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第226話 邪神ちゃんは対処する
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ドラコはフェリスに言われてクレアールの商業組合へと顔を出す。少し明るくなったので職員たちも集まっており、ヘンネもいつも通りに仕事をしている。
「かっかっかっ、ヘンネは居るかえ?」
「こ、これはドラコ様。はい、奥の部屋にいらっしゃいます」
ドラコの呼び掛けに職員が慌てて対応する。
「そうか、だったらわしが直接出向く。お前さんたちの仕事を邪魔する気はないからのう」
「はい、お気遣いありがとうございます」
ドラコは手をひらひらと振りながら、奥へと入っていく。
「邪魔するぞ、ヘンネ」
扉をノックする事もなく、いきなり開けて部屋へと乱入するドラコ。だが、ヘンネは魔力で察していたのか、特に慌てた様子はなかった。
「ノックくらいしたらどうだ、ドラコ」
「かっかっかっ、悪いのう」
「まあ、それはそれとして、何の用なのかしら」
悪びれる様子のないドラコに、ため息を吐きながら対応をするヘンネ。気の知れた仲だからこそ、こういう反応で済んでいるのかも知れない。
「うむ、今フェリスメルに来ておる王国料理協会とかいう連中にレシピを売ってやって欲しい。……ただし、ちょっと上乗せしてやってな」
「ああ、アファカから聞かされていますよ。料理狂いな人たちだそうですね」
聞かれた事にドラコが答える。すると、ヘンネの耳にもしっかり入っているようで、これまた呆れた様子でヘンネは反応している。
「フェリスにペコラ、それ以外にも執拗に絡んでいるようですね。こちらにも来るかも知れないからと、定期連絡ついでにアファカからの言伝を頂いてますよ」
「なんじゃ、もう伝わっておったのか。さすがに商業組合、話が早いのう」
ヘンネの言葉を聞いて、さすがのドラコも唸っている。
「でじゃ、そういう風に手配してくれんかのう。どれを売るかはペコラと相談すればいいじゃろうしな」
「分かりました。私が直々に向かって話をつけましょう。その間、もしこちらに来たらドラコがお願いしますね」
「かっかっかっ、お任せておけ。小童どもには口でも負ける気はせんぞ」
そんなわけで、ドラコとヘンネとの間で話がついた。
ちなみにフェリスやペコラのレシピというものは特殊なものである。小冊子になっていて、挿絵付きで料理の作り方が書かれている。ゆえにかなり高額で取引されているようなのだ。商業組合からすれば言ってしまえば金づるのようなものである。それでも、普段は向こうから買い求めに来たのを売るような感じなので、今回のような事例は本当に特殊な場合だと言えるのだった。
「では、私はもう行きますね。改めてこちらの事はお願いしますよ、ドラコ」
「うむ、安心して行ってくるといいぞ」
ヘンネは商業組合から出ていくと、ものすごいスピードで走り去っていく。さすがにルディたち走るのが得意な邪神たちに比べると劣るものの、それでもすごい速度だった。
「さて、一度薬草園に戻るとするかのう」
ヘンネを見送ったドラコは、商業組合に挨拶をすると薬草園へと戻っていった。
「アファカ、居ますか?」
数時間は掛かる道のりをほんの数十分ほどで走り切ったヘンネが、息を切らせながらフェリスメルの商業組合へとやって来た。その姿にざわめきが起こると、奥からアファカが姿を現した。
「どうしたのですか、ヘンネ」
「ちょっと相談する事がありましてね、奥で話をいいでしょうか」
ヘンネがそう言うと、アファカは辺りをきょろきょろと見回してから、ヘンネを奥へと案内する。
そして、自分の部屋で落ち着くと、飲み物を用意してヘンネに用件を尋ねる。
「今日はどういった用件でしょうか、ヘンネ」
「王国料理協会とかいう連中をご存じですよね?」
「ええ、職人街の食堂に予約を入れた人たちですよね、それがなにか」
淹れた紅茶を飲みながらヘンネに問い掛けるアファカ。
「どうも、ちょっとした迷惑を起こしているようなので、対処した方がいいかと思うのですけれど、アファカはどう見ますか?」
「ああ、一応そういう報告は上がっていますね。食堂の辺りに張り付いているとか報告が来ましたし、はてはフェリスさんの家まで押し掛けたらしいですしね」
さすがにアファカも事態を把握していたようである。そして、フェリスメルの商業組合としても、対処に追われているようだった。
「厄介なお客だったようですね……」
「ええ、まったくです。貴族という事で甘く見ていました」
アファカもヘンネも頭を抱えているようだ。
「それで、フェリスからの提案なのですが、一部の料理のレシピを、迷惑料などを上乗せして売りつけてやって欲しいという事らしいです」
「……多分大丈夫だと思います。お金に糸目をつけるような連中ではないと思いますので」
ヘンネから伝えられた提案に、アファカも乗り気のようである。
「それで、フェリスメルで保管しているレシピの冊子はどのようなものがあるのでしょうか」
「ちょっと待ってて下さい、確認してきます」
