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第273話 邪神ちゃんと魔物の扱い
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オピスと大量の魔物たちを前に、マイオリーとラータは警戒している。
「フェリス、これだけの魔物が居て本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うわ。最初の魔物たちはあたしの事をご主人様だとか言っていたし、この子たちも同じだと思うわよ」
ラータが確認をすると、フェリスは淡々とそう答えていた。しかし、簡単に信じられるものでもない。相手はなんといっても魔物なのだから。
すると、オピスより先に魔物たちが目を覚ます。そして、フェリスの姿を認めると、ざざっとフェリスの周りに集まってきた。
「ご主人様、誠にありがとうございます」
魔物たちがフェリスを取り囲んで首を垂れている。間違いなくこれは忠誠の態度である。
「いやあ……、ご主人様って言われても困るのよねぇ。というか一体何匹魔物が居たのよ」
フェリスは困り顔で周りを確認すると、ものすごい数の魔物が居たのである。フェリスをかばって魔法光線に倒れた魔物だって5、6匹は居たのだから。
「わたくしどもは、サイコシスの実験によって抜け殻にされていたのです。ですが、ご主人様の力によって、こうやって蘇る事ができたのです。こんなに嬉しい事はありません」
そう証言する魔物たち。1匹が証言すると周りが頷いているので、間違いなく事実という事なのだろう。やはり、サイコシスは無慈悲で冷酷な魔族だったのである。
フェリスを前にかしずく魔物たちを見て、ドラコたちもどう反応していいのやら困っていた。
「まあ、なんとか平和的に終わってよかったと思います。まさかあれだけの魔物がすべてフェリス様の配下になるとは、さすがですね」
マイオリーは両手を合わせて明るい声で場を収めようとしている。だが、その顔はどこか引きつっているのは言うまでもない話だった。
今回の事に一番困惑しているのはフェリスだが、この数の魔物を相手に戦う事がなくなってひと安心なのは間違いなかった。
「魔物たちの問題はあたしの胸三寸って事みたいだから、問題はオピスだけね」
「はい、そうでございます」
「俺たちを利用とした奴を信奉している奴だ。本当なら八つ裂きにしてやりたい」
「ですが、ここは堪えて主様にお任せ致します」
フェリスの言葉に、魔物たちはそのように話していた。
それにしても魔物たちが喋り出すとは思ってもみなかった。これもフェリスの能力による変化なのだろう。
フェリスもただの猫からサイコシスの実験で特殊な力を得た個体となったのだろうが、その力が何なのか、いまだに理解できていなかった。なにせその力は牛の毛艶を良くしたり、植物の成長を速めたり、哀れな魔物たちを甦らせたりと、生き物に作用するのは共通するものの効果の程度がばらけていたのだから。
それはそれとして気になるものの、実はそれ以外にも問題はあった。
「うーん、オピスの事は目を覚ますまで置いておいて、この魔物たちをどうしようかしらね。このまま連れていっても、魔物の群れを率いて攻めてきたとしか思われないでしょうし」
そう、フェリスの眷属となった魔物たちの扱いである。
フェリスたちは用事が落ち着いた事でこれから帰路に就くわけだが、さすがにこの数の魔物を率いて戻るわけにはいかなかった。
「ご主人様の命とあれば、我々はここに残っても構いません。せっかく救って頂いたのですし、迷惑をかけるのは我々の本意ではありません」
魔物たちも魔物たちでありながら、ものすごく理解力があった。これもフェリスの能力による影響なのだろうか。ほとんどの魔物が獣型なのだが、知性は人間や魔族にも劣らないレベルのようだった。これだけしっかりとした会話ができるのであるのならば、どうにか話し合いで解決でそうだ。
