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第183話 邪神ちゃんは見守る
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レイドたちの周りは、アクアバイトラットで埋め尽くされていた。どうやらマイムは相当お怒りのようで、数10匹という相当な数を寄こしている。
「いっちょやってやれし~」
「言われなくとも!」
レイドたちが戦闘を開始する。
「フォーカス!」
タンク役であるグルーンが、ラットたちの注意を引き付ける。ぐるりとアクアバイトラットの顔がグルーンへと向く。
「おりゃあっ!」
「ウィンドカッター!」
向かってくるアクアバイトラットを、レイドとブルムが落ち着いて1体1体処理していく。キキッという鳴き声を上げて倒されていくラットたちだが、数が多すぎてなかなか対処しきれない。
「デバフどーんっ!」
ピックルは、数が多すぎるラットたちの能力を削ぐ。それでも動きの素早さは思ったより落ちないし、足場も悪いとあってレイドたちの苦戦は変わらなかった。
「なんでぇ?! デバフちゃんと入れてるのに、効きが悪くない?」
ピックルが慌てたように叫んでいる。
「ばっかねぇ……。あんたはマイムの怒り買ってるんだから、効果が薄いのは当たり前なのよねぇ」
その様子を見ながらフェリスは呆れたように呟いている。まあそれでも、ピックルたちの耳には入らないように気を付けたが。耳に届いていたら、絶対意識を自分に向けてくる。そしたらまたマイムの怒りを買うので、この戦いが終わる事が無くなってしまうからだ。フェリスの対するマイムの感情を考慮した上での配慮なのである。
(デバフの効果が薄いとはいっても、バフはちゃんと普通に効いてる。それにそれほど強くなくて毛皮に防火効果のあるアクアバイトラットを寄こすあたり、マイムは怒っているけど、単純にあいつらの実力を測ってるってところかしらね)
戦いを見守りながら、フェリスはそんな風に感じていた。
レイドたちは着実に1体ずつ倒していき、アクアバイトラットはその数を減らしていた。
もう少しですべて倒せる。レイドたちがそう思った時だった。
アクアバイトラットのターゲットが突然変わった。
「くそっ、フォーカス!」
効果切れかと思ってグルーンが再び自分にターゲットが向くように技を使うが、ラットたちはそんな事を完全に無視してピックルに襲い掛かっていく。
「な、なんで、あたしに!?」
驚くピックル。
「な、なめんなし! あたしだって戦えるんだって!」
ピックルは杖の先端部と中ほどを持つ。そして、先端部を引っ張ると、そこで杖が2つに分かれたのだ。ただし、その間はよく見ると鎖で繋がっていた。どうやらピックルの杖はフレイルだったようだ。
「だっりゃーだしっ!」
ピックルはフレイルを振り回す。
「レイド、グルーン、ブルム。見てないで助けるしっ!」
「お、おうっ!」
ピックルに群がるアクアバイトラットを的確に1体ずつ処理していくレイドたち。どうにかアクアバイトラットを全部を倒したレイドたちは、予想外に悪い足場のせいでお疲れモードになっていた。
「はあはあ、何だよ、この魔物ども……」
「タゲ取りが効かないとか初めて見たぞ」
「ネズミはもう嫌よ……」
「なんで、あたしがあ!」
四人はそれぞれの反応を示しながら、その場にへたり込んでいた。
「はいはい、お疲れ様。ピックルが狙われてたのは、マイムに嫌われてるからよ」
フェリスはラットの解体をしながら、四人を労う。
「なんで嫌われてるし~?」
「あたしにべたべた触り過ぎなのよ。マイムとあたしは親友だから、マイムの怒りを買ったのよ」
自慢の白い毛並みを汚さないように、魔法で的確に解体を施しながら説明をしている。
「えー、スキンシップとか当たり前じゃん~」
「お前はやり過ぎなんだよ。そりゃ怒られるわ」
レイドのツッコミにグルーンとブルムは激しく頷いている。それを見てピックルは大げさに驚いていた。
「アクアバイトラットは知ってると思うけど、毛皮はかなり価値があるわ。あと知られていないのは内臓かしらね。薬の材料になるのよね。それ以外はゴミだから、討伐証明部位である尻尾を取ったらあとは燃やすだけね」
フェリスはそんな事を言っているが、よく見たら肉も残している。猫はネズミを食べるらしいし、そういう事なのだろう。
フェリスがラットたちの解体処理を済ませると、レイドたちに話し掛ける。
「さて、もう少し進んだらマイムの居る泉に着くわ。言っておくけれど、くれぐれも態度には気を付けてちょうだい。精霊って気難しいのが多いからね」
フェリスの忠告に、レイドたちは黙って大きく頷いた。アクアバイトラットの襲撃だけでもうこりごりなのだ。
ラットたちに襲撃された場所から歩く事30分ほど、森の中でひときわ明るい場所へとやってきた。そこには泉というには大きすぎる、沼や湖と言った方がいいくらいの水場が広がっていた。
「ここはマイムの力の影響で水が湧き出ている場所だから、泉って呼んでいるわ」
