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第190話 邪神ちゃんの劇的リフォーム
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冒険者組合の新しい組合長に会えなかった事は残念だったけれど、フェリスたちは再び商業組合に戻ってきた。
そこでは、いまだにビジーたちがアクアバイトラットの毛皮の事で言い争いをしている光景が繰り広げられていた。まだ終わってなかったようである。
「あの人たち、いつまでやってるのかしら……」
さすがのフェリスも呆れるばかりである。
「もしもーし、ちょっといいかしらー?」
論争の中に思いっきり切り込んでいくフェリス。こっちだってゆっくりしていられないのだ。価格査定でそんなに大人数が騒ぐなというものだ。ただでさえ、さっき来た時にあれだけ忙しそうにしてたのに、何だってこうめちゃくちゃなのだろうか。
「とりあえず、その毛皮は最初に提示してもらった値段でいいから、さっさと査定進めてちょうだい。大体なんでそんなに騒いでる暇があるのよ」
フェリスは怒っている。これはビジーも他の職員も言い訳ができなかった。
「悪かった」
ビジーが代表して頭を下げるが、フェリスの気は収まらなかった。
「この子たちの家を安く紹介してちょうだい。それで手を打とうじゃないの」
フェリスがにやりと笑いながら言うと、レイドたちは驚いてあたふたしていた。
「いや、そこまでしてもらわなくてもいいのに」
「そ、そうよ。これは私たちの問題ですから」
「うむ、これでは返せない恩が増えてしまう」
しかし、ピックルだけが違った。
「さすがフェリっち、太っ腹~♪」
平常運転である。もはや敬虔なフェリス信者といってもいいレベルじゃないだろうか。しかし、メルとは方向性が違う事もあって、フェリスにとってはむしろ頭の痛い事だった。
「しかし、冒険者に家を紹介するとなると、拠点登録が……」
「あなたたちが騒がしくしてる間に済ませてきたわよ。みんな、冒険証を出して」
ごねる職員を尻目に、フェリスはレイドたちに冒険証を出させる。そして、それを確認した職員は、
「し、失礼しました。すぐに物件の案内をさせて頂きます!」
「その前に毛皮の査定! さっさとしなさい!」
「はいぃっ!!」
慌てて対応に入る職員たちの姿を、頬を膨らませながら睨み付けるフェリス。腕を組んでカウンターにもたれ掛かる姿に、レイドたちも恐ろしさを感じる始末だった。
しばらくすると職員たちが毛皮の査定を済ませてお金を持ってくる。それを見たフェリスはようやく怒りの表情を解いていた。
「そのお金を元手に家の購入を行いますので、あたしたちをすぐさま案内なさい。さすがに怠慢には呆れていますので、遠慮はしませんよ?」
フェリスが凄むと、商業組合の職員はその恐ろしさに震え上がっていた。
「ひゅ~、フェリっち悪女っぽい~」
その光景になぜかテンションが上がるピックルなのであった。
職員の案内で家を紹介してもらうフェリスたち。モスレの街の中にも、意外と空き家は転がっているのだ。
「古くても構わないわ。あたしの魔法を使えばある程度強化できるからね」
「か、畏まりました。組合からも遠くなくて、コネッホさんの家からも近いとなるとこの辺りの物件になります」
フェリスの言葉にいちいち震えながら反応をする職員。さっきあれだけ鋭い眼光で睨まれればそうもなってしまう。
そうやって連れてこられた場所には、二階建ての木造家屋が建っていた。窓が割れていたり、扉が壊れていたり、かなり無人であっただろう事が窺われる、もはや廃屋レベルの建物だった。
「ご希望の立地条件の中で空き家となれば、これくらいしかありません。間取りは広いですし、二階建てで部屋も多いですし、直して頂けるのでしたら十分かと思います」
「どれどれ……」
職員の説明に、フェリスは魔法を使って建物の状態を確認する。
「まあ、よくもってたわねってレベルの酷さね。古すぎて話にならないわ」
「じゃあ、この家は……」
「誰が買わないって言った? ちょっと待ってなさい」
レイドたちが諦めようとすると、フェリスが魔法を発動する。使うのはハバリーとコネッホ、それとルディの能力だ。土属性の魔法に長けたハバリー、錬金術の使い手のコネッホ、炎の使い手ルディ。これを組み合わせれば大体の建物はきれいになるのである。
「はい、この通りよ」
時間にして数分、あっという間にボロ屋だった家がきれいな新築状態になってしまった。こういうのを見せられると、フェリスが邪神だという事に納得させられてしまうのだ。
「さっ、中に入って確認しましょう」
中に入ってびっくりしたのは商業組合の職員だ。以前立ち入った時には、床が抜けそうになったり壁が崩れそうだったりと、それは見るも無残な状態だった。それがフェリスの手によってきれいに蘇ってしまったのだ。劇的前後である。
「よくあのボロ状態で残してたわね。おかげで改築のやりがいがあったけど」
「いえいえ。実は言いますと、壊すにもいろいろと面倒でして、そのために自然に崩れ落ちるのを待っていたのです」
どうやら、廃屋を取り壊すとなると許可関係が面倒らしい。それで商業組合は家の取り壊しを渋っていたようなのだ。危なっかしい。
「で、あなたたちは、どうするの? ここにする?」
フェリスはにこやかにレイドたちに話し掛ける。そしたら、全員揃って秒で首を縦に振っていた。ここまでしてもらって嫌だとは言えなかったのだ。さすが邪神、汚かった。
「じゃあ、決まりね。ボロすぎたから、銀貨10枚で手を打たせてもらうわよ。さすがに金貨を払えるような物件じゃないわ」
