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第267話 邪神ちゃんは追いかける
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「まったく、普段は遅いというのに、なんだこの足の速さは!」
ドラコが愚痴を叫んでいる。
それもそうだろう。オピスがものすごい勢いで隠し通路を進んでいっているのだ。辺りは真っ暗だというのに、オピスの動きにはまったく迷いがない。まるでこの先にある物を知っているかのように、一心不乱に走っていた。
「みなさん、気を付けて下さい。嫌な魔力が段々と濃くなってきています」
「そうじゃのう。何と言ってもここはサイコシスの本拠地じゃ。何かを企んでいたとしても、まったくおかしくないからな」
「ドラコはそこまで詳しくないでしょうが!」
「誰のせいで詳しくなったと思っておるんじゃ!」
いがみ合いながらオピスを追いかけるフェリスとドラコ。
「いい加減にしないか。そのままいがみ合うなら、私は先に行きますよ」
ラータがため息まじりに文句を言う。
「そうじゃな。とにかく今はオピスを止める事じゃ。さっきから嫌な予感が止まらんわい」
「そうね。いくらなんでもあの様子はおかしすぎるものね」
フェリスとドラコは仕方なく一時休戦して、暴走するオピスを追いかけていった。
暗闇の中の通路は、知らない間に地下へと降りていく階段と変わっていた。ラータとフェリスは夜目が利くし、ドラコだってその程度の対応はできる。マイオリーはラータに抱きかかえられたまま、階段を降りていく。
それにしても、理解ができないのはオピスだ。夜目が利かない蛇の邪神だというのに、踏み外して転げ落ちる事もなく、ものすごい速度で突き進んでいっている。
この隠し通路は頑丈に造られているらしく、屋敷は半壊していたにもかかわらず、ここまで一切外界の光にさらされていなかった。
「……ものすごく寒気がしますね。この先にある物は、きっと身の毛もよだつほどのものなのでしょうね」
下から襲い来る邪気に、マイオリーが震えていた。
「サイコシスの屋敷じゃからのう……。わしらの想像できんものが眠っておっても不思議ではないわい」
「まったくだわね。でも、あたしたちは止まるわけにはいかないわ。オピスが突き進む限り、あいつを止めなきゃいけないわ」
「そうじゃな」
フェリスたちは長い階段を、オピスを追いかけてひたすら降りていった。
ようやく階段が終わり、広い部屋に出たようだ。扉は強引に開いた跡があり、先に到着したオピスが破ったようである。
「むぅ、これは酷い臭いじゃ……」
地下深くにあった部屋には、とんでもない悪臭が漂っている。すぐさま風魔法で臭いを遮るフェリスである。
「聖なる光よ、悪しき気配をここに清め給え」
ラータに抱きかかえられたままだが、マイオリーは聖女としての力を行使する。すると、部屋に漂っていた臭気がかなり薄らいだようだった。
「完全に浄化するとまではいきませんでしたね。それだけここに漂う邪気が濃いという事です」
ようやく地面に足をつけながら、マイオリーは浄化しきれなかった事を悔しがっていた。
「まったく、厄介すぎるわね。それはそれとして、オピスの奴はどこよ?」
きょろきょろと辺りを見回すフェリス。だが、元々真っ暗な地下室に加えて、マイオリーにも浄化しきれなかった濃い邪気に阻まれて、その姿を確認できそうになかった。
「仕方ないですな。フェリス、ここは明かりをつけましょう」
「そうね。それしかないわ」
フェリスはラータに促されて、明かりを魔法で灯す。
だが、次の瞬間、フェリスたちの目に飛び込んできたのはとんでもない光景だった。その光景に、マイオリーは思わず目をつぶってしまった。
「ふふっ、これがサイコシス様の研究よ……」
「オピス!」
フェリスたちが青ざめる中、オピスの声が響き渡る。
一斉に視線を向けるフェリスたち。オピスは何やら台のような物の上に座り、不気味なまでの醜悪な笑みを浮かべていた。
「ふふふ、フェリス。あなたが何のために生み出されたのか知らないなんてね……。だからこそ、あの人に大事にされているのが気に食わなかったのよ」
「オピス、あんたは何を言っているわけ?」
「真っ白の毛並みに真っ黒な角と羽。ふふっ、実にその象徴たる姿よねぇ?」
叫ぶフェリスを無視して、オピスは邪悪な笑みを浮かべたまま話を続けている。まったくもって話が見えてこない。それでも、オピスのお喋りは止まらなかった。
「あはははははっ! いいわね、その間抜けな顔。それでこそ、あの方のおもちゃとして相応しいというものですわよ」
「何が言いたいんじゃ、オピス!」
様々な感情が入り混じって震えているフェリスに代わって、ドラコがオピスに怒鳴りつける。
「うふふふ、この部屋がどんな部屋か、教えてさし上げてもよろしいのですわよ?」
それでもオピスの余裕たっぷりの表情は変わらなかった。
「所詮、フェリスはあの方のおもちゃで、失敗作に過ぎなかったのよ。最後には捨てられていたものねぇ?」
台から飛び降りたオピスは、さらに部屋の奥へと歩いていく。
「待たんか!」
「待てと言われて、待つ者が居ると思いまして?」
歩き続けるオピスをドラコたちは追いかける。そして、たどり着いた最奥で見た景色は、想像を絶する光景だった。
