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第242話 邪神ちゃんと虎柄の邪神
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フェリスがリンゴ園からクレアールへ飛んで帰る最中の事だった。
「見つけたよ、フェリス!」
どこからともなく声が聞こえてくる。その声と同時に、フェリスに対して何かが襲い掛かってきた。
「その声は、ティグリス?!」
フェリスは声に反応して振り向く。そして、その襲撃を受け止める。
「ははっ、さすが声を掛けたら止められちゃうね。相変わらず元気そうで何よりよ、フェリス」
空中でギリギリと迫ってくる金髪に黒の縞模様の入った髪の毛の女性。そう、彼女こそ蛇を除く最後のフェリスの仲間の邪神である虎のティグリスだ。
「いきなり攻撃してくるあたり、相変わらずの挨拶の仕方ね、ティグリス」
フェリスはにこやかに笑っている。
「でもね、今のあたしは忙しいの。あんたの相手をしている間はないの。せめて終わってからにしてちょうだい」
「やだね。どうしてもと言うのなら、私もついていくよ」
空中でギリギリと顔を近付けていくティグリス。
見た目は普通の女性なのだが、髪はさっきも言った通りに金髪に黒い縞模様が入り、目は金色、武闘家のような胴着に身を包み、虎柄の毛皮を腰と首に巻いている。実はティグリスは半獣人で、獣人スタイルと人間スタイルを使い分ける事ができるのである。ちなみに完全な虎になる事も可能だ。
「あのねえ、ヘンネにどう説明すればいいのよ、あたしは……」
「なんだ、ヘンネも居るのね。ちょうどいいわ、会わせなさい」
「とりあえず、クレアールに行くから拳を収めてちょうだい」
フェリスが呆れて言うので、ティグリスはそれにおとなしく従った。なんだかんだ言っても、彼女たちにとってフェリスは上の存在なのである。
「クレアールって最近できた街でしょ? まさかフェリスが関わっているわけ?」
地面に着地したティグリスはフェリスに尋ねる。
「そうよ。あたしが造った街よ」
フェリスも地面に降りてティグリスの問いに答える。それを聞いたティグリスは妙に納得した顔をしている。
「さすがフェリス。私たちにできない事を平然とやってのけるね。さすがはリーダーだわ」
笑顔で頷くティグリス。その態度にフェリスはどちらかと言えば恥ずかしくなってしまった。
「とりあえず、クレアールの商業組合に行くから、頼むからおとなしくしててちょうだい」
「分かったよ。ヘンネの説教だけは受けたくないから」
フェリスがジト目を向ければ、ティグリスは笑ってそう答えていた。ヘンネのお説教はみんな苦手なようである。そんなわけで、おとなしくフェリスと一緒に、ティグリスはクレアールへと向かった。
クレアールへ戻ってくると、
「おお、ティグリスか。久しいのう!」
ドラコが薬草園から飛び出てきて出迎えた。
「その喋り方はドラコね。懐かしいわ」
「なんじゃ、お前さんはこっちの姿を忘れたというのか? それはそれで寂しいのう」
ティグリスの言葉にショックを隠し切れないドラコである。あの頃にも人間形態はしょっちゅう見せたはずだというのに、ティグリスはすっかり忘れているのである。フェリスと同じ猫系の邪神のはずだが、記憶力はいまいちなのだろうか?
しかし、ドラコはそんな事を気にせずにティグリスに対応する。
「しかしまあ、何の用事でここへ来たんじゃ?」
「いや、新しい街ができたからと聞いてね、それならいい手合わせの相手が居るんじゃないかと思ってやって来たの」
ティグリスの答えを聞いて呆れるドラコ。シンミアもだが、どうしてそういう発想になるのか分からないのである。根っからの戦闘狂か何かだろうか。
「やれやれ、何日か早ければシンミアが居たんじゃがな。悪いがここにはお前さんの望む相手など居らんよ。それどころか下手に騒ぎを起こしてヘンネに怒られるのが関の山じゃぞ」
「うへえ、ヘンネに怒られるのは勘弁ね」
ドラコが半分脅し気味に言うと、ティグリスは本気で嫌な顔をしていた。本気でヘンネの説教は嫌なようだ。
「へえ、何が勘弁なのでしょうかね」
「うわあ、ヘンネ!」
背後から聞こえた声に、ティグリスが飛び上がって驚いている。なぜなら、そこには話に出ていたヘンネが立っていたからだ。
「フェリス、そろそろ戻ってくると思っていましたよ。リンゴ園の従業員の話、先んじて募集を出しておきました」
「あら、完全に読まれてたのね」
「その話、あなたにしたのは私でしょう?」
「ああ、そうだったわね」
てへへと舌を出しながら後頭部を擦るフェリス。
「それよりも、ティグリス。さっきの話を聞かせてもらいましょうか?」
ものすごい剣幕でティグリスに迫るヘンネ。その気迫に、さすがのティグリスは視線を徐々に逸らしていく。
ヘンネは実は結構強い。戦ってヘンネに勝てるのはフェリスとドラコ、あとはラータくらいである。フェリスとドラコは単純に実力差。ラータは隠密の能力で捉えにくいというわけである。そんな風に見えないのだけれども、ヘンネは邪神たちの中では実力があるのである。