「は、はい。これだけ直して頂けたのですから文句はございません」
商談成立である。
フェリスはにこにこしながら、職員に銀貨10枚を支払ったのだった。
そこでは、いまだにビジーたちがアクアバイトラットの毛皮の事で言い争いをしている光景が繰り広げられていた。まだ終わってなかったようである。
「あの人たち、いつまでやってるのかしら……」
さすがのフェリスも呆れるばかりである。
「もしもーし、ちょっといいかしらー?」
論争の中に思いっきり切り込んでいくフェリス。こっちだってゆっくりしていられないのだ。価格査定でそんなに大人数が騒ぐなというものだ。ただでさえ、さっき来た時にあれだけ忙しそうにしてたのに、何だってこうめちゃくちゃなのだろうか。
「とりあえず、その毛皮は最初に提示してもらった値段でいいから、さっさと査定進めてちょうだい。大体なんでそんなに騒いでる暇があるのよ」
フェリスは怒っている。これはビジーも他の職員も言い訳ができなかった。
「悪かった」
ビジーが代表して頭を下げるが、フェリスの気は収まらなかった。
「この子たちの家を安く紹介してちょうだい。それで手を打とうじゃないの」
フェリスがにやりと笑いながら言うと、レイドたちは驚いてあたふたしていた。
「いや、そこまでしてもらわなくてもいいのに」
「そ、そうよ。これは私たちの問題ですから」
「うむ、これでは返せない恩が増えてしまう」
しかし、ピックルだけが違った。
「さすがフェリっち、太っ腹~♪」
平常運転である。もはや敬虔なフェリス信者といってもいいレベルじゃないだろうか。しかし、メルとは方向性が違う事もあって、フェリスにとってはむしろ頭の痛い事だった。
「しかし、冒険者に家を紹介するとなると、拠点登録が……」
「あなたたちが騒がしくしてる間に済ませてきたわよ。みんな、冒険証を出して」
ごねる職員を尻目に、フェリスはレイドたちに冒険証を出させる。そして、それを確認した職員は、
「し、失礼しました。すぐに物件の案内をさせて頂きます!」
「その前に毛皮の査定! さっさとしなさい!」
「はいぃっ!!」
慌てて対応に入る職員たちの姿を、頬を膨らませながら睨み付けるフェリス。腕を組んでカウンターにもたれ掛かる姿に、レイドたちも恐ろしさを感じる始末だった。
しばらくすると職員たちが毛皮の査定を済ませてお金を持ってくる。それを見たフェリスはようやく怒りの表情を解いていた。
「そのお金を元手に家の購入を行いますので、あたしたちをすぐさま案内なさい。さすがに怠慢には呆れていますので、遠慮はしませんよ?」
フェリスが凄むと、商業組合の職員はその恐ろしさに震え上がっていた。
「ひゅ~、フェリっち悪女っぽい~」
その光景になぜかテンションが上がるピックルなのであった。
職員の案内で家を紹介してもらうフェリスたち。モスレの街の中にも、意外と空き家は転がっているのだ。
「古くても構わないわ。あたしの魔法を使えばある程度強化できるからね」
「か、畏まりました。組合からも遠くなくて、コネッホさんの家からも近いとなるとこの辺りの物件になります」
フェリスの言葉にいちいち震えながら反応をする職員。さっきあれだけ鋭い眼光で睨まれればそうもなってしまう。
そうやって連れてこられた場所には、二階建ての木造家屋が建っていた。窓が割れていたり、扉が壊れていたり、かなり無人であっただろう事が窺われる、もはや廃屋レベルの建物だった。
「ご希望の立地条件の中で空き家となれば、これくらいしかありません。間取りは広いですし、二階建てで部屋も多いですし、直して頂けるのでしたら十分かと思います」
「どれどれ……」
職員の説明に、フェリスは魔法を使って建物の状態を確認する。
「まあ、よくもってたわねってレベルの酷さね。古すぎて話にならないわ」
「じゃあ、この家は……」
「誰が買わないって言った? ちょっと待ってなさい」
レイドたちが諦めようとすると、フェリスが魔法を発動する。使うのはハバリーとコネッホ、それとルディの能力だ。土属性の魔法に長けたハバリー、錬金術の使い手のコネッホ、炎の使い手ルディ。これを組み合わせれば大体の建物はきれいになるのである。
「はい、この通りよ」
時間にして数分、あっという間にボロ屋だった家がきれいな新築状態になってしまった。こういうのを見せられると、フェリスが邪神だという事に納得させられてしまうのだ。
「さっ、中に入って確認しましょう」
中に入ってびっくりしたのは商業組合の職員だ。以前立ち入った時には、床が抜けそうになったり壁が崩れそうだったりと、それは見るも無残な状態だった。それがフェリスの手によってきれいに蘇ってしまったのだ。劇的前後である。
「よくあのボロ状態で残してたわね。おかげで改築のやりがいがあったけど」
「いえいえ。実は言いますと、壊すにもいろいろと面倒でして、そのために自然に崩れ落ちるのを待っていたのです」
どうやら、廃屋を取り壊すとなると許可関係が面倒らしい。それで商業組合は家の取り壊しを渋っていたようなのだ。危なっかしい。
「で、あなたたちは、どうするの? ここにする?」
フェリスはにこやかにレイドたちに話し掛ける。そしたら、全員揃って秒で首を縦に振っていた。ここまでしてもらって嫌だとは言えなかったのだ。さすが邪神、汚かった。
「じゃあ、決まりね。ボロすぎたから、銀貨10枚で手を打たせてもらうわよ。さすがに金貨を払えるような物件じゃないわ」
「は、はい。これだけ直して頂けたのですから文句はございません」
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