アファカはそう言うと、バタバタと部屋を出ていった。その姿を見送ったヘンネは、椅子にもたれ掛かってようやくくつろいだ態度を見せた。
何にしても、今回のトラブルはこれで終われるのだろうか。まだまだ安心はできなさそうなのだった。
「かっかっかっ、ヘンネは居るかえ?」
「こ、これはドラコ様。はい、奥の部屋にいらっしゃいます」
ドラコの呼び掛けに職員が慌てて対応する。
「そうか、だったらわしが直接出向く。お前さんたちの仕事を邪魔する気はないからのう」
「はい、お気遣いありがとうございます」
ドラコは手をひらひらと振りながら、奥へと入っていく。
「邪魔するぞ、ヘンネ」
扉をノックする事もなく、いきなり開けて部屋へと乱入するドラコ。だが、ヘンネは魔力で察していたのか、特に慌てた様子はなかった。
「ノックくらいしたらどうだ、ドラコ」
「かっかっかっ、悪いのう」
「まあ、それはそれとして、何の用なのかしら」
悪びれる様子のないドラコに、ため息を吐きながら対応をするヘンネ。気の知れた仲だからこそ、こういう反応で済んでいるのかも知れない。
「うむ、今フェリスメルに来ておる王国料理協会とかいう連中にレシピを売ってやって欲しい。……ただし、ちょっと上乗せしてやってな」
「ああ、アファカから聞かされていますよ。料理狂いな人たちだそうですね」
聞かれた事にドラコが答える。すると、ヘンネの耳にもしっかり入っているようで、これまた呆れた様子でヘンネは反応している。
「フェリスにペコラ、それ以外にも執拗に絡んでいるようですね。こちらにも来るかも知れないからと、定期連絡ついでにアファカからの言伝を頂いてますよ」
「なんじゃ、もう伝わっておったのか。さすがに商業組合、話が早いのう」
ヘンネの言葉を聞いて、さすがのドラコも唸っている。
「でじゃ、そういう風に手配してくれんかのう。どれを売るかはペコラと相談すればいいじゃろうしな」
「分かりました。私が直々に向かって話をつけましょう。その間、もしこちらに来たらドラコがお願いしますね」
「かっかっかっ、お任せておけ。小童どもには口でも負ける気はせんぞ」
そんなわけで、ドラコとヘンネとの間で話がついた。
ちなみにフェリスやペコラのレシピというものは特殊なものである。小冊子になっていて、挿絵付きで料理の作り方が書かれている。ゆえにかなり高額で取引されているようなのだ。商業組合からすれば言ってしまえば金づるのようなものである。それでも、普段は向こうから買い求めに来たのを売るような感じなので、今回のような事例は本当に特殊な場合だと言えるのだった。
「では、私はもう行きますね。改めてこちらの事はお願いしますよ、ドラコ」
「うむ、安心して行ってくるといいぞ」
ヘンネは商業組合から出ていくと、ものすごいスピードで走り去っていく。さすがにルディたち走るのが得意な邪神たちに比べると劣るものの、それでもすごい速度だった。
「さて、一度薬草園に戻るとするかのう」
ヘンネを見送ったドラコは、商業組合に挨拶をすると薬草園へと戻っていった。
「アファカ、居ますか?」
数時間は掛かる道のりをほんの数十分ほどで走り切ったヘンネが、息を切らせながらフェリスメルの商業組合へとやって来た。その姿にざわめきが起こると、奥からアファカが姿を現した。
「どうしたのですか、ヘンネ」
「ちょっと相談する事がありましてね、奥で話をいいでしょうか」
ヘンネがそう言うと、アファカは辺りをきょろきょろと見回してから、ヘンネを奥へと案内する。
そして、自分の部屋で落ち着くと、飲み物を用意してヘンネに用件を尋ねる。
「今日はどういった用件でしょうか、ヘンネ」
「王国料理協会とかいう連中をご存じですよね?」
「ええ、職人街の食堂に予約を入れた人たちですよね、それがなにか」
淹れた紅茶を飲みながらヘンネに問い掛けるアファカ。
「どうも、ちょっとした迷惑を起こしているようなので、対処した方がいいかと思うのですけれど、アファカはどう見ますか?」
「ああ、一応そういう報告は上がっていますね。食堂の辺りに張り付いているとか報告が来ましたし、はてはフェリスさんの家まで押し掛けたらしいですしね」
さすがにアファカも事態を把握していたようである。そして、フェリスメルの商業組合としても、対処に追われているようだった。
「厄介なお客だったようですね……」
「ええ、まったくです。貴族という事で甘く見ていました」
アファカもヘンネも頭を抱えているようだ。
「それで、フェリスからの提案なのですが、一部の料理のレシピを、迷惑料などを上乗せして売りつけてやって欲しいという事らしいです」
「……多分大丈夫だと思います。お金に糸目をつけるような連中ではないと思いますので」
ヘンネから伝えられた提案に、アファカも乗り気のようである。
「それで、フェリスメルで保管しているレシピの冊子はどのようなものがあるのでしょうか」
「ちょっと待ってて下さい、確認してきます」
アファカはそう言うと、バタバタと部屋を出ていった。その姿を見送ったヘンネは、椅子にもたれ掛かってようやくくつろいだ態度を見せた。
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