邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

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第217話 邪神ちゃんとうるさい邪神

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 フェリスが眠り始めてから二日が経った。その日の朝、
「ふわあ~~、よく寝たわね」
 ようやくフェリスが目を覚ました。あれだけ荒れていた毛並みが回復しており、目の下のクマもすっかり消え去っていた。
「あっ、フェリス様、おはようございますぅっ!!」
「ちょっと、メル。急に抱きついてこないでよ」
 目が覚めたフェリスを見つけて、メルが突撃ダイブをしてきた。それに思わずダメージを受けてしまうフェリスである。
「ようやく目が覚めたか、フェリス」
「ああ、ルディ、おはよう」
 ルディもやって来て声を掛けてきたので、挨拶を返しておくフェリス。
「で、あたしってどれくらい寝てた?」
 眠い目を擦りながら、ルディとメルに確認をするフェリス。
「たった1日だな。あれだけ無茶してた割りには、短い方だな」
「1日ですよ、長いですよ!」
 ルディとメルとで反応が違う。人間にしてみれば丸1日は長いだろうが、魔族にしてみれば普通であるか、場合によっては短い部類だ。その気になれば普通の睡眠で10日間とかも割とある話なのである。
「まあそうだな。メルはずっと落ち着きがなかったし、何度もフェリスの事を覗きにいってたからな」
「もう、ルディ様!!」
 ルディが意地悪そうに言うものだから、メルがポカポカとルディを叩いていた。それに対してルディはくすぐったいと笑っている。
「そっか、心配かけちゃったわね、メル」
 ベッドから起き上がると、フェリスはメルに近付いていそっと頭を撫でている。それに対して、メルはつい嬉しくなって顔が綻んでいた。相変わらずフェリスに対して感情が大きいようである。そのメルの様子を見たフェリスは、今日一日はメルに付き合ってあげようと思ったのだった。
 思ったのだったが、それを邪魔するような声がお昼頃に聞こえてきたのである。
 午前中はメルの実家である牧場に行っていたのだが、戻ってお昼を食べていると、ついにあいつがやって来たのである。
「おーいフェリス。あちきが来てやったぞ!」
 そう、シンミアである。
「あーうるさい! ただでさえルディが居なくて静かだと思ったのに、今度はあんたなわけ?!」
 玄関を開けて怒鳴るフェリス。そこには勝気な顔をした猿の邪神シンミアが立っていた。
「よう、フェリス。いつくらいぶりだ?」
「シンミア、あんたも来てたのね。何の用よ。今食事中なんだから、職人街の方でも行っててちょうだい。ペコラやハバリーが居るからさ」
 明らかに不機嫌に対応するフェリス。だが、それに簡単に応じるようなシンミアではなかった。
「つれねえなぁ、せっかく会いに来たってのによ」
「うるさいわね。食事中じゃなかったらちゃんと応対してるわよ。ほらほら、いったいった」
「フェリス様、一体どちら様なんですか?」
 玄関でひと悶着していると、メルが様子が気になったようで中から出てきた。
「おー、可愛い子じゃんか。何だよ、フェリス。二人の時間が邪魔されたくなくて邪険にしてるのかよ」
 シンミアがにししと笑っている。その顔を見て、フェリスはカチンときている。
「相変わらず、イヤミったらしい奴ね。ああもう、さっさと入りなさいよ。ギリギリギリ……」
 さすがにブチ切れているのか、フェリスがもの凄い勢いで歯ぎしりをしている。あまり見た事のないフェリスの姿にメルは結構驚いているようだった。
 この様子を見ている限り、フェリスたちは実はそう仲がいいわけではなさそうだ。
「じゃあ邪魔すんぜ」
 そう言って、シンミアは家の中に入ってくる。
「へえ、そこそこいい家に住んでんじゃねえか」
「そりゃあねえ。村の人たちがあたしのために張り切って立ててくれた家だもの」
 家の中を見回すシンミアにフェリスは淡々と答えている。
「なんでそこまでしてくれたんだ?」
「あたしが初めてこの村を訪れた時に、襲ってきたボアの群れを一瞬で全滅させただけだけど?」
 シンミアの問いに、フェリスはしれっと答えていた。それを聞いたシンミアは、目を丸くしていた。
「あー、そりゃ感謝されるわ。ボアの群れって普通の人間にとっちゃ脅威でしかねえからな。なるほど、天使とか呼ばれてる理由が分かるぜ」
 一瞬で何かを理解したシンミアだった。トレジャーハンターの彼女は、そのくらいには頭の回る邪神なのである。まあ、あのルディだって時々冴えわたるので、邪神というにふさわしいそれなりにスペックを持った面々なのである。
「今はハバリーが居るからそんな被害になる事はないけどね」
「まあ、そうだな」
 こういう話をしながら、フェリスは結局シンミアの分のご飯も作って用意していた。なんだかんだ言いつつも面倒見がいいのがフェリスなのである。だからこそ、フェリスの下にあれだけの邪神が集まってきたというわけなのだ。
「いやあ、昼も食わずにこっちに来てよかったぜ。フェリスのご飯はおいしいからな」
「まったく、なんであんたの面倒まで見なきゃいけないのよ……」
 満足そうにお腹を擦るシンミアに対し、フェリスはぶつぶつと文句を言っていた。
「そう言うなよ、フェリス。ハバリーやペコラに会わせてくれるんだろ?」
 にこにことしているシンミアに、露骨に嫌な顔を向けるフェリス。そして、大きくため息を吐くとメルに確認を取ったのだった。
 という事で、午後はフェリスメルの職人街へと出掛ける事になったフェリスだった。
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