フェリスはそう言って、泉へと一歩ずつ歩み寄っていく。
「マイム、あたしよ。姿を見せてちょうだい」
フェリスが泉に向かって呼び掛けると、水面が徐々に騒めき始め、水が勢いよく吹き上がる。その水が弾けると、そこには女性の姿をした水の精霊が現れたのだった。
「いっちょやってやれし~」
「言われなくとも!」
レイドたちが戦闘を開始する。
「フォーカス!」
タンク役であるグルーンが、ラットたちの注意を引き付ける。ぐるりとアクアバイトラットの顔がグルーンへと向く。
「おりゃあっ!」
「ウィンドカッター!」
向かってくるアクアバイトラットを、レイドとブルムが落ち着いて1体1体処理していく。キキッという鳴き声を上げて倒されていくラットたちだが、数が多すぎてなかなか対処しきれない。
「デバフどーんっ!」
ピックルは、数が多すぎるラットたちの能力を削ぐ。それでも動きの素早さは思ったより落ちないし、足場も悪いとあってレイドたちの苦戦は変わらなかった。
「なんでぇ?! デバフちゃんと入れてるのに、効きが悪くない?」
ピックルが慌てたように叫んでいる。
「ばっかねぇ……。あんたはマイムの怒り買ってるんだから、効果が薄いのは当たり前なのよねぇ」
その様子を見ながらフェリスは呆れたように呟いている。まあそれでも、ピックルたちの耳には入らないように気を付けたが。耳に届いていたら、絶対意識を自分に向けてくる。そしたらまたマイムの怒りを買うので、この戦いが終わる事が無くなってしまうからだ。フェリスの対するマイムの感情を考慮した上での配慮なのである。
(デバフの効果が薄いとはいっても、バフはちゃんと普通に効いてる。それにそれほど強くなくて毛皮に防火効果のあるアクアバイトラットを寄こすあたり、マイムは怒っているけど、単純にあいつらの実力を測ってるってところかしらね)
戦いを見守りながら、フェリスはそんな風に感じていた。
レイドたちは着実に1体ずつ倒していき、アクアバイトラットはその数を減らしていた。
もう少しですべて倒せる。レイドたちがそう思った時だった。
アクアバイトラットのターゲットが突然変わった。
「くそっ、フォーカス!」
効果切れかと思ってグルーンが再び自分にターゲットが向くように技を使うが、ラットたちはそんな事を完全に無視してピックルに襲い掛かっていく。
「な、なんで、あたしに!?」
驚くピックル。
「な、なめんなし! あたしだって戦えるんだって!」
ピックルは杖の先端部と中ほどを持つ。そして、先端部を引っ張ると、そこで杖が2つに分かれたのだ。ただし、その間はよく見ると鎖で繋がっていた。どうやらピックルの杖はフレイルだったようだ。
「だっりゃーだしっ!」
ピックルはフレイルを振り回す。
「レイド、グルーン、ブルム。見てないで助けるしっ!」
「お、おうっ!」
ピックルに群がるアクアバイトラットを的確に1体ずつ処理していくレイドたち。どうにかアクアバイトラットを全部を倒したレイドたちは、予想外に悪い足場のせいでお疲れモードになっていた。
「はあはあ、何だよ、この魔物ども……」
「タゲ取りが効かないとか初めて見たぞ」
「ネズミはもう嫌よ……」
「なんで、あたしがあ!」
四人はそれぞれの反応を示しながら、その場にへたり込んでいた。
「はいはい、お疲れ様。ピックルが狙われてたのは、マイムに嫌われてるからよ」
フェリスはラットの解体をしながら、四人を労う。
「なんで嫌われてるし~?」
「あたしにべたべた触り過ぎなのよ。マイムとあたしは親友だから、マイムの怒りを買ったのよ」
自慢の白い毛並みを汚さないように、魔法で的確に解体を施しながら説明をしている。
「えー、スキンシップとか当たり前じゃん~」
「お前はやり過ぎなんだよ。そりゃ怒られるわ」
レイドのツッコミにグルーンとブルムは激しく頷いている。それを見てピックルは大げさに驚いていた。
「アクアバイトラットは知ってると思うけど、毛皮はかなり価値があるわ。あと知られていないのは内臓かしらね。薬の材料になるのよね。それ以外はゴミだから、討伐証明部位である尻尾を取ったらあとは燃やすだけね」
フェリスはそんな事を言っているが、よく見たら肉も残している。猫はネズミを食べるらしいし、そういう事なのだろう。
フェリスがラットたちの解体処理を済ませると、レイドたちに話し掛ける。
「さて、もう少し進んだらマイムの居る泉に着くわ。言っておくけれど、くれぐれも態度には気を付けてちょうだい。精霊って気難しいのが多いからね」
フェリスの忠告に、レイドたちは黙って大きく頷いた。アクアバイトラットの襲撃だけでもうこりごりなのだ。
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「ここはマイムの力の影響で水が湧き出ている場所だから、泉って呼んでいるわ」
フェリスはそう言って、泉へと一歩ずつ歩み寄っていく。
「マイム、あたしよ。姿を見せてちょうだい」
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