邪神ちゃんはもふもふ天使

未羊

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第185話 邪神ちゃんと冒険者とアクアバット

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 森を進んできて泉に突き当たった所から左の方向へ進んでいく。
「しっ、居たわよ」
 フェリスがレイドたちを止める。その目の前には、青っぽい色をしたコウモリたちが飛び交っていた。今回の目的のアクアバットである。
 本来は洞窟などの暗い場所を好むのだが、マイムの力で木々が生い茂る水源の森は、実にそれに近しい状態になっている。だからこそ、こうやって森の中を普通に飛び回っているのである。
 そして、このコウモリたちは名前の通り、水の力を持っている。水系の魔法を操るし、水系の攻撃は効果がない。それでいて空を飛び回って動き回るので攻撃が当てにくい。駆け出しの冒険者たちには厳しい相手なのである。
 だが、レイドたちは迫りくる10数匹のアクアバイトラットをなんとか倒し切っただけの実力はある。だったら、アクアバットくらいならばなんとかなりそうな感じである。
「さっ、あなたたちだけでやってちょうだい」
「えー、フェリっちは手伝ってくれないの?」
 フェリスの言う事にピックルがうざったらしく反応する。
「ドラコの依頼を受けたのはあなたたち。あたしは道案内を頼まれただけよ! 今のあたしは非戦闘員だからね!」
 フェリスは怒っている。自分はただ巻き込まれただけだと主張しているのだ。まあ、実際その通りなのだが。手が離せないドラコの代わりに面倒を見てくれと頼まれたのが、今回のフェリスなのである。ついでに言うと、ピックルが自分に対してやたらべたべたしてくるので、他の三人も巻き添えであまりフェリスからいい感情を持たれていない。そう、元凶はすべてピックルなのである。
「ほらほら、頑張ってアクアバットを狩りなさい。解体くらいはやってあげるから」
 フェリスは近くの岩にちょこんと腰を掛けてレイドたちを急かしている。足を組んだりしているあたり、フェリスは本気で戦うつもりはないようだった。
「だーっ、フェリっちの薄情者ぉっ!」
「うるさいな、ピックル。お前のせいだと自覚しろよ」
 フェリスに向かってキレているピックルに、レイドが雷を落とす。
「はあ?! 分かんないし!」
「ダメだわ、この子ったら重症ね」
「だな。街に戻ったら飯を奢れよ、ピックル」
「それくらいだったらやってやるし!」
 あまりの反応に他の面々も呆れているが、とりあえず街に戻った時のご飯を奢らせる約束をする事でどうにかまとまった。そんな事で収まるんだ……。
 どうにか戦闘態勢に入ったレイドたち。先程のアクアバイトラットの時もだったが、ひとたび戦いに集中すれば連携がきっちり取れていた。そういえば、フェリスたちと初めて会った時のモウルとの戦いも、それなりに連携はできていた。ただ、数が多すぎたのである。つまり、レイドたちの熟練度は、初心者はどうにか脱して経験者というくらいのランクにはあるようだ。ベテランともなれば、あの程度のモウルなど苦にもしないはずだからだ。
 そう思いながらフェリスが眺めている前で、アクアバットが次々と倒されていっている。魔法を使うとはいってもそんなに威力はないし、地形を考慮してもそんなに苦戦する相手ではなかったのだ。
「デバフ掛ければ問題ないしー」
「鈍ったところを一匹ずつ叩き落としゃ、苦戦はしねえよ!」
 レイドたちは、ピックルのデバフで動きを鈍らせて、そこを着実に一匹ずつ倒していったのだった。さすがはバランス型のパーティーである。しばらくすると、レイドたちはその場に居たアクアバットたちをすべて倒してしまった。
「よっし、これでオーケーだな」
「意外とあっけなかったな」
「まあ、当然ね」
「楽勝、楽勝!」
 アクアバットたちを討伐して、余韻に浸るレイドたち。だが、そこにフェリスが近付いていく。
「あんたたちね。依頼はアクアバットの討伐じゃなくて、素材の持ち帰りよ。さっさと解体しないと傷んで使い物にならないでしょうが!」
 浮かれている四人にお叱りを入れていた。こういう時のフェリスは落ち着いていて頼りになるものである。このフェリスの声で、全員がアクアバットの解体に取り掛かった。
 アクアバットの必要部位は、魔石と牙である。ちなみにアクアバットの内臓も薬の材料になるので確保である。こういうのはコネッホに渡せば大体万能薬に化けるのだ。それ以外の部位は役に立たないので全部焼却である。
「ふぅ、思ったより大量に手に入ったわね。これなら、ドラコはともかく、コネッホも喜びそうだわ」
 フェリスもホクホク顔である。その顔を見ていたピックルがフェリスに飛び掛かろうとしていたが、それをブルムとグルーンが取り押さえていた。
「はーなーせーっ!」
「お前なぁ、マイムさんから言われた事を忘れたのか?」
「水属性の加護が弱くなれば、水魔法はおろか氷魔法や回復魔法とかも影響を受けるのよ。堪えなさい!」
「やーだーっ!」
 子どものように駄々をこねるピックルだったが、結局二人にがっちりホールドされてまずはマイムの所に戻る事になったのだった。
 正直、この四人は冒険者として結構安定しそうな感じがするのだが、このピックルの性格ひとつだけでものすごく危うく映ってしまっている。マイムの所に戻る間も、フェリスはずっと頭が痛い思いでいたのだった。
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