その結果、このサイコシスの屋敷の跡地に魔物たちは住処を造る事になった。というわけで、フェリスは能力を使い、崩れたサイコシスの屋敷は希望でそのままにしつつ、その近くに魔物たちが住む場所をこしらえていった。
土魔法を使って次々と家を造っていく様子を見て、魔物たちは尊敬のまなざしをフェリスに送っていた。
「さすが、さすがご主人様です!」
「すごい、俺たちの願う通りの家ができていっているぞ!」
眷属となった魔物たちは目を輝かせていた。その様子に、フェリスは困惑しながらも悪い気はしていなかった。
その間、ドラコはオピスの監視、マイオリーとラータは周囲の警戒をしていた。
すると、魔物の中の一体が、マイオリーへと近付いていった。
「お姉さん、いい香りがする」
「えっ?」
そう言ってぴょんとマイオリーの肩に飛び乗る魔物。魔物はリス型の魔物だった。
「ほう、聖女様に興味を持ったというのか? だったら、私の部下にしてあげてもいいですよ?」
「ネズミ、強そうだな。分かった、部下になる」
フェリスが土魔法で奮闘する中、何か勝手に話が進んでいるようだった。
「フェリス」
「何よ、ラータ」
「こやつに名前を付けてもいいかな?」
「いいわよ。一応眷属化はしてるけど、これだけの数、あたしが管理できるわけないからね」
住処造りに忙しい中、フェリスはラータの申し出を適当に了承していた。
とはいえ、一応の了承を得たラータは、マイオリーの肩に乗る魔物を見て名付けをする。
「君の名前はビエールです。ともに聖女に仕えようではないですか」
「聖女! この人が聖女、びっくり!」
名前を貰えた事よりも、興味を持った人物が聖女である事に驚いているビエールだった。
そんないろんな動きのある中、フェリスがなんとか魔物たちの住処を造り上げていた。
「はあ、疲れたわ。オピスのせいで精神的疲労の方が大きいわね。少し休ませてもらうわよ」
「ご苦労じゃったな、フェリス。……さて、後はこやつにどう落とし前をつけさせるかのう」
フェリスを労いながら、いまだに気を失ったままのオピスに厳しい視線を向けるドラコ。
まだ解決していない事は多いものの、どうにかひと息つける状態になったために、ドラコはマイオリーたちも呼んでフェリスの元に集まったのだった。
「フェリス、これだけの魔物が居て本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だと思うわ。最初の魔物たちはあたしの事をご主人様だとか言っていたし、この子たちも同じだと思うわよ」
ラータが確認をすると、フェリスは淡々とそう答えていた。しかし、簡単に信じられるものでもない。相手はなんといっても魔物なのだから。
すると、オピスより先に魔物たちが目を覚ます。そして、フェリスの姿を認めると、ざざっとフェリスの周りに集まってきた。
「ご主人様、誠にありがとうございます」
魔物たちがフェリスを取り囲んで首を垂れている。間違いなくこれは忠誠の態度である。
「いやあ……、ご主人様って言われても困るのよねぇ。というか一体何匹魔物が居たのよ」
フェリスは困り顔で周りを確認すると、ものすごい数の魔物が居たのである。フェリスをかばって魔法光線に倒れた魔物だって5、6匹は居たのだから。
「わたくしどもは、サイコシスの実験によって抜け殻にされていたのです。ですが、ご主人様の力によって、こうやって蘇る事ができたのです。こんなに嬉しい事はありません」
そう証言する魔物たち。1匹が証言すると周りが頷いているので、間違いなく事実という事なのだろう。やはり、サイコシスは無慈悲で冷酷な魔族だったのである。
フェリスを前にかしずく魔物たちを見て、ドラコたちもどう反応していいのやら困っていた。
「まあ、なんとか平和的に終わってよかったと思います。まさかあれだけの魔物がすべてフェリス様の配下になるとは、さすがですね」
マイオリーは両手を合わせて明るい声で場を収めようとしている。だが、その顔はどこか引きつっているのは言うまでもない話だった。
今回の事に一番困惑しているのはフェリスだが、この数の魔物を相手に戦う事がなくなってひと安心なのは間違いなかった。