結局、最終的にはティグリスはヘンネに首根っこを掴まれて、そのまま商業組合まで引きずられていったのだった。ドラコは薬草園の世話のためにそのまま残り、フェリスだけがその後を追いかけていったのだった。
「見つけたよ、フェリス!」
どこからともなく声が聞こえてくる。その声と同時に、フェリスに対して何かが襲い掛かってきた。
「その声は、ティグリス?!」
フェリスは声に反応して振り向く。そして、その襲撃を受け止める。
「ははっ、さすが声を掛けたら止められちゃうね。相変わらず元気そうで何よりよ、フェリス」
空中でギリギリと迫ってくる金髪に黒の縞模様の入った髪の毛の女性。そう、彼女こそ蛇を除く最後のフェリスの仲間の邪神である虎のティグリスだ。
「いきなり攻撃してくるあたり、相変わらずの挨拶の仕方ね、ティグリス」
フェリスはにこやかに笑っている。
「でもね、今のあたしは忙しいの。あんたの相手をしている間はないの。せめて終わってからにしてちょうだい」
「やだね。どうしてもと言うのなら、私もついていくよ」
空中でギリギリと顔を近付けていくティグリス。
見た目は普通の女性なのだが、髪はさっきも言った通りに金髪に黒い縞模様が入り、目は金色、武闘家のような胴着に身を包み、虎柄の毛皮を腰と首に巻いている。実はティグリスは半獣人で、獣人スタイルと人間スタイルを使い分ける事ができるのである。ちなみに完全な虎になる事も可能だ。
「あのねえ、ヘンネにどう説明すればいいのよ、あたしは……」
「なんだ、ヘンネも居るのね。ちょうどいいわ、会わせなさい」
「とりあえず、クレアールに行くから拳を収めてちょうだい」
フェリスが呆れて言うので、ティグリスはそれにおとなしく従った。なんだかんだ言っても、彼女たちにとってフェリスは上の存在なのである。
「クレアールって最近できた街でしょ? まさかフェリスが関わっているわけ?」
地面に着地したティグリスはフェリスに尋ねる。
「そうよ。あたしが造った街よ」
フェリスも地面に降りてティグリスの問いに答える。それを聞いたティグリスは妙に納得した顔をしている。
「さすがフェリス。私たちにできない事を平然とやってのけるね。さすがはリーダーだわ」
笑顔で頷くティグリス。その態度にフェリスはどちらかと言えば恥ずかしくなってしまった。
「とりあえず、クレアールの商業組合に行くから、頼むからおとなしくしててちょうだい」
「分かったよ。ヘンネの説教だけは受けたくないから」
フェリスがジト目を向ければ、ティグリスは笑ってそう答えていた。ヘンネのお説教はみんな苦手なようである。そんなわけで、おとなしくフェリスと一緒に、ティグリスはクレアールへと向かった。
クレアールへ戻ってくると、
「おお、ティグリスか。久しいのう!」
ドラコが薬草園から飛び出てきて出迎えた。
「その喋り方はドラコね。懐かしいわ」
「なんじゃ、お前さんはこっちの姿を忘れたというのか? それはそれで寂しいのう」
ティグリスの言葉にショックを隠し切れないドラコである。あの頃にも人間形態はしょっちゅう見せたはずだというのに、ティグリスはすっかり忘れているのである。フェリスと同じ猫系の邪神のはずだが、記憶力はいまいちなのだろうか?
しかし、ドラコはそんな事を気にせずにティグリスに対応する。
「しかしまあ、何の用事でここへ来たんじゃ?」
「いや、新しい街ができたからと聞いてね、それならいい手合わせの相手が居るんじゃないかと思ってやって来たの」
ティグリスの答えを聞いて呆れるドラコ。シンミアもだが、どうしてそういう発想になるのか分からないのである。根っからの戦闘狂か何かだろうか。
「やれやれ、何日か早ければシンミアが居たんじゃがな。悪いがここにはお前さんの望む相手など居らんよ。それどころか下手に騒ぎを起こしてヘンネに怒られるのが関の山じゃぞ」
「うへえ、ヘンネに怒られるのは勘弁ね」
ドラコが半分脅し気味に言うと、ティグリスは本気で嫌な顔をしていた。本気でヘンネの説教は嫌なようだ。
「へえ、何が勘弁なのでしょうかね」
「うわあ、ヘンネ!」
背後から聞こえた声に、ティグリスが飛び上がって驚いている。なぜなら、そこには話に出ていたヘンネが立っていたからだ。
「フェリス、そろそろ戻ってくると思っていましたよ。リンゴ園の従業員の話、先んじて募集を出しておきました」
「あら、完全に読まれてたのね」
「その話、あなたにしたのは私でしょう?」
「ああ、そうだったわね」
てへへと舌を出しながら後頭部を擦るフェリス。
「それよりも、ティグリス。さっきの話を聞かせてもらいましょうか?」
ものすごい剣幕でティグリスに迫るヘンネ。その気迫に、さすがのティグリスは視線を徐々に逸らしていく。
ヘンネは実は結構強い。戦ってヘンネに勝てるのはフェリスとドラコ、あとはラータくらいである。フェリスとドラコは単純に実力差。ラータは隠密の能力で捉えにくいというわけである。そんな風に見えないのだけれども、ヘンネは邪神たちの中では実力があるのである。
結局、最終的にはティグリスはヘンネに首根っこを掴まれて、そのまま商業組合まで引きずられていったのだった。ドラコは薬草園の世話のためにそのまま残り、フェリスだけがその後を追いかけていったのだった。
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