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第256話 邪神ちゃんとオピスの話
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「こーねーっほーっ!」
フェリスがバーンとコネッホの家の扉を乱暴に開け放つ。その音にびっくりして、コネッホとブルムが玄関の方を見ていた。
「ど、どうしたんだ、フェリス」
驚きが治まらないままにコネッホがフェリスに問い掛ける。
「どうしたもこうしたも、なんでオピスが居るのかしら」
フェリスの手には、乱暴に引きずられて気絶しかかっているオピスの手が握られていた。そのオピスの姿を見て、コネッホはさらに驚いていた。
「また酷い目に遭ってるな、オピス。まあ、今回の事は自業自得だろうから、あたいも何も言わないけどな」
そして、落ち着いたようにオピスに苦言を呈していた。
「まあ入るといいよ、フェリス。あたいの知る限りの事情は説明する。詳しい話はオピスが目を覚ましたら、本人から聞けばいい」
「しょうがないわね。今のところはそれで手を打ってあげるわ」
フェリスは半分怒って半分呆れて、複雑な心境のままにコネッホの家へと入っていった。
テーブルを囲んだフェリスとコネッホ、それと事情の分からないブルム。
しばらくは沈黙していたのだが、おもむろにコネッホが口を開いた。
「正直言って、どこから話したらいいかなと思ったんだが、現時点であたいの知っている事でいいな?」
これにはフェリスが四の五の言わずさっさと言えと言わんばかりにコネッホを睨み付ける。オピスの事を思い出して結構ご立腹のようである。そんなわけで、コネッホはやれやれといった感じで話を続ける事となった。
「最初に言うと、あたいはオピスの仕掛けた記憶の封印の魔法には掛かっていなかったんだ。おそらく普段からいろいろ錬金術で試していたせいだろう。あたいにはまったく通じてなかったんだよ」
「はあ?!」
コネッホがこう言えば、当たり前だがフェリスが噛みついてきた。あまり話題を出した記憶もないのだが、これはコネッホの予想の範疇である。
「まあそう言うな。あたいらはこれでも気心の知れた仲だろう? だから、オピスにも何かしら考えがあってこんな事をしたんだろうと、あたいはオピスを思って掛かったふりをしたというわけだよ」
これにはフェリスはただただ驚いていた。なにせあのドラコですら掛かってしまうほどの強力な魔法だったのだ。それを効いてませんでしたとか、このウサギ、何今頃になって言っているのだろうかと心の中でフェリスは思っている。
「フェリスのその心中は察するに余りあるな。一応これでも、フェリスが来るまでの間に聞けるだけ聞いてみたんだよ。理由として一番大きかったのは、人間と魔族との間の戦いが終わった事のようだよ」
「それはどういう事よ」
言葉に棘があるような口調で即聞き返すフェリス。
「それはお前の方が分かるだろう? フェリスとオピスは、元々同じ魔族の配下だ。そして、オピスはあんたに対抗意識を燃やしていたんだ。なにせ、先にその魔族の配下となったのはオピスなんだからな」
フェリスを指差しながら話すコネッホ。
「そういう事ですか。オピスさんはフェリスさんの事を恨むまでとはいかなくても妬んでいたと……」
「そういう事だよ、ブルム。戦いが終われば、そこからは馴れ合い始まる。だから、オピスはどうしてもそれが耐えられなかったというわけだよ」
コネッホが語ったのは、なんともなあという理由だった。
簡単に言えば、馴れ合いから逃げたのである。ただ、戦いが起きている最中にそれをやればかえって危険だと考えていたから、我慢してフェリスたちの輪の中に入っていたわけなのだ。
「呆れたわね。てか、蛇系の魔族ってば幻惑系の魔法が得意なんだから、どうとでもやっていけたんじゃないの?」
フェリスがこのように言うと、
「お前さんに凄まれてびびりちらすような奴だぞ? そこまでの精神力はないから無理だったんだろう」
すかさずコネッホは辛辣に言い放っていた。
「悪かったですわね、小心者で!」
散々悪口を言われたのが聞こえたのか、ようやくオピスが気が付いた。その顔はどことなく涙を浮かべていて、ぷるぷると震えながらフェリスを睨んでいた。
「ようやく気が付いたか、オピス。詳しい話はお前からしてやってくれ。あたいは断片的にしか言えないし、こういう事は本人が話すのが一番だからな」
コネッホもコネッホで容赦がない。意識を取り戻したばかりのオピスに、話を振ったのである。話を振られたオピスは、コネッホを恨みがましく睨んだ後、かなり悩んだようである。自分のプライドとの戦いであった。
しかし、フェリスとコネッホの二人から、じっと視線を向けられると、いよいよ観念したようだった。
「はあ、分かりましたわよ。全部話せばいいんでしょう、話せば」
それでも強気な姿勢を崩さないオピス。本来は臆病な性格がゆえに、こうやって虚勢を張りたがるのである。
