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第247話 邪神ちゃんの癇癪
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コネッホから話を聞かされたオピスは、あまりの不機嫌さに血管が浮き出ている。どのくらいフェリスの事が嫌いなのだろうか。
「きーっ! あの小生意気な泥棒猫め!」
オピスは癇癪を起こしかけていた。ハンカチがあったのなら、思いっきり噛んで引っ張っていそうなくらいである。漫画なんかで見る貴婦人方のあれである。それにしても、蛇の邪神はちょっと情緒が不安定そうである。
「それにしても、笑える話ね。邪神だとか自称していた割に、天使とか呼ばれちゃってさ。ますますあいつの事が嫌いになれるわね」
オピスはコネッホの前で紅茶を飲みながら、愚痴混じりにフェリスの事を話していた。
「まったく、フェリスの話となると嫌いだと言いながらも饒舌になるな。実は好きなんじゃないのか?」
「だだだだ、誰があんな生意気な白猫の事が好きなもんですか! コネッホも適当な事を言ってるんじゃないわよ!」
コネッホに突っ込まれると、紅茶を噴き出しそうになりながらも、オピスは必死に否定をしていた。ただ、その顔はものすごく真っ赤になっていた。
「あいつは、師匠、サイコシス様の一番をあたくしから奪い取ったにっくき猫なのよ。ただの捨て猫だったくせに、めきめき才覚を現わしていくあの泥棒猫の事なんて、ぜーったいに好きになる事なんてないんだから!」
オピスは必死に否定をしているのだが、この間もずっと顔が真っ赤になっていた。コネッホもオピスの調子に合わせてツッコミを入れる事をやめる事にした。からかうと後が怖そうだからだ。
フェリスとオピスは、フェリスの元に集まった邪神の中でも、一番付き合いが古い。というのも、オピスは魔族サイコシスの弟子だったからだ。フェリスはそのサイコシスが自分の小間使いとして拾ってきた白猫である。
ところが、フェリスを拾ってきてからというもの、サイコシスがオピスに構う時間が減ってしまっていた。その上、かなりフェリスの事を大事にしていたのか、自分の持つ秘術などもかなりフェリスに教えていたようなのである。サイコシスの弟子として想いすら寄せていたオピスは、さすがにフェリスへの嫉妬の募らせる事となる。
サイコシスの死後、フェリスが放心めいた状態になっていたのも、実はこのオピスが原因である。サイコシスの小間使いとして、災厄になるようにといろいろと意地悪をしてきたオピスだったのだが、その企みは予想外の人物に打ち破られてしまった。
そう、それこそがドラコである。まさかフェリスがドラコの巣に迷い込んでそのまま戦って引き分けるとか、一体誰が考えただろうか。ドラコと出会う事、戦い事、ましてや引き分ける事、そのすべてがオピスにとって予想外だったのである。
その後、人間と魔族の戦いが激化する中、フェリスが暴れ回っている事を知ったオピスは、こっそりと様子を見に行った。そこで見たのは、災厄どころか他愛もないいたずらにかまけているフェリスの姿だったのだ。多くの仲間に囲まれながらも、ケけらけらとのんきに笑っているその姿に、オピスは激しい苛立ちを覚えたものだった。だからこそ、フェリスたちの仲間に入り、時を見計らって散り散りになるように魔法を使ったのである。孤立させれば今度こそ災厄と変貌するはず。オピスはそう考えていた。
ところが、フェリスは絶望するどころか、まさかの引きこもりとなってのんびりと過ごしていた。そうやって当てが外れている間に、おおよそ200年の時を経て、魔法の効果が薄まり始めたのだ。その結果は知っての通り、再びフェリスの元に邪神たちが集う結果となってしまったのである。狙いとは違う結果になってばかりなのだから、オピスが癇癪を起すのも仕方がないのだった。
「何なのよ、あいつ。なんであたくしの思い通りの結果になってくれないのよ……」
最終的にお酒を煽り始めてしまったオピス。ここまで来ると少々哀れにも思えてくる。
「なんとも言えんところだな。でも、それがフェリスのいいところであり悪いところだ。実際、あの近くに居るヘンネやドラゴたちも、フェリスの気ままさに振り回されているみたいだよ」
そう言いながら、コネッホはオピスの前に1枚の紙きれを差し出していた。
「なんだい、これは……」
「フェリスが造った街の案内だ。あいつは勝手に街を造ってヘンネにこってり怒られたらしいからな。あたいも実際にこの街を見たが、ずいぶんと規模の大きな街だったよ」
「ふーん……、そうなのね」
チラシを手に取りながら、オピスは興味なさそうに紙切れを眺めていた。
「はあ、まだ魔法の効果が効いているのなら、連中はあたくしの姿や名前を憶えていないのよね?」
「うん? まあ、そうだな。蛇とか蛇の邪神とか言っているが、会うのはやめておいた方がいいと思う。何の拍子に思い出すか分からないんだからね」
オピスの質問から、考えを推測して止めに掛かるコネッホ。
「フェリスメルとクレアールの2か所で、実にフェリスも入れて9人もの邪神が居るんだ。居ないのはあたいとラータとシンミア、それとオピスの四人だけだからな」
「ちっ、それは面倒ね」
コネッホの話を聞いたオピスは舌打ちをしている。正直、数としては不利でしかない。いくら精神系の魔法を得意とするオピスとはいえど、二度もうまく掛けられるとは限らないのだ。
