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第221話 邪神ちゃんは睨みを利かせる
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しばらくすると、食堂にどやどやと団体が入ってくる。
「なんだあいつら……」
入ってくる団体に対して、シンミアが睨みを利かせている。あまりに大勢で入ってきたので警戒しているのだ。
「あ、あの人たちは王国料理協会の人たちです」
「えっ、あいつらが?」
これに反応したのはメルだった。
「はい、揃いの装飾品を身に着けていると聞きましたので。ほら、あの胸の装飾品がそうです」
シンミアに付き添われてだいぶ回復してきたメルが、団体の方を見ながらシンミアに伝える。
「ちなみに誰からの情報だ?」
「ペコラ様です。そのペコラ様はアファカさんから伝えられたと聞いております」
シンミアが訪ねると、メルはそのように答えていた。どうやら商業組合を通じての情報かつ予約のようである。興味なさそうだったシンミアだが、席で休みながら協会の面々を眺めていた。
「さて、ちょっと何か食うか? この時間帯に何も食べずに座ってるのは、さすがに気が引けるだろう?」
「あっ、はい。そうですね。何に致しましょうか」
シンミアの問い掛けにメルは思い出したかのように反応していた。いや、忘れちゃいけないだろう。だけども、それくらいにメルは疲れていたのである。
迷惑かなと思っているメルだが、シンミアは構わず注文を出していた。その間も料理協会の面々をじっと見ている。
改めて王国料理協会の面々を見てみると、意外と男性と女性が半々程度だった。服装は貴族か商人というくらいの豪華なものである。こういう庶民的な場所にはあまり出向きそうにない人物ばかりのようだ。
そんな彼らがどうしてこのような田舎の村の食堂へやって来たのか。
それはなんと、ペコラの存在があるからだった。
センティアの聖教会のトップである聖女マイオリーが心を許す邪神。しかも、5年ほどの間、その聖教会で食事を作っていたという邪神。その邪神が居る食堂で出される料理というものに、彼らが興味を引かれないわけがなかったのだった。
(しっかしまあ、王国ってどこの王国だよ……)
ところが、シンミアが最終的に気にしていたのはそこだった。トレジャーハンターとしてあちこちうろついていただけに、他の邪神に比べれば現実を見てきたシンミアなのだ。
(センティアの情報があるって事は、その近くにある国だろうかな。となると、ここからも近いという情報を加味すれば、ブランシェル王国だろうかな?)
シンミアが考え込む間、メルは喉が渇いていたので果汁をごくごくと飲み干していた。
「シンミア様? 料理が運ばれてきましたよ」
ずっと他所を見て考え込んでいるシンミアに、メルは気になって声を掛けていた。
「ああ? そうか。だったら冷めないうちに食べねえとな。あいつらの料理は昔っからうまいからな」
シンミアはそう言うと、運ばれてきた料理をがつがつと食べ始めた。その食べる勢いがさっきとは違うものだから、メルはちょっと呆気に取られて手が止まっているようである。
「ああ、悪いな。あちきは普段は忙しく動いてるんでな、時間がもったいないと感じると早く食べちまう癖があるんだ。でも、ちゃんと味わってるから心配要らないぞ」
シンミアはメルに対して事情を説明しているが、その間も食べる勢いはそのままだった。
シンミアがこれだけ勢いよく食べるのも理由があった。今のシンミアは王国料理協会とかいう胡散臭い連中の事が気になって仕方がないのである。それを見張ろうとして、ついつい料理をかき込むように食べてしまっているというわけなのだ。ちなみにメルは、その様子を見ながらちまちまと自分の料理を食べていた。
その頃の王国料理協会の面々は、いよいよ食事の時間に突入しているようだった。
会食の場のような感じなので、順番に小出しに料理が運ばれてくるのだが、その一発目から協会の面々は不思議そうな表情をしていた。なにせ見た事のない飲み物が運ばれてきたのだから。
「すまないが、これは一体何なのだね?」
「はい、フェリスメル特産のリンゴを使いましたお酒でございます。私どもではシードルと呼んでおります」
「ほお、リンゴを使ったお酒か。新しいな」
従業員の答えに、協会員はグラスをまじまじと見ていた。
今の時代、お酒といえばエールかワインである。麦かブドウしかお酒にできないと思っていたのだから、リンゴというのは意外だったようである。
これは、初手からいい手応えである。実際、飲んだ協会の面々からはいい反応が出ているようだ。
(そっか、シードルもこの時代じゃ完全に廃れちまってるものな。なるほど、ああいう反応になるのか……)
果汁を飲みながら様子を窺うシンミア。その視線は明らかに厳しいものだった。それこそ、何かやらかそうものならすぐにでも飛び掛かりそうな雰囲気を放っている。
そんなシンミアの厳しい監視の下、王国料理協会による食事会はどんどんと進んでいった。協会の面々の反応からすると、どうやら彼らが関する王国とやらでは味わった事のないものばかりのようである。いちいちざわついてばかりなので、さすがのシンミアも興味が薄れてきたようだった。なにせ、追加の料理を注文するくらいなのだから。
(正直言って飽きてきたが、一応、ちゃんと見張っとくぐらいはしとくか。変な事しないとも限らねえからな)
