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第201話 邪神ちゃん、慎重になる
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フェリスが再びお酒を仕込み始めた頃、モスレに居るコネッホのもとにはドラコが育てた薬草が届けられていた。
「まさか、あなた自らあたいのところに来るとは思ってもなかったわね、ヘンネ」
そう、コネッホのところにはクレアールの商業組合の長たるヘンネが出向いてきていたのだ。少しでも早い方がいいだろうと、ヘンネが自らで動いたのである。ちなみに同行者は居なかった。
「まあいいじゃないですか。私たちで久しぶりに話をしてみたかったですからね。あと、こっちの商業組合ともいろいろと交渉事がありますのでね、私が動くのが一番なんです」
「おいおい、商業組合との話の方がおまけなのか」
「私とあなたの仲ですから」
困ったようにコネッホが反応すると、ヘンネはしれっとすました顔で言い放っていた。さすがは邪神。しかしそのコネッホのさっぱりとした言いっぷりに、コネッホはおかしくて吹き出してしまった。
「酷い笑いようですね、コネッホ」
「いや、そこまではっきり言ってくれるから、つい……な。それで、あたいに用とは何なんだ?」
コネッホは笑いを堪えながら、改めてヘンネに質問をする。
「そうでしたね。本題を忘れるところでした」
ヘンネはそう言いながら、魔法鞄から薬草を取り出した。取り出された薬草を見て、コネッホは目を輝かせ始めた。
「ほうほう、これは素晴らしい薬草じゃないか。これは一体どうしたというんだ?」
コネッホにしては珍しく、ものすごく興奮した様子で喋り始めている。コネッホがこれだけ興奮するという事は、その薬草がかなりの高品質だという事を物語っていた。
「コネッホにそれだけ褒められるという事は、やっぱりドラコの知識は素晴らしいって事ですね」
「ああ、ドラコか。なら納得だな」
ドラコというだけでこの反応である。
コネッホもヘンネも、ドラコが古竜である事は知っている。だけども、ヘンネの方は見た事を信じるようなタイプなので、半信半疑のような反応をしているのだった。コネッホの方も似たようなところがあるのだが、こっちは過去にドラコの暴れっぷりを見ているので無条件に信頼しているというわけなのだ。ドラコの鱗を実際に見ているというのも大きいだろう。
「アクアバットの魔石と牙で育てた薬草です。鑑定があるので、品質は保証しますよ」
「そのようだな。あたいも鑑定持ちだからすぐに分かった」
コネッホは渡された薬草をまじまじと見ながら呟いている。
「それにしても、アクアバットか。という事は、この薬草にはあのマイムも関わっているんだな」
「そうですね。アクアバットはマイムの管理する森が生息地ですからね」
「それにしても、魔物の魔石を肥料にするか……。普通の発想じゃ思いつかない方法だな」
コネッホは薬草を見ながらぶつぶつと呟いている。
「それでは私は一足先に商業組合に行っていますので、それでポーションを作ったら来て下さいね」
「分かった。これなら今までの比にならないくらいの良品が作れそうだよ」
いつにも増して自信たっぷりのコネッホを見て、ヘンネはふっとため息のように笑っている。そして、コネッホの家を出て商業組合へと向かっていった。
一人になったコネッホは、早速渡された薬草を使ってポーション作りを始める。鑑定を駆使しながら錬金術師としての手腕をいかんなく発揮していく。
邪神が関わっているとはいえ、天然ものではない薬草なので少々勝手が違う。それゆえにコネッホは慎重になっているのだ。
(魔力の含有量が明らかに多い。さすがはフェリスにも負けず劣らず引きこもりをしていたドラゴンだな。これだけの品質の薬草を育て上げるとは……。下級品質ポーション用の薬草とはとても思えないぞ)
さすがのコネッホですら手を焼く有り様だ。しかし、そこは錬金術師たる邪神。強引な手法を取ってでも、見事にポーションを完成させてみせたのだ。
「ふぅ……、フェリスが作れたというのなら、あたいが作れないわけにはいかないからな。だが、どうせフェリスの事だ、ろくに何も考えずに普通の作り方をしたんだろうが、それではこの薬草の持つ力を半分も発揮させられないぞ」
でき上がったポーションの小瓶を見ながら、コネッホは呟いている。確かに目の前に並ぶポーションの色は、フェリスが作ったそれとは明らかに色が違っていたのだ。
「さて、ポーションもできた事だし、ヘンネを追って商業組合に出向くとしようか」
コネッホはガタガタとでき上がったポーションを魔法鞄にしまい込むと、テーブルの上を片付けてから出掛けていったのである。散らかしっぱなしだとまた怒られるからだった。
