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第263話 邪神ちゃん、バルボルへ
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フェリス、ドラコ、マイオリー、ラータ、それとオピスの五人は、バルボルとの国境へとやって来ていた。だが、国境といってもそれほど目立ったものはなく、簡単に越えられそうな柵が長めに建てられているくらいだった。一応関所らしきところには兵士が立っていて、荷物などを改めていた。
フェリスたちが国境の関所へとやって来ると、兵士たちはものすごく驚いた目をしていた。
「せ、聖女様?!」
そう、マイオリーの姿を見たからだ。ブランシェル王国の国民で、さらに兵士ともなれば聖女を知らない者はほぼ居ない。当然ながら、この国境の兵士たちも知っているのである。
これだけ兵士が騒げば、現場に居合わせた人たちもマイオリーへと視線を向けてしまう。この状況にはさすがのフェリスたちもちょっと慌ててしまう。
「かっかっかっ、さすが聖女よのう」
ただ一人、ドラコだけは余裕なようで大声で笑っていた。しかし、ドラコの事をよく知らない兵士は、ドラコに対して剣や槍を向けていた。聖女をバカにされたと思ったのだろう。このような状況だというのに、ドラコは余裕綽々である。
「かっかっかっ、いい反応じゃ。やはり兵士はそのくらい動けんとな。かっかっかっかっ」
「ドラコ様ったら」
笑ているドラコを見ながら、マイオリーまでもが笑っている。この状況に、兵士たちも困惑してしまっていた。その様子を見たマイオリーは、兵士たちへと事情を説明する。
「こちらは古龍ドラコ様です。その昔、私の遥か先輩にあたる聖女であられるマリア様に、この腕輪を授けてくれた方なのですよ」
「な、なんですと?!」
マイオリーの発言に、兵士を含めて全員が驚く。もう何が何だか分からないといった感じだった。しかし、マイオリーとドラコだけはまったく平然としていた。
「私たちは訳あってバルボルへと向かわなければいけません。ここを通して頂けますでしょうか」
すかさずマイオリーは兵士たちに掛け合っている。しかし、見るからに魔族っぽい面々が揃っているだけに、兵士たちは戸惑っているようだった。
「かっかっかっ、わしが居っても戸惑うか? ここに居るのは少なくともわしの認めた者ばかりじゃ。聖女の護衛としては十分じゃろうて?」
そこへすかさずドラコが畳みかけに入る。聖女の話す言葉を疑いたくない兵士たちはかなり悩んでいたようだった。
「……分かりました。ですが、バルボル国内は最近情勢が安定していないようです。また魔物の勢力が増しているようですので、聖女様もお気を付け下さい」
「お気遣いありがとうございます。十分気を付けて行って参りますね」
兵士たちが戸惑いながらも、マイオリーたちを通す事を決めたようである。基本的には兵士たちに聖女の行動を阻害する権限はないのである。
「かっかっかっ、安心せい。わしらがついておるんじゃからな。のう、フェリス」
「えっ、あっ、ええそうね」
急にドラコから話を振られて、フェリスはちょっと慌てていた。こういうのも珍しい光景である。
多くの通行人が見守る中、フェリスたちは堂々と国境を越えて、ついにバルボルへと足を踏み入れたのである。
「さあ、ここからがバルボルですね。皆さんの里帰りに同行できるなんて思ってもみませんでしたよ」
マイオリーが実に楽しそうに話している。まるでピクニックに行くかのようである。
「とは言うて、そんなに気楽に構えてられるほどの場所ではないぞ、聖女よ」
「そうね。サイコシスが居た場所なんだから、魔物もそれなりに強い連中ばかりよ。人間たちが敗走せざるを得ないくらいのね」
ドラコとフェリスがマイオリーを諫めている。
「ええ、そうですね。明らかに前方から今までに感じた事のない不穏な空気をひしひしと感じます」
それに呼応するように、マイオリーの様子が一変する。どうやら聖女としての能力が、魔物などの雰囲気を感じ取ったようである。
「……とりあえずは近くの街まで行きましょうか。あたくしも久しぶりに足を踏み入れますので、場所は覚えていても雰囲気は変わっているかも知れませんわ」
ここまで黙っていたオピスが、ようやく口を開いた。この辺りの事を詳しく知っているのはオピスだけなので、一行は道案内をオピスに頼るしかなかった。フェリスもドラコもすっかりこの辺の地理を忘れてしまっているのである。
「それにしてもじゃ。まさかわしのせいで面倒な事になっておるとはのう……。そんなにわしは魔力を垂れ流しにしておったかな?」
「あの頃はそうだったわね。あまり意識もはっきりしていないあたしが引き寄せられるくらいなんだから」
ドラコが両腕を組みながら思い返していると、フェリスがきっぱりと言い切っていた。地理は覚えていなくても、こういう出来事はしっかりと覚えているものなのである。