「魔物たちの問題はあたしの胸三寸って事みたいだから、問題はオピスだけね」
「はい、そうでございます」
「俺たちを利用とした奴を信奉している奴だ。本当なら八つ裂きにしてやりたい」
「ですが、ここは堪えて主様にお任せ致します」
フェリスの言葉に、魔物たちはそのように話していた。
それにしても魔物たちが喋り出すとは思ってもみなかった。これもフェリスの能力による変化なのだろう。
フェリスもただの猫からサイコシスの実験で特殊な力を得た個体となったのだろうが、その力が何なのか、いまだに理解できていなかった。なにせその力は牛の毛艶を良くしたり、植物の成長を速めたり、哀れな魔物たちを甦らせたりと、生き物に作用するのは共通するものの効果の程度がばらけていたのだから。
それはそれとして気になるものの、実はそれ以外にも問題はあった。
「うーん、オピスの事は目を覚ますまで置いておいて、この魔物たちをどうしようかしらね。このまま連れていっても、魔物の群れを率いて攻めてきたとしか思われないでしょうし」
そう、フェリスの眷属となった魔物たちの扱いである。
フェリスたちは用事が落ち着いた事でこれから帰路に就くわけだが、さすがにこの数の魔物を率いて戻るわけにはいかなかった。
「ご主人様の命とあれば、我々はここに残っても構いません。せっかく救って頂いたのですし、迷惑をかけるのは我々の本意ではありません」
魔物たちも魔物たちでありながら、ものすごく理解力があった。これもフェリスの能力による影響なのだろうか。ほとんどの魔物が獣型なのだが、知性は人間や魔族にも劣らないレベルのようだった。これだけしっかりとした会話ができるのであるのならば、どうにか話し合いで解決でそうだ。
その結果、このサイコシスの屋敷の跡地に魔物たちは住処を造る事になった。というわけで、フェリスは能力を使い、崩れたサイコシスの屋敷は希望でそのままにしつつ、その近くに魔物たちが住む場所をこしらえていった。
土魔法を使って次々と家を造っていく様子を見て、魔物たちは尊敬のまなざしをフェリスに送っていた。
「さすが、さすがご主人様です!」
「すごい、俺たちの願う通りの家ができていっているぞ!」
眷属となった魔物たちは目を輝かせていた。その様子に、フェリスは困惑しながらも悪い気はしていなかった。
その間、ドラコはオピスの監視、マイオリーとラータは周囲の警戒をしていた。
すると、魔物の中の一体が、マイオリーへと近付いていった。
「お姉さん、いい香りがする」
「えっ?」
そう言ってぴょんとマイオリーの肩に飛び乗る魔物。魔物はリス型の魔物だった。
「ほう、聖女様に興味を持ったというのか? だったら、私の部下にしてあげてもいいですよ?」
「ネズミ、強そうだな。分かった、部下になる」
フェリスが土魔法で奮闘する中、何か勝手に話が進んでいるようだった。
「フェリス」
「何よ、ラータ」
「こやつに名前を付けてもいいかな?」
「いいわよ。一応眷属化はしてるけど、これだけの数、あたしが管理できるわけないからね」
住処造りに忙しい中、フェリスはラータの申し出を適当に了承していた。
とはいえ、一応の了承を得たラータは、マイオリーの肩に乗る魔物を見て名付けをする。
「君の名前はビエールです。ともに聖女に仕えようではないですか」
「聖女! この人が聖女、びっくり!」
名前を貰えた事よりも、興味を持った人物が聖女である事に驚いているビエールだった。
そんないろんな動きのある中、フェリスがなんとか魔物たちの住処を造り上げていた。
「はあ、疲れたわ。オピスのせいで精神的疲労の方が大きいわね。少し休ませてもらうわよ」
「ご苦労じゃったな、フェリス。……さて、後はこやつにどう落とし前をつけさせるかのう」
フェリスを労いながら、いまだに気を失ったままのオピスに厳しい視線を向けるドラコ。
まだ解決していない事は多いものの、どうにかひと息つける状態になったために、ドラコはマイオリーたちも呼んでフェリスの元に集まったのだった。
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