邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

文字の大きさ
上 下
252 / 290

第252話 邪神ちゃんと届いた手紙

しおりを挟む
「フェリス、コネッホから手紙が来てるわよ」
 この日もクレアールに遊びに来ていたフェリスの元に、コネッホからの手紙が届いた。届けに来たのはヘンネである。
「コネッホから? 珍しいわね、あたしに何か相談事でもあるのかしら」
 ヘンネから手紙を受け取ったフェリス。それを横からドラコが覗いている。
「ちょっとドラコ、薬草園の管理はいいの?」
「なに、これだけ期間があればだいぶ他人に任せられるようになるわい。フェリスは出禁じゃがな」
「何よそれ」
 薬草を管理できる人物が増えたのがいい事だ。なので、フェリスが感心しようとしていたのだが、できんとか言われてプチンとキレていた。自然界の法則を完全無視するフェリスなのだから、そりゃドラコとしちゃ困るわけで仕方のない事である。納得のいかない表情のフェリスだったが、とりあえずはコネッホの手紙を確認してみる事にする。
「どれどれ、何が書いてあるのか、わしにも見せい」
「ちょっと、顔を近付け過ぎよ。落ち着きなさいったら」
 ドラコの顔を肘で押しのけるフェリス。そのくらいにドラコが近くに寄ってきていたのである。それにしても、どうしてドラコはここまでコネッホの手紙が気になるのだろうか。
「ドラコ、ずいぶんと覗き込んでくるけど、一体どうしたのよ」
「わしの勘が言っておるんじゃ。この手紙は怪しいと。だから、それを確認するためにもわしにも見せろというのじゃよ」
「落ち着きなさいってば。そんなに寄ってきたら落ち着いて広げられないでしょ」
 あまりにもぐいぐいとくるドラコに、フェリスがもの凄く困惑している。それをどうにかこうにか収めると、ようやくフェリスはコネッホからの手紙を広げたのだった。
「……何よ、この文章。ずいぶんと変な位置で改行してあるわね」
「確かに不自然じゃのう。あやつは無駄に頭がいいから、何かを仕込んでいるのは間違いないじゃろうがな」
 フェリスもドラコも、手紙の内容よりも不自然な文章の書き方の方に目が行ってしまった。
「とりあえずじゃフェリス。先に内容を確認しておこうではないか」
「それもそうね」
 不自然な改行が気になるものの、とりあえずは手紙の内容を確認するフェリスとドラコ。
 読み終えた結果は、その手紙の内容はただの近況報告である事が分かった。ただ、二人が世話をしたあの冒険者たちが元気にやっている事が分かったので、ずいぶんと安心したものである。
「ふむ、あやつらが元気そうで安心したわい」
「本当にね。家まで用意してあげたんだから、そうでなくっちゃね」
 単純に安心するドラコに対して、実に恩着せがましいフェリスである。
「でじゃ、手紙を読んでいて気付いたんじゃが、これ、横書きの頭の文字を繋げていくと、これも文章にならんかの?」
「うん? どれどれ……」
 ドラコが何かに気が付いたらしく、フェリスも一緒に確認をする。すると、頭文字を縦読みしていくと、とんでもない事実が判明した。なんとそこには、
『ふえりすへおぴすがきてるはやくきなさいこねつほ』
 という文章が浮かび上がってきたのだ。
「『フェリスへ。オピスが来てる。早く来なさい。コネッホ』。どうやらこう書いてあるようじゃな」
「オピス?」
 ドラコが文章を意味が分かるように読み上げると、オピスという単語が出てきた。しかし、オピスという単語に聞き覚えのないフェリスは首を傾げていた。
「うーむ、わしにも思い出せんなぁ。じゃが、あのコネッホが呼びつけるような話題じゃ。ただ事ではないと思うぞ」
 そう、オピスによって記憶を封じられているがために、フェリスもドラコもオピスの名前を聞いて蛇の邪神だと気付かなかったのである。しかし、こうやってコネッホが面倒な事を仕込んできた方が気になる二人である。どうせ面倒事だろうなと感じたフェリスは、特大のため息を吐いていた。
「コネッホがわざわざ言ってくるわけだし、あたしはこれに乗っかるわ」
「そうじゃのう。わしは薬草園の事があるがゆえに動けんから、ついていけなくて悪いのう」
 ドラコは心配そうな顔をしながら、動けない事を歯がゆく思っているようだ。
「いいわよ、ドラコ。そもそもご指名はあたしだけなんだし、すぐにでも向かうわ」
「いやな予感がするから、気を付けて行くんじゃぞ、フェリス」
「分かったわ、ドラコ。あたしが居ない間、メルの事をよろしく頼むわね」
「うむ、頼まれた」
 話を終えると、フェリスはすぐさま外へ飛び出す。そして、翼を広げるとそのまま飛び去って行った。
「やれやれ行ったか……。それにしても、このオピスという名、何か覚えがある気がするんじゃがな……。誰の事じゃったかな……」
 クレアールのフェリスの家に残されたドラコは、腕を組んで首を傾げながらうんうんと唸っている。名前だけではオピスの魔法を解く事はできなかったようだ。
「まあよい。フェリスが戻ってくるまで、メルの面倒をしっかり見る事にしようかの」
 気持ちを切り替えたドラコは、すぐさまメルを迎えにフェリスメルへと飛び立ったのだった。

 こうして、コネッホに呼び出されたフェリスは、思惑通りにモスレへと向けて出発したのである。魔族サイコシスの弟子であるフェリスとオピスが揃う時、一体何が起きるというのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...