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第271話 邪神ちゃんと縮む化け物
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「わっとっとっ……。な、何なのよ、これは……」
魔物がポンポンと放り出されてくる事態に、フェリスはものすごく混乱していた。
「フェリス様!」
そこへマイオリーが大声で話し掛ける。
「フェリス様、先程までのようにその化け物を殴ってみて下さい。おそらく、フェリス様の力で化け物から魔物を引き剥がせるはずです!」
「えっ、それってどういう事?!」
マイオリーの言葉に混乱するフェリスだったが、確かに、自分が触った場所から魔物が剥がれ落ちてきていた。もしかするともしかするかもと、フェリスの顔が段々とにんまりと笑い始めていた。
「聖女様、ありがとう。これならオピスを元に戻せるはずだわ!」
やる気の出たフェリスは、猫の身軽さを活かして化け物へと攻撃を仕掛け始めたのだった。
この変化は、ドラコの目にも分かる形で表れ始めた。
「うん? この化け物、先程より縮んでおらぬか?」
そう、さっきまでドラコとほぼ変わらない位置にあった化け物の視線が、少し下がっていたのだ。
ドラコは事情が分からない。だが、自分より小さくなったという事は、体格的に有利に働くという事である。ただ、形があるようでないようなぶよぶよの化け物相手では、実は大して変わらなかった。
「うーむ、融合して大きくなったというよりは、無理やりくっつけて大きくなったような感じじゃのう。打撃が通らんあたり、そういう事なんじゃろうな」
「オノレェ、チョコマカトォッ!」
ドラコが冷静に分析していると、化け物は再び攻撃を仕掛け始めた。
「やれやれ、こいつの相手は骨が折れそうじゃな」
ため息を吐きながらも攻撃に対応するドラコ。拳を受け止めようとしても化け物の形が崩れて受け止められない。躱して対応するしかない事に少々苛立ちを募らせていた。
「はあ、こういう面倒な相手はブレスで焼くに限るんじゃが、相手がオピスと分かっておるだけにのう……。あんな感情を向けられておきながら、倒す気にはなれんな。これもフェリスの影響かのう」
ドラコは化け物の攻撃を躱しつつ、打開策を見出すべく考え込んだ。
ドラコが化け物の気を引いている頃。化け物の足元では、
「えーいっ! たりゃーっ!」
フェリスが化け物の足をひたすら攻撃していた。その度に、フェリスの触れた場所がしばらくしてから光り、光った場所から魔物がポンっと弾き出されてくるという現象が続いていた。そして、魔物が弾き出される度に化け物の体躯が少しずつ小さくなっていっていた。
「おお、だいぶ小さくなってきたわね。これは楽しいわ」
フェリスはものすごく楽しそうな笑顔で化け物を攻撃している。現在はドラコが気を引いているために、化け物を攻撃し放題である。
しかし、この時のフェリスは気が付いていなかった。化け物が小さくなってきているという事は、いずれ自分が視界に入るだろうという事に。
「フェリス! 化け物も小さくなってきている。油断してはいけない!」
ラータの叫び声にもフェリスはまったく耳を傾けなかった。夢中になっていたのである。
フェリスの近くには、化け物たちから弾き出された魔物たちも転がっている。多くはフェリスよりも大きな魔物である。普通に考えれば危険な状態である。それだというのに、フェリスはそんな状況を忘れて化け物を攻撃し続けていた。
この状況が続き、さすがにドラコの半分くらいまで縮めば、化け物だって異変に気が付くはずである。
「見ツケタゾ、フェリスゥッ!」
突如として、化け物がぎょろりとフェリスを見る。だが、縮んでいる事には気が付いていない様子だ。こちらもこちらで我を忘れて状況が見えていないようである。
化け物の左の拳がフェリスに牙を剥く。ところが、フェリスはまだこれに気が付かない。
化け物の攻撃がフェリスに命中して、フェリスは吹っ飛ぶ。……と思われたのだが、化け物がフェリスに触れた瞬間に、その拳が弾き返されてしまった。
「アッガアッ?!」
弾き返された化け物の左の拳が光り、そこからも魔物たちが弾き出された。
「おっとっと……」
その魔物たちを器用に受け止めるドラコ。
「ナゼダァッ! ナゼ、攻撃ガ当タラナイ!」
なんとか踏みとどまり、無残にも姿を消した左腕を見ながら、化け物が叫んでいる。
「ふふん、あたし、分かっちゃったわ」
驚愕の表情を浮かべる化け物に対して、フェリスは余裕の表情を浮かべている。
「なるほどね。あたしが撫でた牛の毛艶が良くなったり、植物がよく育ったりするのって、サイコシスの実験のせいだったのね」
そう言って、ぴょんと跳び上がったフェリスは、拳を握って化け物に殴りかかる。
「あたしの持つ独自の能力は癒しの力よ。さあオピス。負けを認めて元に戻りなさい!」
渾身のフェリスの猫パンチが、化け物の顔に炸裂する。
「ア……ガ……」
フェリスに殴られた化け物は、その勢いでよろめき、体勢を崩す。
