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第200話 邪神ちゃんとでき上がったお酒
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ドラコが栽培した薬草は厳重に保管されて、モスレのコネッホのもとに届けられる事になった。ドラコが育てた薬草は、コネッホの手に掛かればどんな風になるのだろうか。結果が分かるのは早くても2週間後、フェリスたちは気長に待つ事にしたのだった。
のんびり過ごす事、数日間。
「あっ、そろそろお酒ができる頃かしら」
「お酒、ですか?」
フェリスが思い出したかのように言うと、メルがきょとんとしていた。フェリスがお酒を造り始めた事を知らないからである。
そういうわけで、フェリスは果樹園へとメルを連れて出向いた。果樹園に到着すると、果樹園の主人がフェリスたちを出迎えてくれた。
「天使様、ようこそおいで下さいました」
果樹園の主人はとてもにこにこしている。どうやら機嫌がよいようだが、一体何があったというのだろうか。
「天使様が仕込まれたお酒ができ上がる日を、今か今かと待ちわびておりました。ささ、早くこちらへ」
どうやらでき上がったお酒を飲みたいだけらしい。こんな昼間から飲みたがるとは、この主人はのん兵衛のようである。正直フェリスは呆れてしまっているし、メルも笑っている。
そんな複雑な心境の中、フェリスたちは酒を造っている小屋へと向かう。果樹園の隅の方にポツンと建っている小屋、それこそがフェリスが造っているお酒の樽がある小屋である。
「あたしが最初に入って確認してくるので、ちょっと待ってて下さいね」
フェリスがそう言うと、メルと果樹園の主人は静かに頷いて待つ事にした。
小屋に入ったフェリスは、中の様子を確認する。中はフェリスが掛けた魔法のおかげで、きれいな状態が保たれている。
「さーて、出来栄えはどうかしらね」
フェリスはまずは蓋を開けて、すっかりスッカスカになったリンゴの実を取り出す。搾りかすだが、これは肥料に活用するので、籠に除けておいた。
それを終えると、樽の下につけておいたコックを開いて、コップに少量注ぐ。
「うーん、いい香り。さてお味はどうかしらね」
フェリスはちょこっと口に含んで、口の中で転がすようにして味わう。そして、最後はごくんと飲み干した。
「かーっ、自分で言うのもなんだけど、久しぶりに造ってみたけどかなりいい出来じゃない?」
フェリスはすごく満足そうな顔をしていた。そして、スキップをしながら外へと出ていく。
「ど、どうでしたか、フェリス様」
外で待っていたメルが、心配そうにフェリスに尋ねる。すると、
「うん、いい感じ。数100年ぶりのお酒造りだったけど、結構おすすめできると思うわよ」
フェリスは親指を立てて突き出していた。
「試飲会でもしたいんだけど、暇そうな人たち捕まえてきてくれないかな。村人にも飲んでもらわないと、あたしだけじゃ自画自賛でしかないからね」
「畏まりました、フェリス様」
「あっ、ルディは絶対連れてこないで。あの犬っころだけは酒ならどんなまずいものでもガンガン飲んじゃうから」
村へ出ていこうとするメルに、フェリスは一応注意しておいた。インフェルノウルフという高位の魔物のはずなのにこの扱いである。そのくらいに酒癖が悪いのが悪いのである。
こうして、メルたちの呼び掛けに応じた村人と冒険者たちが果樹園に集まったのである。その表情を見ると、新しいお酒と聞いて楽しみにしていたり、魔族が造ったお酒と聞いて不安そうな表情を浮かべたりと様々だった。不安ならどうして来たんだとフェリスは突っ込みたくなった。
集まった人々の前に、フェリスは魔法を使って樽を移動させてくる。小屋も魔法で建てたので、フェリスの魔法で変形し放題である。
それはそれとして、目の前にデーンと現れた大きな樽に、村人たちはとても驚いている。なにせ、どう見ても木で作ったものではないからだ。目の前にあるのはフェリスの魔法で作られた土の樽である。
「1杯1杯順番に注いでいくから、押さない割り込まないでお願いね」
フェリスは土魔法でジョッキを作りながら、そのジョッキに半分程度の量を注いでいく。そして、一人、また一人と順番にお酒を受け取っていった。全体としては30人くらいだったので、結構すんなりと全員に行き渡った。
「メルは我慢してね。まだあなたには早いわ」
「うう、我慢します」
お酒を渡してもらえなかったメルは、ちょっぴり拗ねていた。まだ幼いから仕方ないね。
こうして、集まった村人たちに振る舞われたお酒だが、さすがにリンゴの果汁を発酵させたものとあって、エールとは違って甘みがあった。これによって評価はまちまちに分かれてしまっていた。男女ともに好評不評がが割れていたのは面白い。
「まあそんなものかな。評価としては割れちゃっているけど、お酒の選択肢が増えたのはいいんじゃないかしらね」
そんな事を言いながらフェリスは満足げに笑っていた。
フェリスメルに新しい名物ができたのはいいのだが、また勝手な事をやらかしたフェリスは、アファカに怒られていた。しかし、フェリスが造ったシードルはアファカには好評だったために、村の特産物に付け加えられる事になったのだった。
200話に到達しました。お祝いのお酒回!
