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第238話 邪神ちゃんと緊張の対面
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無事に聖教会までたどり着くシンミアとラータ。
「しっかしよう、お前のその能力は便利だよなあ……」
聖教会を目の前に独り言ちるシンミア。すると、影の中からにゅっとラータが姿を現す。そう、ラータはその格好が目立ちすぎるので、ここまでシンミアの影に潜んで移動してきたのだ。さすが隠密を得意とするネズミの邪神である。
「目立たずに移動するには確かに便利ですよ。ですが、この能力を私利私欲に使うつもりはまったくありませんけれどね」
「お前さ、本当に邪神か?」
ラータの言い分にツッコミを入れるシンミアである。
「人の事を言えた義理ですかね……。それよりも、中に入りますからとりあえず黙って下さい」
「ちっ、しょうがねえな」
お返しとばかりにラータが少しきつく言うと、おとなしくシンミアはそれに従った。
聖教会の入口でラータがその場に居た衛兵と話をすると、無事に中へと立ち入る事ができた。敷地に入ったシンミアは、すっと寒気を感じた。
「おおうっ、……聖教会に入ったって感じの空気だな」
「私たち邪神には、あまり相性のいい空気じゃありませんからね」
少し面白がっていうシンミアに対して、ひたすら冷静なラータである。その対応に、シンミアはちょっとつまらなそうに顔をしかめていた。
聖教会の中を歩いていくシンミアとラータ。邪神二人が歩いているというのに、すれ違う聖教会の人間たちはラータに向けて会釈をしていく。さすがマイオリーの威光というものだろう。
そして、ラータがぴたりととある扉の前で立ち止まる。シンミアはよそ見をしていたせいでラータにぶつかってしまった。
「いってぇ……。急に立ち止まるんじゃねえよ」
当然のように文句を言うシンミアだが、ラータはまったく動じずに扉をコンコンと叩いていた。
「はい、どなた様でしょうか」
音に呼応するように、部屋の中から声が聞こえてきた。
「ラータでございます。シンミアを連れてきました」
「そうですか、ご苦労様です。お入り下さい」
ラータが正直に報告すると、マイオリーは間髪入れずに入室の許可を出してきた。こんなあっさりでいいのだろうか。シンミアはかなり訝しんでいる。
「シンミア?」
「いや、なんでもない」
ラータがくるっと振り返って声を掛けてくるので、シンミアは首を左右に振ってラータに続いて入室するのだった。
ついに対峙する、今世の聖女であるマイオリー。見た感じはどこにでもいる少女のようにしか見えない。だが、その放つオーラが確かに常人とはまったく違う事にシンミアは気が付いた。
「ようこそ聖教会へ。歓迎致しますよ、シンミア様」
マイオリーはにっこりと微笑んでいる。だが、その笑顔がどこか怖く感じられるシンミアである。トレジャーハンターとしていくつもの死線を潜り抜けてきたはずのシンミアですら感じる恐怖。それが聖女というものである。
「ラータもお出迎えご苦労様でした」
「いえ、聖女様がお望みであるのなら」
ラータを労うマイオリー。その言葉にラータはそうとだけ語っていた。
それにしても、邪神を従える聖女って、絵面的にどうなのだろうか。通常なら魔女とでも言われそうな気がする状況だが、生誕祭で起きた出来事がかなり影響しているようで、マイオリーはちゃんと聖女として扱われているのである。
さて、改めて部屋を確認する。そこに居るのは聖女マイオリー、その侍女メイベル、マイオリーに付き添う邪神ラータ、それとセンティアに来たばかりの邪神シンミアの四人である。
普段はどことなく勝ち気な性格のシンミアが、どういうわけかマイオリーを目の前に恐怖を感じているようである。
「他人を恐れるとは、あなたらしくもない、シンミア」
ラータは淡々と話し掛けている。
「見極めるとか言って意気込んでいたのは、一体どこのどなたでしたっけね」
さらに煽りを入れてくるラータ。フェリスの下で一緒に居ただけに、その扱いにはとても慣れているようである。
「う、うるさいっ! ちょ、ちょっと面食らっただけだ!」
ラータになじられて強がるシンミア。ただ、その様子を見ながらマイオリーがくすくすと笑っていた。
「なんだよ、何がおかしいんだよ!」
マイオリーの様子を見て突っ掛かっていくシンミア。しかし、マイオリーは実に落ち着いている。
「いえ、本当に仲がおよろしいのだと思いましてね。フェリス様とドラコ様もとても仲良しでしたし」
マイオリーは相変わらずのにっこりとした笑顔を保ち続けている。シンミアにとってすれば、その笑顔が逆に怖いようだった。笑顔にトラウマでもあるのだろうか。
「まあまあ、そう固くなさらずに。メイベル、何かお茶とお菓子を用意して下さい」
「畏まりました、聖女様」
メイベルは返事をすると部屋を出ていく。残された部屋の中の空気は温度差が激しすぎる。にこにこと笑顔を絶やさないマイオリー。何かと警戒して睨み付けるような表情のシンミア。黙って様子を見守っているラータ。どうしてこうなったのだろうか。
この重苦しい空気は、メイベルが紅茶とお菓子を持って戻ってきた時も続いていたという。