「コレデ、コノママデ終ワッテ、ナルモノデス……カ!」
その姿勢からでも、一矢報いようとする化け物。倒れながらもフェリスに向けて魔法光線を照射するのだった。
魔物がポンポンと放り出されてくる事態に、フェリスはものすごく混乱していた。
「フェリス様!」
そこへマイオリーが大声で話し掛ける。
「フェリス様、先程までのようにその化け物を殴ってみて下さい。おそらく、フェリス様の力で化け物から魔物を引き剥がせるはずです!」
「えっ、それってどういう事?!」
マイオリーの言葉に混乱するフェリスだったが、確かに、自分が触った場所から魔物が剥がれ落ちてきていた。もしかするともしかするかもと、フェリスの顔が段々とにんまりと笑い始めていた。
「聖女様、ありがとう。これならオピスを元に戻せるはずだわ!」
やる気の出たフェリスは、猫の身軽さを活かして化け物へと攻撃を仕掛け始めたのだった。
この変化は、ドラコの目にも分かる形で表れ始めた。
「うん? この化け物、先程より縮んでおらぬか?」
そう、さっきまでドラコとほぼ変わらない位置にあった化け物の視線が、少し下がっていたのだ。
ドラコは事情が分からない。だが、自分より小さくなったという事は、体格的に有利に働くという事である。ただ、形があるようでないようなぶよぶよの化け物相手では、実は大して変わらなかった。
「うーむ、融合して大きくなったというよりは、無理やりくっつけて大きくなったような感じじゃのう。打撃が通らんあたり、そういう事なんじゃろうな」
「オノレェ、チョコマカトォッ!」
ドラコが冷静に分析していると、化け物は再び攻撃を仕掛け始めた。
「やれやれ、こいつの相手は骨が折れそうじゃな」
ため息を吐きながらも攻撃に対応するドラコ。拳を受け止めようとしても化け物の形が崩れて受け止められない。躱して対応するしかない事に少々苛立ちを募らせていた。
「はあ、こういう面倒な相手はブレスで焼くに限るんじゃが、相手がオピスと分かっておるだけにのう……。あんな感情を向けられておきながら、倒す気にはなれんな。これもフェリスの影響かのう」
ドラコは化け物の攻撃を躱しつつ、打開策を見出すべく考え込んだ。
ドラコが化け物の気を引いている頃。化け物の足元では、
「えーいっ! たりゃーっ!」
フェリスが化け物の足をひたすら攻撃していた。その度に、フェリスの触れた場所がしばらくしてから光り、光った場所から魔物がポンっと弾き出されてくるという現象が続いていた。そして、魔物が弾き出される度に化け物の体躯が少しずつ小さくなっていっていた。
「おお、だいぶ小さくなってきたわね。これは楽しいわ」
フェリスはものすごく楽しそうな笑顔で化け物を攻撃している。現在はドラコが気を引いているために、化け物を攻撃し放題である。
しかし、この時のフェリスは気が付いていなかった。化け物が小さくなってきているという事は、いずれ自分が視界に入るだろうという事に。
「フェリス! 化け物も小さくなってきている。油断してはいけない!」
ラータの叫び声にもフェリスはまったく耳を傾けなかった。夢中になっていたのである。
フェリスの近くには、化け物たちから弾き出された魔物たちも転がっている。多くはフェリスよりも大きな魔物である。普通に考えれば危険な状態である。それだというのに、フェリスはそんな状況を忘れて化け物を攻撃し続けていた。
この状況が続き、さすがにドラコの半分くらいまで縮めば、化け物だって異変に気が付くはずである。
「見ツケタゾ、フェリスゥッ!」
突如として、化け物がぎょろりとフェリスを見る。だが、縮んでいる事には気が付いていない様子だ。こちらもこちらで我を忘れて状況が見えていないようである。
化け物の左の拳がフェリスに牙を剥く。ところが、フェリスはまだこれに気が付かない。
化け物の攻撃がフェリスに命中して、フェリスは吹っ飛ぶ。……と思われたのだが、化け物がフェリスに触れた瞬間に、その拳が弾き返されてしまった。
「アッガアッ?!」
弾き返された化け物の左の拳が光り、そこからも魔物たちが弾き出された。
「おっとっと……」
その魔物たちを器用に受け止めるドラコ。
「ナゼダァッ! ナゼ、攻撃ガ当タラナイ!」
なんとか踏みとどまり、無残にも姿を消した左腕を見ながら、化け物が叫んでいる。
「ふふん、あたし、分かっちゃったわ」
驚愕の表情を浮かべる化け物に対して、フェリスは余裕の表情を浮かべている。
「なるほどね。あたしが撫でた牛の毛艶が良くなったり、植物がよく育ったりするのって、サイコシスの実験のせいだったのね」
そう言って、ぴょんと跳び上がったフェリスは、拳を握って化け物に殴りかかる。
「あたしの持つ独自の能力は癒しの力よ。さあオピス。負けを認めて元に戻りなさい!」
渾身のフェリスの猫パンチが、化け物の顔に炸裂する。
「ア……ガ……」
フェリスに殴られた化け物は、その勢いでよろめき、体勢を崩す。
「コレデ、コノママデ終ワッテ、ナルモノデス……カ!」
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