のんびり過ごす事、数日間。
「あっ、そろそろお酒ができる頃かしら」
「お酒、ですか?」
フェリスが思い出したかのように言うと、メルがきょとんとしていた。フェリスがお酒を造り始めた事を知らないからである。
そういうわけで、フェリスは果樹園へとメルを連れて出向いた。果樹園に到着すると、果樹園の主人がフェリスたちを出迎えてくれた。
「天使様、ようこそおいで下さいました」
果樹園の主人はとてもにこにこしている。どうやら機嫌がよいようだが、一体何があったというのだろうか。
「天使様が仕込まれたお酒ができ上がる日を、今か今かと待ちわびておりました。ささ、早くこちらへ」
どうやらでき上がったお酒を飲みたいだけらしい。こんな昼間から飲みたがるとは、この主人はのん兵衛のようである。正直フェリスは呆れてしまっているし、メルも笑っている。
そんな複雑な心境の中、フェリスたちは酒を造っている小屋へと向かう。果樹園の隅の方にポツンと建っている小屋、それこそがフェリスが造っているお酒の樽がある小屋である。
「あたしが最初に入って確認してくるので、ちょっと待ってて下さいね」
フェリスがそう言うと、メルと果樹園の主人は静かに頷いて待つ事にした。
小屋に入ったフェリスは、中の様子を確認する。中はフェリスが掛けた魔法のおかげで、きれいな状態が保たれている。
「さーて、出来栄えはどうかしらね」
フェリスはまずは蓋を開けて、すっかりスッカスカになったリンゴの実を取り出す。搾りかすだが、これは肥料に活用するので、籠に除けておいた。
それを終えると、樽の下につけておいたコックを開いて、コップに少量注ぐ。
「うーん、いい香り。さてお味はどうかしらね」
フェリスはちょこっと口に含んで、口の中で転がすようにして味わう。そして、最後はごくんと飲み干した。
「かーっ、自分で言うのもなんだけど、久しぶりに造ってみたけどかなりいい出来じゃない?」
フェリスはすごく満足そうな顔をしていた。そして、スキップをしながら外へと出ていく。
「ど、どうでしたか、フェリス様」
外で待っていたメルが、心配そうにフェリスに尋ねる。すると、
「うん、いい感じ。数100年ぶりのお酒造りだったけど、結構おすすめできると思うわよ」
フェリスは親指を立てて突き出していた。
「試飲会でもしたいんだけど、暇そうな人たち捕まえてきてくれないかな。村人にも飲んでもらわないと、あたしだけじゃ自画自賛でしかないからね」
「畏まりました、フェリス様」
「あっ、ルディは絶対連れてこないで。あの犬っころだけは酒ならどんなまずいものでもガンガン飲んじゃうから」
村へ出ていこうとするメルに、フェリスは一応注意しておいた。インフェルノウルフという高位の魔物のはずなのにこの扱いである。そのくらいに酒癖が悪いのが悪いのである。
こうして、メルたちの呼び掛けに応じた村人と冒険者たちが果樹園に集まったのである。その表情を見ると、新しいお酒と聞いて楽しみにしていたり、魔族が造ったお酒と聞いて不安そうな表情を浮かべたりと様々だった。不安ならどうして来たんだとフェリスは突っ込みたくなった。
集まった人々の前に、フェリスは魔法を使って樽を移動させてくる。小屋も魔法で建てたので、フェリスの魔法で変形し放題である。
それはそれとして、目の前にデーンと現れた大きな樽に、村人たちはとても驚いている。なにせ、どう見ても木で作ったものではないからだ。目の前にあるのはフェリスの魔法で作られた土の樽である。
「1杯1杯順番に注いでいくから、押さない割り込まないでお願いね」
フェリスは土魔法でジョッキを作りながら、そのジョッキに半分程度の量を注いでいく。そして、一人、また一人と順番にお酒を受け取っていった。全体としては30人くらいだったので、結構すんなりと全員に行き渡った。
「メルは我慢してね。まだあなたには早いわ」
「うう、我慢します」
お酒を渡してもらえなかったメルは、ちょっぴり拗ねていた。まだ幼いから仕方ないね。
こうして、集まった村人たちに振る舞われたお酒だが、さすがにリンゴの果汁を発酵させたものとあって、エールとは違って甘みがあった。これによって評価はまちまちに分かれてしまっていた。男女ともに好評不評がが割れていたのは面白い。
「まあそんなものかな。評価としては割れちゃっているけど、お酒の選択肢が増えたのはいいんじゃないかしらね」
そんな事を言いながらフェリスは満足げに笑っていた。
フェリスメルに新しい名物ができたのはいいのだが、また勝手な事をやらかしたフェリスは、アファカに怒られていた。しかし、フェリスが造ったシードルはアファカには好評だったために、村の特産物に付け加えられる事になったのだった。
200話に到達しました。お祝いのお酒回!
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