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第191話 邪神ちゃんの改装住宅
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家が決まったのでレイドたちにその家をプレゼントすると、フェリスはにこにこの笑顔で彼らと別れてコネッホの家へと戻っていく。ちなみに、アクアバイトラットの毛皮で手に入ったお金の一部は彼らに渡しておいた。倒したのは彼らなのだから、当然の権利である。
「さーて、これであたしはお守りから解放ね。明日から何をしようかしらね」
フェリスは冒険者組合の新しい組合長を見るまで帰らないつもりのようだ。本当に気ままに過ごしている。
「帰れ。眷属の子も寂しがるだろうが」
「えー……」
コネッホの家に戻ると、しれっとそんな事を言われるフェリス。
しかし、確かにメルの性格を考えると、とても寂しがっている可能性は捨てきれない。フェリスは思いっきり悩んでいた。
「モスレの街の事など、フェリスには関係ないだろうが。フェリスメルとクレアールの事をちゃんと面倒見ろ。新しい組合長の事など捨て置け」
それこそ耳が痛いほどに口うるさく言われるフェリス。
「分かった、分かったわよぅ……」
耳まで掴まれてのお説教に、さすがのフェリスも参ったようだった。
「今夜は泊めてやるから、明日になったら帰れ」
コネッホは辛辣だった。仲間だからこその態度なのである。ひと晩泊めてくれるだけマシなのだ。
「はあ、仕方ないわね。コネッホ、あの子たちの事をお願いね」
「子守りは勘弁だけど、フェリスの頼みなら仕方ないな。ブルムってのが本気で錬金術を学ぶのなら、まとめて面倒を見てやろう」
コネッホは面倒だとも思いながらも、フェリスの頼みを聞き届けたのだった。
その頃のレイドたちは、新しい家にものすごく歓声を上げていた。
「すげえ、フェリスさんの魔法って本当にとんでもないよな」
「見てくれがあれだけボロボロだった、崩壊寸前の家だというのが信じられないな」
男二人は、二階に駆け上がって部屋を一つ一つ確認しながら興奮気味に叫んでいる。
「厨房もちゃんとなってるわ。家の外からこの精度の魔法……。さすが邪神を自称するだけの事はあるわ」
「お風呂もちゃんとしてるさー。これなら毎日入っちゃうぞ」
女性二人も唸っている。台所と風呂を見ているあたり、男たちとは視点が違っていた。
「フェリっちったら太っ腹よねー。あたしたちのためにポンと現金一括だもんねー」
「いや、あれはだいぶ足元見てたぞ。銀貨10枚とか、さすがに家の価格としては安すぎる」
「そうね、普通なら賃貸料の月額と同程度よ」
「でもさ、廃屋だったんだからそんなもんだろう。崩壊待ちだったってんなら、なおさらさ」
レイドたちはあーだこーだと感想やら意見やらを交わしている。思うところはそれぞれにあるようである。
「ただね、この家には問題があるのよ……」
「ああ、確かに。これは大問題だな……」
「えっ、なになに?」
ブルムとグルーンが腕を組みながら真剣な面持ちで話していると、ピックルが不思議そうな顔をして二人に寄っていく。
「ああ、実に大問題だ。由々しき事態なんだよ、ピックル……」
「レイドまでなんだよー。フェリっちの魔法になんか文句でもあるわけ?」
ピックルはかんかんに怒っている。どうやらピックルだけがフェリスに酔いしれているために、この家が抱える深刻な問題に気が付いていないようだった。
「なんだよー。はっきり言ってよね、ぷんぷん」
ピックルが両手を腰に当てて膨れている。
「お前な、気が付かないか?」
「何にさ」
「よく見ろよ。この家……家具がまったくないんだぞ」
「あーーっ!!!」
グルーンがはっきり告げると、ピックルはようやくその深刻さに気が付いて叫び声を上げていた。どうして気付かないのだろうか。
「たたた、確かにそうじゃん。ベッドもテーブルも椅子も何もないじゃん。どどど、どーすんの? ねえ、どうすんのさーっ?」
あたふたと慌てるピックル。その姿にレイドたちはため息を吐く。
「どうするってなあ?」
「ああ、やる事はひとつだけだ」
「……買いに来ましょうか。まだ明るいからお店やってるでしょうし」
そんなわけで、レイドたちはやむなく日が傾き始めたモスレの街へと出掛けていったのだった。
「はあ、商業組合の人が居る間に気付いときゃよかったぜ……」
今さら愚痴ったところで、もう後の祭りなのである。
「とりあえずは商業組合に行こう。個々の店を回ってもいいが、商業組合なら一括注文ができるはずだからな」
「さっすがレイド。あったまいい~!」
ピックルが両手を握って振りながらくねくねと踊っている。
「あのなあ、お前サポーターだろうが。こういう時はお前も冷静じゃないとこっちとしちゃ困るんだぞ」