商業組合へと向かうコネッホの顔は、これ程までないくらいににこやかにしていた。道行く中で知り合いの人から声を掛けられては突っ込まれるくらいである。そこまで顔に出ているとは思っていなかったコネッホは、突っ込まれるたびに驚きを隠せなかったのだった。
そういう事が道中にありながらも、コネッホはでき上がったポーションを持って商業組合に到着したのだった。
「まさか、あなた自らあたいのところに来るとは思ってもなかったわね、ヘンネ」
そう、コネッホのところにはクレアールの商業組合の長たるヘンネが出向いてきていたのだ。少しでも早い方がいいだろうと、ヘンネが自らで動いたのである。ちなみに同行者は居なかった。
「まあいいじゃないですか。私たちで久しぶりに話をしてみたかったですからね。あと、こっちの商業組合ともいろいろと交渉事がありますのでね、私が動くのが一番なんです」
「おいおい、商業組合との話の方がおまけなのか」
「私とあなたの仲ですから」
困ったようにコネッホが反応すると、ヘンネはしれっとすました顔で言い放っていた。さすがは邪神。しかしそのコネッホのさっぱりとした言いっぷりに、コネッホはおかしくて吹き出してしまった。
「酷い笑いようですね、コネッホ」
「いや、そこまではっきり言ってくれるから、つい……な。それで、あたいに用とは何なんだ?」
コネッホは笑いを堪えながら、改めてヘンネに質問をする。
「そうでしたね。本題を忘れるところでした」
ヘンネはそう言いながら、魔法鞄から薬草を取り出した。取り出された薬草を見て、コネッホは目を輝かせ始めた。
「ほうほう、これは素晴らしい薬草じゃないか。これは一体どうしたというんだ?」
コネッホにしては珍しく、ものすごく興奮した様子で喋り始めている。コネッホがこれだけ興奮するという事は、その薬草がかなりの高品質だという事を物語っていた。
「コネッホにそれだけ褒められるという事は、やっぱりドラコの知識は素晴らしいって事ですね」
「ああ、ドラコか。なら納得だな」
ドラコというだけでこの反応である。
コネッホもヘンネも、ドラコが古竜である事は知っている。だけども、ヘンネの方は見た事を信じるようなタイプなので、半信半疑のような反応をしているのだった。コネッホの方も似たようなところがあるのだが、こっちは過去にドラコの暴れっぷりを見ているので無条件に信頼しているというわけなのだ。ドラコの鱗を実際に見ているというのも大きいだろう。
「アクアバットの魔石と牙で育てた薬草です。鑑定があるので、品質は保証しますよ」
「そのようだな。あたいも鑑定持ちだからすぐに分かった」
コネッホは渡された薬草をまじまじと見ながら呟いている。
「それにしても、アクアバットか。という事は、この薬草にはあのマイムも関わっているんだな」
「そうですね。アクアバットはマイムの管理する森が生息地ですからね」
「それにしても、魔物の魔石を肥料にするか……。普通の発想じゃ思いつかない方法だな」
コネッホは薬草を見ながらぶつぶつと呟いている。
「それでは私は一足先に商業組合に行っていますので、それでポーションを作ったら来て下さいね」
「分かった。これなら今までの比にならないくらいの良品が作れそうだよ」
いつにも増して自信たっぷりのコネッホを見て、ヘンネはふっとため息のように笑っている。そして、コネッホの家を出て商業組合へと向かっていった。
一人になったコネッホは、早速渡された薬草を使ってポーション作りを始める。鑑定を駆使しながら錬金術師としての手腕をいかんなく発揮していく。
邪神が関わっているとはいえ、天然ものではない薬草なので少々勝手が違う。それゆえにコネッホは慎重になっているのだ。
(魔力の含有量が明らかに多い。さすがはフェリスにも負けず劣らず引きこもりをしていたドラゴンだな。これだけの品質の薬草を育て上げるとは……。下級品質ポーション用の薬草とはとても思えないぞ)
さすがのコネッホですら手を焼く有り様だ。しかし、そこは錬金術師たる邪神。強引な手法を取ってでも、見事にポーションを完成させてみせたのだ。
「ふぅ……、フェリスが作れたというのなら、あたいが作れないわけにはいかないからな。だが、どうせフェリスの事だ、ろくに何も考えずに普通の作り方をしたんだろうが、それではこの薬草の持つ力を半分も発揮させられないぞ」
でき上がったポーションの小瓶を見ながら、コネッホは呟いている。確かに目の前に並ぶポーションの色は、フェリスが作ったそれとは明らかに色が違っていたのだ。
「さて、ポーションもできた事だし、ヘンネを追って商業組合に出向くとしようか」
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