そこからさらにしっかりと呼吸を整えたオピスは、フェリスたちにこれまでの事を全部話す事にした。雰囲気に飲まれて逃げ出すタイミングを失ったブルムを巻き込んで。
フェリスがバーンとコネッホの家の扉を乱暴に開け放つ。その音にびっくりして、コネッホとブルムが玄関の方を見ていた。
「ど、どうしたんだ、フェリス」
驚きが治まらないままにコネッホがフェリスに問い掛ける。
「どうしたもこうしたも、なんでオピスが居るのかしら」
フェリスの手には、乱暴に引きずられて気絶しかかっているオピスの手が握られていた。そのオピスの姿を見て、コネッホはさらに驚いていた。
「また酷い目に遭ってるな、オピス。まあ、今回の事は自業自得だろうから、あたいも何も言わないけどな」
そして、落ち着いたようにオピスに苦言を呈していた。
「まあ入るといいよ、フェリス。あたいの知る限りの事情は説明する。詳しい話はオピスが目を覚ましたら、本人から聞けばいい」
「しょうがないわね。今のところはそれで手を打ってあげるわ」
フェリスは半分怒って半分呆れて、複雑な心境のままにコネッホの家へと入っていった。
テーブルを囲んだフェリスとコネッホ、それと事情の分からないブルム。
しばらくは沈黙していたのだが、おもむろにコネッホが口を開いた。
「正直言って、どこから話したらいいかなと思ったんだが、現時点であたいの知っている事でいいな?」
これにはフェリスが四の五の言わずさっさと言えと言わんばかりにコネッホを睨み付ける。オピスの事を思い出して結構ご立腹のようである。そんなわけで、コネッホはやれやれといった感じで話を続ける事となった。
「最初に言うと、あたいはオピスの仕掛けた記憶の封印の魔法には掛かっていなかったんだ。おそらく普段からいろいろ錬金術で試していたせいだろう。あたいにはまったく通じてなかったんだよ」
「はあ?!」
コネッホがこう言えば、当たり前だがフェリスが噛みついてきた。あまり話題を出した記憶もないのだが、これはコネッホの予想の範疇である。
「まあそう言うな。あたいらはこれでも気心の知れた仲だろう? だから、オピスにも何かしら考えがあってこんな事をしたんだろうと、あたいはオピスを思って掛かったふりをしたというわけだよ」
これにはフェリスはただただ驚いていた。なにせあのドラコですら掛かってしまうほどの強力な魔法だったのだ。それを効いてませんでしたとか、このウサギ、何今頃になって言っているのだろうかと心の中でフェリスは思っている。
「フェリスのその心中は察するに余りあるな。一応これでも、フェリスが来るまでの間に聞けるだけ聞いてみたんだよ。理由として一番大きかったのは、人間と魔族との間の戦いが終わった事のようだよ」
「それはどういう事よ」
言葉に棘があるような口調で即聞き返すフェリス。
「それはお前の方が分かるだろう? フェリスとオピスは、元々同じ魔族の配下だ。そして、オピスはあんたに対抗意識を燃やしていたんだ。なにせ、先にその魔族の配下となったのはオピスなんだからな」
フェリスを指差しながら話すコネッホ。
「そういう事ですか。オピスさんはフェリスさんの事を恨むまでとはいかなくても妬んでいたと……」
「そういう事だよ、ブルム。戦いが終われば、そこからは馴れ合い始まる。だから、オピスはどうしてもそれが耐えられなかったというわけだよ」
コネッホが語ったのは、なんともなあという理由だった。
簡単に言えば、馴れ合いから逃げたのである。ただ、戦いが起きている最中にそれをやればかえって危険だと考えていたから、我慢してフェリスたちの輪の中に入っていたわけなのだ。
「呆れたわね。てか、蛇系の魔族ってば幻惑系の魔法が得意なんだから、どうとでもやっていけたんじゃないの?」
フェリスがこのように言うと、
「お前さんに凄まれてびびりちらすような奴だぞ? そこまでの精神力はないから無理だったんだろう」
すかさずコネッホは辛辣に言い放っていた。
「悪かったですわね、小心者で!」
散々悪口を言われたのが聞こえたのか、ようやくオピスが気が付いた。その顔はどことなく涙を浮かべていて、ぷるぷると震えながらフェリスを睨んでいた。
「ようやく気が付いたか、オピス。詳しい話はお前からしてやってくれ。あたいは断片的にしか言えないし、こういう事は本人が話すのが一番だからな」
コネッホもコネッホで容赦がない。意識を取り戻したばかりのオピスに、話を振ったのである。話を振られたオピスは、コネッホを恨みがましく睨んだ後、かなり悩んだようである。自分のプライドとの戦いであった。
しかし、フェリスとコネッホの二人から、じっと視線を向けられると、いよいよ観念したようだった。
「はあ、分かりましたわよ。全部話せばいいんでしょう、話せば」
それでも強気な姿勢を崩さないオピス。本来は臆病な性格がゆえに、こうやって虚勢を張りたがるのである。
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