「そうね。ピックルはもふもふが絡むと、一気に頭がパーになるものね。優秀なサポーターなのに、そこが玉に瑕だわ……」
「うぎぎ……、なっによーっ! もふもふ最高じゃないのよーっ!」
口げんかはするものの、どことなく仲のいい四人組である。
この日をもって彼らはモスレを拠点として活動する事になったのだが、一体今後はどういう活躍をしてくれるのだろうか。彼らの活躍は、また別のお話である。
「さーて、これであたしはお守りから解放ね。明日から何をしようかしらね」
フェリスは冒険者組合の新しい組合長を見るまで帰らないつもりのようだ。本当に気ままに過ごしている。
「帰れ。眷属の子も寂しがるだろうが」
「えー……」
コネッホの家に戻ると、しれっとそんな事を言われるフェリス。
しかし、確かにメルの性格を考えると、とても寂しがっている可能性は捨てきれない。フェリスは思いっきり悩んでいた。
「モスレの街の事など、フェリスには関係ないだろうが。フェリスメルとクレアールの事をちゃんと面倒見ろ。新しい組合長の事など捨て置け」
それこそ耳が痛いほどに口うるさく言われるフェリス。
「分かった、分かったわよぅ……」
耳まで掴まれてのお説教に、さすがのフェリスも参ったようだった。
「今夜は泊めてやるから、明日になったら帰れ」
コネッホは辛辣だった。仲間だからこその態度なのである。ひと晩泊めてくれるだけマシなのだ。
「はあ、仕方ないわね。コネッホ、あの子たちの事をお願いね」
「子守りは勘弁だけど、フェリスの頼みなら仕方ないな。ブルムってのが本気で錬金術を学ぶのなら、まとめて面倒を見てやろう」
コネッホは面倒だとも思いながらも、フェリスの頼みを聞き届けたのだった。
その頃のレイドたちは、新しい家にものすごく歓声を上げていた。
「すげえ、フェリスさんの魔法って本当にとんでもないよな」
「見てくれがあれだけボロボロだった、崩壊寸前の家だというのが信じられないな」
男二人は、二階に駆け上がって部屋を一つ一つ確認しながら興奮気味に叫んでいる。
「厨房もちゃんとなってるわ。家の外からこの精度の魔法……。さすが邪神を自称するだけの事はあるわ」
「お風呂もちゃんとしてるさー。これなら毎日入っちゃうぞ」
女性二人も唸っている。台所と風呂を見ているあたり、男たちとは視点が違っていた。
「フェリっちったら太っ腹よねー。あたしたちのためにポンと現金一括だもんねー」
「いや、あれはだいぶ足元見てたぞ。銀貨10枚とか、さすがに家の価格としては安すぎる」
「そうね、普通なら賃貸料の月額と同程度よ」
「でもさ、廃屋だったんだからそんなもんだろう。崩壊待ちだったってんなら、なおさらさ」
レイドたちはあーだこーだと感想やら意見やらを交わしている。思うところはそれぞれにあるようである。
「ただね、この家には問題があるのよ……」
「ああ、確かに。これは大問題だな……」
「えっ、なになに?」
ブルムとグルーンが腕を組みながら真剣な面持ちで話していると、ピックルが不思議そうな顔をして二人に寄っていく。
「ああ、実に大問題だ。由々しき事態なんだよ、ピックル……」
「レイドまでなんだよー。フェリっちの魔法になんか文句でもあるわけ?」
ピックルはかんかんに怒っている。どうやらピックルだけがフェリスに酔いしれているために、この家が抱える深刻な問題に気が付いていないようだった。
「なんだよー。はっきり言ってよね、ぷんぷん」
ピックルが両手を腰に当てて膨れている。
「お前な、気が付かないか?」
「何にさ」
「よく見ろよ。この家……家具がまったくないんだぞ」
「あーーっ!!!」
グルーンがはっきり告げると、ピックルはようやくその深刻さに気が付いて叫び声を上げていた。どうして気付かないのだろうか。
「たたた、確かにそうじゃん。ベッドもテーブルも椅子も何もないじゃん。どどど、どーすんの? ねえ、どうすんのさーっ?」
あたふたと慌てるピックル。その姿にレイドたちはため息を吐く。
「どうするってなあ?」
「ああ、やる事はひとつだけだ」
「……買いに来ましょうか。まだ明るいからお店やってるでしょうし」
そんなわけで、レイドたちはやむなく日が傾き始めたモスレの街へと出掛けていったのだった。
「はあ、商業組合の人が居る間に気付いときゃよかったぜ……」
今さら愚痴ったところで、もう後の祭りなのである。
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「そうね。ピックルはもふもふが絡むと、一気に頭がパーになるものね。優秀なサポーターなのに、そこが玉に瑕だわ……」
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