邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

文字の大きさ
上 下
270 / 290

第270話 邪神ちゃんと摩訶不思議な光

しおりを挟む
 ドラコとフェリスの二人が、オピスの成れの果てである化け物に戦いを挑む。ドラコと化け物に比べれば豆粒のようなフェリスだが、その体の小ささを活かして小刻みに攻撃を命中させている。
「さすがはフェリス。身体能力の高さなら、私たちの中では高い方に入りますからね」
 ラータの解説を聞きながら、マイオリーは戦いを見守っている。先程の結界のせいで少し疲れているようである。
「フェリスゥ……、ドコダァーーッ!」
 化け物はきょろきょろと辺りを見回しながら、乱暴に腕を振るっている。しかし、その腕の動く範囲に居るのはドラコのみ。しかもドラコは器用にそれを躱していた。巨体になったがゆえに、小さいフェリスが視界に収まらなかったのだ。
「かっかっかっ、図体ばかりでかくなって、肝心の小回りが利かぬか。実に愚かな事よのう……」
「ソンナ目デ見ルナァッ!!」
 ドラコが憐みの目を向けると、化け物の目と口が怪しく光る。
「むっ、さっきのやつか?」
 ドラコが警戒すると、先程放たれた魔法が再び照射された。
「さすがにそうはいくまいて。二度目が通じると思うでないぞ!」
 至近距離ではあるものの、予備動作のおかげで対処が可能になるらしい。
 ドラコはブレスを吐き、化け物から放たれた魔法を上空へと逸らせてしまった。
「オノレッ……!」
 三発まとめて上空へブレス一発で逸らされたとなると、さすがに頭にきているようである。
「かっかっかっかっ。そうじゃそうじゃ、わしに気を取られ続けるがよいぞ。おぬしが狙う本命の事など忘れてしまえ」
 ドラコは化け物を挑発している。化け物も完全に理性をなくしている状態がゆえに、この挑発に簡単に乗ってしまう。咆哮を上げると、化け物は再びドラコに向かって襲い掛かっていた。
 その巨体同士の戦いの足元で、フェリスもぺちぺちと化け物を攻撃していた。ただ小さすぎるゆえに、大したダメージにはなっていなかった。
「はあ、さすがにでかすぎて攻撃が通っている感じがしないわ」
 フェリスもなんというか半ばやる気をなくしていた。体格差のせいである。
 とはいえ、向こうが一方的に妬んでいたとしても、フェリスにとってはオピスも大切な仲間である。こんな状態で勝手に死なれてしまっては正直寝起きが悪くなってしまいかねない。つまり、ほぼ責任感だけで戦っているようなものだった。これは、一緒に戦うドラコも感じていたし、見守っているラータにもしっかり悟られていた。
「やれやれですね」
「どうしたのですか、ラータ」
「フェリスがやる気を失いかけてますね」
「まあ、どうしてなのですか?」
「単純に体格差のせいですね。オピスの奴はあの場に居た魔物たちを取り込んで、醜く膨らんでいます。見た目だけとはいえど、見ての通りドラコに引けを取らない大きさですからね」
 ラータの説明を聞いてなるほどと思うマイオリーである。
 ところが、その説明を聞いて落ち着いたマイオリーだったが、目の前の光景に何か妙な違和感を感じていた。
「どうされたのですか、聖女様」
「いえ、あの化け物から、不思議な魔力を感じたのです」
 ラータは首を傾げながら、マイオリーの指差す方向を見る。その指差した先にあったのは、先程フェリスが殴り飛ばした腕だった。
 その腕をラータはじっと眺めてみる。すると、確かに妙な魔力が宿りつつあるのが感じられたのだった。
「なんでしょうかね、あれは」
「分かりません。ですが、確かあそこは先程フェリス様が触れた場所のはずです」
 マイオリーとラータが見つめる先にある化け物の腕が、何やら光っている。
「ガァッ?」
「なんじゃ、どうしたというんじゃ?」
 突然動きを止めた化け物に、ドラコは首を傾げている。だが、その次の瞬間、化け物の腕が光り始めている事に気が付いた。
(うぬ? あそこは確かさっきフェリスがパンチをしたところよな?)
 さすがのドラコも、その光景には戸惑いを隠しきれない。
 そうこうしているうちに化け物の腕から放たれる光が強くなり、一気に光が弾け飛んだ。
「ガアアァァッ!」
 化け物は痛みのあまり苦痛の声を上げる。しかし、光が消え去った腕の状態は、光る前とまったく変わりがなかった。
「はて、一体何だったんじゃ、今のは……」
 不思議な現象にドラコも首を傾げるばかりである。
 ところが、異変は足元で起きていた。
「うわっとっとっと……」
 光の中から放り出されてきた何かを受け止めるフェリス。
「これって、さっき地下室でちらっと見かけた魔物かしらね……」
 なんと、フェリスが受け止めたのは間違いなく魔物だった。しかも、サイコシスの屋敷の地下で見た抜け殻となった魔物だったのだ。これは一体どういう事のなのだろうか。
 だが、驚いて止まっている暇はなかった。
 先程の腕以外にも、フェリスがぺちぺちと殴っていた場所が順番に光り始めたのである。一体何が起こっているというのだろうか。
「あれはまさか……、浄化の光?」
 その様子を見ていたマイオリーが思いもよらない言葉を呟いたのである。邪神たるフェリスが、浄化の力を使っているというのだ。
 誰もが訳も分からないまま、新たに光を放った場所からは、さっきと同じように魔物が弾き出されてきたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

処理中です...