「フェリスだけを誘い出すというのなら、あたいは協力してやってもいいけれどね」
「あら、それは意外な話ね」
コネッホの思いもしない提案に、オピスはにやりと笑っている。はたしてコネッホの真意はどこにあるのだろうか。
「きーっ! あの小生意気な泥棒猫め!」
オピスは癇癪を起こしかけていた。ハンカチがあったのなら、思いっきり噛んで引っ張っていそうなくらいである。漫画なんかで見る貴婦人方のあれである。それにしても、蛇の邪神はちょっと情緒が不安定そうである。
「それにしても、笑える話ね。邪神だとか自称していた割に、天使とか呼ばれちゃってさ。ますますあいつの事が嫌いになれるわね」
オピスはコネッホの前で紅茶を飲みながら、愚痴混じりにフェリスの事を話していた。
「まったく、フェリスの話となると嫌いだと言いながらも饒舌になるな。実は好きなんじゃないのか?」
「だだだだ、誰があんな生意気な白猫の事が好きなもんですか! コネッホも適当な事を言ってるんじゃないわよ!」
コネッホに突っ込まれると、紅茶を噴き出しそうになりながらも、オピスは必死に否定をしていた。ただ、その顔はものすごく真っ赤になっていた。
「あいつは、師匠、サイコシス様の一番をあたくしから奪い取ったにっくき猫なのよ。ただの捨て猫だったくせに、めきめき才覚を現わしていくあの泥棒猫の事なんて、ぜーったいに好きになる事なんてないんだから!」
オピスは必死に否定をしているのだが、この間もずっと顔が真っ赤になっていた。コネッホもオピスの調子に合わせてツッコミを入れる事をやめる事にした。からかうと後が怖そうだからだ。
フェリスとオピスは、フェリスの元に集まった邪神の中でも、一番付き合いが古い。というのも、オピスは魔族サイコシスの弟子だったからだ。フェリスはそのサイコシスが自分の小間使いとして拾ってきた白猫である。
ところが、フェリスを拾ってきてからというもの、サイコシスがオピスに構う時間が減ってしまっていた。その上、かなりフェリスの事を大事にしていたのか、自分の持つ秘術などもかなりフェリスに教えていたようなのである。サイコシスの弟子として想いすら寄せていたオピスは、さすがにフェリスへの嫉妬の募らせる事となる。
サイコシスの死後、フェリスが放心めいた状態になっていたのも、実はこのオピスが原因である。サイコシスの小間使いとして、災厄になるようにといろいろと意地悪をしてきたオピスだったのだが、その企みは予想外の人物に打ち破られてしまった。
そう、それこそがドラコである。まさかフェリスがドラコの巣に迷い込んでそのまま戦って引き分けるとか、一体誰が考えただろうか。ドラコと出会う事、戦い事、ましてや引き分ける事、そのすべてがオピスにとって予想外だったのである。
その後、人間と魔族の戦いが激化する中、フェリスが暴れ回っている事を知ったオピスは、こっそりと様子を見に行った。そこで見たのは、災厄どころか他愛もないいたずらにかまけているフェリスの姿だったのだ。多くの仲間に囲まれながらも、ケけらけらとのんきに笑っているその姿に、オピスは激しい苛立ちを覚えたものだった。だからこそ、フェリスたちの仲間に入り、時を見計らって散り散りになるように魔法を使ったのである。孤立させれば今度こそ災厄と変貌するはず。オピスはそう考えていた。
ところが、フェリスは絶望するどころか、まさかの引きこもりとなってのんびりと過ごしていた。そうやって当てが外れている間に、おおよそ200年の時を経て、魔法の効果が薄まり始めたのだ。その結果は知っての通り、再びフェリスの元に邪神たちが集う結果となってしまったのである。狙いとは違う結果になってばかりなのだから、オピスが癇癪を起すのも仕方がないのだった。
「何なのよ、あいつ。なんであたくしの思い通りの結果になってくれないのよ……」
最終的にお酒を煽り始めてしまったオピス。ここまで来ると少々哀れにも思えてくる。
「なんとも言えんところだな。でも、それがフェリスのいいところであり悪いところだ。実際、あの近くに居るヘンネやドラゴたちも、フェリスの気ままさに振り回されているみたいだよ」
そう言いながら、コネッホはオピスの前に1枚の紙きれを差し出していた。
「なんだい、これは……」
「フェリスが造った街の案内だ。あいつは勝手に街を造ってヘンネにこってり怒られたらしいからな。あたいも実際にこの街を見たが、ずいぶんと規模の大きな街だったよ」
「ふーん……、そうなのね」
チラシを手に取りながら、オピスは興味なさそうに紙切れを眺めていた。
「はあ、まだ魔法の効果が効いているのなら、連中はあたくしの姿や名前を憶えていないのよね?」
「うん? まあ、そうだな。蛇とか蛇の邪神とか言っているが、会うのはやめておいた方がいいと思う。何の拍子に思い出すか分からないんだからね」
オピスの質問から、考えを推測して止めに掛かるコネッホ。
「フェリスメルとクレアールの2か所で、実にフェリスも入れて9人もの邪神が居るんだ。居ないのはあたいとラータとシンミア、それとオピスの四人だけだからな」
「ちっ、それは面倒ね」
コネッホの話を聞いたオピスは舌打ちをしている。正直、数としては不利でしかない。いくら精神系の魔法を得意とするオピスとはいえど、二度もうまく掛けられるとは限らないのだ。
「フェリスだけを誘い出すというのなら、あたいは協力してやってもいいけれどね」
「あら、それは意外な話ね」
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