邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

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第272話 邪神ちゃんの一撃!

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(あっ、やばい。この状況じゃ躱せない)
 攻撃を仕掛けた後の無防備な状態。その体勢でフェリスは至近距離から魔法光線を食らいそうになっていた。
 そして、化け物から射出される魔法光線。
 誰もがダメだと思った瞬間だった。
 突如として地面に横たわっていた魔物たちが動き出したのだ。あまりに予想外の事に、マイオリーとラータ、それにドラコも反応できなかった。
 動き始めた魔物たちがフェリス目がけて飛んでくる。
 フェリス、絶体絶命のピンチ!?
 ところが、魔物たちは予想外にフェリスと化け物との間に割り込み、魔法光線をその身で浴びてフェリスをかばったのである。これは一体どういう事なのか。
「ご主人様、守る……」
「えっ?!」
 魔法光線をその身に受けた魔物たちは、そうとだけ呟いて地面へと落下していった。
 すぐさまフェリスは、魔物たちの元へと降りていく。すると他の魔物たちも起き上がり、地面に降りたフェリスを取り囲んだ。
 攻撃されるかと思ったのだが、魔物たちはその体をフェリスに擦りつけていた。これは完全に懐いている状態である。何が起きたのか、その場の誰も理解できなかった。
「あなた、私たち、救ってくれた。だから、あなた、ご主人様。この子たちも本望」
 横たわって動かなくなった魔物たちを見ながら、魔物たちがフェリスに説明してくれた。どうやら化け物からフェリスの力で剥がれ落ちてきた魔物が、フェリスの眷属となったようである。こんな事があるのだろうか。
 よくは分からないが、とりあえず心強い味方が増えたという事でいいのだろう。
「オノォレェェッ! オ前ハ、マタアタクシカラ奪ウトイウノカァッ!」
 化け物が激高している。だが、今のフェリスはものすごく落ち着いていた。この間にも、化け物からは次々と魔物が剥がれ落ちていく。その度に化け物の大きさがどんどんと縮んでいっていた。
「やれやれ、どうなっておるんじゃ。さっぱり分からんぞ……」
 化け物が小さくなっていった事で、ドラコは人間形態に姿を変える。目標が小さくなっては、攻撃にフェリスたちを巻き込みかねないからだ。
「ともかくじゃ、その魔物どもは味方か」
「そうみたい」
「ふむ、よく分からんが、おぬしたちは退いてもらえるかのう。これはわしらとオピスとの問題なんでな」
「分かりました。みんなを助けて下さい」
 魔物たちはさっと、フェリスたちの周りから下がっていく。彼らからしたら、ドラコも圧倒的強者なのだ。本能的に逆らうような事はしないのである。
「わしが援護するから、フェリスはとっととぶちのめして目を覚まさせてやれ」
「言われなくても!」
 ドラコの檄にフェリスはやる気満々である。
「はあああっ!」
 フェリスは拳を化け物に叩き込む。なんとか攻撃を凌ごうとする化け物だったが、拳を食らっただけで取り込んだ魔物たちが剥がれていくのだ。躱すしかないのだが、崩れかけている体ではうまく躱せない。あえなくフェリスの攻撃を食らい、時間差で魔物がどんどんと剥がされていく。
「ちいぃぃっ。ほんっとうに厄介な拳ね!」
 声がどんどんとオピスに戻っていく。取り込んだ魔物の半分以上を吐き出してしまったようである。崩れかかっていた体も段々と安定した状態になりつつあった。それは発動した秘術が解け始め、元の状態に戻り始めた証拠である。
「こうなったら、全部焼き払って差し上げますわ!」
 もはやこれまでと思ったのか、オピスが魔力を集中させる。だが、この生まれた一瞬の隙を、今のフェリスが見逃すはずもなかった。
「オピス、その妬みの執念、ここで終わらせてあげるわ!」
 フェリスは発動までの一瞬で一気にオピスの懐に飛び込み、みぞおちに一発拳を叩き込む。
「おぶっ!」
 強力な一撃ゆえに、オピスの体が大きくくの字に折れ曲がる。そして、突き出た顎に続けざまにフェリスの攻撃が入る。
「はた迷惑な執念め、吹っ飛んでしまえーっ!!」
 見事なアッパーカットがオピスに決まる。ところが、そのとどめの一撃が強力すぎただけに、オピスの体が空高く吹き飛んでしまった。
「おいおい、さすがにやり過ぎではないのか?」
「めちゃくちゃしてくれたんだから、これでも甘いくらいよ」
 やがて、上空でカッと眩い光が放たれたかと思うと、ようやくオピスが大量の魔物たちと一緒に降り注いできた。
「やれやれ、さすがにあの高さから地面に叩きつけられると、見れたものでなくなるな。ここはわしに任せておくがよいぞ」
 ドラコがふっと息を吹くと、その場に空気の塊が出現する。それを数回行う事で、十分な大きさの空気のクッションができ上がったのだった。
 そこへ、空高く舞い上がっていたオピスたちが降ってくる。オピスは完全に元の状態に戻り、弾き出された魔物たちも全員がのびていた。
「これでひとまず決着したとみていいんじゃろうかのう……」
「ええ、多分。とりあえず、オピスは縛り上げときましょ」
「じゃな。邪眼はあるとはいえ、目隠しはやめておいてやるかのう」
 クッションの上で完全に気を失っているオピスを、ドラコがどこからともなく出したロープで縛り上げていく。その気になれば何にだって姿を変えるドラコの鱗なのである。
 ドラコがオピスを縛り上げる最中、マイオリーたちの方を見たフェリスは、軽くジャンプして手を前に突き出す。その様子を見たマイオリーたちは戦いが終わった事を察し、フェリスたちに駆け寄ってきたのだった。
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