一体フェリスたちは、そこで何を見たというのだろうか。
ドラコが愚痴を叫んでいる。
それもそうだろう。オピスがものすごい勢いで隠し通路を進んでいっているのだ。辺りは真っ暗だというのに、オピスの動きにはまったく迷いがない。まるでこの先にある物を知っているかのように、一心不乱に走っていた。
「みなさん、気を付けて下さい。嫌な魔力が段々と濃くなってきています」
「そうじゃのう。何と言ってもここはサイコシスの本拠地じゃ。何かを企んでいたとしても、まったくおかしくないからな」
「ドラコはそこまで詳しくないでしょうが!」
「誰のせいで詳しくなったと思っておるんじゃ!」
いがみ合いながらオピスを追いかけるフェリスとドラコ。
「いい加減にしないか。そのままいがみ合うなら、私は先に行きますよ」
ラータがため息まじりに文句を言う。
「そうじゃな。とにかく今はオピスを止める事じゃ。さっきから嫌な予感が止まらんわい」
「そうね。いくらなんでもあの様子はおかしすぎるものね」
フェリスとドラコは仕方なく一時休戦して、暴走するオピスを追いかけていった。
暗闇の中の通路は、知らない間に地下へと降りていく階段と変わっていた。ラータとフェリスは夜目が利くし、ドラコだってその程度の対応はできる。マイオリーはラータに抱きかかえられたまま、階段を降りていく。
それにしても、理解ができないのはオピスだ。夜目が利かない蛇の邪神だというのに、踏み外して転げ落ちる事もなく、ものすごい速度で突き進んでいっている。
この隠し通路は頑丈に造られているらしく、屋敷は半壊していたにもかかわらず、ここまで一切外界の光にさらされていなかった。
「……ものすごく寒気がしますね。この先にある物は、きっと身の毛もよだつほどのものなのでしょうね」
下から襲い来る邪気に、マイオリーが震えていた。
「サイコシスの屋敷じゃからのう……。わしらの想像できんものが眠っておっても不思議ではないわい」
「まったくだわね。でも、あたしたちは止まるわけにはいかないわ。オピスが突き進む限り、あいつを止めなきゃいけないわ」
「そうじゃな」
フェリスたちは長い階段を、オピスを追いかけてひたすら降りていった。
ようやく階段が終わり、広い部屋に出たようだ。扉は強引に開いた跡があり、先に到着したオピスが破ったようである。
「むぅ、これは酷い臭いじゃ……」
地下深くにあった部屋には、とんでもない悪臭が漂っている。すぐさま風魔法で臭いを遮るフェリスである。
「聖なる光よ、悪しき気配をここに清め給え」
ラータに抱きかかえられたままだが、マイオリーは聖女としての力を行使する。すると、部屋に漂っていた臭気がかなり薄らいだようだった。
「完全に浄化するとまではいきませんでしたね。それだけここに漂う邪気が濃いという事です」
ようやく地面に足をつけながら、マイオリーは浄化しきれなかった事を悔しがっていた。
「まったく、厄介すぎるわね。それはそれとして、オピスの奴はどこよ?」
きょろきょろと辺りを見回すフェリス。だが、元々真っ暗な地下室に加えて、マイオリーにも浄化しきれなかった濃い邪気に阻まれて、その姿を確認できそうになかった。
「仕方ないですな。フェリス、ここは明かりをつけましょう」
「そうね。それしかないわ」
フェリスはラータに促されて、明かりを魔法で灯す。
だが、次の瞬間、フェリスたちの目に飛び込んできたのはとんでもない光景だった。その光景に、マイオリーは思わず目をつぶってしまった。
「ふふっ、これがサイコシス様の研究よ……」
「オピス!」
フェリスたちが青ざめる中、オピスの声が響き渡る。
一斉に視線を向けるフェリスたち。オピスは何やら台のような物の上に座り、不気味なまでの醜悪な笑みを浮かべていた。
「ふふふ、フェリス。あなたが何のために生み出されたのか知らないなんてね……。だからこそ、あの人に大事にされているのが気に食わなかったのよ」
「オピス、あんたは何を言っているわけ?」
「真っ白の毛並みに真っ黒な角と羽。ふふっ、実にその象徴たる姿よねぇ?」
叫ぶフェリスを無視して、オピスは邪悪な笑みを浮かべたまま話を続けている。まったくもって話が見えてこない。それでも、オピスのお喋りは止まらなかった。
「あはははははっ! いいわね、その間抜けな顔。それでこそ、あの方のおもちゃとして相応しいというものですわよ」
「何が言いたいんじゃ、オピス!」
様々な感情が入り混じって震えているフェリスに代わって、ドラコがオピスに怒鳴りつける。
「うふふふ、この部屋がどんな部屋か、教えてさし上げてもよろしいのですわよ?」
それでもオピスの余裕たっぷりの表情は変わらなかった。
「所詮、フェリスはあの方のおもちゃで、失敗作に過ぎなかったのよ。最後には捨てられていたものねぇ?」
台から飛び降りたオピスは、さらに部屋の奥へと歩いていく。
「待たんか!」
「待てと言われて、待つ者が居ると思いまして?」
歩き続けるオピスをドラコたちは追いかける。そして、たどり着いた最奥で見た景色は、想像を絶する光景だった。
一体フェリスたちは、そこで何を見たというのだろうか。
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