はたしてこんな調子で、まともな話ができるのだろうか。緊張の聖女と邪神の対談が、一向に始まらなかったのである。
「しっかしよう、お前のその能力は便利だよなあ……」
聖教会を目の前に独り言ちるシンミア。すると、影の中からにゅっとラータが姿を現す。そう、ラータはその格好が目立ちすぎるので、ここまでシンミアの影に潜んで移動してきたのだ。さすが隠密を得意とするネズミの邪神である。
「目立たずに移動するには確かに便利ですよ。ですが、この能力を私利私欲に使うつもりはまったくありませんけれどね」
「お前さ、本当に邪神か?」
ラータの言い分にツッコミを入れるシンミアである。
「人の事を言えた義理ですかね……。それよりも、中に入りますからとりあえず黙って下さい」
「ちっ、しょうがねえな」
お返しとばかりにラータが少しきつく言うと、おとなしくシンミアはそれに従った。
聖教会の入口でラータがその場に居た衛兵と話をすると、無事に中へと立ち入る事ができた。敷地に入ったシンミアは、すっと寒気を感じた。
「おおうっ、……聖教会に入ったって感じの空気だな」
「私たち邪神には、あまり相性のいい空気じゃありませんからね」
少し面白がっていうシンミアに対して、ひたすら冷静なラータである。その対応に、シンミアはちょっとつまらなそうに顔をしかめていた。
聖教会の中を歩いていくシンミアとラータ。邪神二人が歩いているというのに、すれ違う聖教会の人間たちはラータに向けて会釈をしていく。さすがマイオリーの威光というものだろう。
そして、ラータがぴたりととある扉の前で立ち止まる。シンミアはよそ見をしていたせいでラータにぶつかってしまった。
「いってぇ……。急に立ち止まるんじゃねえよ」
当然のように文句を言うシンミアだが、ラータはまったく動じずに扉をコンコンと叩いていた。
「はい、どなた様でしょうか」
音に呼応するように、部屋の中から声が聞こえてきた。
「ラータでございます。シンミアを連れてきました」
「そうですか、ご苦労様です。お入り下さい」
ラータが正直に報告すると、マイオリーは間髪入れずに入室の許可を出してきた。こんなあっさりでいいのだろうか。シンミアはかなり訝しんでいる。
「シンミア?」
「いや、なんでもない」
ラータがくるっと振り返って声を掛けてくるので、シンミアは首を左右に振ってラータに続いて入室するのだった。
ついに対峙する、今世の聖女であるマイオリー。見た感じはどこにでもいる少女のようにしか見えない。だが、その放つオーラが確かに常人とはまったく違う事にシンミアは気が付いた。
「ようこそ聖教会へ。歓迎致しますよ、シンミア様」
マイオリーはにっこりと微笑んでいる。だが、その笑顔がどこか怖く感じられるシンミアである。トレジャーハンターとしていくつもの死線を潜り抜けてきたはずのシンミアですら感じる恐怖。それが聖女というものである。
「ラータもお出迎えご苦労様でした」
「いえ、聖女様がお望みであるのなら」
ラータを労うマイオリー。その言葉にラータはそうとだけ語っていた。
それにしても、邪神を従える聖女って、絵面的にどうなのだろうか。通常なら魔女とでも言われそうな気がする状況だが、生誕祭で起きた出来事がかなり影響しているようで、マイオリーはちゃんと聖女として扱われているのである。
さて、改めて部屋を確認する。そこに居るのは聖女マイオリー、その侍女メイベル、マイオリーに付き添う邪神ラータ、それとセンティアに来たばかりの邪神シンミアの四人である。
普段はどことなく勝ち気な性格のシンミアが、どういうわけかマイオリーを目の前に恐怖を感じているようである。
「他人を恐れるとは、あなたらしくもない、シンミア」
ラータは淡々と話し掛けている。
「見極めるとか言って意気込んでいたのは、一体どこのどなたでしたっけね」
さらに煽りを入れてくるラータ。フェリスの下で一緒に居ただけに、その扱いにはとても慣れているようである。
「う、うるさいっ! ちょ、ちょっと面食らっただけだ!」
ラータになじられて強がるシンミア。ただ、その様子を見ながらマイオリーがくすくすと笑っていた。
「なんだよ、何がおかしいんだよ!」
マイオリーの様子を見て突っ掛かっていくシンミア。しかし、マイオリーは実に落ち着いている。
「いえ、本当に仲がおよろしいのだと思いましてね。フェリス様とドラコ様もとても仲良しでしたし」
マイオリーは相変わらずのにっこりとした笑顔を保ち続けている。シンミアにとってすれば、その笑顔が逆に怖いようだった。笑顔にトラウマでもあるのだろうか。
「まあまあ、そう固くなさらずに。メイベル、何かお茶とお菓子を用意して下さい」
「畏まりました、聖女様」
メイベルは返事をすると部屋を出ていく。残された部屋の中の空気は温度差が激しすぎる。にこにこと笑顔を絶やさないマイオリー。何かと警戒して睨み付けるような表情のシンミア。黙って様子を見守っているラータ。どうしてこうなったのだろうか。
この重苦しい空気は、メイベルが紅茶とお菓子を持って戻ってきた時も続いていたという。
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