この二人のやり取りに、マイオリーたちはついていけない。ラータもフェリスとドラコの昔話を興味深く聞いているようだった。
国境を越えて歩くこと2日。オピスの道案内の下、フェリスたちはバルボルの最初の街へと到着したのだった。
フェリスたちが国境の関所へとやって来ると、兵士たちはものすごく驚いた目をしていた。
「せ、聖女様?!」
そう、マイオリーの姿を見たからだ。ブランシェル王国の国民で、さらに兵士ともなれば聖女を知らない者はほぼ居ない。当然ながら、この国境の兵士たちも知っているのである。
これだけ兵士が騒げば、現場に居合わせた人たちもマイオリーへと視線を向けてしまう。この状況にはさすがのフェリスたちもちょっと慌ててしまう。
「かっかっかっ、さすが聖女よのう」
ただ一人、ドラコだけは余裕なようで大声で笑っていた。しかし、ドラコの事をよく知らない兵士は、ドラコに対して剣や槍を向けていた。聖女をバカにされたと思ったのだろう。このような状況だというのに、ドラコは余裕綽々である。
「かっかっかっ、いい反応じゃ。やはり兵士はそのくらい動けんとな。かっかっかっかっ」
「ドラコ様ったら」
笑ているドラコを見ながら、マイオリーまでもが笑っている。この状況に、兵士たちも困惑してしまっていた。その様子を見たマイオリーは、兵士たちへと事情を説明する。
「こちらは古龍ドラコ様です。その昔、私の遥か先輩にあたる聖女であられるマリア様に、この腕輪を授けてくれた方なのですよ」
「な、なんですと?!」
マイオリーの発言に、兵士を含めて全員が驚く。もう何が何だか分からないといった感じだった。しかし、マイオリーとドラコだけはまったく平然としていた。
「私たちは訳あってバルボルへと向かわなければいけません。ここを通して頂けますでしょうか」
すかさずマイオリーは兵士たちに掛け合っている。しかし、見るからに魔族っぽい面々が揃っているだけに、兵士たちは戸惑っているようだった。
「かっかっかっ、わしが居っても戸惑うか? ここに居るのは少なくともわしの認めた者ばかりじゃ。聖女の護衛としては十分じゃろうて?」
そこへすかさずドラコが畳みかけに入る。聖女の話す言葉を疑いたくない兵士たちはかなり悩んでいたようだった。
「……分かりました。ですが、バルボル国内は最近情勢が安定していないようです。また魔物の勢力が増しているようですので、聖女様もお気を付け下さい」
「お気遣いありがとうございます。十分気を付けて行って参りますね」
兵士たちが戸惑いながらも、マイオリーたちを通す事を決めたようである。基本的には兵士たちに聖女の行動を阻害する権限はないのである。
「かっかっかっ、安心せい。わしらがついておるんじゃからな。のう、フェリス」
「えっ、あっ、ええそうね」
急にドラコから話を振られて、フェリスはちょっと慌てていた。こういうのも珍しい光景である。
多くの通行人が見守る中、フェリスたちは堂々と国境を越えて、ついにバルボルへと足を踏み入れたのである。
「さあ、ここからがバルボルですね。皆さんの里帰りに同行できるなんて思ってもみませんでしたよ」
マイオリーが実に楽しそうに話している。まるでピクニックに行くかのようである。
「とは言うて、そんなに気楽に構えてられるほどの場所ではないぞ、聖女よ」
「そうね。サイコシスが居た場所なんだから、魔物もそれなりに強い連中ばかりよ。人間たちが敗走せざるを得ないくらいのね」
ドラコとフェリスがマイオリーを諫めている。
「ええ、そうですね。明らかに前方から今までに感じた事のない不穏な空気をひしひしと感じます」
それに呼応するように、マイオリーの様子が一変する。どうやら聖女としての能力が、魔物などの雰囲気を感じ取ったようである。
「……とりあえずは近くの街まで行きましょうか。あたくしも久しぶりに足を踏み入れますので、場所は覚えていても雰囲気は変わっているかも知れませんわ」
ここまで黙っていたオピスが、ようやく口を開いた。この辺りの事を詳しく知っているのはオピスだけなので、一行は道案内をオピスに頼るしかなかった。フェリスもドラコもすっかりこの辺の地理を忘れてしまっているのである。
「それにしてもじゃ。まさかわしのせいで面倒な事になっておるとはのう……。そんなにわしは魔力を垂れ流しにしておったかな?」
「あの頃はそうだったわね。あまり意識もはっきりしていないあたしが引き寄せられるくらいなんだから」
ドラコが両腕を組みながら思い返していると、フェリスがきっぱりと言い切っていた。地理は覚えていなくても、こういう出来事はしっかりと覚えているものなのである。
この二人のやり取りに、マイオリーたちはついていけない。ラータもフェリスとドラコの昔話を興味深く聞いているようだった。
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