だが、ラータはそんな挑発には乗らなかった。
「なんとでも言うといい。今は昔とは違うという事ですから」
淡々と言葉を返すラータの横で、マイオリーはつい笑ってしまっていた。
「何がおかしいのかしら」
「すみませんね。ずいぶんと素直ではない方だと思いまして」
「何が言いたいのよ」
マイオリーの言葉に、すっかり牙を剥くオピス。そして、間にラータが割り込んでマイオリーを守っている。
「ずっと気持ちを秘められてきたとあってか、自分の思いを素直に表に出せてない、そのように感じたまでです」
マイオリーにこう指摘されて、不機嫌な表情を出すオピス。
「そうですね、そのくらい素直に感情を出された方がよろしいかと思います。あなたは本当はとても美しい方なのですから」
にっこりと微笑みながらマイオリーが言うものだから、オピスは顔を真っ赤にしていた。
「う、うるさいですわね。よくも恥ずかしげもなくそんな事を言えますわね!」
「やれやれ、やはり素直ではないですね、オピス」
ラータも呆れていた。
そんないろんなやり取りはあったものの、この魔物の集落は一応安全な場所という認識を伝える事ができたのであった。
それにしても、オピスは天邪鬼というかツンデレさんというか、なんとも難しい性格の邪神だったようだ。
「おーい、戻ったぞ」
空からドラコが呼び掛ければ、マイオリーとラータ、それと魔物たちが一斉に反応する。
「お帰りなさい、ドラコ様」
ドラコが着陸すると、マイオリーたちが駆け寄って出迎える。
「ぜえぜえ……、つ、着いたのか……?」
レックスの冒険者組合の職員たちはもうヘロヘロに疲れ切っていた。空を飛ぶなど初めての体験な上にドラコのスピードが速すぎたのだから仕方ない。
「その方たちはどなたなのですか?」
「ああ、行きがけに寄ったレックスの街の冒険者組合の職員じゃよ。ここの事を説明するために同行してもらったというわけじゃよ」
「なるほど、そうなのですか」
ついてきた人物の素性を聞いたマイオリーは、その肩書に納得がいった。確かにここは実際に見てもらった方が安心感が違うだろう。マイオリーはラータと顔を合わせながらこくりと頷いていた。
そうしている間に、レックスからやって来た職員はどうにか立ち直ってきていた。そして、どうにか落ち着いたところで、集落を案内する事になった。
ところが、集落に着いた職員たちは、驚きで固まってしまった。
見渡す限りの魔物たちなのである。だが、その姿からは威圧感を感じないために、余計の事職員たちは困惑して固まり続けていた。
「かっかっかっ、これだけの魔物を目にするのは初めてか。まあそうじゃろうのう。街の中に居ればそうそう魔物の実物を見る事など無いからな」
幼女姿に戻っていたドラコが大口を開けて笑っている。
「一応説明しておくが、こやつらは全員そこの白猫フェリスの魔力の影響を受けておる。眷属化しておるから、フェリスの意に沿わん事はやらかさんだろうて」
「もちろんだよ!」
ドラコの説明に、魔物たちは声を上げていた。
「俺たちは本当ならもうとっくに死んでたんだ。フェリス様のおかげでこうやって生きているんだし、従うのは当然だ」
「そうよそうよ」
一概に魔物といっても、性格には個体差がかなりあるようである。しかし、共通しているのはフェリスに対する忠誠心といったところだ。フェリスの方針には逆らわないというのは、ここに居る魔物たち全員の共通の意識となっていた。
「……分かりました。これなら確かに危険はなさそうですね」
レックスの職員は揃ってそういう認識を示したのだった。
「まあ、人間が来たっていうならおもてなしくらいしてやるよ。ただし、こちらに危害を加えないって条件はあるがな」
「だな。俺たちだって生きていたいからな。脅かすっていうんなら、抵抗はさせてもらうよ」
「……しっかり通達を出しておきます」
さすがにこの魔物たちの脅しには、屈さざるを得なかった。ちらっと見せられたさっきは確かに本物だったからだ。それを感じ取れるあたり、さすが冒険者組合の職員である。
「さて、オピスよ」
話がついたところで、ドラコがオピスに話を振る。
「何かしら」
つい斜に構えてしまうオピス。
「これからはここで頑張るんじゃぞ。せっかくサイコシスの屋敷の側なんじゃからな。慕っておるというのなら、しっかりその場は守ってやれ」
こう言われてしまうと、オピスは黙り込んでしまった。魔物に囲まれた生活とはいえ、慕っていた、いやそれ以上の感情だったかもしれない人物の側に居られるのだ。嬉しいはずである。
だが、オピスの心の中には複雑な感情が入り乱れていた。なにせ、その思い出の場所を自分の手で壊してしまったのだから。
「後悔するなら行動は慎むべきじゃったな。感情の制御という点では、お前さんもまだまだ未熟じゃよ」
「……」
悔しいが、まったく言い返せないオピスだった。
「かっかっかっ、たまには見に来るからな、しっかり精進しておけよ」
笑いながら歩いていくドラコの背中を見て、オピスはぎりっと歯を食いしばったのだった。
そこへ、今度はマイオリーとラータがやって来た。
「オピス」
「何かしら、ラータ。にっくき聖女と一緒に居るなんて、あなたも落ちぶれたものね」
睨みながらラータに対応するオピス。だが、ラータはそんな挑発には乗らなかった。
「なんとでも言うといい。今は昔とは違うという事ですから」
淡々と言葉を返すラータの横で、マイオリーはつい笑ってしまっていた。
「何がおかしいのかしら」
「すみませんね。ずいぶんと素直ではない方だと思いまして」
「何が言いたいのよ」
マイオリーの言葉に、すっかり牙を剥くオピス。そして、間にラータが割り込んでマイオリーを守っている。
「ずっと気持ちを秘められてきたとあってか、自分の思いを素直に表に出せてない、そのように感じたまでです」
マイオリーにこう指摘されて、不機嫌な表情を出すオピス。
「そうですね、そのくらい素直に感情を出された方がよろしいかと思います。あなたは本当はとても美しい方なのですから」
にっこりと微笑みながらマイオリーが言うものだから、オピスは顔を真っ赤にしていた。
「う、うるさいですわね。よくも恥ずかしげもなくそんな事を言えますわね!」
「やれやれ、やはり素直ではないですね、オピス」
ラータも呆れていた。
そんないろんなやり取りはあったものの、この魔物の集落は一応安全な場所という認識を伝える事ができたのであった。
それにしても、オピスは天邪鬼というかツンデレさんというか、なんとも難しい性格の邪神だったようだ。
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