そうこうしているうちに、いよいよ協会の面々の前に、メインとなる料理が運ばれてきたようだった。そのメイン料理の鮮烈さに、協会の面々から驚きの声が上がっていた。
「なんだあいつら……」
入ってくる団体に対して、シンミアが睨みを利かせている。あまりに大勢で入ってきたので警戒しているのだ。
「あ、あの人たちは王国料理協会の人たちです」
「えっ、あいつらが?」
これに反応したのはメルだった。
「はい、揃いの装飾品を身に着けていると聞きましたので。ほら、あの胸の装飾品がそうです」
シンミアに付き添われてだいぶ回復してきたメルが、団体の方を見ながらシンミアに伝える。
「ちなみに誰からの情報だ?」
「ペコラ様です。そのペコラ様はアファカさんから伝えられたと聞いております」
シンミアが訪ねると、メルはそのように答えていた。どうやら商業組合を通じての情報かつ予約のようである。興味なさそうだったシンミアだが、席で休みながら協会の面々を眺めていた。
「さて、ちょっと何か食うか? この時間帯に何も食べずに座ってるのは、さすがに気が引けるだろう?」
「あっ、はい。そうですね。何に致しましょうか」
シンミアの問い掛けにメルは思い出したかのように反応していた。いや、忘れちゃいけないだろう。だけども、それくらいにメルは疲れていたのである。
迷惑かなと思っているメルだが、シンミアは構わず注文を出していた。その間も料理協会の面々をじっと見ている。
改めて王国料理協会の面々を見てみると、意外と男性と女性が半々程度だった。服装は貴族か商人というくらいの豪華なものである。こういう庶民的な場所にはあまり出向きそうにない人物ばかりのようだ。
そんな彼らがどうしてこのような田舎の村の食堂へやって来たのか。
それはなんと、ペコラの存在があるからだった。
センティアの聖教会のトップである聖女マイオリーが心を許す邪神。しかも、5年ほどの間、その聖教会で食事を作っていたという邪神。その邪神が居る食堂で出される料理というものに、彼らが興味を引かれないわけがなかったのだった。
(しっかしまあ、王国ってどこの王国だよ……)
ところが、シンミアが最終的に気にしていたのはそこだった。トレジャーハンターとしてあちこちうろついていただけに、他の邪神に比べれば現実を見てきたシンミアなのだ。
(センティアの情報があるって事は、その近くにある国だろうかな。となると、ここからも近いという情報を加味すれば、ブランシェル王国だろうかな?)
シンミアが考え込む間、メルは喉が渇いていたので果汁をごくごくと飲み干していた。
「シンミア様? 料理が運ばれてきましたよ」
ずっと他所を見て考え込んでいるシンミアに、メルは気になって声を掛けていた。
「ああ? そうか。だったら冷めないうちに食べねえとな。あいつらの料理は昔っからうまいからな」
シンミアはそう言うと、運ばれてきた料理をがつがつと食べ始めた。その食べる勢いがさっきとは違うものだから、メルはちょっと呆気に取られて手が止まっているようである。
「ああ、悪いな。あちきは普段は忙しく動いてるんでな、時間がもったいないと感じると早く食べちまう癖があるんだ。でも、ちゃんと味わってるから心配要らないぞ」
シンミアはメルに対して事情を説明しているが、その間も食べる勢いはそのままだった。
シンミアがこれだけ勢いよく食べるのも理由があった。今のシンミアは王国料理協会とかいう胡散臭い連中の事が気になって仕方がないのである。それを見張ろうとして、ついつい料理をかき込むように食べてしまっているというわけなのだ。ちなみにメルは、その様子を見ながらちまちまと自分の料理を食べていた。
その頃の王国料理協会の面々は、いよいよ食事の時間に突入しているようだった。
会食の場のような感じなので、順番に小出しに料理が運ばれてくるのだが、その一発目から協会の面々は不思議そうな表情をしていた。なにせ見た事のない飲み物が運ばれてきたのだから。
「すまないが、これは一体何なのだね?」
「はい、フェリスメル特産のリンゴを使いましたお酒でございます。私どもではシードルと呼んでおります」
「ほお、リンゴを使ったお酒か。新しいな」
従業員の答えに、協会員はグラスをまじまじと見ていた。
今の時代、お酒といえばエールかワインである。麦かブドウしかお酒にできないと思っていたのだから、リンゴというのは意外だったようである。
これは、初手からいい手応えである。実際、飲んだ協会の面々からはいい反応が出ているようだ。
(そっか、シードルもこの時代じゃ完全に廃れちまってるものな。なるほど、ああいう反応になるのか……)
果汁を飲みながら様子を窺うシンミア。その視線は明らかに厳しいものだった。それこそ、何かやらかそうものならすぐにでも飛び掛かりそうな雰囲気を放っている。
そんなシンミアの厳しい監視の下、王国料理協会による食事会はどんどんと進んでいった。協会の面々の反応からすると、どうやら彼らが関する王国とやらでは味わった事のないものばかりのようである。いちいちざわついてばかりなので、さすがのシンミアも興味が薄れてきたようだった。なにせ、追加の料理を注文するくらいなのだから。
(正直言って飽きてきたが、一応、ちゃんと見張っとくぐらいはしとくか。変な事しないとも限らねえからな)
そうこうしているうちに、いよいよ協会の面々の前に、メインとなる料理が運ばれてきたようだった。そのメイン料理の鮮烈さに、協会の面々から驚きの声が上がっていた。
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